町が四方300m切り取られた。
それらは高い壁に遮られて外に出る事は出来ない。
切り取られた町は完全に隔離されていた。

そんな町を腰に手を当て見下ろす少女。
足元の四方30cmの囲いの中の小さな町並みを一望してにんまりと笑う。
1000分の1の大きさの、しかしミニチュアではなく正真正銘本物の、さきほどまで確かに世界のどこかにあった町がそこにある。
小さな小さな色取り取りの箱がこの囲いの中にぎっしり並んで見えるのはおそらくここが住宅街だったからだろう。
目を凝らせば動くものが無数に見える。
町と一緒に縮められた人間や車だ。
突然目の前に現れた、巨人となった自分を見上げて、そして逃げようにも周囲を高い壁に囲まれて逃げられず叫び逃げ惑うばかりの哀れな小人。
彼らを町ごと征服できたと思うと優越感もむくむくとわきあがってくる。

不意に少女は片足を持ち上げた。
小人となった1000分の1の人々からは頭上を埋め尽くすほどに巨大な足の裏が見る事が出来た。
自分の足の裏を見上げて人々は何を思うのか。
なんでもない足の裏。それが現れただけで彼らはこの世の終わりのように慌てふためくに違いない。
そんな様を想像しながら少女は足を町の中に踏み下ろした。
何百という家が潰れる感触は、よくわからなかった。
足は割とあっさり地面を踏みしめていたのだ。
潰れる感触を感じたかと思ったときにはもう地面の冷たさを感じていた。
足をどけてみると、きれいに並べられていた家の作る規則正しい町並みの中に自分の足跡がくっきりと残っていた。
周りの家と比べても自分の足跡はとても大きかった。
小指の跡の中にも、いくつもの家が潰れていた。
足全体で見ればほとんどの家が粉々に潰れている。
体重のあまりかからなかった土踏まず付近では展開図の様になっている家もあったが、踵やつま先など体重がかかる場所では家は原型をとどめていなかった。

自分の足の力強さにうんうんとうなずいた少女は次に町をまたいでしゃがみこんだ。
ミニスカートに包まれた白いパンティをはくお尻が町の上空を支配する。
そして少女はパンティをずり下げた。
人々の上空に巨大な肛門が現れた。
しわまで含めた直径は学校のグラウンドほどの大きさがありそうだ。
町中に公開された肛門を挟む尻の山が町に向かって降下してきた。
町の空気が尻に圧迫されて耳が痛い。
大気を押しのけて迫る尻。
いったい、何をしようというのか。
その時、肛門がピクピク動いた。

 ブォォオオオオオッツ!

瞬間、すさまじい爆風が開かれた穴から発せられ真下の町に直撃した。
少女がおならをしたのである。
放たれたおならは地面に直撃すると周囲に爆散、それはまるで爆弾が爆発したかのような破壊力であった。
直下にあった家は真上からの衝撃で押しつぶされ周囲の家々はバラバラに吹っ飛ばされた。
紙で出来ているかのようにやすやすと壊れていった。
数秒後、巨大な少女の肛門をバッグに、無数の家々の瓦礫が降り注ぐというシュールな光景が広がった。

 ズズゥン! ズズゥン!

少女がしゃがんだまま数歩後退した。
あの巨大な尻と肛門は町の外へと消え、代わりに巨大な割れ目が現れた。
50mはあろうかという割れ目。高層ビルでさえ呑み込んでしまえそうだった。
それは町の上空をうろうろしたあと、やがて落ち着いたかのように一箇所に固定された。
真下からだと筋肉の弛緩している状態がよくわかる。
下腹部の締められていた筋肉が緩められた。

 シャァァァァァァアアアアアアアア。

少女のおしっこが町に降り注いだ。

 ズドドドドドドドドドドドドドド!

膨大な量の生暖かい水が家々を洗い流していった。
放尿の直撃を受けた箇所ではいくつもの家が爆散し、その飛び散った水滴ですら家を破壊するには十分な威力を持っていた。
当然被害を受けたのは家だけではない。
人々は、突然の大洪水の中、ごぼごぼと溺れていった。
肌を刺激の強い水が傷つける。口の中がやけるようだった。
おしっこから逃れるために高台を目指す者もいたが、もうこの町の中に水没していない箇所はなかった。
枠によって区切られた空間の中に、尿はどんどん溜まっていった。

 コポポポポポポポポ…

小気味良い音を立てて尿は町に降り注ぎその水位を上げてゆく。
町は大シケの海に呑まれていた。
荒れ狂う尿の波が必死に泳ぐ人を次々と海中に引きずりこんでゆく。
ひとり、またひとりと、人々は黄金の海に沈んでいった。

少女の放尿が終わったとき、水面に浮かぶ影は無数にあれど、動くものはひとつもなかった。

 フッ

そして今しがた海中深く沈んだ町もその大量の尿や囲いと一緒に消え去った。
少女は股間をティッシュでぬぐい立ち上がるとパンティを穿きなおした。
トイレ以外のところで様を済ませるのはドキドキする。
またやろう。そう思っていた。