「わぁきれい〜」

はしゃぐエルルの周囲をキラキラと輝くものが取り囲んでいた。
それらは全て銀河。輝く点に見えるのは恒星。さらにさらに細かくしていってようやく一個の星が見えるかどうかという大きさ。

「ほら、セアラちゃんも早くおいでよ〜」

後ろを振り返り手を振るエルル。
その仕草に巻き込まれ、幾つかの銀河が消え去った。

「…う、うん…」

手を振るエルルの先から翼を折りたたんだセアラがもじもじと突いてくる。
その仕草は周囲の銀河の事を気遣っているようにも見えた。
エルルは肩をすくめて見せた。

「もうセアラちゃんたら。この辺の銀河はみんな廃棄していいんでしょ?」
「でも……羽に大陸がくっついて…汚れるのが嫌だから……」

今の二人から見れば星など1㎜にも遠く及ばない。
地球が大体1.3万㎞として、今は0.000000000013㎜にまで縮小しているに値する。
当然ながら星など、彼女達の毛の太さよりもはるかに、はるかに小さいのだ。

「じゃあ遊ぼ」

1億倍の女神達の10兆倍に巨大化しての遊戯が始まった。
エルルは近くにある銀河に口を寄せていった。
銀河の横に星を何百億何千億と詰め込める口が現れる。
紅色の唇が「う」の字を作る。
あの唇の上を通過するだけでも、光の速度で数万年を要する。
その口の作り出す穴はブラックホールよりも黒かった。

「ふっ」

そのブラックホールからは吸い込むのでなく吹き出された。
瞬間、そこにあった銀河の光は消えてしまった。散らされてしまったのだ。
エルルの吐息で銀河が消滅した。
自分の吐息で無数の光が消えてゆく様を見てその巨大な口は端をゆがめた。

「ふふ、なくなっちゃった。あ、そうだ!」

また別の銀河に口を寄せ、今度は吸い込んだ。
無数の光たちがエルルの口の中に吸い込まれ、結局銀河まるまるひとつが吸い尽くされた。
吸い込み頬を膨らませたエルルはきょとんとしているセアラの方を向くと、その顔に息を吹きつけた。
するとその息はキラキラと輝いていた。

「あ…な、何するの…」
「えへへ、あたしの息、キラキラしてたよ!」

銀河一つ分の大陸を吹き付けられたセアラはそれを片手でなぎ払いながら顔を振った。
他愛の無い、本当に他愛の無い遊びである。

「でもこのままじゃちょっと大きすぎるね。なんにもできないや」

言いながらエルルは目の前の銀河を手で払った。
銀河は一瞬で散り散りになってしまった。

「じゃあ…なんで大きくなったの…?」
「えー! 『宇宙』は怖いところなんだよ! 怪獣とかいるんだよ!」
「……女神族の…心配することじゃない…」
「まぁいいや。ほらほら、小さくなって遊びにいこ。この辺なんか面白そうじゃないかな」

言うとエルルは一つの銀河の一点を指した。

「うん…いいよ…」
「じゃあ出発ー!」

  キュン!

二人の身体が光ったと思われた瞬間、もうそこにあの超巨大な女神達の姿はなかった。


  *
  *
  *


「とうちゃ〜く」

縮小化した女神達の周囲にはふよふよと浮かぶ小さな星々。
大きさは数cmのものから数mのものまで。
赤や青と色とりどりであった。
今の二人の大きさは10億倍。本来の10倍の大きさであった。

「ねぇ見てみてセアラちゃん、かわいい〜」

エルルの指差した先、そこには指先ほどの大きさの小さな小さな青い星が浮いていた。

「ここ…『たいよーけー』の第三惑星…『ちきゅー』だって…」
「へーあたしこんなに綺麗な星みたことないよ」

エルルはその大きさ1.3cmほどの青い星に顔を近づけて目を輝かせた。
青い表面に白と緑の模様がありそれが少しずつ変化している。
同じ模様は二度と見られない。
他の星が赤や茶など冴えない色をしているのに対し、この星はまるで宝石のように輝いていた。

「…綺麗…だね…」
「ねー。持って帰っちゃおうかな〜」
「ダメ…。この星が綺麗なのは…このたいよーけーの中だけ…」
「持って帰れないの?」
「この位置からずらすと…すぐに乾いて茶色い星になる…」
「な〜んだ残念」

エルルは伸ばしていた手を引っ込めた。
先ほどまで地球はエルルの手と指で表面を覆われ全体が夜になっていたのだった。

「でも本当にかわいいよね〜。キラキラしててまるっこくて。飴玉みたい」
「飴玉…」

飴玉という言葉にピクンと反応したセアラ。
飴は、セアラの大好物である。
その言葉を聞いてセアラは無意識のうちにその青い星に顔を寄せていた。
地球にセアラの頭の影が落ち、地球からは半球のどこからでもセアラの顔を見上げることができた。
無表情の中にわずかな高揚。
顔はどんどん近く大きくなってゆく。
やがて地球は、自らの直径よりも大きい巨大な薄紅色の唇の前へと来ていた。
ふっくらとした唇。それがゆっくりと上下に別れ口が開かれる。
口の中は真っ暗で何も見えなかったが、確かにそこには自らの到来を待ちわびる巨大な舌が存在していた。
地球の表面をぺろりとひと舐め出来る舌が。
そして口は、その小さな小さな地球をはむっと咥える前に、目の前の巨大な手によって遮られていた。

「ふふ、もうセアラちゃんたら。これは飴じゃないよ。セアラちゃん大陸食べるの苦手でしょ」
「う…」

ハッとしてセアラは顔を遠ざけた。
飴玉と聞くと我を失うのが自分の悪い癖だと分かっているのに。

「でもここの星はみんなかわいいね。ほら見て…」

エルルはその青い星の横にあった赤い星を摘み自分の胸にあてがって見せた。

「あたしのおっぱいより小さ〜い」

ケラケラと笑うエルル。
エルルの丸っこい乳房の横にあてがわれたその星は確かに小さかった。
それも当然。
星はエルルの指先につまむことが出来る大きさなのに、胸は鷲づかみしてもはみ出る大きさなのだ。
まるで違う。星はエルルの乳首よりも小さい。
エルルが胸に星を押し付けると柔らかい乳房はぷにっとへこんだ。

「えへへ、ぷにぷに〜。あ、そうだ」

エルルは星を胸の谷間に置くと乳房の下で腕を組んで胸をきゅっと寄せた。
すると盛り上がった乳房の間に挟まれ星は見えなくなってしまった。

「ほらほら、おっぱいに隠れちゃうよ」

少し寄せをほどくと、緩んだ乳房の谷間から星がぴょこんと顔を出した。
そして寄せるとまた谷間に呑み込まれる。

「くす、かわいいな。やっぱり持って帰ろうかな」

エルルは自分の胸の間に出たり隠れたりする星を見下ろしながら言った。

「…」

それを複雑そうな表情で見ていたセアラはおもむろにエルルの胸を鷲づかみにした。

「ひゃあ! セアラちゃん!?」
「エルルちゃんは…胸大きくていいね…」

くにくにと指を動かすと乳房はその動きにそって形を変える。
とてもやわらかかった。

「そうかな?」
「私は…ないから…」
「あたしはセアラちゃんの翼がうらやましいけどな〜」

言いながらエルルは翼の付け根の羽をくいくいと引っ張った。

「はぅっ!」

そのくすぐったさにセアラは身体をビクンと震わせて翼をバサリ広げた。
暗黒の宇宙に真白な大翼が翻り辺りに羽を散らす。
翼は幾つもの小さな星々を包み込むことが出来るほどに大きかった。
ただ翼が広げられたとき、比較的大きな惑星をかこっていた環が吹き散らされてしまった。

「あは! ダメだよセアラちゃん、そんないきなり翼広げたら」
「だ…だって…そこは弱い…」
「ふ〜ん♪」

  くいくい

「きゅん!」

思わずビンと伸ばされた手足がそれぞれそこにあった星を打ち壊し蹴り潰した。
翼にぶつかった星はその無数の羽の間ですり潰された。

「あはは、セアラちゃんかわいい」
「ぅ…」

セアラは顔を真っ赤に染めると白い翼を折りたたみ自分の身体を包み込んでしまった。

「あーごめんねごめんね。お願いだから出てきて」

翼がほんの少しだけ開かれセアラが顔を出す。

「…恥ずかしい…」

翼から出たつま先がもじもじと動く。

「えへへ、ごめんね。…でも、星ほとんどなくなっちゃったね」

見渡してみると星らしい星はほとんど残っていなかった。
セアラが翼を広げたときにその翼にぶつかるか吹き飛ばされるかしてしまったのだ。
残っているのは自分の胸の間の赤い星と自分の背に隠れていた青い星のみ。

「どうしよっかな〜」

暫し「ん〜」っと考えるエルル。
そうしている間にセアラも翼を開いて出てきた。
翼についている星の破片をぱっぱと取り除いていた。
白い翼は裁定者の誇りだった。あとカサカサして気持ち悪いし。
細かいところまで汚れを取ろうとくるくる回るセアラの姿はまるで踊っているようだった。
エルルの視線にそのお尻がとまる。

「み〜っけ」

面白いもの発見。
エルルは手を伸ばしセアラの腰布を剥ぎ取った。

「えっ…!?」

驚くセアラが振り向く前に、エルルは胸の間の星を取り出しそれをセアラの尻の間へと押し込んでいた。

「ひゃあ! …な…なにしたの…」
「えへ〜。セアラちゃんのお尻の穴に星を詰めちゃった」
「えぇ!?」

驚愕するセアラ。
思わず尻に力が入る。
何より尻の穴というのが恥ずかしい。

「や…やだ…」

顔を真っ赤にして悶えるセアラ。
手がお尻に回されるが、取り出すことは出来ない。

その頃火星はセアラの肛門に詰まっていた。
門をその身体でぴっちりと塞いでいる。
あまりにもぴっちりとしすぎてもう外から取り出すことは出来ないのだ。
セアラがお尻をふりふり動かすが火星はセアラの肛門に挟まれびくともしなかった。

だがやがて火星はメリメリと音を立て始めた。
羞恥の余り尻に力が入ってしまうセアラの肛門を閉じようとする力のせいだった。
セアラの肛門の強靭な筋肉が、そこに詰まった小さな小さな火星を押し潰そうとしている。
ゴゴゴゴゴゴ! 火星全体に凄まじい振動が遅い、圧力で無数のヒビが走る。
地表面から岩が浮き上がり振動は山を倒壊させた。
火星は潰されまいと必死に必死に抗っていた。
だがセアラが一段と尻に力を込めたときはるかに強力になった肛門が火星表面に食い込んだかと思われた瞬間、バスンという音とともに火星は肛門の中で潰された。
有していた重力によってしばし火星の欠片が浮いていたが、やがてそれらも散らされ、そこには土で少しよごれたセアラの肛門だけが残されていた。

尻にものが詰まっていた感覚が消えた。
セアラはお尻を押さえ顔を真っ赤にしながらエルルを睨んだ。

「ひどい…」
「ごめんね。でももじもじしてるセアラちゃんかわいいの♪」
「むー…!」

  ギュン!

突如、エルルとの差を詰めるセアラ。

「え?」

エルルが反応する前にセアラはエルルの後ろに回りこみそこにあった青い星を指先に摘んだ。
セアラの指が触れた瞬間、地球は縦に若干潰れた。
大陸丸ごとセアラの指の下敷きになって地中深く埋められた。
大陸が沈むのであれば当然そこにある国や街なども同じく潰れる。
だが他に意識を集中しているセアラは自分の指先で潰れかけている星の上の小さな大陸のことなどまったく眼中に無かった。
摘んだ勢いそのままに、セアラは手をエルルの尻に向けて伸ばす。
だが。

「あっ! そうは行かないよ!」

  ギュン!

セアラの手をかわし、高速で飛び去るエルル。

「逃がさない…!」

バサリと翼を広げ、セアラも高速で飛行した。
10億倍の女神達の、太陽を中心とした超光速の追いかけっこである。
すでに惑星の無くなったこの太陽系に残るのは太陽と星の瓦礫のみ。
瓦礫は超光速で動く女神達が横を過ぎ去るだけで分子までに分解された。
噴き出すプロミネンスを貫きながら太陽の表面を飛ぶ。
女神達の、目にも止まらぬ速度の攻防である。

だが飛行能力はセアラの方がわずかに上。二人の差がじりじりと迫りつつあった。

「もう少し…」

エルルの身体を掴もうと手を伸ばすセアラ。
ところが。

「ふふ、えい!」

  フッ

突然エルルの姿が消えた。

「!?」

周囲を見渡してみるセアラ。
だが、どこにもエルルの姿は見当たらない。
この何も無い空間で見逃すはずなど無いのだが。

きょろきょろと辺りを探していたとき、指先に摘んでいた青い星が高速で飛び出し自分の方へと向かってきた。
何の前触れも無かった。
驚き、対応が一歩遅れた。

「ぎゅーん!」

高速で動く地球。
それを背後から押すのは先ほどまでの100分の1に縮小化したエルルだった。
現在、身長1,6000㎞ほどのエルルにとって、地球とは1.3mほどの球だ。
表面に手を突き立ててそれを押しながら飛ぶ。
当然、エルルの手の下では島や大陸の街などが被害にあっているのだが、先ほどからの超光速移動や振動などですでに世界中が荒廃していた。
縮小しているにも関わらず地表にあるエルルの手の地面に押し付けられた指の太さは大気圏を突破している。
指先の下に小さな島をすり潰していた。

セアラが星の後ろのエルルに気づき、捕まえるべくと手を伸ばそうと考えたときには、すでにエルルはそこへと急接近していた。
腰布を剥ぎ取られむき出しになった、セアラのスジのような秘所。
エルルは、地球を押しながらその中へと飛び込んだ。

「はぅ!」

身体をビクンと震わせそこを手で押さえるセアラ。
自分の膣に、星とエルルを入れてしまった。
動いているのを感じた。

暫くするとそこを抑えている手を内側からノックされていることに気づいた。
手をどけると、割れ目からひょっこり顔を出し手を振るエルルがいた。

  ポン!

エルルは元の大きさに戻った。

「あたしの勝ち〜」
「…なにを……」
「中に星おいてきちゃった。奥においてきたからもう取れないよね。えへへ、あたしのお尻には入れられませんでした」

くるくると回りながら笑うエルル。
だがセアラの無表情には憂いを帯びた色は無く、逆にその目には勝利を確信した光さえあった。
エルルも、それに気づいた。

「どうしたの?」
「…ごめん…」
「え?」
「………私の…勝ち」

  スポン!

セアラの股間からあの青い星が飛び出してきた。

「うそ! …あ、念動力!!」

完全に勝利を確信していたエルルはその事象の理由に気付くも反応できず、星はエルルの秘所の中へと飛び込んだ。
慌ててそれを取り出そうとするエルルの前で、セアラは股間に男性器を生やした。
それを見たエルルは一歩あとずさった。

「まさか…」
「取り出せないように……入口を塞ぐ…」

間合いを詰めたセアラはエルルの両手を掴み逃れられないようにしながら股間のソレをエルルの秘所へと突っ込んだ。

「ひゃぅ!」
「このまま…イク…。そうすれば…もう…星は出てこない…」

言うとセアラの腰がゆっくりと動き始めた。

「えー! ダメーッ! あたし今晩ライノにやってもらうつもりなんだからー!」
「……。あの人が…合意したの…?」
「ううん内緒。ライノがお風呂はいってるときに飛び込んで驚いてるところを無理矢理やろっかな〜って。きっとビックリするよね〜」
「…それ…レイプだから…。……いいけど…。…じゃあイクのはやめる…」

だがセアラは腰を動かし続けた。
しかしそれは果てようとするピストン運動ではなくぐりぐりとねじるような動き。
この時、エルルの膣の中では、その直径の倍以上の太さのセアラのチン○が地球を小突き回していた。
だが出口は巨大なセアラのチン○に、周囲は巨大なエルルの膣壁に囲まれ、地球に逃げ場など無かった。
突かれるたびに突き飛ばされ柔らかい膣肉で跳ね飛ばされまた小突かれる。
二人の女神族の少女の性器の中で、一個の生命溢れる星が弄ばれていた。

やがてその地球は、セアラのチン○とエルルの膣壁の間に挟みこまれた。

「あ、わかる? セアラちゃん」
「…うん…捕まえた…」
「……もういいよね?」
「…そうだね…」

セアラは性器をぐいと押し込み、エルルは膣をきゅっと締めた。

  クシャ

二人の性器の中で、地球は潰れた。


セアラがエルルの中からそれを引き抜くと、その先端は土で汚れていた。
茶色い土だった。とてもあの美しい青い星のものとは思えなかった。
エルルも自分の性器を見下ろしていた。
恐らく中は、セアラのチン○と同じ様に土で汚れているだろう。
フッ。セアラの股間から男性器が消えた。

「いいなぁセアラちゃんは。あたしは帰ったら洗わないと。これじゃライノの入れられないよ」
「…強姦は…ダメだと思う……」
「あ〜あ、もう遊べる星無いし、『処理』しちゃおっか」
「そうだね…」

二人の姿が消え去った。


  *
  *
  *


だが巨大化が終了した後、セアラは自分の視界が霞がかっているのに気づいた。
白いモヤのようなものが辺りを包み込んでいる。
疑問に首を捻っていると同じ様にもやの中に霞むエルルが謝ってきた。

「ごめ〜ん、ちょっと大きくなりすぎちゃった」
「…」
「大体普段の100兆倍くらいかな。ほらこれ、これでひとつの銀河なんだよ」

エルルの指先には幅1cmくらいの霞。
だがそれは無数の星で形成された銀河。
セアラは気付いた。
視界がこうも霞がかっているのは、この小さな銀河に囲まれているからだったのだ。

「…やりすぎ…」
「えへへ、でもどうせこの辺の銀河はみんな廃棄しちゃっていいんだから」

エルルが手を振ると十数の銀河がそれに巻き込まれ消し去られた。
それだけではない。そんな仕草でわずかに揺らされたツインテールでさえ幾つもの銀河を薙ぎ払い、足はその親指ほどの大きさも無い銀河を蹴り飛ばし、大きな乳房がばいんと揺れたとき胸周辺の銀河は弾き飛ばされ消失した。
ほんの些細な仕草ですら銀河を滅ぼしてしまう。
前髪が揺れれば星よりもはるかに太い髪の毛が銀河を散らす。
息を吸い込めば幾つもの銀河が少女達の鼻孔へと吸い込まれ、吐き出された吐息は銀河を吹き飛ばす。
まばたき一つで銀河は崩れ、その銀河を構成する小さな星が目に入っても気付きもしない。
二人の少女は存在するだけで銀河を滅ぼすのだ。

「えい」

  ボッ!

エルルはデコピンを放った。
エルルの指は何かに触れたと感じることも無く一個の銀河を消し去った。

「わ〜、簡単だけど詰まんないな〜…」
「…しょうがない…私達が大きすぎる…」

セアラは自分の手のひらの上に浮かぶ一つの銀河を見下ろしていた。
小さいがキラキラと霞むそれは色の違いでまるで模様があるように見えた。

「…」

セアラはおもむろに手を握った。
そして開くともうそこにその銀河は無かった。
星は指紋に挟まるくらいに小さいのだ。触れたところで分かりはしないのだ。
指を立て、銀河にゆっくりと差し入れる。
すると銀河は指の触れたところだけが何もなくなっていた。
指の形に光が消え、銀河は歪な形になった。
さきほどエルルがやっていたように、この爪で触れるだけで星達はその衝撃で欠片も残らぬほど粉々に潰れるのだ。
こんなに小さくてはまとめて飴玉にしようとも思わない。
もっとも、もう二度とそうして食べようとは考えていなかったが。

すると突然、エルルが自分のおなかに触れてきた。
何をするのかと思って見たエルルの顔は笑っていた。

「…なに?」
「あは、どうセアラちゃん、お腹はってきた?」

え?
と、首を捻る前にセアラは自分の身体の異常に気付いた。
下腹部に何かがたまる感触。
それがお尻に向かって突き進む。
すぐに、放出したい。

「…まさ…か…」
「そう、おならしたくなってきたでしょ〜」

にっこりと笑うエルル。
セアラはがばっとお尻を押さえた。
おならを出したい。身体が命令してくる。
だけど、友人の前でするのは恥ずかしい。

「…ッ」
「ほらほら、我慢するのは良くないよ。出しなさい!」

エルルは、セアラの翼の付け根の羽をちょいちょいと引っ張った。

「あ…!」

ビクン! 
そのせいで一瞬、身体が弛緩してしまった。
力が抜けてしまった。
当然、肛門を締め付けていた力も。

  ぷぅ〜

真空であるはずの宇宙に軽快な音が響き渡った。
同時に、セアラの尻の前にあった銀河達がふぁさ〜っと散らされた。
無言で真っ赤になるセアラ。

「あはは、セアラちゃんかわいい♪」

エルルは笑った。


  *


比喩しようもなく途方も無い大きさのセアラの尻。
二つの肌色の肉級がぷるんと宇宙に君臨する。
この宇宙の全ての銀河を集めてもあの肉の山一つにも届かない。
突然、宇宙に地鳴りのような重々しい音が響き渡った。
常識を超えた現象だった。
それは、このセアラの超巨大な身体の中が鳴動している音だった。
銀河を形成する星々に意思があるわけなく、彼等はこれほどの異常事態に、ただそこにいることしかできなかった。
全ては一瞬だった。


  ブォォォオオオオオオオオオオッツ!!!


あの超巨大だがまるっこい尻の谷間が、爆発したのだ。
超新星爆発数万発分と比べてもはるかに強力な爆発だった。
同時に放たれた凄まじい爆風はそこにあった銀河をすべて吹っ飛ばした。
尻に近かったものはそのガスの威力ですり潰され、遠かったものはぼろぼろに砕かれた。
蝋燭の火が消えるようにフッと、あっという間に何の余韻も残さず幾つもの銀河が消えた。
離れていた銀河でも幾つもの恒星がその風圧で篝火を吹き消された。
爆発が止むまでほんの数秒。
その間にセアラの尻から数百万光年の距離にあった銀河は全て消滅した。
空間ができていた。
すべては、少女の一発の放屁のせいで。


  *


ビッグバン級のおならをしたセアラは真っ赤になっていた。
恐る恐る自分のお尻のあった方を覗き込んでみるとそこにあった銀河達は完全にいなくなっていた。
自分のおならで吹き飛ばしてしまったのだ。
さすがに恥ずかしかった。

「あはは、セアラちゃんかわいい♪」

エルルは笑っていた。
ぐるんとエルルに向き直ったセアラはエルルのおなかに触れた。

「あ!」
「エルルちゃんも…おならしちゃえ…!」

エルルも屁意を催した。
だがセアラのようにそれを押さえ込もうとはしなかった。

  ぷぅ〜

再び宇宙に軽快な音が鳴り響く。
当然、エルルの尻の前にあった銀河達は吹き散らされた。

「あ〜あ、出ちゃった」

エルルは自分のお尻の方を振り返りながら言った。
ただおならをしながら振り返ったので、放出する方向を変えられたおならは新しい銀河を次々と横薙ぎに吹き飛ばしていった。
セアラからはエルルのお尻の動きに伴って、尻の前の銀河が消えてゆくのが見えていた。


  *
  *
  *


「なんか飽きちゃったね〜」

二人はそこに浮かぶ銀河を片っ端から廃棄していた。
ポツンと浮かんでいる銀河をぱくんと口に放り込んでみたり、無数に銀河を構成する星をセアラの尻の穴に流し込んでみたり。ちなみにセアラは気付いていなかった。
だが似たようなことばかり繰り返していていささか飽きてきた。
もとより、こちらはなにも感じていないわけだ。

「…終わりにする…?」

セアラはエルルに訊いた。
暫く考えていたエルルはやがてうんと肯いた。

「うん、もういいや」
「…わかった」

セアラは背中の翼を広げた。
その翼は、残された銀河すべてを覆うことが出来る広さだった。
そしてその翼を…。

  バサッ

一度だけはためかせた。
それだけで、まだ残っていた銀河達は全て消し飛ばされてしまった。

「う〜ん、気持ちいい〜」

セアラの起こした風にエルルの髪が靡く。
何もなくなった広大な空間の二人。

「じゃ、帰ろっか」
「…うん…」

と、二人が飛び立とうとした時、セアラはまだ銀河が一つ残っていることに気付いた。

「あ…、エルルちゃん…後ろ…」
「ふぇ?」

言われたエルルが後ろを覗いてみると、エルルのお尻の前に銀河が一つ残っていた。

「あー、あたしの後ろにいたから風が当たらなかったんだね。じゃあこれで本当におしまい」

エルルはその銀河に手を伸ばしてゆく。
軽く握って、それで終わりだった。
が、いざ手がその銀河に触れるというところで、エルルは気付いた。

「あ。セアラちゃん、この銀河、さっきあたしたちが遊んだ『たいよーけー』があるところだよ!」
「…ほんと?」

セアラもその銀河を覗き込んだ。
そこから感じるものは、たしかにあのときのものだった。

「…残ってたんだ……凄い偶然…」
「ホントだねー。じゃあこの子は二人で処理してあげようよ」
「私…もう出ない…」
「あはは。おならじゃないよ」

言うとエルルは銀河にお尻を向けた。
セアラも、エルルの反対側からお尻を向けた。
太陽系を内包する銀河は、二人の少女の尻の間に置かれた。
巨大な少女から見る銀河の大きさは、指先ほどの小さなものだ。彼女達の尻が作り出す四つの巨大な丸い山の間にふよふよと浮いている。
二人はその小さな銀河を覗き込みながら言った。

「バイバイ、最後の銀河くん」
「次は…、廃棄されない銀河に…生まれてきて…」

せーの。
二人は尻を引っ込めた。
そしてタイミングを合わせて、尻を突き出した。

  ズン!!

銀河は、二人の少女のお尻の間に消え去った。