~ 1倍(リアル) ~

「さ。遊ぼ、お兄ちゃん」

兄の前に立つ妹はにやりと笑っていた。
黒く長い髪は腰ほどまで伸び、同じく黒い瞳は怯えた兄の顔を映し出す。
腰に手を当て仁王立ちとなる体には何も纏っておらず生まれたままのその姿は女性として完成し行為に及ぶ事さえできる。
頭一つ以上背の高い妹を見上げる兄の目の前には、その頭の大きさほどもある巨大な乳房があった。
胸を張られている事もあり前に向かってぐんと突き出されている。
とても掴む事のできない大きさだ。片方の乳房を持ち上げるのに両手を使わねばならない。
それほどに大きな乳房を二つもぶら下げながら余裕の笑みを浮かべる妹。

同じく全裸である兄は逃げ出したい気持ちでいっぱいだった。
だが逃れられるはずが無い。
見下ろされ、妹の影に入る自分はすでに肉食動物の前に差し出された獲物なのだ。
笑みを浮かべ歪められた口元に僅かに覗く八重歯がキラリと光る。

不意に妹の大きな手が兄の頭の後ろに回された。
その頭を掴んで軽がると持ち上げてしまえる手だった。
手は頭に触れると抱き寄せて、兄の顔を自分の左の胸に押し付けた。

兄は自分の頭ほどの大きさの乳房に顔を埋められた。
温かく張りのある乳房は兄の顔を受け入れ変形する。
柔らかいが、兄にとっては苦痛だった。
乳房にはそれなりの弾力があり、押し付けられる兄の顔を押し返そうとしてくる。
だが兄の頭はぐいぐいと押し付けられ、乳房に触れる顔は痛みを覚えていた。
口も塞がれ呼吸ができない。
乳房に押し付けられたままバタバタ暴れる兄。

だが妹はそんな兄を笑いながら見下ろしていた。
兄の手が妹の体をペチペチと叩くが、妹は気にしたそぶりはまるで見せない。
やがて兄の動きが一段と激しくなった後 急速に弱まり始めたのを見て初めて兄の顔を乳房から離した。
窒息一歩手前まで押し付けられた兄は目がうつろとなり口からは涎を垂らし息を切らしていた。
唾液は押し付けられていた妹の乳房、乳首の周囲についていた。
図らずも兄は妹の乳首を咥えさせられていたのだ。

それを見てにっこりと笑った妹は兄の前に乳房を差し出した。

「はい。吸って」

兄の目の前にはピンク色の大きな乳首。
光の無い目でそれを捉えた兄は疲弊した顔を横に逸らし少しでもその乳首から口を遠ざけようとした。

「吸わないとまたおっぱいに押し付けるよ」

ぐいと引き寄せられた顔はその頬に乳首を押し付けられた。
咥えられ感じて硬くなった妹の乳首は兄の頬にグリグリとめり込む。
頬を打つ突起の存在を感じた兄は慌てて背けていた顔を戻し妹の乳首に吸い付いた。
口を大きく開けて柔らかい肉の球体に被りつき、なんとか口の中に収めた乳首を力の限り吸い上げる。
まるでゴム鞠に吸い付いているかのような感触。頬が痛くなる。
それでも兄は、一心不乱に妹の乳房を吸い続けた。

従順に自分の乳房に吸い付く兄を見下ろす妹。
左の乳房だけを左右から両手で持って自分の乳首を咥えている兄のその様はまるで赤子の様だった。
必死になって口を動かし んくんくと吸い付いている。
妹は穏やかな笑みを浮かべながらその頭を優しく撫でた。

暫く兄を吸い付かせていた妹はやがてその兄の脇の下に手を滑り込ませ軽々と持ち上げるとベッドの上にゴロンと寝かせた。
白いベッドの上に仰向けに寝転がされる兄。
その上に四つんばいになって兄の体を跨いだ妹が覆いかぶさる。
巨大な乳房が重力に引かれて胸板からぶら下がった。
大きくブルンと揺れた乳房は妹が両手を伸ばして兄の上に被さっているにもかかわらずその兄の胸板まで届き兄の乳首に自分の乳首をこすり付けていた。
黒い髪がカーテンの様に妹の頭から垂れ下がる。
兄の見上げる先、妹の顔は笑っていた。

「あたしのかわいいお兄ちゃん、大好きだよ」

言うと妹は上体を下ろし始めた。
妹の顔が降りてくる。
同時に兄の胸板に妹の乳房が下ろされずっしりとのしかかった。
ゆっくりと降りてくる妹の唇が僅かにすぼめられる。
そして、兄のそれと重なった。

兄の抵抗など空しかった。
妹の巨体をどれだけ押し返そうとしても、その体は降りてくることをやめなかった。
胸にのしかかってきたその乳房のあまりの重さに兄は息苦しさを覚えた。
物凄い重量感は兄の胸を圧し潰し肺から空気を吐き出させる。
そして口は、艶かしく煌く妹の唇によって塞がれていた。
兄がきつく唇を閉じても、歯を食いしばっても、妹の舌はそれらを易々とこじ開けて強引に兄の口の中に侵入してきた。
嫌がり逃げ惑う兄の舌に無理矢理絡み付き強制的な愛撫を行う。
互いの鼻は交差し、お互いの鼻腔から吐き出された空気を吸い合った。
きつく閉じられ涙を浮かべる兄の目とは裏腹に、そっと閉じられまぶたの裏に兄を感じ吟味する妹の目。

唇が離され、互いの舌の間に糸を引く。
妹の体はゆっくりと前に進んだ。
兄の上を妹の体が進んで行く。
そして二つの乳房がその上に来たところで止まり、再び降下してきた。
兄の頭の左右に巨大な乳房が下ろされた。頭ほどの大きさのある乳房が。
それらは兄の頭を左右からぎゅうぎゅうと挟みこむ。
すでに胸板まで押し付けられていた兄の頭は文字通りその深い谷間に埋められていた。
肉に挟まれ変形する兄の顔。
その巨体は遠慮無くのしかかったため、兄の体はベッドに埋没していた。
肉は隙間無くみっちりと兄の顔を包み込んだため、兄は息をすることができなかった。再び暴れる兄。
だが妹は、兄が息苦しさに暴れるその動きを、その兄の体に押し付けた股間で感じ愉しんでいた。

再び兄が動かなくなる寸前で妹は押しつけを解いた。
そして兄の体を抱いてベッドの上をごろんと転がる。
今度は妹が下になり兄がその上に被さる格好となっていた。
妹の大きな体に乗っかり息を切らす兄。
その息が妹の胸板を撫ぜ、谷間を吹きぬける風となる。
自分の胸の谷間に顔を埋める兄の頭を見下ろしくすっと微笑む妹。

「おやすみ、お兄ちゃん♪」

そして疲労から動けない兄を抱いて、妹は小さな寝息を立て始めた。


   
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 ~ 10倍 ~

家よりも大きな姉を屋根の上から見上げる弟。
出るとこは出て引っ込むところは引っ込んだ姉の体は黒いビキニによって覆われていた。
その姉が身を屈め、屋根の上にいる弟に手を伸ばしてきた。
長い指は弟の襟首を摘むと軽々と空へ持ち上げた。
弟の顔の前には、自分の身長よりも大きな姉の顔。
強気な視線を自分に向け、にやりと笑う。

「じゃ、お願いしようかしら」

言うと姉は自分の右の胸のトップを覆うビキニをずらした。
その向こうから特大の乳房がブルンと躍り出る。
自分の視界の下で踊る様に揺れる乳房に顔を赤らめる弟。
そして弟を摘む手はゆっくりと下ろされてゆき、やがて弟の目の前にはあの巨大な乳房が現れた。
両手を回しても掴む事のできない大きさ。家の部屋一つを埋め尽くしてもまだ足りない。
まるくて白い肉の球体にぽつんとある乳首の大きさですら弟の顔の倍以上の大きさがあり、乳頭は顔よりも僅かに小さい程度。というよりほとんど同じ大きさである。

そんな巨大な乳頭を両手で掴む。
そのまま力をこめてぐいぐいと動かすのだ。
とてもじゃないが乳房全体を愛撫する事はできない。こうやって乳首に手を添えるだけで精一杯なのである。

胸の前に吊るした弟が自分の胸に愛撫を始めたのを見て姉はうんうんと頷いた。
そしてそこにあった誰のものとも知れぬ家の上にゆっくりと座る。
アンテナの類は巨大な尻の下敷きとなりへし折られ潰された。
家全体がミシリという音を立てたが、なんとか姉の体重を支える。

住民が慌てて外に走り出してきた。
彼の見上げた先には、我が家の上にズンと座り込み男に胸を触らせる大きな女の姿。
軽く広げられた足は住民の左右に下ろされ、左足は彼の愛車をスクラップにしていた。
股の間から見上げるような感覚、玄関は女の股の間にあった。
住民は手を振り抗議の声を荒げるがその巨大な女はまるで見向きもしなかった。

乳首に感じるもぞもぞした感触。
大きな快感にはならないが、これがいいのだ。
自分の大きな胸を前に小さな弟ががんばっている姿が微笑ましかった。
その姿を見る事が第一であり、快感を得ることは二の次なのである。
快感は、他で得ればいい。

と、見下ろせば自分の足元で騒いでいる男がいる。
お隣さんだったか。よく覚えてない。
自分の足の長さも無い小さな体でちょこまかと暴れ罵声を発している。
そうだ。最初はこの男にしよう。
にやりと笑った姉は弟を右の乳房に押し付け、その上からビキニを着け直した。
弟は背面からビキニによって押さえつけられ、意図せずして乳房に大の字になって張り付く格好となった。
三角形の布は弟の体をほとんど覆い隠し、そこから出ているのは広げられた両手足のみである。
少し胸を揺らし、弟の体がビキニによってしっかりと抑えられているのを確認した姉は、身を屈め、足元のお隣さんに手を伸ばした。
お隣さんの男は、お隣さんである巨大な姉が自分に向かって手を伸ばしてくるのに気づき慌てて逃げようとしたが、左右は巨大な足が下ろされておりどちらにも逃げる事ができなかった。
手はあっという間に男を掴み上げ、身を戻した姉の顔の前まで連れて行った。
ちなみに、姉が身を屈めた時、胸板からぶら下がる形となった乳房と押さえつけるビキニによって挟まれた弟は、その乳房のあまりの重量にパタパタと暴れていたりした。
その膨大な質量をもったお乳の肉球は片方でも1t近い重量があるのだ。とんでもない重さである。乗せられれば車ですら変形してしまう。一応、姉も気をつけてはいるが。
姉は手に掴んだ男の顔を見つめていた。中年のおじさんだった。皺の刻まれ始めた顔と黒縁の眼鏡。そして握る手に感じるややふっくらとした体。
逆に男は姉の顔を見つめていた。見てくれは美人である。キレた目と高い鼻。淡い紅色の唇には胸さえ高鳴る。だが今、彼の胸が高鳴るのはその唇を見つめたからではなく、その巨大な手に握り締められ持ち上げられているという現実からだった。
自分の顔を見つめ怯える男をしげしげと観察していた姉はフーと鼻から息を吐き出した。彼にとってはその間 呼吸をできないほどの突風だった。

「おじさんは趣味じゃないんだけど、この際 誰でもいいわ」

お人形のような男を掴んだまま、姉は空いている手で弟のいない左の乳房を覆っているビキニをずらした。
その向こうから右と同様、巨大な乳房が大きく揺れながら現れる。
姉は、右手に男の頭を持ってぶら下げ、左手で左の乳房を持ち上げた。男は巨大な指に頭部だけで吊るされ悲鳴を上げながら暴れている。
そして、その男の顔を乳首にこすりつけた。

その瞬間、男の悲鳴は尋常ならざるものになった。
例えふかふかの羽毛布団でも思い切り押し付けられれば痛みを感じる。
いくら柔らかいと言っても、乳房には弾力があり乳首には張りがある。
きめ細かくツヤツヤした肌も、決してただプニプニとへこむだけではない。
彼の十倍の体躯である姉の体は強靭だ。
男は、その姉の乳首にこすり付けられ、まるでヤスリに掛けられるように、顔面を削られていた。
強靭な乳首の皮膚は、男の鼻の骨を粉々に砕き、皮を破き、目を磨り潰し、歯をへし折った。
骨が露出し、大量の血が乳首に付着する。
男が大きく暴れるが、姉の手はびくともせず、妖艶な笑みを浮かべた姉は男を擦り付け続けた。
乳頭の周りを円を描くようにコリコリと。
男の頭部はどんどん磨り減っていった。

その男の悲鳴は、隣の乳房にいる弟には届かない。
巨大な乳房と巨大なビキニに包まれた空間には、外の音は一切届かないのだ。
聞こえるのは貼り付けられた巨大な肉球の奥から僅かに聞こえる心臓の音のみ。
ドクンドクン。膨大な量の脂肪に遮られくぐもる様に聞こえるそれだが、それは弟の鼓膜を揺るがし、確かに脳にまで届いていた。
規則的な重低音は、安心感すらも乗せて弟の鼓膜を叩く。
はりつけられた乳房に感じるぬくもりと、子守唄のような心臓の鼓動は、弟のまぶたをそっと閉じさせた。

たった一人の娘の乳房。
左右のそれで起きている事は天地ほどに差があった。
右の乳房では弟が安らぎを感じて眠りにつき、左の乳房では男が激痛からのたうっていた。
天国と地獄。
それほどに違うものを、姉は自分の乳房で表現していた。

やがて、男が動かなくなっている事に気づいた姉はそれを目の前まで持ち上げてみた。
男の頭部は半分ほど磨り減り、顔面はなくなっていた。
壊れた人形を放り投げる姉。
左の乳房を持ち上げ、乳首についていた血を舐め取るとその上に三角の布を被せる。
水着を直した姉は、右の乳房を見下ろした。
黒い三角形の布からは細い手足だけが飛び出ている。そしてその右の乳房の表面に微かな呼吸を感じ、弟が眠っているのを知った。
微笑み手を伸ばし、ビキニの上から人形のような弟の体をそっと撫でる。

この世のすべての人間は自分の乳房を喜ばせるためにあり、この乳房はたった一人の弟を抱擁するためにあるのだった。


   
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 ~ 100倍 ~

  ずずぅうん!

    ずずぅうん!

高層ビルの乱立する都心部。
そのビルの谷間を巨大な全裸の少女が歩いている。
柔らかそうな茶色のショートヘアーが風に揺れ、両手にはそれぞれ白いビキニのトップとボトムを持ち、踏み下ろされる足はそこを逃げる人々を押し潰しアスファルトを陥没させ周辺のビルの壁面とガラスを粉砕する。

そんな彼女の胸板から飛び出すガスタンクの様に巨大な乳房。
歩行に合わせてゆっさゆっさと揺れ弾む肉球の乳首には二人の男が乗せられていた。
左右の乳首に一人ずつ。
ドラム缶より一回りも二回りも大きい乳頭の上になんとか跨いで座り込み乳輪へとへばり付いていた。
彼らの背後は高さ100mを優に超える断崖。吹き付ける風の冷たさが彼らの背筋を冷やす。
両手を広げて必死にへばりつく乳輪の温かさが逆に残酷だった。
弾む乳房の上。上に揺れた乳が下に向かって落ちるときの浮遊感に放り出される恐怖を感じ、彼らはガタガタと震えていた。
そんな二人を、歩きながら見下ろす少女。

「大丈夫ですか?」

二人は、震えながら上を見上げた。
自分たちを乳首の上に幽閉した張本人である少女が覗き込むようにして見下ろしてきていた。

「わたしのおっぱいに乗りたかったんですよね? ずっと見てましたもん。ちょっと恥ずかしいですけど、おじさんたちが喜んでくれるならいくらでも乗せてあげますよ」

少女はにっこりと笑った。
二人は涙を流しながら乳首にへばり付くしかなかった。

鼻歌を歌いながら歩く少女。
ビルの谷間の広い道路の上を、アスファルトを陥没させながら歩く。
ふと、その視界に大きなものが入ってきた。
それは、全面が鏡のようなガラスで覆われた超高層ビルであった。
高さは200mに達するだろうか。少女よりも高かった。
それを見てピンと来た少女は、横にあった胸の高さほどのビルに、自分の乳房を乗せた。
ずっしん!
二つの肌色の丸っこい肉球が、ビルの屋上の大半をその下敷きにして、そこに安定した。

「すみません。ちょっと降りててください」

少女は言った。
乳首に乗せられていた二人は何事かと思ったが、やっとこの肉の檻から開放される喜びに、転がるようにしてそこから屋上へと降りた。

「待っててください。すぐ戻ってきます」

にっこりと笑った少女は胸をビルから持ち上げ、あの超高層ビルに向かって歩いて行った。
二人は安堵しながらも引きつった笑みを浮かべていた。
当然、待っているつもりなど無かった。
とっととここから降りて、もっと遠くへ逃げるつもりだった。

そうやって駆け出そうとしたところで、二人は凍りついた。
ビルの屋上は、あの巨大な乳房が下ろされた事で、その大半が押し潰され抉れる様に崩れていた。
無造作に降ろされた乳房の形に、丸く崩れているのである。
それは数階層に渡っていた。覗き込めば3階層は下の階がむき出しになって見えていた。
3階層分の瓦礫が積もっている。オフィスだったのか、机などがたくさん見える。そこにいる人々の姿も見えた。けが人も大勢出たようだ。
二人は改めて屋上を見渡した。ほとんどが潰れ崩れ去ったこの屋上には、あるべきものが無かった。
階下に下りるための階段が、どこにも見当たらなかったのである。
あの乳房の一撃で潰されてしまったのだろう。
となると、降りるためにはこの抉れた部分を階下に向かって飛び降りるしかなかった。
だが鉄筋のむき出しになったビルを飛び降りるのは恐怖だった。
階下の階層も瓦礫に溢れひび割れており、安全に飛び降りられる場所なんて無かった。
更にこのビル自体も100mを超える高層ビルであり、いくら数階層とは言え、着地に失敗したらあとの数百mを転落するかも知れないと思うと、とても飛び降りる勇気は出なかった。
二人は、力無くへなへなと狭い屋上に座り込んだ。
陸の孤島。摩天楼である。
二人は結局逃げられないのだった。
すべては、少女が無造作に降ろした、片方の重量1000tの乳房のせいであった。

二人を降ろした少女は、例の超高層ビルに歩み寄っていた。
その鏡のように光を反射するガラスには、自分の一糸纏わぬ姿の全身が映し出されていた。
思わぬところで見つけた姿見に、少女はくすっと微笑んだ。
そして壁面の直前まで顔を近づけて見る。
自分の顔で光を遮り、反射がなくなったところでようやくガラスの向こうを見る事ができた。
小さな小さな人間たちが慌てて逃げてゆく。
まぁ、それはどうでもよかった。
顔を離し、手で自分の胸を持ち上げて見る。

「もう少し大きかった方が良かったでしょうか…。あのおじさんたちも、あまり喜んでなかったですし…」

少女は鏡に映る自分の胸を見つめながら呟いた。
不意に少女は片手を胸から外し、人差し指を伸ばしてそのビルに近づけて行った。
そして自分の胸の高さほどの階層のガラスに突っ込むと、そのまま指を横に動かしたのだ。
バリバリバリバリバリバリバリバリ!!
指の動きに伴ってその階層のガラスが砕けて行った。
途中、鉄筋などで窓枠が区切られているところもあったが、少女の指は、そんな事関係なく、横一文字にガラスを粉砕して行く。
やがてその階層だけガラスが無くなった。
その部分に胸を近づけて、言う。

「みなさん、わたしの胸はどうですか?」

実際のところ、少女の胸はその体のサイズに合わせるならGカップに届く大きさである。
そしてそれが100倍の大きさの少女のものとなると、それは凄まじい大きさだった。
少女はガラスを破り、中の人たちに意見を聞こうとしたのだが、誰一人としてそのガラスのところまで出てこない。

「?」

身を屈めて覗き込んで見ると、人々はビルの奥にある階段やらエレベーターへ我先にと駆け込んでいた。
大渋滞が発生し、押し合い圧し合いの大混乱だった。
ガラスが割れ、悲鳴も聞こえてくる。

「どうしたんですか?」

少女の声がガラスを揺さぶる。
巨大な少女が窓の向こうから覗き込んでいる事に気づいた人々は更に慌て始めた。

「もしかしてガラスのそばに来るのが怖いんですか? わかりました。じゃあもっと胸を近づけますね」

言うと少女は体勢を直し、そのビルの背面に腕を回した。
抱きつくような格好。
壊してしまわないようにそっとビルを腕の中に抱き、そして胸をビルに押し付けた。

  バキバキバキバキ!

押し付けられた乳房はガラスと壁面を破り、ビル内部へと押し進んで行った。
床も壁もその柔らかい肌色の肉球の前に砕け散りゴリゴリと削られてゆく。
数階層に渡って、巨大な乳房の侵入で破壊が進んでいた。
人々は更に大きな悲鳴を上げた。
恐ろしく巨大な乳房が、床も壁も天井も砕きながらビル内部へ侵入してくるのだ。
オフィスに置かれていた無数のデスクも乳房に肉壁にぶつかって砕け散り、乳首はそこに置かれていた棚などを押しのけながら進んでくる。
四方の幅およそ50mほどのビル。乳房はその半分ほどの深さにまで押し込まれていた。
あの人々が押し合っていた階段などは、すでに乳房の間である。
両面を、巨大な肌色の壁が埋め尽くしていた。
少女は、その更に上階のガラスの壁面に頬を押し付ける格好だった。
周囲からは、ビルに抱きつく少女の姿を見る事ができていた。

「さぁ、触ってください」

少女は言った。
だがいつまで経っても胸に何かが触れる感触はしない。
この頃人々は、瓦礫と胸の間に挟まれながら、止まったエレベーターを諦め、必死に階段を塞ぐ瓦礫をどかしていた。

少女はビルを抱くのをやめた。
腕を解き、一歩後ろに下がる。
あのビルに押し付けられていた巨大な乳房も、ズズズズ…!という重々しい音と共に穴の向こうへと出て行った。
人々には、大穴から外の様子を窺う事ができた。
下がった少女は自分の胸の穿った穴を覗き込む。
穴はビルの壁面に大きく二つ穿たれており、そこにはビルの階層の断面を見る事ができた。
それぞれの階に人の姿が見つけられる。
人がいたのは事実。しかし誰も自分の頼みを聞いてはいなかった。
腰に手を当てた少女は眉を吊り上げていた。

「人が頼んでるのに無視するなんて失礼ですよ! わたしは本当に気にしてるんですから!」

少女は、自分の胸が穿った穴に手を伸ばすと、その向こうにいた人間を二人ほど摘みあげて攫っていった。
目の前に持ってこられる手。
指の間には二人の人間が摘まれていた。

その人間を左右の乳首に一人ずつ下ろし、そして、横のビルの上に置いといたビキニのトップを手に取るとそれを着けた。
乳首に乗せられた二人の人間は、その巨大な小さい三角形の布に覆われ、外からは見えなくなった。
しっかりとビキニを着けた事を確認した少女は自分の胸を見下ろし、そこにいる二人の人間に言った。

「わたしの胸がどうなのか、ちゃんと確かめてもらいますからね」

そして少女は、胸を上下に揺らし始めた。
するとトップを覆う白い布の向こうから悲鳴が聞こえてきた。
ゆっさゆっさと揺れ弾む巨大な乳房は、その乳首に乗る小さな人間にとっては物凄い質量を持ち、上下の際の重力は凄まじいものとなる。
次に胸は左右に揺すられた。
横向きの重力が彼らに襲い掛かり、彼らの体を軋ませた。
目が陥没するような遠心力だった。
もしもこのビキニが無ければ、二人はあっという間に乳首から放り出され、周辺のビルの壁面に叩きつけられ飛び散っていただろう。
ぶるんぶるんと揺らされる乳房の二人の悲鳴は、ドップラー効果さえも引き起こしていた。
乳首に僅かな感触を感じる。
そこにいる人間が暴れているのだろうか。
ちょっと気持ちよかった。
そして調子に乗って乳房を横に思い切り振ったとき、その乳房があの半壊した超高層ビルにぶつかってしまった。
ビルはハンマー顔負けの凄まじい重量の乳房に激突され、着弾点はまるで爆発するように吹っ飛んだ。
上層部は思い切り吹っ飛び、下層部も横に動いたときの少女のお尻にぶつかられガラガラと崩れ去った。
自分の姿見にもなってくれたビルが瓦礫になって崩れてゆく様を、少女は口に手を当てながら見つめていた。

「あらら、やっちゃいました…」

足元にはそのビルが瓦礫の山となって存在していた。
まだ中にいた人間はどうでもいいが、姿見が壊れてしまったのは少しショックだった。

「仕方ないです…また次のビルを探しましょう」

少女はビルの上に置いてあったボトムを手に取るとそれを履くために上体を前に倒した。
すると乳首に感じる感触が大きくなり、同時に悲鳴も鋭くなった。

「あ。すみません。ちょっと重かったですか?」

ある程度軽減されるとは言え、1000tの乳房にのしかかられれば無事で済むはずも無い。
二人の人間は、ビキニと乳首の間に挟まれ金切り声のような悲鳴を上げていた。
そんな悲鳴を聞きながらもボトムを履き終えた少女。
少女が身をかがめている間、二人の人間の悲鳴は聞こえ続けていた。
自分の乳房の重さに悲鳴を上げる二人の人間に、少女は不満を言う。

「もう。ちょっと大げさじゃないですか? わたしのおっぱいはそんな重くありませんよ」

そして仕返しとばかりに、身をかがめたまま胸を左右に揺すった。
すると二人の悲鳴は更に大きくなった。
人間の、それとは思えないくらいに。
実際、今、二人の体はビキニと乳首の間でミチミチと音を立て、腕や脚、肋骨などがいくつか折れている状態だった。
乳房が左右にぶるんと振るわせられるたび、体のどこかで骨が折れる。
二人は目を見開き血の涙を流しながら、巨大な乳房にのしかかられ乳首にへばりついていた。
そんな二人の絶望具合など気づいていない少女はくすくす笑いながら乳房を揺らし続けていた。

「ほら、そんなに重くないですよね? 女の子に体重を気にさせたらダメですよ。わかりましたか?」

性格には体重ではなく乳重だったが。
全体重なんて必要ない。乳房の重さだけで、二人の人間が瀕死に追い込まれていた。

「さて、そろそろ移動しましょうか」

少女は上体を起こし、ビキニ位置などを微調整していた。
そして足を軽く開き、大きく伸びをした瞬間だった。

  ぷちゅ ぷちゅ

乳首に、何かが弾ける感触。
同時に、白いビキニがじんわりと赤く染まり始めた。
ビキニをずらしてそこを覗き込んで見ると、そこにいた人間の姿は見えず、真っ赤に染まったビキニと乳首だけがあった。

「潰れちゃいました…。ちょっと胸を張っただけなのに…」

ビキニを外し血に染まった乳首を見下ろす少女。
暫くそれを見て呆然としていた。
やがて歩き出した少女は別の高層ビルに近寄り、その壁面に乳首をこすりつけ始めた。
ゴリゴリゴリゴリ。
乳首と乳房がビルの壁面を削りながら押し付けられる音が響く。
胸が離されると、ビルの壁面は削り落とされ内部が見えるようになっていた。内部の人々が悲鳴を上げて中に避難して行くのが見えた。
そして乳首についていた血はほとんど落ちてもとのピンク色を取り戻していた。

少女は血に染まったビキニのトップをそのビルの上に置いた。
小山の様な乳房を支えるトップである。それはビルの屋上の大半を覆った。
ビキニのボトムだけとなった少女は、例の二人を待たせているビルへと向かって行った。

二人の男はなんとかそのビルの屋上から降りようとしていたがやはり踏ん切りがつけられないでいた。
するとあの規則的な地震が近づいてきた。
見れば、あの巨大な少女が戻ってきたのだった。
その少女は二人のいるビルの前に止まった。

「お待たせしました。さぁいきましょう」

にっこりと笑った少女は、左右の手で男を一人ずつ摘み上げると左右の乳首の上に降ろした。
再び乳首にへばりつく事になった男たち。
そんな二人を見下ろしながら少女は言う。

「わたしのおっぱいが好きって言ってくれたのはおじさんたちだけですよ。これからもちゃんと大事にしてあげますからね。いつまでも乗せててあげますよ」

少女は二人の背中を撫で、それで男たちは乳首に埋められるような形になった。
二人の男を乗せたまま、少女はビルの谷間を歩いて行った。


   
   ---------------------------------------
   


 ~ 1000倍 ~

街。
たくさんのビルが乱立しその合間を車が行交う。
道には人々が溢れ、ある者はスーツを着込みハンカチで汗を拭きながら、あるものは友人らしき者たちと楽しく話しながらそこを行く。
人間模様色々。
そんな様子はいつもの事で、街は有り触れた日常を送っていた。

その彼らの上に、突如として巨大な足が踏み降ろされた。
足は周辺のビルを砂細工のように容易く踏み砕き粉砕した。
そこにいた人々は悲鳴を上げる間もなくその足の下に消えて行った。
足はすぐに持ち上げられ、砂塵を巻き上げられたそこには、長さ240mにもなる巨大な足跡が残されていた。
周辺のビルは衝撃で崩れ去りまるで爆弾でも爆発したように吹っ飛んでいる。
足跡の中は凄まじい体重がかけられ、ビルなど砕かれたものが究極まで圧縮されていた。
持ち上げられた足は、どこかへと行ってしまった。
足は、ただ歩くためにここに降ろされたに過ぎない。
その無造作な一歩が、数百人を踏み潰していた。


  ずしぃいいいいいいいいいいいいいん!!

    ずしぃいいいいいいいいいいいいいいいん!!

巨大な素足が次々とビルを踏み潰す。
ビルはあの巨大な足のくるぶしにも届かない高さであり、足にとってこの街など小さな箱が並べられているだけの場所だろう。
足が地に着くたびに大地震が巻き起こり街中の人々を地に転がした。
転んだ人たちが体を起こし上を見上げたときにはそこに巨大な足の裏が迫ってきていた。
足の指がすでにビルのように大きい。親指の太さは20mはあり7階建てビルにも匹敵しそうだ。
そんな巨大な足の裏は彼らの周辺に建つビルの屋上を砕きながら地に迫ってくる。それはあまりにも速く、人々は頭を抱える暇も無かった。

たくさんのビルと無数の人々を踏み潰しながらズンズンと歩く少女。
ツインテールが風に靡き、歩行に合わせて大きな胸がゆさゆさと弾む。
一糸纏わぬ姿は陽光に照らされ健康的に輝いていた。
少女は自分の足の下であっさりと潰れて行く小人たちを思って鼻を鳴らした。

「グズなチビね。踏まれたくなかったらとっとと逃げればいいのよ」

言いながらも足元に注意を払うそぶりは見せない。
次の一歩は大きく踏みにじるように動かされていた。

やがて少女は足を止めた。
少女の足元と視界には大きな街並みが広がり、一面をビルが埋め尽くしているようなものだった。
目的の場所。これだけあれば遊ぶものに困らないだろう。
少女はにやりと笑ってそこに腰を下ろした。
山ほどに巨大な尻がそこにあったビルを押し潰して行った。
軽くあぐらをかいて座る少女。
周囲のビルは、横になった少女の足の太さほども無かった。

周辺のビルから一つを選び、それを掴んで持ち上げた。
少女の手の上に無造作に転がされたそれは20階立ての高層マンションだった。
高さ60m。幅は70mはありそうだった。
暫く手の中でそれを転がしていた少女だが、やがてそのマンションをぐしゃりと握り潰した。

「品の無い家。最初はもう少し小さくても良いわね」

言うと少女は今度は10階建てほどの小さなビルを摘み上げた。
高さにしておよそ30m。少女の足の指とほとんど同じ大きさのビルだった。
それを目の前に持ってきて観察すると、ビルの壁面に無数にある窓の奥に、小さな小さな人間がいるのが見えた。自分が摘みあげる前に逃げられなかったのだろう。

「ふーん、逃げられなかったんだ。ま、それはのろまなお前たちが悪いのよ」

少女は指先に摘んだ細長いビルを軽く振った。
この軽くと言うのはあくまで少女にとってという意味で、実際は天地が逆転するほどの回転を超高速で行われていた。
中にいた人間たちは最初の一振りで壁や床、天上に叩きつけられ全滅していた。
窓を割って外に飛び出て行った者までいた。
だが座っているとは言え、少女の目の高さは地上数百mであり、パラシュートも無しに飛び降りて無事で済む理由は無かった。

ビルの中の人間を残らず駆除した少女は、そのビルを自分の乳首にあてがった。
ビルの高さは、乳首の直径よりも低かった。

「くくくく、チビどもにとって大きなビルがあたしの乳首より小さいなんて。ほんと、バカみたいな小ささね」

そして少女はそのままビルを乳首にこすりつけた。
10階建てのビルはあっという間に崩れ去り、地上へと落下して行った。
また別のビルを引っこ抜いて乳首に当てて擦り潰す。
降り注ぐ瓦礫に混じって無数の人間が悲鳴を上げながら落ちていた。
次々とビルを地面から毟り取り乳房に押し付ける少女。
先ほどのマンションのような大きさのビルを手に持ったまま自分の乳房を揉みしだいた。
ビルは手と乳房の間であっという間に瓦礫になり、更にそのあと揉みまわされた事でより細かく磨り潰される。
中に人がいようがいまいが関係なかった。
少女の手に乗せられたビルにいた人々は相対的に自分たちに向かって接近してくる山のように巨大な乳房に恐怖し悲鳴を上げていたが、その悲鳴も、少女がビルを胸に押し付けた瞬間聞こえなくなった。
すでに十数のビルが消費され同時に無数の人間が犠牲になっていた。
また小さなビルを摘み上げ、その屋上の角で乳首を円を描くようにコリコリと擦りながら、少女はほくそ笑んだ。

「あ…ふぅ…、くく、脆過ぎてあまり感じないけど、そこにチビがいると思うとやっぱり楽しいわ」

こすり付けていたビルの基盤部分を指の腹で押さえ、屋上部分を乳輪に押し付けた。
そして一気に押し潰す。
ビルの一階と屋上が、一瞬にして一つになった。

別の小さなビルを摘み上げた少女は今度はそのビルの上層部を人差し指の爪を差し込んで抉り取った。
上層部が無くなり、内部があらわになったそこにはまだ数人の人間が残っていた。
それを目の前まで持って行く。

「いたいた。はぁいおチビさん」

上層部を取られたビルの屋上となったオフィスで、残っていた人々は体を震わせて抱き合った。
目の前には、このビルを覗き込む大きな池のような瞳があった。
キョロキョロと動き、ぱちくりと瞬きをするそれは確かに目であった。
たった一人の巨人の片目が、残された人々の視界を埋め尽くしていた。

「うーん、ダメね。どんなに目を凝らしても顔なんてぜーんぜんわかんない。あたしから見たらお前たちなんか砂粒みたいなものだけど、お前たちから見たらあたしはどんな風なのかしら」

立ち上がれば少女は1600mというとんでもない大きさになる。
座っていてもその全高は数百mだ。言うなれば文字通り、山であった。
今、この巨人はビルを二本の指で摘んでいる。建築物であるビルをだ。摘んだ上で目の前まで持ち上げ、それを上から覗き込んでいる。
指の太さは15mはあるだろうか。このビルとほとんど変わらない。だが長さはビルの倍はある。人差し指だけでこのビルよりも大きいのだ。そんな塔のように巨大な指でビルをひょいと摘み上げ目の前で観察している。
そのオフィスにいる人々と少女の大きさの違いは明らかだった。人々から見れば視界を埋め尽くす少女の顔だけでも山のように巨大であり全容を見る事すら不可能だ。
このビルにいる人間が力を合わせたところで、この少女に敵わないのは火を見るより明らか。少女どころか、少女の手の指一本にも、睫毛一本を歪ませる事もできないだろう。
例えばこのビルの人間全員が、この視界を埋め尽くさんばかりに迫っているあの巨大な目の周りの上睫毛にそれぞれしがみついたとしても、少女はその重さを感じる事無く容易く瞬きできるはずだ。
ぱちぱちと。
片目の睫毛の上に十数人を乗せているにもかかわらず、何の抵抗も無く。
逆に、睫毛に乗せられた人々の方が、その高速で上下する睫毛に翻弄され、捕まっている事ができないかもしれない。
たった1回の瞬きで、全員が宙に放り出されてしまうかもしれない。
少女と人々の力の差はそれほどの大きなものである。

やがて少女はビルを目の前から外し、左胸の乳首にあてがった。
人々の目の前に、このビルよりも巨大な乳首が現れる。ピンク色の流線型が、日に照らされて光っている。
開けた屋上部分が、乳頭の脇に添えられた。

「乗りなさい」

少女の声が轟いた。
人々は怯えながら少女の顔を見上げた、乳首の前からだと、豊満な乳房の丸みに遮られ、少女の顔を見る事はできなかった。

「さっさと乗らないと潰すわよ」

そんな声が響くと同時に、もう片方の手に別のビルが摘まれて彼らのいる左胸の前に持ってこられた。彼らのいるビルより大きなものだった。
高さ50m幅20mというビルだった。それが手の中に軽く握られたかと思うと、

  ぐしゃ!

あっさりと握り潰された。
長く巨大な指の間からビルの瓦礫が零れ落ちる。
握られた手が小指から順に開かれると、そこからビルの瓦礫がサラサラと地面に落ちて行った。
開かれた手には、ビルの面影などまるで残っていなかった。

それを見せ付けられた人々は悲鳴を上げながら乳首の乳頭の上に降りた。
先に愛撫されていて少々ツンと飛び出たそれには、人々は余裕で降り立つことができた。
丸みを考えなければ10m以上の幅と広さがあるのだ。
ビルに残っていた十数人全員が、左胸の乳頭の上に降りる事ができた。

全員が降りられたであろう時間を見計らって少女は摘んでいたビルを捻り潰した。
覗き込む事はできないが、乳頭に無数の小さな動きを感じていた。
それが小さな人間が乗っているからだと思うと気持ちが高揚し、乳首は更にむくむくと大きくなった。
今頃は必死に乳輪や乳頭に這い蹲るようにしてしがみつき、落ちないように必死になっているのだろう。
自分の片方の乳頭の上に何人もの人間が乗っている事実。
少女は腹を抱えて笑いたいのを堪えていた。

「くくく、さぁチビたち。わかってると思うけど、今お前たちが乗ってるのは私の乳首の上よ。お前たちには私の乳首を愛撫して私を気持ちよくする義務があるわ。できないとそこから振り落とすからね」

人々は顔が引きつった。
一方はピンク色の壁に世界を占領されているが、もう一方は高所からの街並みを見下ろせていた。
それは自分たちのいる場所が、数百mの高みにあるという事であった。
こんな場所から振り落とされれば確実に助からない。
人々は悲鳴を上げながら思い思いの方法で足場と壁である乳首に刺激を与えた。
ある者は乳輪の壁を両手の拳で殴りつけ、ある者は足場である乳頭をガンガンと踏みつけた。
這い蹲り、足元に噛み付いている者までいた。座り込み、泣きながら足元の乳頭を殴りつけている者もいた。その拳からは血が流れていた。

乳首にツンツンという小さな小さな刺激を感じて、人々が自分の言うとおりに動いた事に満足した少女。
当然、こんな刺激では大して感じられないが、十数の人間をそこに乗せ自分の命令で動かしていると言う圧倒的な力の実感が、快感となった。
少女は胸を揺らさぬよう傾けぬよう慎重に手を伸ばし地面からビルを引っこ抜くと、それを人の乗っていない右の乳房へと運びそこで揉み潰した。
人々を思い通りに動かす事も、ビルを揉み潰す事も、少女にとっては実に簡単な事だった。

そうやってビルと人々を使い、自分の力強さと支配力に浸っていた少女だったが、ふと、あぐらをかいた自分の足に爆ぜるものが当たっている事に気づいた。
何かと思って周りを見てみると、正面の、ビルとビルの間にできた公園のようなところに、いくつかの黒い豆粒が集まっていた。
戦車である。
それらから放たれる砲弾が、自分のふくらはぎのあたりに命中していた。
ポッ という小さな爆発と共に何かが当たったような感触。もちろんの事、痛みは感じなかった。
そんな戦車の存在を認めて、少女はにやりと笑った。

「あはは、なにそれ。もしかしてあたしと戦うつもり? それとも倒そうとか思ってる?」

少女の嘲笑が街に響き渡るが、戦車からの攻撃は止まなかった。
不規則な間をおいてポンポンと砲弾を放ち続けている。
それらはほとんどがあぐらをかく足に命中し、うまくいったものは少女の腹にまで届いたが、少女は痛みに顔をゆがめるどころか、それらを払うそぶりすら見せなかった。
腹の砲弾が命中した場所をぽりぽりと掻いた。

「もう、くすぐったいわよ。ふふ、いいわ。そんなに相手してほしいならしてあげる」

言うと少女はあぐらをかいて座っていた上体から前へと乗り出し四つんばいになった。
もちろん、このときには、左の乳首に乗せられていた人々は皆 放り出され街に落ちて行ったが、少女はそんな事 気にもしていなかった。
四つんばいなった少女はハイハイで戦車に向かって進んで行った。
巨大な手と足でビルを押し潰しながら。
頭から左右に垂れるツインテールは、引っ張られながらビルなどを巻き込み引きずり倒していた。
そして胸元からは山のような巨大な乳房が垂れ下がり、ハイハイに合わせてゆっさゆっさと揺れていた。
左右の乳房がぶつかり合い、ばいんばいんとお互いを弾く。
戦車たちは少女の接近を悟って後退を始めたが、はいはいの少女はその動きよりも遥かに速くあっという間に戦車に追いついた。
公園の周囲は100m級のビルに囲まれているが、それら丸ごと四つんばいの少女の体の下に収められた。
逃げられなかった戦車たちの上空に超巨大な乳房がぶら下がっている。流石の戦車も、真上には攻撃できない。

「ほらほら、撃って御覧なさい。あたしを倒したいんでしょ」

笑いながら少女は彼らの上空で挑発的に胸を揺らした。
戦車たちは公園の広場で右往左往していた。
公園の周囲は林に。林の周囲はビルに。そしてビルの周囲はこの巨大な少女の手足に囲まれているのだ。
二重三重に囲まれてそこから動けなくなってしまっていた。

戦車からの攻撃が止んだのを悟った少女。
豆粒のような戦車が自分の影に包まれた公園の中で旋回を繰り返している様が良く見えた。

「あら、もう終わりなの? じゃあ今度はあたしの番ね」

少女は腕を曲げ、上半身を倒し始めた。
ゆっくりと降りる上半身。それは、ぶら下がる乳房の降下を意味していた。
山のように大きな乳房がゆっくりと降りてくる。
戦車たちの動きが激しくなった。
降りてきた乳房はまず周辺のビルにのしかかった。
ビルの屋上が乳房に当たり、乳房が僅かに変形して、ビルがその乳房を支える事に成功したようにも見えたが、次の瞬間にはその途方も無い重量に耐えられなくなり爆発するように崩れ去った。
周辺のビルは乳房にのしかかられて崩れて行った。もう、乳房の高さは100mも無い。
戦車たちの上空は巨大な乳房に埋め尽くされ、公園を覆う影は一段と濃くなった。
戦車だけではない。公園周辺にいた人々も、崩れ落ちるビルの瓦礫から身を守りながら更に上空から迫る巨大な乳房を見上げ悲鳴を上げながら逃げ惑っていた。

乳房にビルが当たり、それが乳の重さで崩れるのを感じながら少女は体を下ろして行った。
見下ろせば、自分の顔の下を無数の人間が走っているのが見えた。
あまりにも愚鈍な動き。ふぅっと息を吹きつけてしまえばその全員がゴミの様に宙に舞い上がるだろう。
だが今は、彼らなど眼中に無い。今の相手は戦車なのだから。
少女はじっくりと胸を下ろしていった。その下に戦車たちが来るように調節しながら。
そして、乳房が地面に触れたのを感じた。少女はそのまま体を下ろし続けた。
押し付けられた乳房が変形し、はみ乳となる。それは一両の戦車さえ逃さない乳房の折であった。
公園の大半が乳房の下に押し潰され はみ乳に呑み込まれた。巻き込まれた林の木々がへし折れる音が周囲に響く。
更に少女は、下ろした乳房をぐりぐりと地面に押し付けた。周囲がぐらんぐらんと揺れ動いた。
これにより乳房の下ろされた地面は更に硬く圧縮された。

「ん…もういいかな」

少女は体を起こした。
巨大な乳房が地面から持ち上げられぶるんと震える。
胸を下ろした公園だった場所には、巨大な二つの穴が穿たれていた。
そしてその中には、いくつかの潰れた黒い鉄くずがあった。戦車の成れの果てである。
凄まじい乳房の重量を受けほとんどぺらぺらになっていた。
自分の乳房を見下ろせば、そこは土とビルの瓦礫で多少汚れていた。その大きな乳房の表面には、地面のと同じように潰れた戦車がいくつかへばり付いていた。
公園に展開していた戦車は、少女の乳房の下で抹殺されてしまったのだ。
全滅した戦車たちを見下ろして少女は笑った。

「ご苦労様。街のためにがんばれてよかったわね。くくく、最後は無様におっぱいにへばりついてたけど」

言いながら少女は乳房にへばりついた戦車たちを、他の汚れと一緒に払い落とした。
そして視線を、公園の先へと向けた。

「この先はちょっと大きなビルが多いようね」

向いた先は都心部。200mを超えるビルもいくつか存在する。
立ち上がれば膝にも届かない小さなビルたちであるが、座ったまま遊ぶには丁度良い大きさだ。
少女は再び四つんばいになってそちらに向かって行った。

途中、何千という人々を押し潰しながら進んだ少女はそれら超高層ビル群の前にやってくる。
その内の一つ、200mのビルに目をつけてそれを先ほどの戦車たちと同じように四つんばいになった自分の体の下に来るよう移動した。
そして体を揺らし、その反復で胸板からぶら下がる巨大な肉球もゆっさゆっさと振るわせて、その200mのビルの側面にぶつけた。
瞬間、ビルは爆発するように飛び散り、残った下層部分がゆっくりと崩れ落ちて行った。
巨大な乳房はビルにぶつかった瞬間にもまったくその速度を緩めず、それは乳房がビルなどものともしない重量を持っていると言う事だった。
自分の胸をぶつけられあっさりと崩れ落ちたビルを見ながら少女はほくそ笑んだ。
更にそのまま20階建てぐらいのビルが密集する地帯の上にゆっくりと乳房を降ろした。
いくつものビルが集まっていたが、それらは全て集まっても乳房を支える事ができず、崩れてその下敷きになり白い煙を巻き上げた。

「くく、ごめんなさい。あたしの胸はお前たちには大きすぎるのね」

声に出して笑う少女。
その後も四つんばいのままビル群の上を歩き回り、揺れる乳房で次々とビルを破壊して回った。
街の誇る摩天楼たちは巨大な乳房によって大半が失われた。
時に持ち上げられ、上半身を起こした少女のその胸元に挟まれたものもあった。
片手で左右の乳房を抱え上げ、胸の間のビルをやさしく包み込む少女。
巨大な乳房の間にほとんどが隠れてしまっているが、それは60階立ての超高層ビルなのだ。
そして両腕で乳房を抱え上げキュッと抱きしめたとき、ビルは乳房の間でぐしゃりと潰れた。
腕を解くと、開かれた胸の谷間をビルの瓦礫がパラパラと落ちて行った。谷間に付いていた瓦礫も簡単に払い落とされた。
この巨大な少女本人の手にすら収まらない超巨大な乳房。それぞれが東京ドームを傘にできるほどの大きさだった。
つまり仰向けに寝転がれば、そこにはドームを超える肌色の二つの山が簡単に誕生してしまうのである。
逆にうつぶせになれば、乳房だけでドームを押し潰す事ができた。
すり鉢状のドームに乳房の先端が納まったかと思った瞬間、その内部は乳房でみっちり埋め尽くされ数万人の観客と選手が乳房の表面を彩る無数の赤いシミとなる。
そしてそのまま乳房はドームを押し潰し、そこにドームのすり鉢などよりも遥かに大きな大地の穴を穿つのだろう。
恐ろしいその乳房の重量は、片方だけでも100万tという計り知れないものだった。
それは、最大級の大型石油タンカーの最大重量トンの倍の重さに匹敵する。
言い方を変えれば、少女の乳房は限界まで積載した超大型タンカー4隻分の重量を持っているのだ。

そうやって乳房を使ってビルを粉砕していたら、その影にまだたくさんの人間が逃げているのを見つけた。
小さな小さな、砂粒のような人間がのろのろと走って逃げている。
今しがた自分が壊したビルの破片から身を守りながら。
そんな彼らを乱立するビルの上から覗き込んでいた少女の口元に笑みが浮かぶ。

「まだこんなところにいたの、おチビちゃんたち。あんまりとろとろ走ってるとあたしのおっぱいで潰しちゃうわよ」

言いながら少女は逃げる人々の集団の上に乳房が来るように移動した。
自分たちの上空にあの途方も無い大きさの乳房が現れたのを見て人々は更に慌てて走り出した。
それでも、少女から見れば大して速度は変わっておらず、追いかけるのは容易であった。

「ほらほら、がんばりなさい」

少女は彼らの真上で乳房を揺らした。
ゆっさゆっさと揺れ動く乳房は彼らの上空でうねりを上げながら揺れていた。
時折その乳房が周囲のビルにぶつかってそれを粉々に砕き、人々に悲鳴を上げさせていた。

人々は逃げ続けた。
それこそ、数分は走り続けたのではないか。
にもかかわらず、上空は相変わらず乳房に占領されていた。
走っても走っても、乳房はそこにあり続けた。
途中、逃げ切れなくなり地に膝を着いた者もいたが、そういった者は背後から迫る巨大な膝によって押し潰されていた。

はいはいでゆっくりゆっくりと追いかける少女。
実に楽な追いかけっこであった。
ちょっと乳房を下ろして彼らの上空すれすれを乳首が通過するように胸を揺らしたりするとその突風で人々の塊がばらけるのがまた面白かった。
触れるまでも無い。ただ胸を揺らしだけで彼らを恐怖のどん底に叩き落す事ができる。
自分の乳首にも敵わない、点のような人間たちのあまりの貧弱さに笑いがこみ上げてくる。

「あ~あ、そろそろ腕が疲れてきちゃった。もうこのままおっぱい下ろしちゃおっかな~」

わざとらしく明後日を向いて言う少女だった。
だがそこにいた人々は心臓が握り潰されそうな恐怖に駆られた。
そして見上げた先では、宣言通り乳房がゆっくりと降りてきていた。
すでにその高さは50mも無い。
人々の上空を巨大なピンク色の乳首が埋め尽くしていた。
泣き叫びながら逃げる人々。
だが無慈悲な乳房が、降下を止める事はなかった。

  ずっしり

乳房が下ろされた。
そのまま少女は膝を伸ばし、両手で頬杖を着く格好になる。
それでも、乳房はしっかりと地面に押し当てられていた。

「くくくく、残念でした」

伸ばされた足をぱたぱたとバタ足のように動かす少女。
丁度乳首の真下に集団の中央が来るように調節されていた。何十人といた集団は、片方の乳房の下に一人残らず押し潰された。
生き残った者は皆無である。

と、思われたとき、地に下ろされた二つの乳房の合間から小さな点がよろよろと出てきた。
乳房の真下におらず丁度の胸の中央にいたのが幸いしたのだろうか。
乳房が下ろされたときも、二つの乳房がぶつかり合い、僅かにできた隙間に入っていたのか。
頬杖を着いていた少女も、その生き残った人間に気づいた。

「あら? まだ生きてたの」

見下ろした先の点は走って自分から遠ざかろうと前に進んでいた。
ここはいわゆる空白地帯だが、前方にはまだたくさんのビルが残っている。
その影に逃げ込もうとしているのか。
だが、

  ずごおおおおおおおん!!

少女は片腕を伸ばし、前方に立っていたビルをなぎ払った。
ビル群は一瞬で廃墟になり、そこには瓦礫が残るばかりとなった。

「これで走りやすいでしょ。邪魔なものはどかしてあげたわ」

少女は笑いながら胸元を走る人間を見下ろした。
もちろんこの人間がそこを走り抜けたかったのでは無い事など予想できた。
だが希望でもあったビル群を容易くなぎ払って見当外れの親切をしてやるという、この圧倒的な力の差を見せ付けてやりたかった。
その人間は立ち止まっていた。少女の事を見上げているようにも見える。
自分が向かっていた先のビル群を、片腕で粉砕してしまった少女を、畏怖の念を込めて震えながら見上げていたのだろう。
十は下らないビルがそこにはあったのに、少女はなんの苦も無く一瞬ですべてを瓦礫に変えてしまった。
少女と目が合った人間は慌てて走り出した。今は廃墟となったビル群に向かって。もうどこを向いているとか関係なく、少しでもこの少女から離れたかった。

そんな逃げる人間を影が包み込んだ。
未だに少女の巨体の成す影に入っていると言うのに、影が更に濃くなったのだ。
見上げてみればそこには巨大な指が迫っていた。
少女が片手を人間の上に持ってきていたのだ。

「せっかく全部潰したと思ったのに、一匹だけ逃げられるとかムカつくのよね」

巨大な人差し指の指先が人間の上空に迫る。
そして、

  ズドン!

指先はコンクリの地面を容易く貫き地面へと突き刺さった。
太さ15mの指である。砕かれ吹っ飛んだコンクリの欠片が周囲に舞う。

「はい、おしまい。…………あれ?」

残っていた人間を潰したと思った少女だが、よく見ると、地面に突き刺さった自分の指先の横に動く点がある事に気づいた。
人間は指が突き刺さる直前、横に思いっきり飛び込んだのだった。
結果、ぎりぎりではあるが、なんとか指の直撃を免れたのだ。
少女の顔が詰まらなそうな表情になる。

「チビのくせに…生意気よ」

少女は再び指を人間のいる場所にズドンと突き刺した。

 
   *


この人間、若い男性がここまで命を繋いでいられたのは奇跡の連続としか言いようが無い。
最初、青年は他の人々と一緒にこの超巨大少女から走って逃げていた。
全体的なグループの端を走っていた。
全員が悲鳴を上げ涙を流しながらひたすらに足を動かしている。青年もその一人であった。
左右には巨大な手が下ろされ、その下にはビルなどが容易く押し潰されていた。
背後には恐ろしく巨大なふとももがあり、地に着く膝が彼らの走ってきた場所を陥没させた。
そして上空には、山のように巨大な乳房がぶら下がり、真上でゆっさゆっさと揺れている。
乳首の直径だけでも30~40mはあり、乳房全体ともなれば山としか表現の仕様の無い大きさだった。
そんな巨大な体にふさわしい巨大な顔がにやにやと笑いながら自分たちを見下ろしている。
人々は、嘲りの視線に晒されながら走り続けていた。

不意にあの巨大な乳房が揺れながら降りてきて、逃げる集団の真上を乳首が通過した。
乳頭だけでも家よりも遥かに大きく、それが膨大な質量を持った乳房の揺れに呼応して大気を切り裂きうねりを上げながら通り過ぎて行ったのだ。
乳首の先端は人々の頭上10mも無い位置を通過し、その動きで巻き起こされた風は周辺を走っていた人間たちを軽々と吹き飛ばした。
その風に巻かれ、宙に放り出された者もいた。
そうなった者たちは、空中を高速で吹っ飛ばされたあと地面へと叩きつけられた。
青年も風に飛ばされ、グループから外れた、巨大少女の二つの乳房の間に近い位置に墜落していた。
体中に激痛が走ったが、その体に鞭打って立ち上がり、青年は再び走り出していた。
少女が彼らの真上で乳房を揺らしただけで、凄まじい被害であった。

ふと、この巨大な少女の体の真下という薄暗い世界に、少女の凄まじい音量の声が轟いた。

「あ~あ、そろそろ腕が疲れてきちゃった。もうこのままおっぱい下ろしちゃおっかな~」

その声は大地を揺るがし、周辺のビルのガラスを粉砕した。
人々も足を止め、耳を押さえて大地を転がった。
鼓膜が破裂し、頭が爆発するのではないかと思うほどの凄まじい声が、彼らの耳を貫いた。
地面に転がっていた石が宙に浮いていた。

そしてその内容は、実に恐ろしいものだった。
恐怖に駆られ、言葉の意味を探るように上を見上げて見ると、あのぶら下がった乳房の山が、ゆっくりと確かに下りてきていた。
先ほどまでは上空には巨大な少女の胸部が見えていたのに、今見えるのは片方の乳房だけ。
つまりはそれしか見えないほどにまで、その乳房が降りてきていると言う事だった。
人々は更に悲鳴を上げて走り出した。発狂しているような声である。狂ったように走っていた。
元々、他人に気を配る余裕など無かった彼らだが、今は前を行く人間を乱暴に押しのけたり、倒れた人間の上を平気で踏みつけてゆく。
倫理が崩壊した。
だがそこまでして走っても、上空には巨大なピンク色の乳首が広がっており、乳房全体の大きさを考えれば、先頭を行く者でも余裕でその下に入っているのだった。

そうして乳房は下ろされた。
最初に乳頭が地面に触れ、そこを走っていた二人の人間がその下に押し潰された。
そのまま乳房全体が地面に触れ始め、次々と姿を消してゆく人々。
人々の断末魔の悲鳴が、乳房が降りてくるにしたがって少なくなってゆく。
降りてくる乳房の作り出す肌色の津波に呑み込まれて潰される人々はその瞬間赤い飛沫をぶちまけるが、それすらも次の瞬間には地面に埋められていた。

乳房は地面の上にしっかりと下ろされた。
片方の乳房の下に、そこを走っていた人間を押し潰したのだ。たった一人、青年を除いて。
このとき青年は、下ろされた左右の乳房が作る谷間と地面の間に倒れこんでいた。
まるく柔らかい乳房だからこそできた隙間に、奇跡的に生存していたのだ。
もしも少女が乳房を下ろすだけでなく、ぐいと押し付けるようにしていたならばこの僅かな隙間も存在せず、みっちりとのしかかってきた乳房の肉によって一瞬で赤いシミに変えられていた事だろう。
周囲は真っ暗だった。前方から光が差し込むだけであとは一切の光が無い暗黒である。
だがその暗黒に包まれたそれが、あの巨大な乳房である事は容易に想像できた。
乳房の降りてきたときの衝撃で体をしこたま痛めたがすぐに立ち上がって、この暗黒の乳房の谷間を走り始めた。

谷間から抜け出したとき、照りつける日光に一瞬目が眩んだ。
それほどに谷間の闇は暗かった。
少し走って振り返れば、そこにはまさに山のように鎮座する巨大な二つの乳房があった。
計り知れない大きさだった。
最早それはビルなどの人工的な巨大建造物を越えた存在であり、天然自然の創造物のようであった。
空に上を見上げれば、肌色の柱のような腕に支えられた頭が見えた。
その顔は笑っている。
今ならば気づかれまいと、青年は前方のビル群に向かって走り始めた。
ビルの陰に隠れられればと思っての行動だった。

だがその直後、背後から、上空から、少女の声が轟いた。

「あら? まだ生きてたの」

青年は体をビクンと震わせ、そして走る速度を上げた。
背後を見てはいないが、その背中にチリチリという確かな視線を感じていた。
見られている。
明らかに自分は見下ろされている。
いつ殺されるともわからない恐怖に駆られながら、青年はビルの影に向かって走って行った。
ビルまでは距離があり、あと暫くは走り続けなければならない。
時間にして数十秒。気の遠くなるような長い時間だった。
息が切れ、酸素不足でぼやける目で、なんとか残りの具体的な距離を確認しようと焦点を合わせようとしたときである。

  どごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!!!

あの頬杖の柱になっていた巨大な腕が横から現れ、向かう先にあったビル群のビルを、ひとつ残らずなぎ払った。
およそ20階立てのビルが集まっていたのだが、それらは腕の直撃を受け、土台など下層部分を残して粉々に粉砕されてしまった。
青年は腕の巻き起こした突風に飛ばされぬよう踏ん張る事しかできなかった。
腕が振りぬかれ、風が止んだあと、かばっていた目を開くと、そこにあるはずだったビル群はほとんど平らの廃墟へと変貌していた。
周囲には突風の吹きぬけたゴゴゴゴという大気の鳴動する音と、小さな瓦礫の降り注ぐパラパラという音だけが聞こえていた。
青年が隠れる場所に選んだあのビル群は、どこにもなかった。
青年は呆然として、この大破壊を一瞬にしてやってのけた巨大な少女を見上げた。
その少女は、にっこりと笑いながら自分を見下ろしてきた。

「これで走りやすいでしょ。邪魔なものはどかしてあげたわ」

やさしい口調のその言葉に、青年は絶望した。
唯一の隠れ場所と思ったビル群が、たった今 目の前で壊滅させられた。
この巨人は、笑いながらそれをやってのけた。片腕を振っただけで。
最早、土台すらむき出しになっているビルもあるこの廃墟の、どこに隠れられるというのか。
全てのビルが下層部を残して壊滅し、その下層部もぼろぼろで崩れかけていた。
身を隠すには安全で無いし、安全な場所は一階部分を残して砕け散った屋根の無いビルしかない。しかしそれでは少女から丸見えである。
先ほどまでビルの乱立していたそこは、すべてをさらけ出された瓦礫の街となった。
もう、身を隠せる場所ではなかった。

青年はあの巨大な少女の顔を見つめていた。
実に面白そうに、可笑しそうに、笑みを浮かべている。
自分の希望を容易く打ち砕いた事が、楽しくてたまらないのだろう。
その愉悦に満ちた瞳を見たとき、青年は寒気を感じた。
少女の目には、自分と言う存在が映ってはいなかった。
自分と言う、命ある人間がそこにいると、映っていなかったのだ。
まるで虫を見るように無感動の光がそこにあった。
その存在を弄ぶ事に、まったく憂いが無い。
殺したところで、毛ほどの罪悪感も感じない。
そんな輝きを持つ目だった。
まるで捕食者の前に差し出された小動物のように、全身の毛が逆立った。
恐怖で体が震えた。
ガチガチと歯が鳴る。
青年は、その瞳から逃げるように背を向けて走り出していた。
どこに向かうでもない、とにかく、あの瞳から逃げたかった。

周囲が翳った。
あの巨大な頭の作り出す影に入ったのだ。
雲の影に入ったようなものだった。
その後、更に濃い影に包まれた。
振り返り見上げてみるとそこには巨大な手が接近してきていた。
ビルのように巨大な人差し指が自分に向かって伸ばされている。
太さ15mの指である。青年の身長の10倍近い太さであった。
そんな指が、彼に追い迫っていた。
すでに視界が、その指先に埋め尽くされていた。

「せっかく全部潰したと思ったのに、一匹だけ逃げられるとかムカつくのよね」

指に遮られ顔は見えないが、少女の声は大気を振るわせて確かに青年の耳に届いていた。
そして指が、僅かに後退した。
危険を感じた青年はとっさにヘッドスライディングのように横に飛び込んだ。
直後、その指が自分を押し潰すべくと突っ込んできた。

  ずごおおおおおん!

指はコンクリで固められた地面を容易く砕いてそこに突き刺さった。
砕かれたコンクリがその衝撃で周囲に飛び散った。
青年は間一髪で指の直撃を免れていた。
飛び込んだ青年の足元、そこから10cmのところに指は飛び込んでいた。
あとわずか、ほんの僅か飛び込む位置が近かったら、間違いなく、その下半身は指先の下で押し潰されていただろう。
巨大な指に突き刺さられ、ひび割れ抉られ盛り上がった地面が青年の体を転がした。
飛び散った瓦礫が青年の体の上に降り注いだ。
それらの瓦礫を払いのけ、うつ伏せていた体を這い起こす。

「はい、おしまい。…………あれ?」

少女の声が轟く中、なんとか体を起こした青年は、指から少しでも離れようと走り出した。
だが、

「チビのくせに…生意気よ」

明らかに不機嫌と取れる口調の少女の声が聞こえた瞬間、再び指が、先ほどよりも遥かに速い速度で突っ込んできた。

  ずっどおおおおおおおおおおん!

巨大な指が直撃し、瓦礫の飛び散る中に青年の姿は消えて行った。


   *


今度こそ人間を指先に捕らえた少女。
地面に突き刺さった指先をぐりぐりと動かす。

「ふん! 今度こそ潰し………あ!」

コンクリの地面に突き刺さった指。少女の感覚で、その指先の僅か1cm先に、あの人間が倒れているのを見つけた。
よく狙いを定めず勢いだけで差し出した指先は、青年のいる場所よりも僅かに手前に突き刺さり、青年はその衝撃で吹っ飛ばされていたのだ。
少女は、3度 この人間を潰し損ねた。
少女の眉がやや釣りあがる。

「本当に生意気ね。ゴミみたいなチビの癖に」

言うと少女は、横たわる青年の前に指を下ろし、爪で青年の体を弾いた。
少女にしてみれば軽くペシッと弾いたようなものだが、小さな青年の体は30mもの距離を吹っ飛び、そこから更に地面に激突してゴロゴロとコンクリの地面を転がった。
乗用車ですら衝撃で潰れてしまうような少女の軽いデコピンである。ただの人間が生きていられるはずが無かった。
そして少女は転がった青年へと指を伸ばし、今度こそその小さな体を潰そうとした。
だがその人間はまだ動いたのだ。

驚愕に見開かれる少女の目。
その視線の先で、青年はボロボロになった体をなんとか奮い立たせ、歪な足取りで少女に背を向けて歩き出した。
足の骨が折れているだろうその動き。肋骨なども手痛い深手を負っているはず。車さえ潰れる威力だったのだ。
なのに青年は意識を保ち、体を引きずりながら少しでも少女から離れようとしていた。
すべては、生きたいがため。
生への執念であった。

驚愕に満ちた目で、その小さな小さな背中を見つめていた少女。
だが次の瞬間にはその目は僅かに細められ、口元は歪みにやりと笑っていた。
そして手を伸ばすとその青年の体を指先で摘み上げ、もう片方の手の人差し指の腹の上に乗せた。
そのまま顔の前まで持って行かれる青年。
指先に乗せられた青年の視界にはあの巨大な少女の巨大な顔が広がっていた。

「へぇー。結構根性あるじゃない。気に入ったわ」

指先に乗せた青年を、頬杖を着いて見下ろしながら少女は言った。
青年には耳を疑う余裕は無かった。すでに全身の痛みに気が遠くなりかけているのだ。

そんな青年の様子に気づいた少女はもごもごと口を動かし、口を「う」の形にすると青年の乗った指先を口元に持ってきて、その上にそれを一滴垂らした。
少女の口から滴った小さな唾の雫は指先の青年に被さった。
小さな家のような大きさの唾の雫に呑み込まれ青年は溺れそうになった。水滴の中でゴボゴボともがく。
だが青年はすぐにその唾の雫の中から摘み出され、指先の唾が拭われたあとまたそこに下ろされた。

「ケガなんて唾付けとけば治るのよ。特にお前たちみたいなチビのなんて簡単にね」

巨大な少女の顔が得意そうに笑った。
確かに青年は、先ほどまであの激痛が和らぐのを実感していた。
唾液に多少の殺菌作用があるのは知っていたが、怪我を治せるほどのものではない。
巨大な少女の唾液は、効力さえも強力になっていると言うのか。
驚愕の表情を浮かべる青年の視線を感じたのか、少女はフフンと鼻を鳴らした。

「お前は今からあたしのおもちゃよ。たっぷりと、楽しませてもらうから」

少指先に乗る小さな人間を見下ろしてくすくすと笑う少女だった。


  *


暫し、ビル群の上にうつ伏せで寝そべる少女は800mはあろうかという長い脚の膝から先をパタパタと動かしながら 手のひらに乗せた人間を転がして遊んでいた。
すると突然、少女の背中で無数の爆発が起きた。
背中にポツポツという感触を感じた少女は首を回し自分の背中を覗き込むように後ろを見た。
視線の先の上空に小さな虫がたくさん飛んでいるのを見つける。戦闘機だろうか。
背中に感じた感触はミサイルの爆発だったのだろう。
面白いおもちゃを手に入れご機嫌だった少女の顔に苛立ちの色が滲む。

「…ったく。せっかくお楽しみ中だったのに」

青年を手のひらに乗せたままゆっくりと立ち上がっる少女。
上空を飛んでいた戦闘機たちは、上昇してくる巨人の体から慌てて離れて行った。

両足で大地に立った少女はその1600mの身長を存分に表していた。
一時的にではあるが、周辺を飛んでいた戦闘機を見下ろす事もできた。
1cm強の虫の集団が周囲をぶんぶん飛んでいる。
実に鬱陶しかった。

ふと、手のひらの人間の事を思い出した。
この砂粒のような存在は、あの小さなミサイルでも致命傷になってしまうのだ。守らなければならなかった。
しかし、自分の姿を見下ろした少女は、どこにも仕舞っておける場所が無い事に気づく。
陽光に照らされる若い肌は余すところ無くさらけ出される、一糸纏わぬ姿なのだから。
だからと言ってこのまま手の上に乗せたまま動き回っては落としてしまうかもしれない。
ふむ…。少女は全身にミサイルを浴びながら考えていた。
その間、青年の乗る手のひらは軽く握られ、あらゆる攻撃を通さなかった。

「……。…あ。ここなら大丈夫そうね」

安全な場所に思い当たった少女は手のひらを開いた。
そこにはポツンという小さな点が乗っている。この小ささなら問題無いだろう。
少女は青年を見下ろしてくすっと笑った。

そして口を開くと青年をそこに放り込んだ。
舌の上にポツンという小さな感触を感じた。
口を閉じ、もごもご動かす少女。
舌を使って、青年を 唇と歯茎の間へと運んだ。

青年にしてみれば、恐ろしく広大な口の中に放り込まれたのである。
放り込まれる刹那、手のひらの上からは、薄紅色の唇に縁取られた 唾液に濡れてキラキラ光る赤い内壁を見る事ができた。
白い歯が並び、それはビルが横に並んでいるかのような印象を覚えた。
それらに守られるように、中央には巨大なピンク色の舌が蠢いていた。
これから来るであろう来客を待ち受けるかのようにその首をもたげた。
手から放り出された青年は数十mの飛行のあと、その舌の上に墜落した。
唾液に濡れた柔らかい表面は、顔から墜落した青年の体を大事無く受け止めた。
その後 口が閉じられ、青年を取り巻く少女の口という世界は暗黒に包まれる。
舌が大きく動き出し、その上を唾液まみれになりながら転がされる青年。
口の中を散々転がされたあと、あの唇と歯茎の間へと運ばれ、舌は青年を置き去りにしてそこから去って行った。
青年は硬い歯茎と柔らかい唇に挟まれて身動きを取る事すらできなくなった。
少女の口の中に拘束されたのだ。
空気は通っているし、唾液も 溺れるほどには湧き出ていなかったが、全身はすでにずぶ濡れとなり、吸い込む息の生暖かさには吐き気を覚えた。
肉の檻はとても熱く、青年をのぼせさせた。

そこに、確かに青年が運ばれた事を感じた少女はその巨大な舌で舌なめずりをした。

「これでいいわ。…さ、今度は邪魔してくれた虫の相手をしてあげないと」

少女は周囲を飛ぶ戦闘機に目を向けた。
ぶんぶんと黒い粒が飛んでいる。これら全てが戦闘機でその中には1匹以上の人間が乗っているはずだ。
こんなものに乗らねば自分の目線の高さにも来る事ができないとは。
地面を蠢くゴマ粒のような虫けらは、戦闘機に乗ってやっと羽虫へと成長したのだ。

さて、どうやって遊んでやろうかと考えていたら、不意に正面から一機の戦闘機が自分に向かって突っ込んでくるのを少女は見た。
ミサイルを撃ちながら高速で接近してくる。遠距離での攻撃は効かないと考えて近距離で打ち込む作戦にでも出たのか。
だが、自分の胸の高さを飛んでくる戦闘機から放たれたミサイルは、少女の大きな胸に当たって爆発したが、顔色を変えるほどの感触は得られなかった。

戦闘機は搭載できる限りの小型ミサイルを積み込んでおり、次々とミサイルを放ったが、そのすべてが命中していると言うのに、少女の顔にそれを嫌がる表情は見られなかった。
そうやって、ミサイルを撃ち込む事に気を取られすぎたのか、気づけば戦闘機は少女の胸の目の前まで接近してしまっていた。
すでに、あの山のように巨大な乳房の谷間に侵入している。
回避、と頭が考え、それを体が実行する頃には、目の前には肌色の壁が迫っていた。
戦闘機は少女の胸の谷間に激突した。

その戦闘機を見ていた少女はポカンとしていた。
ミサイルを放ちながら接近してきた戦闘機は、そのまま自分の胸板に激突し小さく爆発したのだ。
特攻がしたかったのだろうか。
見下ろせば胸の谷間の戦闘機が突っ込んだ場所から小さな煙が立ち上っていた。
その予想外の最後に、口をあけて呆然としてしまった。

しかし少女はすぐににやりと笑った。
ミサイルどころか、自機を弾とした特攻ですら、自分には傷つけられない。
この羽虫たちの脆弱さには笑うしかなかった。
改めて周囲の戦闘機を見渡す。

「遊んでほしいんでしょ、おチビちゃんたち。何して遊ぼうかしら」

くすくすと笑いながら少女は一歩 足を前へ進めた。
すると、進行方向方面にいた戦闘機たちが少女に背を向けて飛び始めた。
少女の接近を予想したパイロットたちは距離を取る為に一時 後方へと避難した。
のではなく、ただあの巨大な少女が自分たちを見て笑い 歩み寄ろうとしたのを見て恐怖に駆られたからだった。

飛び去ってゆく戦闘機たちを見て少女は面白そうに口元を歪めた。

「そう、追いかけっこがしたいのね。じゃあいくわよ」

そして少女は戦闘機を追いかけて歩き始めた。
少女が、自分たちの背後から追ってきているのを悟ったパイロットたちは悲鳴を上げていた。
あの大巨人が、自分たちを追いかけてくる。
ちゃんと差を詰めながら追いかけてくるのだ。
何という事だ。
パイロットたちはエンジンの限界まで推力を引き出していた。
凄まじいGが体にかかる。恐ろしいまでの速度による直線飛行だった。
だがあの巨人は、そんな自分たちに迫ってきているのだ。
現在の飛行速度はマッハ2にもなる。
音速の二倍の速度である。
時速にするとおよそ2500kmだ。
目にも止まらぬ超高速。
にもかかわらず、巨人は自分たちとの差をどんどん詰めてきていた。
すでに距離にして500mも離れていない。
差は見る見る内に無くなっていった。
それもそのはず、少女の歩行速度は実に時速4000kmにもなり、戦闘機の最高速度を遥かに越えているのだ。
限界まで振り絞った速度で飛行する戦闘機に、ただ歩いているだけの少女が追いついてゆく。
てくてくと歩くだけで、追いつけてしまう。
圧倒的な速度だった。

そしてその足元の被害は大幅に拡大していった。
巨大な足がズンズンと踏み下ろされる事による被害はもちろん、そんな巨大な少女が音速を超えて歩く過程で押しのけられた大気は竜巻のように周囲のものをズタズタに引き裂いた。
ソニックブーム。
足が踏み下ろされ、破壊され尽くしたその周辺が、足が持ち上がって遠ざかる際に更に細かく磨り潰されるのだ。
踏み潰されなかった人間も、五体がばらばらになるような速度で空中に連れ去られ、そこで巻き起こされている風の衝撃の間で蒸発するように粉々に弾け飛んだ。
そんな足元の被害などまるで眼中に無く、少女は目の前の戦闘機を追いかけ続けた。

「ほらほら、もっと速く飛ばないと追いついちゃうわよ」

嘲りを含んだ少女の笑い声が大気を揺るがし、音速を超えて飛んでいるはずの戦闘機にさえ追いついてパイロットの耳を劈いた。
追いかけられているパイロットは気がふれそうだった。心臓が握り潰されそうな恐怖に晒されていた。
背後から迫ってくる恐ろしく巨大な少女。
垣間見たその顔は楽しげに笑っていて自分たちを追いかけるのにまったく苦が無い事を示していた。
発狂しそうなほどの恐怖の束縛。窮屈なスーツがもどかしかった。
閉塞感と焦燥が思考を鈍らせ、パイロットたちに、上空へ逃れるという選択肢を見失わせていた。
それ以上の、生物的本能の「強敵から少しでも離れる」が働いていたのだ。
それはつまり、操縦桿を切り上方へ逃れる、ではなく、操縦桿を動かさず少しでも前へ突き進む、を選ばせていたのである。
その結果の災いも、失敗であると悟れないほどにパイロットたちは精神的にも現実でも追い詰められていた。

すでに少女は戦闘機たちの真後ろを歩いていた。
少し速度を調節して彼らに合わせてやっているくらいだった。
そうたって、自分の胸の前を飛ぶ戦闘機を観察しながら歩き続ける。
指の爪ほどの大きさの戦闘機が、ぶれる事無くまっすぐに飛んでいた。
並んではいないが、数機の戦闘機が乱れる事無くである。
実にかわいらしい虫たちだった。
少女はくすくす笑いながら胸の前を飛ぶ戦闘機を見下ろした。

「あ~あ、遅すぎ。本気で飛んでるの?」

パイロットたちの頭は恐怖で埋め尽くされていた。
息が、脈が、思考が乱れる。
背後に、あの山のように超巨大な乳房が迫っている事をわかっているのだ。
自分たちの後ろでゆっさゆっさと大きく揺れ弾む乳房の存在を。
彼らの背後は、最早 肌色に埋め尽くされていた。

暫くそのまま戦闘機たちの後ろをついて歩いたが、どうやらこれが彼らの本気である事を悟る。

「フン、まぁ追いかけっこだから追いついちゃうけど、のろまなお前たちが悪いのよ」

そして少女は、自分の本来の速度で歩き始めた。
ぐん と加速した少女の体。
戦闘機たちの最後尾を飛んでいた一機が、背後から迫った少女の胸の谷間の胸板に追いつかれ激突し爆発した。
彼らの飛行速度と少女歩行速度にはまだ音速1倍分の速度差があり、追いつかれた瞬間 機体は粉々に砕け散っていた。
破片も爆煙も、この速度域では一瞬で霧散してしまう。
更に少女はてくてくと前へ進んだ。
少女の胸に戦闘機がぶつかり次々と小さな爆発を引き起こしていた。
胸板にぶつかり爆発する機体や、ゆっさゆっさと弾む乳房に激突し叩き落される機体もあった。
1cm強の戦闘機など、この巨大な乳房にぶつかられればひとたまりも無い。
ただ歩いているだけの少女の胸で、戦闘機がどんどん撃墜されていった。

あっという間に 最後の1機を残して他のすべてが叩き落された。
少女は、胸の谷間を飛ぶ戦闘機を見下ろしていた。
胸板まで、あと30mも無い。
このまま胸板に激突させてしまっては面白くない。
ならば…。

にやりと笑った少女は、弾んでいた自分の乳房を左右の手で持ち上げた。

「お前は特別にあたしの胸で潰してあげるわ。感謝しなさい」

そのままゆっくりと胸を寄せてゆく少女。
戦闘機の左右が巨大な肉球の作り出す肌色の壁で埋め尽くされた。
どちらを見ても、そこには少女の乳房があった。
右にも左にも背後にも、あるのは少女の肉体ばかり。
前方以外の全てを少女の胸で囲まれた。
その左右の乳房が、更に狭まってくる。
すでにその幅は50m無く、10m強の戦闘機が飛ぶには狭い空間になりつつあった。
だが戦闘機は前に飛ぶしかなかった。
パイロットは涙を流し悲鳴を上げていた。
操縦桿の横に貼り付けられた家族の写真は、あまりの高速による振動でブレでよく見えなかった。
胸の谷間は30mまで狭まりつつあった。乳房の作り出す影が、戦闘機を包み込んだ。
最早、コックピットから見える前方の視界にすらも、巨大な乳房が映りこんで来ていた。
翼が、横から挟んできている乳房に触れそうである。
パイロットは一際大きく悲鳴を上げた。

  ズズン!

乳房が寄せられた。


  *


寄せた胸の間にプチッという戦闘機の潰れる感触を感じた少女は足を止めた。
寄せた胸を、そっと開いて見る。
するとその左右の乳房の内側の表面に、戦闘機の破片らしきものが着いていた。
左右の乳房の同じところに着いている。
間違いなく戦闘機を潰した事を確認した少女は、そのゴミを指で払い落とした。

そうやって立ち止まっていた少女の背後から、引き離されていた別の戦闘機たちが追いついてきていた。
無防備になった少女の背中に、高速で迫る。
今度こそ、至近距離からの集中砲火で効果を見出すべく。
そしてパイロットたちがミサイルのボタンに指を当てたときだった。

「次はお前たちの番ね」

少女の声が轟くと同時にその巨体がくるりと振り返った。
振り回されたツインテールがそこに2機の戦闘機を捕らえ撃墜した。
更に近距離に迫っていた戦闘機たちは、横から迫ってきた乳房に激突され粉々に砕け散っていた
少女が振り返り、当然その胸も体の動きに合わせて移動するのだが、その動きに戦闘機たちは巻き込まれたのだ。
少女が振り返った。それだけで、そのために動いた乳房によって数機の戦闘機がはたき落とされた。
巨大な乳房に落とされた戦闘機たちは粉々になり煙を噴き上げながら地上に落ちて行った。

僅かに生き残った戦闘機たちも、その巨大な手で簡単に払い落とされてしまった。
手がブゥンと振られればそれに直撃したり その手が巻き起こした風に巻かれるだけで数機が落ちた。虫のように両手の間でピシャリと潰された戦闘機もあった。
追い掛け回された挙句 握り潰されたり指の間でひねり潰されるものまでいた。
低空を飛んでいた機体は、振り上げられた足に捕らえられそのまま地面へと押し付けられ踏み潰され、少女の背面を飛んでいた機体は、その巨大な尻に激突し小さく爆発した。
また別の機体は息を吹き付けられ、コントロールを失いくるくると回りながら落ちていった。
そうやって少女が動き回る過程で、振り回された巨大なツインテールに激突された機体も何機かあった。

逃亡を図っていた最後の一機が、その背後からデコピンをぶつけられ、砕け散って地上に降り注いだ。
戦車だけではなく、戦闘機もあっという間に全滅した。

「ま、暇潰しにはなったかしら」

パンパンと手をはたき、その手を腰に当てて辺りを見渡す。
動き回ったせいもあって、周囲はみな瓦礫と化していた。
崩れ果てたビル。踏み潰された学校。ひっくり返された高架道路。
あらゆるところから煙が立ち上り、どう見ても この街が終わった事はわかった。
夕日に沈みつつある瓦礫都市と化した街に、少女の巨大な影が伸びる。

「おっと、そうだったわ」

詰まらなそうに足元を見下ろしていた少女は口に指を突っ込み、そこに仕舞っていた人間を取り出した。
指先に乗せられた人間は弱っていたが、生きているのは間違いない。
このとき青年は、熱い口の中で温かい唾液の津波に晒され続け窒息しかけていた。
多少空気が通るとはいえ、その空気も肺に収めるには暖かすぎてむせ返るのだ。
更にそこは濃密な少女の香りに満ち、頭の中まで熱くなる。
精神的にも肉体的にも限界に達していた青年は、最早自力で動く事もできなかった。

そんな青年を見下ろしながら少女は言う。

「安心しなさい、お前は殺したりしないわ。くくく、大事なおもちゃだもの。大切に扱ってあげる」

少女の重々しい笑い声が轟き、それは僅かに意識を保っていた青年に止めを刺し気絶させた。
そして再び青年を口の中に放り込んだ少女は崩れたビルを踏み潰しながら歩き出し、地響きを立てながら、廃墟となった街をあとにした。


   
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 ~ 10,000倍(1万) ~

大海原。
居並ぶ戦艦たちの大艦隊。
それらが向いた先には、巨大な少女の姿があった。
青い海面から上半身だけを表した少女。
黒いショートヘアーからは滝のような海水が滴り、この少女がたった今、海から飛び出てきた事を表していた。
その下には二つの黒い瞳がくりくりと輝き、にかっ と笑った口元には白い歯が見えた。
そんな 戦艦たちを見下ろすあの顔は 、実に7000mもの上空に存在していた。
海面には上半身から上しか出ていないのは前述の通り。そこには、100m以上ある巨大なへその穴が開いていた。
この海面から数千m上空にはまさに山のような乳房が胸板から前に飛び出し、その下には夜のような影を落としている。
少女が海から顔を出したとき、頭は雲を貫いた。
上半身しか見えていないのに、雲に届く大きさなのである。
健康的な肌色の体は陽光に照らされてキラキラと輝いていた。
謎の超巨大な影の報告を受けて出てきた戦艦たちは、予想を遥かに超えた現象と遭遇した。

少女は遥か遥か上空から 自分の前に展開している艦隊を見渡して笑いながら言った。

「おーおー諸君、お出迎えご苦労。まさかこんなに歓迎して貰えるとは思わなかったよ」

少女の声が海上に轟いた。
それは顔の周辺を浮かんでいた雲を吹き飛ばし、海上の戦艦たちには衝撃波となって襲い掛かった。
海が荒れ、船の統率が乱れた。

片手を腰に当て、もう片方の手をあごに当て、上半身を屈め、身を乗り出すようにして艦隊を上から見下ろす少女。
巨大な乳房がぶるんと揺れながら艦隊の上にぶら下がった。
艦隊は少女の上半身が作り出す影に入り、上空にぶら下がる山のような乳房の先端である乳首は海面に触れそうな位置まで降りてきていた。
乳房は山に例えるなら標高1000m以上あるのだ。山としか、表現の仕様の無い大きさだった。

「さて、そんな気の利く小人君たちにお礼をしたいんだけど、何がいいかな?」

更に上半身を倒して艦隊に呼びかける少女。
このとき、3隻の戦艦が海面に触れるまで降りてきた乳房の下になりそのまま沈没してしまった。
200m強の戦艦など少女からすれば2cmちょっとのおもちゃであり、そんなものがぷかぷか浮いていたところで上から乳房を乗せてしまえば沈んでしまうのは当然である。
艦隊最前線に下ろされた巨大な乳房によって3隻が沈められ、これを敵対行動と取った艦隊は、覆いかぶさる超巨大少女の体に向かって一斉射撃を開始した。

自分の前に浮かんだ戦艦たちが慌しく動き始め、そこから発射された無数のミサイルが自分の体でパチパチと爆ぜるのを見て少女は笑った。

「あは、まだ歓迎してくれるの? じゃあこっちもちゃんとお礼をしないとね」

体を起こした少女は手を伸ばし近場を漂っていた戦艦を指の間に摘み上げた。
その戦艦は太さ150m長さ600にもなる超弩級の大きさの指の指先にちょいと摘まれて、遥か上空へと連れ去られた。
海抜0mから、一気に数千mの上空まで連れて来られたのである。
そこは、少女の顔の前だった。
窓の外には、その顔の一つ一つのパーツですら視界を埋め尽くしてしまえるほど巨大な少女の顔があった。

「何がいいかな?」

指先に摘んだ自分たちの戦艦に向かって少女が語りかけてくる。
そしてこのとき、一部の乗組員は見た。
この巨大な顔がある方とは反対の方向で、少女のもう片方の手が振られたのを。
それは恐らく、正面から自分の方に向かって流れてくる雲を嫌い払いのけたのだろう。
少女の手が一回 振られただけで、その雲は消し飛ばされてしまった。
雲さえも簡単に払いのけてしまう大巨人の少女。それは最早、超常現象の一つだった。

暫く、戦艦を指先に摘んだまま「うーん」と唸っていた少女だが、「おっ」と閃くとにやにや笑って戦艦を見下ろした。

「この船に乗ってる小人君はみんな男でしょ? くくく、結構 溜まってるんじゃない? 私の胸で気持ちよくしてあげよう」

言うと少女は戦艦を顔の前から胸の前へと移動した。
戦艦は巨大な乳房の前をゆっくりと移動してゆく。視界を埋め尽くすこれが、少女の、片方の乳房のほんの一片なのだ。
やがてそれは乳首の前に移動した。直径にしておよそ400m。この戦艦よりも巨大な乳首だった。
その中央にぴょこんと飛び出る乳頭も、高層ビルが飛び出ているようだ。

「さぁ。存分に堪能してくれたまえ」

芝居がかった口調で言う少女。
そして摘んだ戦艦の船首を、乳首にこすりつけ始めた。
コリコリ。
ピンク色の乳首の表面を、鈍く黒光する戦艦の装甲が引っかいた。
乳頭の脇をゆっくりと上下した。
ガリガリという轟音が響く艦内で、乗組員たちは震えるような揺れと緩やかな上下への動きに耐えるため 近くのものにしがみついていた。
一隻の巨大戦艦は、比べ物にならないくらいに巨大な少女に摘み上げられ、その巨大な乳首にこすり付けられていた。

「ん…。ふふ、君たちを気持ちよくさせてあげるつもりだったんだけど、私が気持ちよくなっちゃったよ」

くすくすと笑いながらも戦艦をこすり付ける手は止めなかった。
その戦艦のこすり付けられている船首は、すでに変形してひしゃげていた。
捻じ曲がった船首の穴からは内部を覗く事さえできた。そこには多数の乗組員の姿が見えた。
その間も、こすり付けられている船首はどんどん壊れていったが、対する少女の乳首にはケガ一つ見られなかった。
鋼鉄製の巨大戦艦の先端を、その先端が破損するほどの力で押し付けられているというのに、乳首は綺麗なピンク色のままだった。

  メキィ!

鉄の割れる甲高い音が艦内に響き渡った。
それは船首が大きく壊れた音であった。先端だけであった破損が船の3分の1にまで及び、戦艦は潰れる様に乳首に押し付けられていた。
更には左右から超巨大な指に摘まれている部分が内部にめり込んできたというのもある。
この時点で、1000人の乗組員が破損した船首や指に摘まれた部分にいて、外壁がめり込んだときに押し潰されて命を落とした。
他にも数十人が甲板に出たまま戻れなくなっていたが、船が乳首にこすり付けられる過程で甲板の外に放り出され、遥か数千mを落下して行った。

指と乳首の間で更に小さく押し潰されてゆく戦艦。
このまま圧縮されてしまうかと思われたとき、乳首から離された。

「おっと、つい夢中になっちゃったね」

少女は眉を「八」の字に寄せ苦笑した。
そして摘んでいた船を海に戻したのだが、その船は一瞬も浮かぶ事無く海中に沈んで行った。
少女が下から救い上げようとしたが手遅れであった。

「あらら、ごめんね」

少女は沈んで行った船に手を合わせた。
そして次の船を摘みあげた。

「今度こそ君たちに気持ちよくしてあげるよ。小人君、外に出ておいで」

文字通り目の前に戦艦を持ってきて少女は言った。
その後 暫くすると甲板は人で溢れかえっていた。
これでも本来の搭乗員数よりも遥かに少ない。
残った者は少女の言葉を警戒していたのだ。
外に出た者は、最早勝ち目が無いと悟り、少女の言葉に従ってでも生にしがみつきたいと思った者たちである。

爪ほどの面積も無い甲板に点のような小人がうじゃうじゃと溢れているのを見て少女は軽く頷いた。

「ふふ、いいこ。みんな出てきたみたいだね」

そして再び摘んだ戦艦を乳首のもとへ持って行くと、今度はその乳頭の上で戦艦をひっくり返した。
甲板にいた乗組員たちは、その太さ100m以上もある高層ビルのような乳頭の上に放り出された。
その何割かは場所が悪く、船がひっくり返されたときそのまま海へ落ちていってしまったが。

船を乳首の上で何度か振り、取り残しが無いようにした少女。
それが終わったら、船はポイと捨ててしまった。
船は数千mもの距離をくるくると回りながら飛行し、やがて海上に水柱を立てた。
このとき、すでに船に生存者は乗っていなかった。
甲板に上がれなかった2000人ほどの人間は、少女が戦艦を振ったとき、その艦内の内壁に叩きつけられて原型もわからないほどぐちゃぐちゃな肉塊にされてしまっていた。
少女の乳頭の上に乗る事ができたのは、僅か800人あまりだった。

「さぁぼうやたち。お姉さんの胸を堪能して」

少女は彼らを乗せた自分の乳首に向かってにっこりと微笑んだ。
だが、少女の乳首に乗った事を喜ぶ乗組員は皆無だった。そして、不満に思っていた人間もすごい勢いで減って行った。
少女の乳首は海面から4000m以上も上空にあり、なんの用意もしていなければ、その吹きすさぶ風の冷たさに凍りつかんばかりなのである。
吐いた息が白い雲になる。冷凍庫の中のような寒さ。
逆に、足場でもある乳首がとても温かく、それが少女の体の一部である事を如実に表していた。
同時に、空気も非常に薄い。
呼吸も満足にできない。息が苦しい。
そこに放り出された人々は、喉を抑えて悶えていた。
そして極めつけは、気圧の急激な変化。
海抜0mから一気に4000mもの上空に連れて来られて、急激な気圧の変化に対応できなかった体は激しい異常を訴えていた。
すべてが、致命傷になりうる非常に危険なものだった。
よって、乳首の上に乗せられた人々は、次々と死に絶えていたのだ。

すでに生存者はおらず何百もの死体だけが転がる自分の乳首に語りかける少女。

「楽しんでもらえてるようで良かったよ。でも、普段 色気の無い海の男たちには私の胸はちょっと刺激が強すぎたかな」

からかう様に笑う。
そんな少女の体には、海上の艦隊から攻撃が続けられていたのだが、少女は気にもしていなかった。
体の、主に腹で無数の爆発が起こっていたが、それを払うそぶりすら見せない。

それから暫くして、少女の体が海中に沈みこみ始めた。
泡を立て渦を巻き、何隻かの戦艦を巻き込み沈没させながら少女の超巨大な体が海中に沈んで行った。
実際は、少女が座っただけの話である。
今まで膝立ちだったところを、膝を折って正座になっただけの事。
つまり少女は今、海底に足を折ってしっかりと座っているのだ。
それでも、体の海上へ飛び出し、海は乳首を濡らす程度の深さであった。

少女は船乗りを乗せている(いた)乳首に手ですくった水をパシャパシャかけた。
それは彼らをそこから下ろそうとしての行為だが、そのせいでそこに乗っていた数百の死体は皆 海中に沈んで行った。
例え彼らが生きていたとしても、その激流に成す術も無く沈んでゆくのは同じだっただろう。

先ほどよりも遥かに近くなった少女の顔。
だがそれでも、頭頂部付近を雲が漂う大きさである事に変わりは無い。

「…さて、本当ならもうちょっと君たちを気持ちよくしてあげたかったんだけど…」

少女は海中から大量の水を滴らせながら出した手の伸ばされた人差し指で頬をぽりぽりと掻いた。
苦笑するような表情。ばつが悪そうにはにかんでいる。

「私が気持ちよくしてもらいたくなっちゃったよ。悪いけど君たちを使わせてくれるかな」

言うと少女は今まで頬を掻いていた手を艦隊の方に伸ばし、そこから戦艦を一隻摘み上げ自分の乳首にあてがった。
だが今度はあてがった速度そのままに、乳首に押し付けてぐしゃりと潰した。
戦艦は一瞬で鉄くずとなった。
そしてまた次の戦艦が摘まれる。
摘まれ攫われた戦艦からは乗員3000人の悲鳴が聞こえていたが、それも乳首にぐりぐりと押し付けられると聞こえなくなった。

艦隊の戦艦が消費され始めた。
押し付けるだけではない。
ある戦艦は船体を大きく変形させられながら乳頭に巻きつけられ、少女はその戦艦の上から乳頭をこりこりとこね回した。
当然、指と乳頭の間に挟まれていた戦艦はぐしゃぐしゃに磨り潰されたあとボロボロと海中へ落ちて消えて行った。
またある戦艦は手のひらにすくわれてそのまま乳房に押し付けられ、手が乳房を揉む最中に揉み砕かれた。
両手に一隻ずつ摘み、左右の乳首を円を描くように愛撫したりもした。
次から次に、少女は戦艦を手に取り、数秒の愛撫のために消費した。
大艦隊の数も、かなり少なくなっていた。
逃亡を試みようとした艦もあったが、少女の巨大な体が動きそのせいで大荒れのこの海では船を沈ませないようにするのが精一杯で動かす余裕など無かった。

少女の頬が若干 朱に染まる。
巨大な口から吐き出される艶かしい熱い吐息が、暖かい突風となって海を吹き抜け戦艦たちに押し寄せた。
海上に聞こえるのは大荒れの海が波打つ音と、少女の微かな喘ぎ声だけである。

突然、少女が手を伸ばしてこなくなった。
すでに攻撃の手段を使い切ったただ浮くだけの存在となった戦艦たちは、少女の次の動向が何なのかを探り、また次はどんな恐ろしい目に合わされるのか。次こそは自分が狙われてしまうのではないかと震えていた。

そんな風に、少女が大人しくなり、海が静かになってきた、その時だった。

ある戦艦の脇に水柱が立ち上り、そこから巨大な指が現れた。
指はその戦艦を摘むと、トプンと海中に消えて行った。
戦艦も一緒に。
300m近い戦艦が、実に簡単に、あっという間に海中に連れ去られた。
一瞬のでき事であった。
周りの戦艦が 何が起こったのか慌て始めた横で、少女の口からまた艶かしい声が漏れた。

「ん…。細すぎて感じられないけど、刺激するには十分だね…」

頬を染めた少女のとろんとした瞳が目の前の戦艦たちに向けられた。
また、一隻の戦艦の左右から指が飛び出てきてそれに摘まれた戦艦が海中に引きずり込まれた。
凄まじい水圧と激流に艦がメキメキ圧縮されてゆく。
一瞬にして水深3000m以上の深海まで連れて来られたのだ。
その急激な圧力の変化でほとんどの船員が炸裂する中、恐ろしい速度で浸水する船の中でまだ微かに命を繋いでいた船員は、ブリッジのガラスの向こう、深海のそこに近づいてくるものを見た。
それは、巨大なクリトリスだった。
そう、彼が悟った瞬間、彼の乗った船はそれに激突し押し付けられて捻り潰された。
彼が死んだあとは、船はクリトリスを包まされその上から指がこね回していた。

海中で同胞がどんな目に遭っているかなど知る事のできない船乗りたちは、その水平線を占める巨大な少女の火照った体を見る以外にできる事は無かった。
右手が船を海中に攫ってゆく傍らで、左手は摘んだ船を胸に押し付けていた。
柔らかい乳房の表面は船が押し当てられると僅かにへこむが、それも一瞬で、船が圧力に耐えられなくなり潰れ始めると、弾力により元に戻ろうとする乳房の力で潰された。

そして、次に二隻を、一隻を左の乳首にこすりつけ、もう一隻をクリトリスにこすりつけたとき、少女の体がビクンと震えた。
そのせいで僅かに波が荒れたが、今度は転覆するものはいなかった。
キュッと閉じられた少女の目。
やがて何度か体を震わせたあと、その表情は穏やかなものになっていた。
ほぅ…と、白い雲の息が吐き出された。

「いっちゃった…」

まだ頬の赤い顔でにっこりと笑った少女。
乳首にこすり付けられていた戦艦は潰れていた。
二つの戦艦を使って少女は果てたのだ。
今 海中の少女の股の間には、少女の愛液が漂っている事だろう。

それからの少女はまるで遊ぶようだった。
鎖骨に水を溜めたかと思えばそこに戦艦を浮かべてみたり、胸の谷間に浮かべた戦艦を乳房で挟み潰してみたり。
小型の戦艦を摘み上げたかと思えばそれを口の中に放り込みもぐもぐと租借したりした。
その戦艦はすぐに吐き出された。鉄と油の固まりでもある戦艦は口に合わなかったらしい。鉄くずの浮いた唾が海に浮いていた。
次の戦艦も口に放り込まれたが今度は租借されずそのままゴクンと飲み込まれた。次の戦艦も。その次の戦艦も。
まるで小腹が空いてお菓子でも摘むようにあっさりと。
また戦艦が摘み上げられたが、それは今までの戦艦よりも少し大きかったので、丸呑みはされなかった。
代わりにあの巨大な白い歯によって噛み千切られ、半分にされてから呑み込まれた。
次の戦艦は両手の指の間に摘まれ、そのままねじ切られた。
真ん中から捻るようにして千切られた戦艦のそれぞれの断面を覗き込む少女。内部を観察しているようにも見える。
そこには数千の人間がいた。船が千切られる過程で天地がぐるぐると動き回り、数百人が死亡していたが、残りの人間は辛くも生き残っていた。
そんな風に生き残っている人間がいるのを確認した少女は、その二つに分かれた船を、左右の鼻の穴の前に持って行った。
そして、

  すぅ

息を吸い込んだ。
再び断面を見たとき、そこに人間は一人も残っていなかった。
その断面を残っている戦艦の方に向けて笑いながら少女は言った。

「ふふっ、いなくなっちゃった」

2千人は残っていたはずの乗組員が、皆 少女の鼻の穴の中に吸い込まれてしまった。
一瞬だった。
そして2千もの人間を吸い込んだはずの少女は顔色一つ変えない。
彼らは、もう二度とその穴から出てはこれないだろう。

そうして、一度果てた後の少女の他愛も無い遊びによって戦艦は次々と数を減らして行った。
気がつけば、旗艦を一隻残すだけ。
何十といた戦艦は、すべて少女に消費されてしまった。

「ふーん、君が最後か」

少女の声を聞いているのは旗艦のみ。
少女の声が向けられるのも旗艦のみである。
少女と、旗艦だけの世界だった。中には数千人の人間がいるが。

突然 旗艦はぐるりと旋回して少女に背を向けて進み始めた。
最早どうにもならないのである。
例え荒れた海でも、逃げなければ潰されるだけだった。

そうやって走り出した旗艦を、笑顔の少女が伸ばした手の作る影が包み込んだ。
指が、逃げる旗艦に迫ってゆく。
そして、親指と人差し指で船尾を摘んだ。
それだけで、全長300mを超える超大型戦艦は前に進めなくなってしまった。
少女にしてみれば、3cmちょっと船がぱちゃぱちゃしているだけなのである。

指は、そのまま船を持ち上げ始めた。
旗艦は船尾を持ち上げられ、選手を真下に向けた状態でぶら下げられてしまった。
ぷらんとぶら下がった旗艦を目の前に持ってくる少女。

「ありがと。君たちのおかげでとても気持ちよくなれたよ」

旗艦に向かって微笑む。
高度数千mの風に晒されて揺れる旗艦だった。

「そう言えばお礼がまだだったね。ふふ、じゃあ君たちは特別に胸で挟んであげるよ。さっきの船みたいに簡単には潰さないから。ゆっくり味わってね」

言うと少女は立ち上がった。
少女の巨体が、凄まじい量の海水を滴らせて海から現れる。
それは今まで見えていたどの少女の姿よりも大きく、大きく、天へと向かって伸びていった。
やっと少女の体の上昇が止まったとき、少女の体は大半が海から上に出ていた。
海は膝よりも少し上、ふとももを濡らすか濡らさないか程度の深さだった。
あらゆる大気の層の違う種類の雲を貫いて立ち上がった少女の身長は、実に16000mを超える。16km。
海上に出ている部分だけでも10kmを超えていた。

そんな少女は片腕で胸を抱き寄せ持ち上げ、その胸の谷間に旗艦をそっと挟み込んだ。
旗艦は船首を下にして谷間に刺さっている状態だった。
自分の胸の谷間にちょこんと刺さる旗艦を見てくすっと笑った少女は、僅かに谷間を開いて、旗艦を更に奥に差し込んだ。
そして両腕で胸を抱き上げ僅かに寄せる。
巨大な乳房が、旗艦をみっちりと挟み込んだ。

「いくよ」

少女は胸を抱き寄せ始めた。
寄せられた乳房が盛り上がり、その谷間に旗艦が消えてゆく。
このとき船中がメキメキと音を立てて潰れ始めていた。
僅かに生き残っていた人々も悲鳴を上げる事しかできなかった。
すでに船尾さえも谷間の呑み込まれたここは、逃げる場所の無い乳の檻なのだ。
光さえ空気さえ通らない、ただ押し潰されるだけの場所。
メキメキィ! 甲高い音が立て続けに鳴り響き、船体のどこかに大きな亀裂が入った事を知らせていた。
その嫌な音に混じって、船中に響く音が合った。

  どくん  どくん

腹に響くような重低音。
少女の、心臓の鼓動である。
生き残っている乗組員全員に聞こえていた。
鼓動のリズムに安らぎの効果を得るのは母の胎内にいたときに聞いていたからだと言うが、今度はその鼓動は彼らを眠らせる子守唄となるのか。
無常な音が、彼らを送る鎮魂歌である。
メキメキバキグシャ! 船が狭くなってゆく。
巨大戦艦は、その幅十数mにまで圧縮されていた。
装甲や内壁などを入れた場合、中の空間は数mである。
人々が、みっちりと詰まっていた。身動きとれぬほどの密度。
これ以上詰めようが無いという船内が、更に狭くなる。
少女の胸が寄せられ続ける限り。
すでに板のようになりつつある船内で、もうそこにいる人間は一斉に弾けるしか無い、というときだった。

  プチッ

少女の胸が完全に寄せられた。
胸の間に旗艦が潰れるのを感じた少女は胸を開き、そこから旗艦を取り出してみた。
そこには、ペラペラの紙のようになった旗艦があった。
くすっと笑った少女の吐息にひらひらと揺れた。

「お疲れ様。安らかに眠ってね」

そして少女は旗艦を摘んでいた指を離した。
旗艦は風に乗りひらひらと海面に落ちて行った。
それが海中に沈むのを見届けた少女は笑顔で去って行った。


   
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 ~ 100,000倍(10万) ~

海に面した大きな港町。
大型の漁船やタンカーも停泊するこの一帯の海の玄関口であった。
貿易が盛んで それがそのまま街の発展へと繋がっており多くの企業がここに拠点を構え そしてそこに属する人間が住みそれを狙った店が展開している。
たくさんのビルが建ち、そのガラス張りの壁面を太陽が照らしてキラキラと光る。
道には貨物のトラックが行き交い、近隣の海には船が白い筋を残しながら走っていた。

海の果てから現れたそれは、そこを拠点とする人々がその存在に気づいて対策を練り始める前に、彼らの上に迫っていた。
突如 街を覆った影の正体を知る事のできるものはいなかった。
一瞬で人々の空を奪ったそれが足の裏であるなんて誰も気づけなかった。

  ずずうううううううううううううううん!!

    ずずううううううううううううううううん!!

巨大な足が街の上に踏み降ろされた。

「うーーん、着いたー!」

大きく伸びをする少女。
街に壊滅的打撃を与えた長さ24kmにもなる素足は爪先立ちになり、重心が偏ったつま先は更に地面へと沈み込んで行った。
上に向かって伸ばされた手は大気の層を貫いて完全に宇宙に飛び出していた。
実に、身長160kmにもなる巨大な少女であった。
伸びを終えた少女は地表をキョロキョロと見渡し始めた。

「さーて、小人さんの街はどこかなー」

今しがた足の下に街を踏み潰した事などまるで気付かず、少女は内陸へと進んで行った。
少女が立っていた場所には街は無く、巨大な足跡だけが残されていた。


   *


途中、少女の目には見えないほど小さな町などを踏み潰しながら少女は大地を横断していた。
雲さえも少女の足首ほどの高さを漂い、踏み下ろされる足は山をも押し潰す。
一歩ごとに数万人という犠牲者を出しながら少女は歩き続けた。
世界最大の山・エベレストよりも遥かに大きな乳房がその胸元に揺れていた。

やがてようやく少女のお眼鏡に適う街が現れた。
雲間に覗く地面に見える灰色がそれであった。
建築物が密集する辺り、幅およそ10kmくらいのもの。
それに気付いた少女は にぱっ と顔を輝かせ駆け足でそれに近づいて行った。

街の前に立った少女。
足元には自分の足の長さも無いが、大きな街があった。
少女は四つんばいになって街に顔を近づけた。
街の人々は突然街全体が薄暗くなった事を知り、何かと思って見上げた空の雲の先に、この街よりも大きな少女の顔を見つけていた。
太陽さえも遮る巨大な顔は、太陽の代わりになりそうなほどに笑顔で輝いていた。
その巨大な口が開き、その前を浮かんでいた雲がふっと吹き散らされたと思った瞬間、街に凄まじい大きさの少女の声が轟いていた。

「小人さん小人さん。今から小人さんの街で遊んじゃうからね」

カクンと首をかしげ にっこりと笑う巨大な顔。
その仕草に合わせて、ショートツインテがぴょこんと揺れた。

人々が少女の口から発せられた声と言う衝撃波で街から吹っ飛ばされているうちに、街の上空を覆っていた少女の顔は移動し今度は巨大な胸が空を埋め尽くした。
少女が四つんばいのまま前に移動したのである。
そして右の胸が街の上に来るように調節した。
少女は腕を伸ばして四つんばいになっているのに、その胸板からぶら下がった乳房は街に着いてしまいそうだった。
乳首だけでも4000mはある。その乳頭も高さ数百mであり街の超高層ビルよりも高い。
移動の際、乳房はぷるんと揺れそこにあった雲を散らしていた。

街が乳房の下に来た事を確認した少女は腕を曲げ上体を下ろした。
当然、胸も一緒に下ろされる。
幅10kmの街は、空から落ちてきた途方も無い大きさの乳房の下敷きになり、そのすべてが膨大な肉の塊によって押し潰された。
そっと下ろされただけでも街全体が下敷きになっていたのに、少女が胸を押し付けたので、巨大な乳房ははみ乳となって更に広範囲をその下に呑み込んで行った。
100mを超える超高層ビルも少女にとっては1mmの砂粒であり、少女の乳房が乗せられた瞬間、それらは更に細かい砂粒へと砕かれ磨り潰された。
下ろした乳房の表面に小さな小さなビルが砕ける感触を感じて少女は笑った。

「あはっ、おっぱいの下でビルがぷちぷち潰れてる~」

その感触を楽しむように胸をぐりぐりと動かす。
街とその郊外は更に細かく砕かれて行った。
少女が乳房を持ち上げると、そこには二つのくぼみができ、片方は灰色っぽい色をしていた。
自分の胸で街一つを押し潰し、その快感と自分の力強さに酔いしれる。
少女は四つんばいのまま次の街を探して移動して行った。

小さな町や山を手や脚の下でゴリゴリと潰しながらはいはいで進んでゆく。
その胸板からぶら下がった大きな乳房はぷるんぷるんと揺れ、進む過程で近づいてくる雲を吹き散らしていた。
四つんばいのその様はまさに怪獣であった。
ただし、どんな正義の戦士も軍隊も適わない究極の雌獣である。
しかし少女のあどけなさを残したその顔に邪悪な色は見られない。
きょとんとした表情でキョロキョロと辺りを見渡している。
髪型もあいまって実に子供っぽい。
だが、その体、特にその胸は計り知れないほどに成熟していた。
アンバランスの上に成り立つ無垢な子供。
少女は実に無邪気に、そして無関心に、何十万人と言う人間を虐殺している。
自分の下で人々が涙を流し喉が裂けんばかりの悲鳴を上げて逃げ惑っているなど気付いてもいない。
目の前など見ず、遠くの景色に街を探している。
人々が見上げた先の少女は、そこにいる自分たちの事など見ようともしていなかった。
そんな彼らの上に乗せられた手。太さ1500m長さ6000mの人差し指の下でまた数千人が潰されていた。

やがて次の街を見つけた少女は先ほどの街と同じようにその街に覆いかぶさり乳房を下ろして行った。
しかし今度は押し付けたりはしなかった。
乳首の、乳頭だけを高層ビル群の上に下ろした。
そのツンと飛び出た乳頭の高さだけでも周辺の高層ビルより遥かに高い。
ビルなど高々200m。少女の乳頭は1000m近い高さがあるのだから。
乳頭だけでビル群は破壊されて行った。

先端が街に着いたのを感じた少女はそのまま体を動かした。
するとその体からぶら下がっている乳房も一緒に動き、その先端の乳首と乳頭も一緒に動く。
強靭な乳頭が、街をガリガリと削りながら動き始めた。
直径1000mを超える乳頭はビル群をなぎ倒しアスファルトを砕き街に筋を残して行った。
乳頭が通ったあとは茶色の地面がむき出しになり幅1000mもの線が引かれていた。
少女が円を描くように胸を動かせば、乳頭はそれに従い、街に円を描く。
あまりにも簡単に線が引ける事を知った少女は にこっと笑い、街の上に乳首で絵を描き始めた。
くすくすと笑い鼻歌を歌いながら胸を動かす少女。
街の上に大きなアートが描かれてゆく。
その過程で、また数千人が犠牲となっていた。
ビルを砕きながら高速で街の上を走る乳首はそこにいる人々を巻き込み一瞬で磨り潰していた。
人々が、ビルを砕きながら高速で接近してくるピンク色の乳頭を見て逃げようとしたときには、すでにそれは目の前まで迫っているのだ。
そしてその乳頭に触れた瞬間、人々はブシュッという赤い飛沫を上げて消える。
あまりに暴力的な乳頭によって、一瞬で磨り潰されていた。

「フンフ~ン♪」

鼻歌を歌いながら乳房を動かす少女。
乳頭はまず、街の外周を囲うようにぐるりと円を描いた。
これによりこの街にいる数万人の人々は、この街から外に出る事ができなくなった。
幅1000m強、深さ数百mの谷が形成されたのだ。
地面がむき出しになったそこはもはや断崖絶壁。
ビルの瓦礫などが押しのけられできた山脈の向こうには目も眩むほどの高さの谷間が広がっていた。
すべてが、乳頭によって抉られた大地と街の傷跡だ。
対岸はやや霞んで見えた。

円を描いたあと、乳頭をその中に移動させ、また街に線を引き始める。
コリコリ、コリコリ。
乳頭に小さなビルが弾ける感触を感じながら少女は乳頭を動かし続けた。
今もこの動かしている乳頭に小さな小さな小人が巻き込まれていると思うとゾクゾクした。
自分が胸を、胸の先の乳首を、地面にちょっとこすり付けているだけなのに、小人たちはきっと悲鳴を上げて騒いでいるのだろう。
自分の大きな胸を見上げて驚いているのだろう。
小人は小さすぎで見えないが、その様は容易に想像できた。
とても、心地良い優越感で満たされる。
気付けば少女の乳首はむくむくと勃起し更に大きくなっていた。
それに伴い、彫られる溝の幅も 溝の深さも、そして巻き込まれる人々の数も増えていた。

そして最後の線を引き、絵は完成した。

「できた~!」

少女は体を起こしそこに座り込んで、自分の絵を見下ろした。
そこには、街をキャンバスにして、にっこりと笑った顔が描かれていた。
 (^▽^)  シンプルな絵だった。
だが、顔を成す円の中には街が一つ閉じ込められ、右目の溝には高層ビル群が犠牲になり、左目の部分には駅が巻き込まれ、口を作る三角の中には3つの小学校が囲まれていたのだ。
その三角が描かれるとき、3つの小学校の全ての児童の目の前には空を埋め尽くすほどに巨大な乳房が展開されていた。
刺激が強い事 極まりなかった。
もっとも、彼らの頭で、そのピンク色に染まった空が女性の乳首だと想像できたかどうかは不明だが。

「うんうん、よくできました」

自分の描いた絵を満足そうに見下ろしていた少女は、不意に再び上半身を倒した。
そしてその乳房の下には、たった今 自分が描いた絵が下敷きになっていた。
下ろされた乳房は顔の円から楽々はみ出し街の郊外、となりの街にまで侵入した。

再び少女が体を持ち上げると、先ほど少女が描いた絵は、ひとつのくぼみに変わっていた。
当然、そこにあった街も一緒に姿を消していた。

「ちょっともったいないけど、残しておくと恥ずかしいもん」

言いながら少女は、胸に付いた街の成れの果てをパンパンとはたき落とした。


  *


次の街は少女が胸を押し付けながら前進したときそれに巻き込まれて消滅した。
「『ぶるどーざー』だぞー♪」と言いながら乳房で大地をゴリゴリ削ったのだ。
また、先の亜種で、左右の乳房の乳頭で地面を削りながら進む。などもやってのけた。

そうやって少女が自分の胸を使い街を押し潰して遊んでいたとき、少女は自分の横にこんもりと盛り上がった場所がある事に気付いた。
頂上部は白く、雲がかかっている。

「なんだろ。お山かな?」

目の前まではいはいして進む。
それは周りの山よりはずっと大きな山のようだ。
白い尾根と周囲を囲む青い模様が印象的だった。この模様は森だろうか。
近くにある小さな水溜りに、白い尾根が映っているのが見えた。

「ふふ、かわいいお山♪」

少女は目の前の、地面からちょこんと飛び出たその山を見下ろしてくすっと笑った。
今、少女は女の子座りになって山を見下ろしている。
山は少女の膝の前にあるが、その高さは、少女の膝の皿の半分の高さにも満たなかった。
標高4000m弱の山など、少女にとっては多少土が盛られた地面となんら変わりは無い。
その気になれば、10秒とかからぬうちにもっと大きな山を作り上げてしまえるだろう。
この山は、少女の砂遊びで作る山に劣るのだ。

  ズズン!

少女が四つんばいになった。
その体の下にはあの山がある。
山の上に、その山よりも何倍も大きな乳房がぶら下がった。

「あたしのおっぱいの方が大きいや」

乳房が山の左右に来るように胸を低くした少女。
すると乳房は山の左右に降りたのに、山の頂上は少女の胸には届かなかった。
胸板からぶら下がった乳房は、明らかに山よりも大きかったのだ。


仮に、少女が仰向けになり、胸板が山のある地面と同じ高さになったとしたら、大地に聳えるこの巨大な霊峰のその背後には、更に巨大な少女の乳房を見る事ができるのだろう。
霊峰が表面を藍、頂上を白で彩るように、乳房は表面を肌色、頂上をピンクで彩るのだ。
この霊峰でも、上まで登るには大変な準備と苦労が必要だが、その霊峰よりも大きな少女の乳房に登るには、いったいどれほどの準備と苦労が必要なのか。
高さは1万mを優に超える。麓である胸板からは山の頂上である乳首は見る事すらできない。
雲さえもその周囲をふわふわ浮かぶのが精一杯で、山頂の乳首を覆うのは難しいだろう。故に乳首は常に晴れるのである。
この乳房山には下乳の方からでは斜面が急過ぎて登れない。崖のように垂直な肉の壁なのだから。
なので少女の頭の方から登る事になる。それでも、斜面はとても急だったが。
 ザイルなどは使えない。柔らかいはずの少女の胸も、人々の力ではそれを突き刺す事もできないのだ。その肌に、へばりつくようにして登らなければならなかった。肌はキメ細かいので滑りはしないだろう。
 山は寒い。高所へ登るほど空気が冷たくなり風が強くなるからだ。
そして乳房山は、それを刻銘に表していた。
その表面はとても暖かい。触れていると眠たくなってくるような心地よいぬくもりだった。
だがその分、風の冷たさが際立ってしまう。
更に、少女の体温で暖められた空気が上昇気流となり強い風を生むのだ。
掴まるものが存在しない乳房山では、風に手足を取られればそれは麓までの転落を意味する。
少女の胸の坂を何千mも転がり落ちる事になる。
 乳房山に落石は無い。だが、別の危険がある。
山頂まで登るには長い長い時間がかかるだろう。
その間、ジリジリと太陽に照らされ続けていた乳房の肌はやがて汗をかく。
その汗はやがて水滴となり、乳房の表面を滴ってゆく。
だがその水滴は直径50mにもなる超巨大な水の弾である。
その滴る速度は実に時速数百km。
こんな巨大でこんな速い物が斜面を滑ってきたら、その進行方向にいた登山者はひとたまりも無い。
その巨大な水滴の中に取り込まれ、麓まで連れて行かれてしまうだろう。
胸板に当たって弾けた水滴から脱出した登山者の体からはややツンとする臭いが漂う。
更に汗は乳房のいたるところからいくつも噴き出す。
まるで登山者が山頂へ登るのを防ぐようためのようにそれは乳房の斜面を滴り続けるのだ。
 そしてそれが左の乳房の山だった場合、山全体が規則的に揺れている事に気付くはずだ。
それはこの巨大な山の遥か下にある、恐ろしく巨大な心臓が脈打つために発生しているのである。
鼓動。
それがこの地震の正体だった。
どっくん、どっくん。
その重々しい音は、この超巨大な少女の体の隅から隅まで血液を送る強靭なポンプが奏でている。
少女にとって、いや生物にとって当たり前とも言えるもの。
無意識以前の事だった。
だがその極自然な事象も、そこを登ろうとする登山者にとっては非常に危険なものだった。
心臓の鼓動は乳房を微かに揺らす。微かに、本当に微かにである。少女自身は、じっと集中しなければ気付けないかも知れない。
そんな微かな揺れは、乳房を登る人々を簡単に振るい落とす。
斜面にへばりつきながら上っていた登山者は、少女の心臓が一回ドクンと成っただけで宙に放り出され、斜面にぶつかったあとその肌の坂を転がり落ちてゆく。
この乳房が聖地であり何者の侵入も許さないかのように。
 少女の乳房の山には、片方でも数万人が取り付き登る事ができる。
必死に、汗水を垂らさせながら、登らせる事ができる。
壮大な冒険をさせる事ができるのだ。
だがそれも、少女が起き上がるまでの短い時間の間の話である。
少女が起き上がった瞬間、乳房はぶるんと揺れ、その乳房に登っていた数万人は高度数万mの上空に放り出されるのだった。


山と乳房の大きさを比べ終わった少女は少し胸を持ち上げ、左の乳房を山の上に持ってくるとその上に降ろした。
山は自身よりも巨大な柔らかい乳房を支えたように見えたが、その乳房の全重量がのしかかったとき脆くも崩れ去ってしまった。
そのまま少女の胸は地面に押し付けられ、標高4000m弱の山があった場所は深さ4000m強にも盆地になっていた。

気付けば一帯から街と言う街が消えていた。
代わりにあるのは少女が はいはいする過程で残した地層の剥き出しになった地面といくつもの丸い穴。
すべての街は乳房によって押し潰され、少女に気付かれなかった小さな街は移動する際の手や脚によって踏みにじられていた。

「ん~! 遊んだ遊んだー」

女の子座りのまま片腕の肘を持ち、その腕を空高く伸ばす少女。
その尻の下には奇跡的に乳房の襲撃を免れていた街が押し潰されていた。
桃のようにまるっこいかわいらしい尻は、そこに残っていた人々の上にズンと乗っている。
街を尻に敷いているなど気付いてもいなかった。

「そろそろ帰ろ。あー、結構汚れちゃったな~」

少女は自分の体を見下ろした。
体中いたるところ、特に胸が 土によって汚れてしまっていた。
土がそのままくっついていたりもした。
その土だけで街の一角を埋めてしまえるほどの量があった。
土以外にも街の瓦礫などもたくさん付いている。
張りのある乳房の表面のある場所には、渋滞していたところを潰されたのか、ぺちゃんこになった車が並んでへばり付いていた。
乳首の乳頭周辺にはビルが原形をとどめたまま引っかかっていたりもした。
乳腺に入っているビルもあった。
それら胸に付いたゴミをパンパンと手で払い落とす少女。
それでも、汚れは完全には落ちなかった。

どうしようかと思った少女はなんとなく辺りを見渡し、少し離れたところに小さな小さな水溜りを見つける。
湖であった。
立ち上がりそれに駆け寄った少女は湖の前に膝を着いてしゃがみこんだ。
湖の直径はおよそ5km。だが、少女にとっては手のひらに隠れてしまうほど小さな水溜りだった。

「まぁしょうがないよね」

少女は上半身を倒し、乳房をその湖に向かって下ろして行った。
湖の上空を乳房が埋め尽くした。
位置を調節し、湖がちゃんと乳首の下に来るようにする。
そして胸を下ろした。

  ちゃぷ

ところが胸は、乳頭の半分を濡らす前に底についてしまった。
少女には、湖は浅すぎたのである。
これでは洗うどころか濡らす事もできない。

少女にとっては乳頭をちょっと濡らす程度の事。
しかしそれだけでもそこにいた人々は大変な大災害に見舞われていた。
太さ1000m強の乳頭が湖に着水した瞬間、その凄まじい質量に跳ね除けられた水が津波となって沿岸に襲い掛かった。
一瞬で水かさが数十mも増した湖は、周辺の施設などをあっという間に湖底の遺跡へと変貌させた。
大きな湖であった。その上を、大型の遊覧船などが航行していた。
それらはほとんどが、超巨大な乳頭が巻き起こした津波に呑み込まれ転覆した。
手漕ぎのボートなどもあったが、そんなの考えるまでも無い。
溺れる者は皆無だった。何故なら水に放り出されたら最後、その凄まじい激流の中で瞬く間にズタズタに引き裂かれてしまうからだ。
溺れるような時間は与えられなかった。

そのあと、更に恐ろしい事が起こった。
この巨大な乳頭が動き始めたのだ。
円を描くその動きは、まるで湖をかき混ぜているようだった。
湖面は荒れに荒れた。
周辺の施設は完全に洗い流され、湖の周辺を囲う低い山さえも削られるような嵐だった。
そこに轟くゴリゴリという音は、乳頭の先端が湖底を削っている音なのだろう。
少女がちょっと胸を動かしただけで、地形が変わっていた。

乳頭が底についてしまった事を知った少女はそれをちゃぷちゃぷと動かした。
少しでも胸を濡らせればと思ったのである。
だが、湖はあまりにも浅く、水が少なすぎて、満足に濡らす事はできなかった。
仕方ないので少女は湖で胸を洗うのを諦め、身を起こした。
このとき、湖から持ち上げられた乳頭に、奇跡的に原形を保っていた遊覧船がくっついていたのだが、少女は気付かなかった。

ふぅ。
少女は苦笑して立ち上がった。

「あたしって大きすぎるな~。おっぱいもちゃんと洗えないなんて。しょうがない、帰りに海で洗っていこ」

そして少女は海に向かって歩き始めた。
その顔は満足気に微笑み、それを表すかのようにショートツインテがピコピコ揺れる。
軽い足取りで大地を踏みしめ、それに伴って大きな乳房がゆっさゆっさと弾んだ。
足の下にまだ生き残っていた人々を踏み潰している事になど まるで気付かず、少女は荒れ果てた土地をあとにした。
乳頭についていた遊覧船は、次に乳房が弾んだとき 高度十数万mの空に放り出された。



   ---------------------------------------



 ~ 1,000,000倍(100万) ~

休日。
普段は仕事で忙しい営業マンたちが汗を流しながら走り回るその街も、今日は少し静かである。
学校の休みな若者たちが仲間を集い何をしようか話し合っていたり、新しい服を買いにデパートへ行き、ついつい余計なものまで買ってしまう主婦がいたり。
それは休日になると繰り返される日常の事。
平日の堅苦しい空気から開放された、心躍るものだった。
誰もが皆 楽しい日になる事を信じて疑わなかった。

  ずしぃぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいん!!!

街は消え去った。


   *


「あらあら どうしましょう、道に迷ってしまいましたわ…」

不安そうな表情で辺りを見回す少女。
陽光に輝く長い長い金髪は、少女がキョロキョロと頭を動かすのに連られて左右に翻った。。
眉は「八」の字になり、その下の 角縁眼鏡の向こうの 深い海のように碧い瞳は憂いに染まっていた。
一糸纏わぬ美少女。
大きな乳房は 不安そうに手の指を絡め腕が寄せられる事で左右からぎゅうぎゅうと押さえつけられていた。
不安に駆られいっぱいいっぱいの少女は、たった今その足の下に一つの街を踏み潰したが気付いてはいなかった。

「せっかくの休日、良いお天気だからお散歩しようと思っただけですのに…。慣れない事はしないものですわね…」

少女はせわしなく辺りを見ながらおどおどと歩いてゆく。
その足の下にはすでに凄まじい数の人々が犠牲になっていた。
全長240km幅90kmの足である。
たった一歩の下にいくつもの街をまとめて踏み潰してしまう。
それだけで何千万人という被害が出た。

しかし少女は、自分が街を踏み潰している事も、一歩ごとに数千万の人間を虐殺している事も気付いていなかった。
感覚が鈍感なわけではない。
少女にしてみれば、そうであろうとなかろうと、街や人間の存在を足の裏に感じるなど不可能だ。
存在を失念しているわけではない。
別に、不安の中で 足元に人間の町がある事を忘れてしまったわけでも無いのだ。
少女は本当に、そこに街がある事を知らないのである。
人間が住んでいるとは思っていないのだ。
人間と言う存在そのものを知らないのだった。
だから少女がそこに足を下ろすのに躊躇う事は無く、また 踏み潰そうと力を込める事も無い。
少女は、ただ歩いているだけなのだから。

街の建物が集まる主要部分がおよそ10kmの中に集まっていたとしても、それは少女にとっては1cmというとてもとても狭い範囲であった。
地面の模様のひとつである。
踏みつける事に、なんの憂いも無かった。
踵から下ろされた足が、その形の良い足の裏を地面に設置させてゆき、そしてつま先で大地を蹴って持ち上がる。
それは、人間の歩行の、極、当然の事だった。
その一歩の間に何十もの街が踏まれてしまう。
小さな都市など、その小指だけでまるごと潰されてしまった。
太さ、実に15kmの小指であった。

すでに自分が何億もの人間を踏み潰しているとは夢にも思っていない少女はふぅ…と息を吐き出した。

「せめて知っているところに出れば、帰りようもありますのに…」

頬に手を当て 憂いを帯びた表情で遠方を見据える少女。
その足元、山脈よりも巨大なつま先の前にはいくつかの街がギリギリ踏み潰されるのを免れていた。
距離にすればまだ10kmも離れていたが、それは街の前に鎮座する超巨大な足の指の爪一枚程度の距離だった。
指々は大地にめり込んでいる。
少女の途方も無い体重に、大地が耐え切れ無いのだ。
街中に、大地が沈んでゆく音が轟いていた。
しかし人々は、何が起きているのかまるでわからなかった。
突然、半分の視界が肌色に埋め尽くされたが、それが何を意味するのか理解していない。
まさかそれが、ひとりの少女の足の中指の先の腹部分だなどと、誰が考え付くものか。
だがこれが異常な事であるのは理解できた。
町の住民たちは、慌てて貴重品等をまとめ、避難所へ避難を開始した。

そんな自分の足元で極小の人間たちが自分の足の指を見て避難し始めた事など知る由も無い少女はため息をついていた。

「……歩くしかありませんわね」

そして再び歩き出した。
このとき、つま先の前にあった街は 足が持ち上がった時の凄まじい衝撃で地殻ごと吹き飛ばされていた。


   *


  ずしぃぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいん!!!

     ずしぃぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいん!!!

少女がてくてく歩く過程で、足はしっかりと大地を踏みしめる。
街も村も関係無く、山も森も関係無く、海さえも歩いて渡った。
標高1万mの山があったとしても少女から見ればそれは1cmの出っ張りに過ぎない。足の指の太さにも劣る大きさだった。
逆に深度1万mの海も、足の指の爪にも届かない深さと成る。
どちらも、少女が歩く上で気に留める必要の無いものだった。
世界にとって少女は大きすぎ、また少女にとって世界は小さすぎた。
山は自身よりも大きな指の下でゴリゴリと押し潰され、海はその凄まじい大きさの足に進入されると世界中の海面の高さを一気に引き上げた。
時に国一つがその足の下に収められる事もあった。
少女が歩いた後に残される足跡は、緑色の大地の上に刻銘に刻まれていた。
長さ240kmの大穴である。一歩が隕石の衝突にも似た威力だった。
少女の歩行で世界が震えていた。

少女は足元を見て行動しようとはしない。
また振り返りもしないので、自分が足跡を残しながら歩いている事には気付いていなかった。
道に迷っているのに振り返らないのは少女がおっとりした性格だからなのか抜けているからなのか。
振り返りそこに残る足跡を辿れば来た道をまっすぐに帰る事ができるというのに。
もちろん 途中で海を渡っていたらその時は別の方法で戻らなければならないが。

ふぅ。
少女の口から漏れた吐息はそこを飛んでいる衛星を吹き飛ばした。
先ほどから無数の衛星が少女の体に激突しているのだが、それらは少女の肌に何かが触れたという感触さえ与えなかった。
砂粒ほどの大きさも無い衛星なのだから。
少女のかける眼鏡は、そんな小さな衛星が目に入らぬよう、その高さを飛んでくるすべての衛星をその透明のレンズで叩き落していた。
長い金髪がゆらゆらと揺れ、ゴミのような衛星を絡め取っていた。
どちらも少女の意識の外の出来事である。

そして少女が島国を押し潰した足を持ち上げ大陸の上に踏み下ろそうとしたとき、足が自分のもう一つの足と絡まってしまった。
グラリ。前のめりに体勢が崩れる。

「あぁ! あぁーーーーーーーーッ!!」


   ずどおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!!!


少女の、身長1600kmという途方も無い巨体が大地に倒れこんだ。
完全に投げ出されていた。
3つの国が下敷きにされた。
長い髪がばさっと広がり、転倒の衝撃でかけていた眼鏡が吹っ飛んだ。
カシャンと音を立てて転がった眼鏡は上下逆さまになりある街の上に落ちて止まった。
その幅は街など比べようも無いほどに広く、レンズを囲う淵は高層ビルの高さよりも厚かった。
山よりも遥かに大きな眼鏡。
逆さまになって転がる眼鏡の高さは3万mに達していた。
そんな眼鏡の山の麓にちょこんとある街は、当然それが眼鏡であるなど気付かなかった。
街はレンズを境に寸断され、その反面は落下のあと眼鏡が若干滑ったために削り取られ更地にされていた。
眼鏡が落ちた衝撃で街はビルが飛び上がるほどに揺れ住民のほとんどが粉々になった。

「うぅ…」

顔をしかめながらかぶりを振って体を起こす少女。
痛みは無く、どこにもケガは無さそうだ。
途切れていた視力に力を入れ辺りを見渡そうとしたところでその視界がぼやけている事に気付く。

「あ…眼鏡眼鏡…」

ぼんやりとした目で眼鏡を探し手をパタパタと動かす。
その行動でまた多くの街が消える事となった。
眼鏡を探して伸ばされた手が地面に下ろされたときその下敷きになって潰される街。
掻き毟るように大地を削った指に巻き込まれ粉砕された街もあった。
指の下敷きになって地中深く埋められたり、大地を撫でるように動かされた手の下で磨り潰される街まで出た。
少女にとってはちょっと手を伸ばした程度の範囲でも、人々にとってそれは数百kmにも及ぶ広大な範囲なのだ。思い立って即 逃げ出せる広さではない。
伸ばされた五指が大地に突き刺さる。
陽光に照らされ輝く爪は10km以上の長さがあり、それが地面を引っかくとその裏に街や山が削り取られた。

そうやっていくつもの街を叩き潰しながら四つんばいになって眼鏡を探していた少女は、次に手を伸ばしたとき ようやく目的の眼鏡を手にする事ができた。
手が眼鏡を取り持ち上げる過程でその下にあった街は残っていた半分も削られ、結局すべてがなくなってしまった。

そのとき、四つんばいの上体から上体を沈めながら手を伸ばしていた少女の その胸板からぶら下がった乳房が地面に触れてしまった。
瞬間、胸に刺激を感じた少女は慌てて身を起こした。

「な、なんですの!?」

座り込み 急いで眼鏡をかけてそこの地面を見渡した。
他と変わらない緑を基調とした豊かな大地。目立つものと言えば、今しがた自分が下ろしてしまった胸の跡と大小様々な大きさの灰色の模様だけだった。

そこで初めて、目の前の地面に意識して目が向けられた。

「そう言えば…この灰色の模様はなんなのでしょう…。砂では無さそうですけど…」

見渡せばそれは周囲に無数に存在していた。
少女は手を伸ばし、自分の膝の前にあったその模様に指先で触れてみた。
緑色の大地の上にポツンとあるその小さな小さな灰色の模様は指の幅の半分の大きさしかなく、指を乗せると簡単に見えなくなった。
指をどけて見るとそこには指先の形に穴ができていた。
灰色の模様の特徴的な感触は感じなかった。

確かめるように他のいくつかの模様にも指で触れてみた。

「危険なものではなさそうですわね。では先ほどの感触はなんだったのでしょうか…」

少女は、あの刺激の原因を調べるべく もう一度上体を倒し胸を地表に下ろした。
しかし先ほどのような刺激は感じなかった。

「あら…何も感じませんわ」

言いながら胸をさらに押し付けたとき、横に広がった乳房に灰色の模様が巻き込まれた。
すると再びあの刺激が体を走り、少女は体をビクンと振るわせた。

「あん…ッ! さ、さっき指で触れたときは何も感じませんでしたのに…。……でも、とても気持ち良かったですわ…」

少女は胸を少し横に動かし、そこにあった灰色の模様に触れた。
またあの電気が走るような刺激が感じられた。

これは…なんだ。
この灰色の模様がなんなのかはわからないが、これに胸で触れると心地良い刺激が感じられる事はわかった。
快感だった。
もっと…これが欲しくなる。

少女は四つんばいのまま移動し、視界に入った灰色の模様に片っ端から胸を押し付け始めた。
小さな小さな、1mmほどのそれも見逃さなかった。
そういう小さい模様は胸に触れるとツンという微かな刺激に変わったが、2~3cmもある大きなものはビリッという鋭い刺激になった。
気持ちいい。体が快感に震えた。
敏感な乳首で触れれば、その刺激はよりはっきりと感じる。
ん…ッ。
少女の口から微かに喘ぎ声が漏れる。
見れば少女の頬には僅かに紅色が差していた。
うっとりとした目で、顔の真下にポツンとある灰色の模様を見下ろしていた。

「知りませんでしたわ…。こんなにも気持ちよくしてくれるものがあったなんて…」

ほぅ…と吐き出された吐息。
少女は垂れ下がっていた髪を耳の後ろにかけると、その模様の上に胸を降ろしていった。
右の胸の乳首の下になるようにして。
1cmも無い模様は乳頭の下に消えてしまった。
更に少女は胸を下ろし乳房をぐりぐりと地面に押し付けた。
乳首に感じる刺激をより強く感じたいがため。

ビル群を中心とした縦横5kmほどの街の主要部。
そこから外はビルも少なくなって住宅街などが増え始める。
小さくなる建築物の中で目立つのは広い敷地を持つ学校や公園。
郊外へ行くと畑が広がっていた。
平和な街だ。
今も人々は仕事に従事し日々の勤めを果たしている。

そんな彼らは、突然の夜をいぶかしみ首を捻る暇さえ与えられなかった。
疑問を抱き、真実を知って悲鳴を上げる事も許されなかったのだ。

この大都市の上空を、その数十倍もの範囲を覆える超巨大な乳房が占領した。
ピンク色の乳首からぴょこんと飛び出た乳房が地面に向かってそそり立ち真下の街に狙いを定めていた。
街の主要部よりも大きな面積を持つ乳頭の先端がそこにあった。

少女から見ればこの街の主要部など5mmも無い。
郊外まで含めても2cmかそこら。
乳首だけで、街の上空を覆っていた。
主要部など、その乳首と比べれば砂粒の集まりみたいなものである。
あまりにも小さすぎて狙いのはずしようが無い。
少女がそっと胸を下ろしただけで、街全体が乳首の下で潰れてしまった。
それにとどまらない乳房の降下は周辺の街さえの呑み込み、やがてそこには巨大な乳房がずっしりと押し付けられたのだ。
乳房が下ろされたそこには幅200kmに届こうかという恐ろしく巨大な穴があけられた。
最も深いところで深さ数千m。
快感を求めた少女が少し胸を押し付けただけで、地形が変わってしまった。

電気が走るような快感を押し付けた胸のいたるところに感じた。
小さなものや大きなもの。何かが胸の上でパチパチと爆ぜるようだった。
体がゾクゾクする。
こんな快感は今まで感じた事が無かった。

少女は自分の乳首が熱くなるような気がした。
血がどんどんそこへ集まってゆく。
その先端は硬く勃起しそそり立った。乳頭が更に巨大になったのだ。
その分だけ、地面にめり込んでいた乳頭はより深く突き刺さり、そこにあった街の瓦礫をもっと細かく砕いた。

一度胸を持ち上げる少女。
体を起こし地面の上に座り込む。
大きな乳房がぶるんと揺れ、乳房の表面についていた街や山がぼろぼろと落ちて行った。

周辺にはたくさんの穴が開いている。
少女が街を潰すために胸を押し付けたあとだった。
まるで流星群が隕石になって降り注いだかのように無数に穿たれていた。

少女は自分の大きな胸をぎゅっと抱いた。
手に触れた乳首は未だに硬く、更なる快感を求めていた。
自分の乳房がこんなにもかわいく見えたのは初めてだった。
なぜ、なぜこんなにも気持ちいいのだろう。
この気持ちよさは体が疼いてしまう。
もじもじと体を動かした。

その快感の元が何であるかは少女にはわからない。
それが、少女の乳房によって押し潰された無数の人間の命が弾ける感触であるなどとは思いもしなかった。
地面にポツンとある小さな灰色の町には数十万人が暮らしていたが、少女の軽いおっぱいの押し付けはいくつもの街を巻き込むのだ。
この胸だけで何億の人間が犠牲になったことか。
だが人間の存在を知らない少女はそんな彼らの事などまるで気にかけていない。
ただ快感を得たいためにそれを得る事ができる灰色の模様に胸を押し当てるだけ。
人間の街など少女にとってその程度の価値であり、街はそのために存在していた。
人類の持つ世界最高の建築物ですら少女にとっての1mmにも満たない。
太さ15kmの足の小指と並べば、本当に、本当にその足元にちょこんとある程度の存在である。
まして普通の超高層ビルなど100m200m300mがいいとこだ。
それらは彼女の前に来ると0.1mm0.2mm0.3mmになってしまう。
どんなに目を凝らしても、それが人工的な建造物であるとは気付けないだろう。
その中に何百人といる人間なんて…。
いくつもの街を押し潰したその胸の乳首には無数のビルがこびりついていた。
土砂と一緒にキメ細かい肌の僅かな隙間から飛び出ている。
乳腺の中だけで何百というビルが詰まっていた。
そんな大量の人口建築物が自分の胸に付いているのを感じてもいない少女だった。
その頬はまだ染まり、女の子座りで座ったまま胸を抱えた少女は暫くそこから動かなかった。
大量に感じた刺激の余韻を感じて体を震わせていた。
僅かに開いた口の間から、海を吹き飛ばせる微かな吐息が漏れた。


   *


ここにいたるまでに何億もの人々が殺された。
多くの国々も壊滅的な被害を受けており、国連は早急な解決を求められていた。

しかし、どうやって…。
円卓を囲む各国の首脳たちはスクリーンに映し出されている不鮮明な画像を見て顔を俯けていた。
これは地球から1万km離れた衛星から送られてきた映像である。
ノイズ交じりのその映像には青い地球が映し出されていた。自分たちのいる星である。

その星の上を動くものがあった。
これは遥か彼方からの映像で、映し出されているのは世界でもある一つの星だった。
それの全体像を未定ながら動いているものが見えるとしたらそれは台風など大型の雲以外にはあり得ない。あり得ないはずだ。
なのにその影は、その映像の中で動いていた。
それはつまり、この影が恐ろしいほどに巨大な物体であると言う事だった。

一人が、ようやく声を絞り出していた。

「本当に…これが…………………………人間……なの…か…?」

静まり返った会場の空気が一段と重くなる。
誰もが顔をうつ伏せ声を発しようとしない。

そんな中でただ一人、この会議で解説を勤めるはずだった男が、沈んだ声で答えていた。

「……はい。別の映像があります。それをご覧ください…」

スクリーンの映像が切り替わり、遠方から地球を映していた映像は、もう少し近いところから地球を映すものになった。
地球を斜めに見て画面の左下半分を地球が。丸みのある地平線を境にして、右上半分が宇宙という映像だった。
その映像が映し出されて数秒後、その地平線の向こうから昇ってくるものがあった。太陽ではない。
それは、それは、人間の頭だった。
ついで肩が、上半身が、となっているうちにその全身が地平線の向こうから現れていた。
手足、体、そのどれを見ても、人間と変わりない。
長い金髪で眼鏡をかけた、一糸纏わぬ少女だ。
愁いを帯びた表情で周囲を見渡すように頭を動かしながら歩いている。
その美しい全裸の美少女を見て邪な事を考える者はひとりもいなかった。
全員が恐怖と畏怖に顔を青くしてスクリーンに見入っていた。
その少女が歩いているのは、地球なのだ。
比喩でも過大な表現でも無く、間違い無く偽り無く 地球の上を歩いているのだ。
だがこの映像は宇宙から撮影されたものなのに、その全体像がはっきりと見えていた。
青い大陸の上を歩いていたかと思うと海へと侵入し、その海をジャブジャブとかき混ぜながら横断してまた別の大陸の上を歩き始める。
途方も無い大きさのはずの大地が、少女と同じ画面に収まってしまっている。
CGではない。現実なのだ。
現実にこの超巨大な少女は存在し、いくつも国が踏み潰された。
地図を見た事のある者なら、そこになんという国があるのか予想できたかもしれない。
少女はその国の上を歩いて行った。
集まっていた首脳の一人が、小さく呟いた「私の国が…」という言葉は他の首脳の耳にも届き、空気を更に重くした。
その少女はなんの関心も示さぬままそこにあった国を踏みにじって通過していた。
そのまま少女はカメラの映し出す範囲の外へ出て行ってしまった。

そこに集う首脳たちの顔色が一段と悪くなるのを見て、解説の男は彼らが知りたいであろう情報を提示した。

「巨人は身長およそ1600kmの後半であると思われます、他所からも同じような情報が上がってきております」
「せんろっぴゃく……」
「…そうです。こちらに、その情報を裏付ける映像があります」

そう言って解説の男は再びスクリーンの映像を切り替えた。
そこには宇宙が映っていた。

「いいですか。一瞬の出来事ですので見逃さないでください」

その言葉に、食い入るようにスクリーンに見入る首脳たち。
暫く、スクリーンには変わらず宇宙が映し出されていた。
だが次の瞬間、画面の遥か彼方、下に、少女の小さな頭が映し出された。
かと思ったときには、すでにその顔は画面の大半を埋め尽くし、と、思った瞬間には画面は青い瞳で埋め尽くされた。
直後、

  ザーーーーーー!

画面にノイズが走った。

「……この衛星は高度約1500kmほどを飛んでおりました。ですが、歩いてきた少女の瞳、恐らくは眼鏡のレンズに激突し大破しました。この映像がその証拠です」
「…」

最早誰一人として声を発する者はいなかった。
あまりの絶望に気が沈んでしまっていた。

そこへ、首脳ではなくなんらかの技術研究の長を務めているというものが口を開いた。

「この巨人がどこから現れたかは…」
「…まったくわかっていません。巨人は突然現れました。気付いたらそこにいたのです」
「奴を始末する事はできるのか? このままでは世界中が破壊し尽されてしまう…」

そう言ったのは赤道上の砂漠の国を収める白い布を纏った恰幅のいい男だった。
解説の男は首を振った。

「我々の技術力では恐らく不可能でしょう。あの巨人は我々の常識を遥かに超えています。あんなに巨大でありながら人間の形体でいられる事は本来あり得ません。更に、上半身は宇宙に呼び出し、酸素が無いのはもちろん様々な宇宙船にさらされ灼熱と極寒の入り混じる環境に置かれているのに主だった外傷は見られない。あれが生物であるにしろそうでないにしろ、我々の適う相手ではありません」
「で、では我ら人類はいったいどうしたら良いと言うんだ!」
「そうだ! このままあのエイリアンに皆殺しにされるのを待つと言うのか!」
「…現状では、そうなる可能性が最も高いかと思います…。地球外への脱出を図ろうにも時間も技術もありません。まして全人類を脱出させるなんて不可能です。たった一握りの人間だけで脱出したところで、テラフォーミングすら出来ていない人類が宇宙空間で生きる事はできません…」
「…」

絶望に包まれた会場。
抗う事のできない圧倒的な力の差。人類は少女に屈したのだ。
これから人類は、地球上のどこにいても いつこの巨人に襲われるかわからない恐怖を抱きながら 巨人が自分のところに来ないように祈って生きてゆく事になる。
知らぬうちに少女は全人類を降伏させていた。


   *


波が過ぎ去り気持ちの落ち着いた少女は正座を崩した楽な姿勢で大地の上に座っていた。
乳房についた土を払い落とし微笑みながら地表を見下ろしている。
そんな自分の姿が遥か上空から撮影されその姿を見て各国の首脳が死にそうなほどに頭を悩ませている事など露と知らぬ清清しい表情だった。
僅かに残った小さな村などの人々はここに来てようやく事の恐ろしさを理解し逃げ出し始めた。
少女の巨大な膝の影に入っている村の出来事だった。
もちろん、自分の周囲にまだ無数に残っている人間たちが、自分の姿を見上げて阿鼻叫喚の如く泣き叫び逃げ惑っている事など、少女は知らなかった。

「とても気持ちよかったですわ。これはとてもすばらしいものですのね。…ですが……気持ちいいのは気持ちいいのですが、何故でしょう、それだけでは無い気がします…」

この灰色の模様に胸を押し付けたときの快感は筆舌に尽くし難い。
とてもいい気持ちになっていた。
…だが、それとは別に 頭がぼーっとして体が熱くなるのも感じていた。
刺激を感じるほどにそれは顕著になる。
体がむずむずしてくるのだ。股間が疼いた。

だが、それが何を意味するのか少女はわからなかった。
少女はまだ一度も異性を経験していない。
そして更に、一人での行為もした事がなかった。
完全な純潔であった。
自身の生物としての、女としての体の仕組みを知らないのだ。

快楽は消え去っていたが、求め始めた体はまだ満足していなかった。
物足りない。
刺激はとても気持ちいいが、それをスパークさせる方法を知らない少女はどれだけ快感を得ても満足する事ができなかった。
心の奥と股間の疼きは止まらなかった。
自分のそこを見下ろしながら少女は言う。

「どうしたのでしょう…。何故こんなにここがむずむずするのでしょうか…」

不安そうに見つめる少女。
その少女の手は、無意識の内に股間に伸ばされていた。
行為の方法を知らないはずなのに、本能がそこに絶頂を迎える術を求めているのか。
太さ数百mの黄金の陰毛の森を掻き分けて指はそこを目指す。
そしてその向こうにある女性の部分に届こうかと言ったところで、手は離されていった。

「わたくしったら何をしようとしているのでしょう。こんなところに手を伸ばすなんて…」

少女にとってここは排泄行為をするだけの場所である。
しかし…。

「……でも、こうしなくては、いけないような気もしますわ…」

再び手は近づけられ、指は割れ目を押し開いて中へと入った。
中はとても熱く、そして 濡れていた。
だがそれはおしっこのせいではなさそうだ。
どこと無く粘着質だった。

左手の指をそこに進入させ、右手でその上を覆う。
この行為がとても恥ずかしいものに思え、周囲に誰もいないのにそれを隠そうとしていた。

無論、誰もいないとは少女に見えないだけで、実際にはまだ何千万と言う人が少女の周囲にいた。
もともと何十億といた事を思えば、大変少なくなってしまったが。
だがそんな彼らも、少女が今 何をしているのかを知る事はできなかった。
指が差し込まれている割れ目は、地上から100km以上も上空での事。
その周囲を恐ろしい大きさの折りたたまれた脚が囲んでいるのだからそこを見られるはずも無い。
高い高い雲ですら、少女の指の太さほどの高さなのだから、それすらも見上げる人々にとっては少女の脚は空を肌色に塗り替えるほどの存在である。
言うなれば、地平線の向こう 霞むほどの遠方に巨大な足指が置かれるほどの大きさである。
親指にいたっては世界最高の高所から見ても、爪の上を見る事はできないだろう。
少女が隠さずとも、その行為は人の目に触れていなかった。
たった一点を覗いては。


衛星からの映像。
あの大型スクリーンには、大陸の上に座った少女が自慰に浸っているのがデカデカと映し出されていた。
遮るものの無い映像は霞む事なくクリアに見えている。
一部、ポルノ事情のご禁制の国の首脳などはその映像から目を逸らして悲鳴を上げた。
大きすぎる巨人の行為は細部までくっきりと見えるのだ。

手で隠されてはいるがその手がもぞもぞと動く事。
少女の上気した頬、眼鏡の向こうのとろんとした瞳が、その行為の愉悦を物語っていた。

先もこの大巨人は大陸にあった街に乳房を押し付けて潰すという行為をやっている。
周辺に空いた無数の大穴がその証拠だ。
その行為の映像を見せられたとき、何人かは胃の中のものを吐き出し、気を失うものまで現れた。
何十万何百万という人々の住む町が、この大巨人の快楽を求める行為の犠牲になって押し潰された。
何の罪も無い人々がである。
別の小さなモニターには地上の光景が映し出され、そこでは わけもわからぬまま逃げ惑う人々に上空を覆うピンク色の空が迫ってきていた。
そのピンク色の空の正体が乳首であると、大型スクリーンを見てようやく理解できた。
そしてそれはあっという間に地上に下り、モニターがノイズを発する瞬間、そこを走っていた人々が押し潰され赤い飛沫をぶちまける光景が映し出された。
スクリーンの巨大少女は胸をぐりぐりと押し付けていた。
顔には恍惚の笑みを浮かべていた。
無数の人々を押し潰して快楽に浸っているのである。
実に気持ちよさそうな表情。
それが、より一層首脳たちを恐怖させた。
少女はその行為を何度も繰り返したのだ。
このスクリーンに映る街がなくなるまで何度も。
少女がその場をどくと、街があったはずのところには二つの大きな穴が穿たれていた。


少女はまだ自分の秘所に指を出し入れしていた。
コツがわかってきた。感じていた。
快楽故に僅かにひそめられた眉。キュッと閉じられた唇。赤く染まった頬。
くちゅくちゅという音が少女の体から大地に伝わり地上の人間たちの耳に届いていた。
自慰にふける少女自身にもその音は届き、そのあまりにいやらしい音に耳まで赤くなる。
この行為がどういったものなのかは知らないが、とてもはしたない事をしているような気がしていた。
誰もいないはずなのに、恥ずかしさで身を縮こまらせていた。

地上のほとんどの人々は、その超巨大な肌色の物体を座り込んだ少女の脚だとは理解していなかった。
しかしそれが正体不明で周辺に圧倒的破壊行為を続けていたのはわかった。
自分たちが奇跡的に生き残った数少ない人間であると知らない人々は遠方の友人や家族に連絡を付けようと必死に電話を手に走り出していた。
もちろん、最早 国の体を成していないほどに破壊され尽くした大陸の上で、電話など使えるはずも無かった。
使えたとしても、この巨大な少女の体がすべての電波を遮断して電話は繋がらなかったであろうが。

そうやって繋がらない電話を手に起こっている事の異常さに声を荒げ逃げ回っていた人々の耳を、周辺のすべての音を掻き消すほどの大轟音が劈いた。
ぐちゅ…っ、ぐちゅ…っ、という嫌悪感さえ覚える粘着質のあるものをかき混ぜるような音だった。
それは固くそこを抑える両手の盾を容易に貫いて人々の鼓膜を破った。
耳が爆発し血が噴き出す。
人々はバタバタ倒れて行った。
その音は、人々の耳に入れるには大きすぎたのだ。
一人の少女が恥ずかしさに顔を染めながら控えめに自慰をする音が聞こえるたび、少女の周辺から生きている人間は消えて行った。

「ん…っ、はぁ……指が…止まりませんわ…。それどころか、もっと動かしたくなってしまいます…」

熱い吐息を吐き出しながら少女は自分の股間を見下ろした。

「……でも、胸があの灰色の模様に触れたときと比べると、この快感も霞んでしまいますわね…。気持ちいいは気持ちいいのですけれど…」

言いながら少女は動かしていた手を止め、指をそこから引き抜いた。
引き抜かれたとき指先とそこには白い糸が引き、途切れた糸は水滴となって地表に落ちた。
5kmもある愛液の一滴であった。この一滴が落ちるだけで街が滅んでしまう。
引き抜いた指を目の前へと持ってきて観察して見ると、指は全体が粘液で濡れており、陽光を浴びるとキラキラ輝いた。

その輝きは、少女の中の欲望を更に強く燃え上がらせる。
快楽がほしい。もっと強い快楽がほしかった。
生まれて初めて感じる愉悦、その果てがまだ見えなかった。
そこに辿り着きたい。この行為の果てに、それがあるはずのなのだ。
自分の体がより疼くのを感じていた少女は、ふと思いついた。

「そうですわ、もっと大きいこの模様を使えばもっと気持ち良くなれるはず…。きっとどこかにあるはずですわ…!」

言い終わったときにはもう少女は立ち上がり歩き出していた。
僅かに早足で。
体が求める快楽を少女も求めていた。
あの快楽がほしい。あれを超えるものがあるのならもっとほしい。
その快楽を想像すると胸と股間がキュンとする。
少しでも早く、それに身を委ねたかった。

胸の横で腕を振りパタパタと掛けてゆく少女。
その足の下には、また何百もの街と何十もの国が踏み潰された。


   *


すでに少女は地球を3周はしていた。
キョロキョロと辺りを見渡しながら大陸を踏みしめ海を踏み抜き島を踏み潰してあっという間の事である。
50歩も走らぬうちに1周してしまうのだから。

そうやって4周目の地球一周をしていたとき、進行方向に島が見えた。
縦横400kmほどの大きさである。少女にとっては両足で立つのが精一杯の広さであるが。
そしてその島の上は灰色の模様でびっしり埋め尽くされていた。
それを見た少女の目が輝く。
嬉しそうにその島に駆け寄って行った。


少女が地球の上を走り回っている間に、20億もの人々が犠牲になった。
駆け足になり一歩の威力が増したその足は大陸の上の国を踏み潰すと同時に地中のマントルも踏み砕き大陸に大きな亀裂を入れていた。
ズンと足が踏み下ろされた瞬間 足は地中にめり込み、周囲に無数のヒビが走る。
ヒビにそって隆起した大地は数千mの山脈となり、足が持ち上がるためにつま先で大地を蹴るとそこは隕石が衝突し爆発したような衝撃で吹っ飛ぶのだ。
北極の氷は踏み砕かれ北極そのものが消滅し、南極は地殻を踏み抜かれてあふれ出た凄まじい量のマグマによってその氷を融かされた。無論、少女はマグマを熱いとも感じていなかった。
島が丸ごと踏み潰され、海底が更に3万mも深くなるところもあった。
たった一歩が、地球に壊滅的なダメージを与えるのである。
少女が3周もする頃には、地球はかつての姿とは大きく変わっていた。

そして少女が見つけた島。
赤道付近にあるこの島は気候も暖かく安定していて多くの人々が暮らしている。
街も大きく治安もいいので各国の首脳などはよくこの島を集合の地としていた。
今もそうであった。
首脳たちはこの島の施設から衛星を通して超巨大少女による世界中の大破壊を見据えていたのである。
そして、その少女を映す大型スクリーンに、自分たちのいる島も映し出された。
少女が島に向かって走り出したのを見て首脳たちは悲鳴を上げ始めた。
次の瞬間、島全体が夜になった。


少女はその小さな島の前に座り込んでいた。
島はその大半を灰色の模様で埋め尽くされていた。
今までに見た事の無い大きさの模様だった。
これなら、いったいどれだけの快楽が得られるだろう。
快楽を想像し、はぁ…と感嘆の息を漏らし、少女は街の上に覆いかぶさった。

街の上空を超巨大な乳房が占領した。
四つんばいになった少女が街の上に移動してきたのである。
その胸部だけでも、島全体を覆ってしまっていた。

そっと胸を下ろし、両の乳首の先端で模様にツンと触れた。
その瞬間に、あの快感が更にすばらしいものになって体を駆け抜けた。
望んでいた快楽だ。体がピリリと痺れる様な感覚を覚えていた。ビクンと震わせていた。
これだ。これが欲しかったのだ。待ちに待った快感だった。
ほんの一瞬の快楽。しかしそれは度重なる刺激の中でも果てる事ができず知らずうちに欲求不満になっていた少女を一気に燃え上がらせた。

「……もう…我慢できませんわ…!」

少女は胸を一気に下ろした。
街に胸を押し付けた。
瞬間、快感が全身を染め上げるほどに迸り、体中を満たして行った。

「あぁん…ッ! き…気持ちいい…ッ!!」

更に胸をぐりぐりと押し付ける。
四つんばいから寝そべる格好へ。
島を胸の下にして海に寝転がっていた。
両手の指が海に突き立てられ、海をガリガリと掻き毟った。
投げ出された巨大な両足はそこにあった別の島や大陸を蹴飛ばし足指の下で砕いていた。
少女の胸の重さに耐え切れず、島が海に沈み始める。
そんな事にはかまわず、少女は島によがり続けた。
何億人がその巨大な乳房で押し潰された。
島であるこの街に逃げ場など無くただの一人とて生き残る事を許されはしない。
島で胸を愛撫して喘ぐ少女の胸の下では無数の人々が断末魔を叫びながら死んでいった。
この刺激の、快感の正体は もしかしたら少女が彼らの魂をその大きな胸の中に吸収しているのではないだろうか。
押し潰された人々の魂はその乳房の中にすぅっと吸い込まれ、その中にあるであろう膨大なミルクにとけていった。
何十億と言う人間の魂がである。
そしてそれは、いつか生まれるであろう少女の子供に栄養価の高いおいしいミルクとして与えられるのだろう。

ふと少女は、体を前に向かって動かし始めた。

「む、胸だけでは……。ここも…ここも気持ち良くなりたいですわ…!」

ズリズリと動く少女の体。
やがてほとんどが潰れ去った島の上に、少女の股間が現れた。
黄金の陰毛に守られた秘書がゴシゴシと押し付けられる。
それは、胸で感じるのとはまた別のすばらしい快感だった。
もっとそれを感じたくて更に股間がこすり付けられる。

「はぁ……ふぁああ…」

とろんとした表情の少女。
海の飛沫が眼鏡にかかるのも気にしていない。
一心不乱に股間をこすり続けていた。
少女の股間が動くたびに島はどんどん低くなって行った。
削られた島が小さくなる。
もうほとんどが海に沈んでしまっていた。

島がなくなると、少女はうつぶせに寝転んだ状態から 膝を曲げ尻を上げた体勢になった。
上半身は未だに海に突っ伏したまま。
水深1cmの海でおぼれる事はできない。
海底に押し付けられた乳房の先端では、乳首が海底を削っていた。
突き上げられた尻の股間に片手が伸ばされ、指が秘書の中に進入しそしてかき混ぜ始めた。
そこに快感が発生する。
もう片方の手で自分の胸を揉みまわし、もう一つの乳房は海底に押し付けた。
乳首を海底が愛撫していた。
3箇所を同時に攻め、溜まりに溜まった快感が一気にスパークする。

「あぁ…ッ! あぁああああああああああああああ!!」

頬を海に押し付けていた少女の喘ぎ声の絶叫は顔の前の海を吹き飛ばした。
股間から大量の愛液が噴き出し、海に溶け込んでゆく。
少女が、絶頂を迎えたのだ。

尻が下がり、そのまま力無く海にうつぶせになる少女。
横を向けられた顔は頬が海底に着いていながら海面は口にまで届かなかった。
その僅かに開けられた口から荒い呼吸の息が吐き出されるたび、そこの海は嵐のように大荒れになった。
吐き出された息は雲になって飛んでいった。
長い金髪が広がりながら海の上を漂っていた。
少女は実に満足そうな表情をしていた。

やがて起き上がった少女は海の上に座り込むとほぅ…と息を吐き出した。

「はぁ…。気持ちよかったですわ…」

生まれて初めての絶頂。
こんな、こんなすばらしいものがあるとは知らなかった。
快楽の中にとけてしまいそうな心地よい疲労感を感じていた。
少し、胸と股間がジンジンする。触りすぎたようだ。
でも、またすぐにでも触りたい。
あの快感を感じたい。
そのためには、またあの灰色の模様が必要だ。
たくさんある場所を見つけなければ。

「…でも、今日は帰る事にしましょう。少し疲れてしまいましたわ。それに…フフ、楽しみはとっておきませんと」

ゆっくりと立ち上がった少女はぐるりと空を見渡した。

「冷静になれば簡単ですわ。太陽があそこにあって月があそこ、そして北極星があそこにあるのなら…帰り道はあっちですわね」

言うと少女はそちらに向かって歩き始めた。
指を濡らすほどの海をパチャパチャと音を立てながら。
途中、また島を踏み潰し、大陸に巨大な足跡を残しながら、少女は地平線の彼方へと歩いて消えていった。


   
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 ~ 10,000,000倍(1000万) ~

「ったく、やってらんないわよ」

暗黒の宇宙空間。
ひとりの少女がぼやいていた。

「なんでこんなちっぽけな星の上で待ち合わせしなきゃいけないわけ」

少女は「もう!」と不満そうにため息をついた。
全裸の少女が座り込んでいるのは大きさ1.2mほどの小さな青い星だった。
ところどころにある緑の模様をそのお尻の下に敷いて膝を立て体育座りのようにして丸い表面に座っている。
一度、何気なく軽くドンと下ろされた拳は緑の模様を一つ砕いたりしていた。

ふと、その星の表面を見下ろす少女。

「それにしても青くて綺麗な星ね。もしかして水があるのかしら」

言いながら少女はその表面をなでる。
緑の模様がそれに巻き込まれ無くなったりしていたがそれは少女の手に大した感触を与えなかった。
手よりも小さな模様だった。

「もったいないわ。こんなちっぽけじゃなくて、もっとちゃんとした星らしい大きさだったら きっとたくさんの生命が生まれたでしょうね」

言いながら少女は立ち上がりトンとその星から飛び上がった。
宇宙空間にふわふわと浮かぶ少女は青い星に顔を近づけてそれを見る。

「緑色のこれは苔かしら」

少女はそっと手を伸ばし小さな緑の模様のひとつに触れてみる。
伸ばした人差し指の腹でそっと触れそのまま撫でて見ると、緑の模様は茶色の模様になりそのまま暫くすると青い模様になった。

「あら、面白いわね」

くすっと笑った少女はまた別の模様に指を伸ばして行った。


   *


地球は壊滅していた。
この、惑星サイズの恐ろしい巨人が「すとっ」と降り立った時点で地表の人口の8割の消えた。
長さ2400kmの足。それに軽く下りて来られただけで地球はかつて無い大災害を被ったのだ。
両足を着き、そのまま座り込んできた少女の巨大な尻はある大陸をその下敷きにして消滅させた。
地球全体が大きく揺れ、ほぼ全ての生命が弾けるようにして吹き飛ぶ。
その振動は地球のコアにも影響を与え、軸をずらされた地球は自転を止める。
ほんの僅かに動かされただけだが、それだけで地表を取り巻くあらゆる環境が変わってしまった。

その後、空から降りてきた巨大な手が陸地を巻き込みながら地表を撫で そこにあった島や大陸の端は手のひらの下でゴリゴリと削り取られた。
巨人が起き上がり地球から飛び出したとき、再び世界中が恐ろしい衝撃に震えた。
つま先で軽くトンと飛び上がったのであろうが、その直下にあったプレートは大きく踏み抜かれ その巨大な足の指々の形を刻み込まれていた。それぞれが幅100kmを遥かに超えた大きさだった。
巨人が飛び上がった衝撃 トンと体を蹴り上げたせいで、地球は反対方向へ転がり移動し始めていた。
だが地表に超巨大な手の五指をズンと突き立てられガシッ掴まえられると、移動していた地球はあっさりと引っ張り戻された。

そして今度は巨大な顔が地表に影を落とした。この顔だけでオーストラリアの大半を埋め尽くしてしまう。
ぱちくりと瞬きをする目。形の良い鼻。薄紅色の唇。
下手をするとこれら一つ一つが国よりも大きかった。
特に口は国どころか島さえも楽に平らげてしまえる大きさだ。高さ幅共に数百kmにまで開かれた口は、地球上のどんなものでも容易く中に収めてしまう。

巨大な手が地球に伸ばされ、その指先の下に大陸の半島が下敷きにされた。
太さ150kmの指である。
高い山もあったが指が触れた瞬間それらは押し潰され深さ数十kmにまで沈められ槌をむき出しにされた。
指は半島をゴリゴリ押し潰しながら移動し、その指が海まで達するとそこから大量の海水が流れ込み、指が穿った溝を新しい海に変えていた。

地表からは、その巨大な口の端が笑みで歪められるのを見上げられた。


   *


少女は地球を指でつついて遊んでいた。
あまりにもあっさりと模様が変わり、その容易さは心が躍る。
いい暇つぶしだった。

そうやってその丸い星の上半球に指で触れていたら 自分の胸も星に当たっている事に気付いた。
知らず内に星に被さるような体勢になり 胸を近づけすぎてしまったらしい。
そこにも緑の模様があったのだが、胸が触れると、指で触ったときと同じように青い模様へと変わって行った。
その様を きょとん とした表情で見下ろしていた少女だがやがてにんまりと笑った。

「ふふ、胸でもできるのね」

一度 星から身を離した少女は自分の胸を持ち上げた。
少し自信のあるそれは自分の手にずっしりという重々しい感触を与えていた。
重力の強い星に行くとこの重さに肩が凝るものだ。
だがこんな小さな星の重力では垂れ下がりもしない。
乳は重力に負けずしっかりと形を保っていた。

「この星の重力より私の胸の方が強いって事かしら。あ、ちょっといい気分」

そして少女は 星に胸を近づけて行った。
大きな胸がその表面に押し付けられる。
変形して はみ乳になり、多くの緑の模様がその下敷きになった。

胸をどけてみるとそこには星全体で見ても大きな穴が開いていた。
穴の中は茶色い。
だがそこも段々と青い模様へと変わって行った。この青いのはやはり水なのだ。

星に大きく残った自分の胸のあとを見て少女は吹き出した。
腹を抱えて笑い出した。
そのせいでくるくる回転していた。

「あっはははは! ごめんね。私の胸 大きすぎるみたい」

星に胸の跡が残る。
それはとんでもない事だろう。
自分の星でそんな事をしても誰も気付かない。誰にもわからない。当然、宇宙からなんて見えるはずが無い。
だがこの星には宇宙からでもはっきりと見える穴が残っていた。
これは、とても優越感を感じられた。
この銀河の星はとても小さい。
だから自分のちょっとした所作でも影響を与えられる。
本来ならとんでもなく大きな存在である一個の星に。

少女は星に五指を突きたて、ぐんと引っ張った。
星を回転させたのだ。
星は緩やかな速度で回り始めた。

少女は胸をそらし乳房を前にぐいと突き出した。
張りのあるまるっこい乳房がピンク色の乳房をピンと立たせて押し出される。
無重力空間でぶるんと震えた。
大きく伸びをする少女。
手を上に大きく伸ばし、つま先を伸ばした脚をピンと張る。
そうなると、少女の全長は星の倍ほどにもなった。

「さって、準備運動おっけー」

肩の力を抜いてふぅと息を吐き出し、少女は回る星に胸を近づけた。
そして乳首を、星に着けた。
すると回転する星には、乳首の跡が一本の線となって表面に刻まれていた。
ピーっとまっすぐに線を引いた。
途中、大きな緑の模様を真っ二つに切りながら。

これは、面白い。
星には、あまりに簡単に線が残されていた。
それを穿っているのは、自分の乳首なのである。
乳首で星を削っている。
自分の力強さに快感を覚えた。

だがその快感が単に気持ちの問題で無い事にも気付いた。
星に筋を残して乳首。
そこに感じるコリコリという感触も快感の要因のひとつだった。
回転する星が、無限に乳首をいじり続ける。
気持ちと体のふたつが同時に高揚していった。
気付けば少女の頬は上気し赤く染まっていた。

「うそ…気持ちいいじゃない…」

ほうっと吐き出された息が星の表面を撫でた。
少女は暫くそこにただじっと浮かび、胸に回転する星の愛撫を受け続けていた。


   *


押し付けられた小惑星サイズの乳房によって大陸の大半を押し潰されたあと、地球の崩壊は加速度的に進んでいった。
地球の意思とは無関係に回転させられるそこではあらゆる環境が破壊し尽くされ全ての生物が根絶させられた。
再びあの巨大な指々が地球に突き刺さり ぐいと回転させられたあとは、その凄まじい破壊に更に拍車がかかる。
地表に突き刺さった超巨大な乳頭。その直径は実に100kmを超え、地表に幅100km超、深さも100kmを超えた凄まじい溝を穿ち始めた。
ガリガリ、ガリガリと、海も海底も大地も山も例外無くその乳首に触れれば一瞬で削られ磨り潰されてしまった。
恐ろしく巨大で暴力的で圧倒的な強さを持った乳頭。
そんな乳頭も乳首全体で見れば小さなものであり乳首の直径は400kmにもなる。
そのピンク色の突起だけで、北海道のほとんどを押し潰す事ができるのだ。
豊かな自然に満ち溢れたその島は、上空から襲来したその巨大な乳首がちょっと触れるだけで地球から消えてしまう。
そうなるとそこには巨大な穴が開き、乳頭の押し付けられた部分は深さ100kmをはるかに超えた暗黒の穴が穿たれる。
その穴は地殻をぶち抜きマントルにまで達していた。
持ち上げられた乳首には深い地中に流れる熱い溶岩が滴り、表面には北海道という土の汚れが着いているだろう。
しかしそれも、乳房全体の成す大破壊と比べれば些細なものである。
大きな乳房は、その一つだけでも日本を押し潰してしまえる大きさなのだ。
ぐいと押し付けられれば、それだけで日本は無くなってしまう。
はみ乳にでもなれば周辺の国すらも巻き込まれその下に押し潰される。
ほんの一瞬の事である。
その気になれば、乳房だけで地球は滅ぼされてしまうのだ。
そして今、それは実行されていた。

地球は今、十数秒で一回転している。
本来の24時間で一回転する事と比べると実に4000倍もの速度で回っているのだ。
20秒足らずで朝と昼と夜が終わり次の日が訪れる。
地表からは遠心力が重力を超え様々なものが宇宙へと飛び出していた。

そんな回転する地球に突き出された乳首はその表面をゴリゴリと削っていた。
相対的には、地球から見れば乳首が移動しているようなもの。
その速度、実に7,200,000/h(時速72万km)であった。
秒速2000km。一秒間で日本を縦断するに等しい速度。
凄まじい速さである。
二つの乳首は、そんな破滅的な速度を以って地表を走っているのだ。
ユーラシア大陸が左上から右下に向かって寸断された。幅100kmを超えた溝によって。
他の大陸なども同じである。
小さな島は移動してきた乳頭の先で磨り潰され消えてしまった。
地球が何度も回転するうちに、地球上の大陸は乳首によって削られどんどん細かく小さくなっていった。
その青い表面には無数の筋が残されていた。


   *


続けられる愛撫にいつしか乳首はピンと立ち、頬は赤く染まり、口からは熱い吐息が吐き出されるようになっていた。
快楽にたゆたう瞳はうつろになり、口元から滴った涎は地球の引力に引かれてその地表に落ちた。
島を押し流せるような一滴である。
その一滴の唾液で地球の海面が僅かに上昇した。
そして両手は自分の股間へ。
片手の指は中を掻き回し、もう片方の手の指でクリトリスをこねくり回した。
真空の宇宙空間に、少女の喘ぎ声が響く。
その様は、まるでひとりの少女が星によって犯されているようでもあった。

「あぁン…ッ! これ…凄いわ…! 気持ち良過ぎて死んじゃう…!!」

歓喜の喘ぎ。
乳首に感じる星の削れるコリコリという感触は至高の愛撫だった。
こんなに感じたのは初めてである。
気分が果てしなく高揚する。
きっと、星であるからいいのだ。
星を自分の一人遊びに使っている、その自分の圧倒的な存在の大きさに興奮しているのだ。
ひとつの星を自分のためだけに、自分の自慰のためだけに。
この星はもっと大きければ生物のたくさん暮らす豊かな星になったはずだ。
そしてこの星がその大きさだとすると、それを使って自慰に浸っている自分のなんと大きい事か。
そこに住む生物なんて微生物にもならない。
小さすぎる。
小さすぎてその存在を感じる事はできないだろう。
さらにその生物が、自分と同じ 意思を持って行動し考える事のできる知的生命体だったならば、それはとてつもない事である。
小さな彼らは今 自分がこうして乳首で表面を削っているその中に巻き込まれ儚く消えてしまう。
どんなに必死に逃げようとしても、あまりにも大きくて速い自分の乳頭からは絶対逃げられない。
きっとその表面にぶつかって潰れてしまうはずだ。
彼らからすれば途方も無く大きな自分の乳首。
小さな島なら、この乳首でちょんとつついてやるだけで潰れてしまう。
そこにある街や国なんてもっと簡単だ。
もしかしたら乳腺に入ってしまうかもしれない。
それほどまでに彼らの世界は小さい。
仮にこの乳頭だけが地表からぴょこんと飛び出ていたら、それだけでこの星一番の山になってしまうだろう。
ピンク色の超巨大な柱。雲なんかよりもはるかに高いそれの先端は宇宙に飛び出さん勢いである。
彼らにはその先端は高すぎてどんなに見上げても見えないはずだ。
それ以前に最早 彼らから見れば自分の乳頭など視界を埋め尽くす壁みたいなものだろう。
太さも高さも100kmを超えているのだから。
そしてそれが乳首全体ともなればそれだけで大きな島になってしまう。
乳首の島だ。
直径400kmの丸い島は中央に向かって丸みを帯び、その中央にはあの超巨大な乳頭を山として頂いている。
彼らはその上に街や国を作って生活する事もできる。
動物がいるのなら狩りだって可能だ。乳首の浜から海へ漁にだって出られる。
そこで生まれて、大きくなり、年をとって死ぬ。
一生を過ごせる。
自分の、乳首の上でだ。

快感に浸る少女はその自分の想像に吹き出した。
なんて滑稽な光景なのだろう。
自分の乳首の上で何千万という人々が暮らし生活するなんて。
これが乳首だけではなく乳房全体ならどうなる?
青い星から二つ、ばいんと飛び出た肌色の超巨大な乳房。
当然、乳首の上で生活していた人々は生きていられないだろう。
乳首なんてとうの昔に宇宙に飛び出してしまっている。
いやむしろ、地球そのものがもたないかもしれない。
巨大な乳房の山。それを二つもぶら下げたら満足に自転もできないのではないか。

あくまで重力下での重量で、少女が彼らと同じ大きさだと仮定するならば乳房は片方1kgの重さがある。
カップにしてFか、G。胸囲100cmを超える。
それが少女の本来の大きさになると、実にとんでもない事に1000000000000000000000kg(10^21)という途方も無い重さになる。
桁が大きすぎて想像も付かないが、更に大きな接頭語に直すとそれぞれ、

1000000000000000000000キロ。
1000000000000000000トン。
1000000000000000メガ(1千兆メガ)
1000000000000ギガ(1兆ギガ)
1000000000テラ(10億テラ)
1000000ペタ(100万ペタ)
1000エクサ(1000エクサ)

となる。
単純な話、月が7.5の10^22であると考えれば、乳房は月の75分の1の大きさがある事になる。
それが二つ。
地球と比べると乳房は約6000分の1の大きさだ。
二つになれば3000分の1
一概に影響があるとは言えないが、決して軽いものではない。
少女から見れば地球が1.2m、月が35cmの球である事を思えば、乳房は決して小さくない。
こうして、乳首の島の上で人々を生活させてしまえるくらいには。
少女は彼らがそこで何をしようと感じる事は無いだろう。
例え戦争を始め無数の爆弾が降り注ごうとも、敏感な乳首はピクリとしないだろう。
何千万という人々が命を投げ出し戦う戦争は、少女に痒みすら与えられないのだ。
だがもしもそれがポツンとでも痒みを与えようものなら、少女はそこを指先でぽりぽりと掻くはずだ。
それだけで戦争は終結する。
何千万人は上空から飛来した太さ150kmにもなる指先の爪の下で一瞬で全滅してしまう。
彼らの存在は、少女にとって無いも同然なのだ。

その想像が、少女を更に昂らせた。
圧倒的に大きな自分。
ゴミにもならない小さな彼ら。
素晴らしく愉悦に満ちた想像だった。

少女はうっとりとした目で目の前の星を見つめ、その表面を撫でた。

「はぁ……これにも…人がいたらよかったのに…」

残念そうな少女の声。

だがそんな声とは裏腹に体のほてりは増すばかりだ。
妄想が欲望を加速させた。
体が疼いてたまらない。
もう、いくしかない。

少女は手を広げ星の左右に指を立て掴みかかり回転を止め、胸を押し付け始めた。
手に力を入れ、体を引っ張り、ぐいぐいと思い切り押し付ける。
敏感な乳首はもちろん、胸全体が、星の柔らかく優しい愛撫を受け快感を脳に伝えていた。

「あぁあああああんッ!!」

少女の口から唾液と共に喘ぎ声が迸った。
胸は更に強く押し付けられる。
小さな星に抱きつきながら体をよがらせる少女。
星を掴む両手の指はメリメリとそこに沈み込み、指の周辺はヒビ割れ岩が隆起していた。
胸が押し付けられているところもそう。二つの小惑星ほどもある乳房を恐ろしい力で押し付けられ星に亀裂を入れながら内部に進入して行った。
潰れる。星が潰れて行く。自分の胸に抱き潰されてゆくのだ。
一個の星を抱いている。星がメリメリと音を立ているのを聞いていた。

その星をぐいと引っ張った少女は、今度はそれを股間にあてがった。
星の上に馬乗りになる格好だ。
星の上に座り込んだ少女は股間をその青い表面に押し付け始めた。
ゴリゴリというざらついた感触が気持ちいい。
股間を押し付けると割れ目の端にぷっくりと飛び出たクリトリスが地表にこすり付けられるのだ。
心地よい快感だった。
更に、クリトリスで星の表面を削っているという想像が少女の体を一段と熱くさせた。
割れ目の中には、削られた星が入ってくる。

星に馬乗りになって股間をこすり付ける少女の乳房は激しく揺れていた。
体を支えていた両手のうち右手を動かして右の乳房を押さえると、上を向いていた少女は顔をばっと下に向け、右手で押し上げた自分の乳房、その乳首に噛み付いた。
ツンとそそり立った乳首を、前歯でカリカリと噛んで転がした。
先ほど、この星の人々の誰にも登る事のできない超巨大な山と想像した乳頭を口に咥えていた。
その想像のギャップが乳頭を噛みしめて染み出てくる味のように甘味となって少女を悦に浸らせる。
乳頭を噛んだまま乳房に吸い付き、舌でその先端をぺろぺろ舐める。
ミルクの、甘い味がした。
キュッと強く乳頭を噛んだとき、痛みが 快感となって体を駆け抜けた。

押し付けていた股間の周辺の色が変わる。
性器からあふれ出した愛液が流れ出ているのだ。
この星の少ない水分からすると相当の量だろう。
構成する数%が自分の愛液になってしまった。

やがて少女は自分の乳房を離し、馬乗りになっていた体勢から上半身を倒し、下半身ともども星に抱きつくような格好になった。
全身の中に、星を閉じ込めるように。
そのまま、胸も股間もこすり付ける。
動こうとする星を両手両足でしっかりと掴まえ逃がしはしない。
ぎゅうぎゅうと締め付けた。
星全体に、大きな亀裂が入り、中から溶岩があふれ出てきたが少女は星を抱くのを止めはしなかった。

そして快感が頂点に達し、絶頂を迎えた。
その瞬間、

  グシャアアアァッ!!

星は砕け散った。
少女の中で抱き潰されてしまったのだ。
あの青く美しかった星は 今やただの岩となって周辺を漂っていた。

そんな岩たちの中にたゆたう少女。
果て、疲労の残る体を投げ出して、そこで緩やかに回転していた。
ふぅ…。と、息を吐き出した顔は充足感で満たされていた。

「気持ちよかった…」

生まれて初めてここまで燃え上がった。
小さな星を使った自慰がここまで気持ちいいとは。
あまりに気持ちよくて、つい力を込めすぎてしまったが。
少女は自分の周辺を漂う星の欠片を見てくすっと笑った。

暫くして身を起こした少女は宇宙空間を泳いで帰って行った。
また来よう。そう胸に誓って。
少女が去ったあと、そこには星だったものの欠片が漂うのみとなっていた。


その後、そこを訪れた巨大な人影は、そこに友人の姿も目印の星も無い事に首を捻っていた。



   ---------------------------------------



 ~ 100,000,000倍(1億) ~

太陽系。
そこに浮かぶは唯一無二の青く生命に溢れた星・地球。

そしてその地球は今、少女の胸に谷間に浮かんでいた。

「わぁ! ボクのおっぱいよりちっちゃい!」

宇宙に轟く楽しそうな声。
その声の主である少女は、小柄な体系に不釣合いな自分の大きな乳房の間に浮かぶ青い星を見下ろして笑顔を輝かせた。
なんとその乳房だけで地球よりも一回りも二回りも大きい。
巨大な肌色の肉球の間に、それよりも小さな地球が挟まって浮いている。
地球は少女にとって12cmほどの球でしかない。
何十億という人々が生きるその星も、簡単に手に取れてしまう。
このまま少女が胸を寄せればそれだけで地球は潰れてしまうだろう。
そして人々には、そんな少女から地球を守る術は無かった。

少女は、地球を挟む乳房がそれに当たらないようにそっと身を引き、そして地球が顔の前に来るように移動した。
青く青く澄んだ星。
白い雲が取り巻き緑の大地が自然の豊かさを思わせる。
一目見てわかるいい星だ。
少女の瞳にはそんな星の姿が鏡のように映っており、まさに目の中で星が輝いている状態だった。

「知ってるよ。この星にはたくさんの人が住んでるんでしょ。でも、こんなにちっちゃい星で暮らすのって大変じゃない?」

少女はくすくす笑いながらその星を覗き込んでいた。
反応が無いのはわかっている。
少女は、その空間にまるでうつ伏せに寝転がるような体勢で地球を覗き込んでいる。
手を重ねその上に顔を置いて足をパタパタ動かしながら。
まるでベッドか何かに寝転がるようにリラックスした表情を見せていた。
ただし本当には何も無いので、少女の胸板からは惑星サイズの乳房が空間に向かってばいんと突き出されていた。

少女の背格好から察すると年のころは10の中盤か。
身長も本来なら150cmと言ったところだろう。
しかしその胸はすでに大台に達し、小さな体のせいで余計に大きく見える。
そしてその少女が、その顔の目の前にある地球に住む人間の1億倍の大きさである事を考えれば、それはとんでもない大きさであった。

少女はまるでペットにでも語り掛けるように優しい声で地球に話しかけていた。

「みんなでボクのおっぱいに移住しておいでよ。海とか空気は無いけど、二個あるからきっとみんなのびのび暮らせるよ。こんなちっちゃくて狭い星で無理して暮らす必要無いんだよ?」

少女の言葉が紡がれるも、やはり反応は無い。
少女もわかってる。わかっていて話しかけている。
小さな小さな彼らが自分の言葉に答えられるはずも無いし、また答えたとしてもそれは有益な物ではないだろう。
でも、それでよかった。
少女にとって、この星に語りかける、それ自体が楽しみなのだから。
くすくす笑いながら地球を見下ろしていた。


   *


これまで地球は知られざるうちに何度も危機に瀕してきていた。
地球と同じサイズの隕石の襲来。
無数の隕石からなる隕石群の通過。
他の銀河で巨大な惑星が爆発した事による凄まじい衝撃波。
それら無数の危機はいずれも地球を一瞬で壊滅させてしまうほどに危険なものだった。
では何故 そんな危機に晒されながら今もこうして存在していられるか。
それはすべて、この少女に守られてきたからである。
襲来した巨大隕石はその少女の手でことごとく打ち砕かれ叩き落とされた。
隕石群が飛来したときには両手に包み込むようにしてそれから守ってくれた。
地球を一瞬で粉々にしてしまうような衝撃波が飛んできたときには地球の前に立ちはだかり身を挺してかばってくれていたのだ。
この地球が、少女の大切な友達だからである。
広く暗い暗黒の大宇宙において、唯一の友達の。

しかし地球人はその存在を知らない。
これまで何度も絶滅の危機に瀕していたと、世間的には空説の一つでしかなかった。
自分たちが、一人の少女に庇護されているなどとは考えもしなかった。

だから今日も地球人は、今日も無事に過ごしていられる事を、庇護してくれている少女に感謝のひとつもしていなかった。


   *


「う~ん、お腹空いちゃったな~」

少女はぐぅと鳴ったお腹を撫でた。
何か食べるものはと周囲を見渡すが、この辺りには少女の食べられるものはなかった。
周辺の星を食べてしまうと、この青い星にどんな影響があるかわからない。

「ちょっと待ってて。ご飯食べてくるから」

そう言い残して少女は地球を離れて行った。


   *


別の銀河へとやってきた少女。
周辺には無数の星が浮いているが、あの青い星以上に美しい星は無い。

その内の一つを手に取った。
大きさはあの青い星と同じくらいだ。
手に簡単に乗せてしまえる。

そして、少女の言う食事とは単純明白、星を食べるのである。

「あーん」

大きく開けられた少女の口。
薄紅色の唇に縁取られた口の中は健康的な赤色に染まりあふれ出る唾液で濡れていた。
高さ1000km近くもある真っ白な歯が並び、その中には小さな惑星なら舐め取ってしまえるほどに巨大な舌が蹲っている。
口が開けられると手に持たれていた惑星はそこに持っていかれ…、

  ばくん

齧られた。
惑星は少女の歯の形に半分がなくなっていた。
もぐもぐ。元気に口を動かす少女。
直径10000kmほどの星は、まるで果物のようにあっさりと食べられてしまった。
例えそれがとても硬い鉱石でできた星であったとしても、少女の歯は容易くそれに食らい付き噛み千切るだろう。
惑星は少女の3口でその姿を消し、また別の惑星が少女の巨大な手に捕まった。
もぐもぐ。もぐもぐ。
少女は手当たり次第に惑星を口に運び、頬張った口を動かした。
ゴクンと呑み込めばそれらは皆、広大で暗黒の少女の胃の中である。
よく噛み砕かれた星はそこに溜まる胃液の海に落とされてゆっくりと消化されてゆく。
そこは星の墓場であった。
少女の口とは、入ったら二度と出る事のできない第二のブラックホールなのである。

少女はあっという間に何十もの星を平らげてしまった。
いったいあれだけたくさんの星をその巨大な小さなにおさめらるのか。
明らかに少女の胃に納まりそうな量ではなかった。
少女は自分のお腹をなでる。

「あ~あ、もっとおっきくなりたいな。身長もたった15万km…。せめて16万kmにはなりたいよ。そうすればもっと簡単にあの星を守って上げられるのに。なんでおっぱいばかりおっきくなっちゃうんだろ…」

ため息をつきながら少女は自分の乳房を下から持ち上げた。
ずっしりとした重さを両手に感じた。
食べても食べても、栄養は体ではなく胸にいく。
身長は伸びず、乳ばかりが大きくなった。
先ほどはちょっと勇気を出してあの青い星を胸の間に来るようにしてみたが、胸は星よりもはるかに大きかった。
これ以上大きくなられると重くてしょうがない。

と、自分の胸を持ち上げていた少女は、胸に青い星を挟んだとき、とても興奮した事を思い出した。
理由はわかってる。あの星を胸で挟みたいのだ。
あの小さな青い星を乳房の谷間に包み込んでギュッとしたい。
愛しい愛しいあの星を力いっぱい抱きしめたいのだ。
だがそんな事をすればあの星はあっという間に潰れてしまうだろう。
たったひとつの友達だ。そんな事はできない。
ならその欲望は、他の星で発散できるのだろうか。

少女は目の前を漂っていた星を掴み胸の間に置いた。
ちっぽけな星は自分の乳房と比べると情けないほどの大きさである。
ちょこんとそこに浮いている。
乳房を、両手で押した。
ズズン! 乳房はぴったりとくっつき、胸の間に星がつぶれたのであろうクシャリという感触を感じた。
胸を開いてみるとそこには砂が付いていた。

胸をペチペチと叩き砂を払う。
快感なんて感じなかった。胸が汚れただけだった。
でも、星がクシャッていう感触は楽しめた。
星はやはり柔らかいのだ。

別の星もまた同じように潰してみた。
次の星も。
また次の星も。
あまりにもあっさりと潰れてしまうが、逆にそれが楽しくなってきた。

「あはは、星って柔らかいんだね」

暫く、胸で星を潰して遊んでいた少女。
挟むまでも無く、ゆっさゆっさと揺れる乳房がぶつかるだけで星は粉々に砕けてしまう。
ぶるんと勢いをつけてぶつければまさに粉砕と言う感じで粉みじんになった。

星を手に取り、それで乳首をこすり始めた。
乳首の先端に、コリコリという感触を感じる。
そして星を離してみると、その星には乳首の跡が着いていた。
乳頭の形に穴が開いていた。
星全体の大きさから考えれば大きさは10分の1ほどか。
星は、自分の乳首にすら勝てないのだ。
それをにっこりと見下ろした少女は星を再び乳首に押し付け始めた。
ただし今度は先ほどより力を込めて。
コリコリ。グリグリ。メリメリ。メキメキ…。…グシャ…。
星は潰れてしまった。
星を押し当てていた手は自分の乳房をしっかり掴んでいた。
星はこの間で粉々になったのだ。
手をどけて見れば手のひらと乳首に砂がついていた。

星は、少女にとって本当に儚いものなのである。
胸に押し付けるなど何の理由が無くとも、

  クシャ

その手に握るだけで簡単に潰れてしまう。
人差し指を伸ばし、ズボッ! と突き立てる事もできる。
そうすれば星を貫通せんばかりの巨大で深い大穴が穿たれる。
中指を親指の腹で押さえデコピンをする事もできる。
それを星の上半球にぶつければその部分がボシュッ! と吹っ飛ぶのだ。

気がつけば手の届くところには星はなくなっていたが、この銀河には無数に浮いており数に困る事は無い。
次の場所へと移動した。


   *


 ボッ!

星は、思い切り降りぬかれた足によって粉砕された。
高速で接近してきた足の甲に激突し粉々になって宇宙に飛び散った。
拳を握った腕が振りぬかれると、その拳の先に一つの星が捉えられ砕かれた。
思い切り後ろにお尻を突き出したかと思えば、そこにあった星が巨大な桃尻にぶつかって潰れた。
思い思いの方法でどんどん星を潰してゆく少女。
これは、少女の食後の運動だった。
星を食べてお腹いっぱいになったら星で体を動かす。
少女の日常。
少しでも大きくなりたくて健康的に体を動かしているのだ。

少女にとってあの青い星は特別だった。
たったひとりで宇宙をさまよっていた少女が最初にあの星を目にしたとき、その星は周囲の星とは違いひとつだけ青く輝いていたのだ。
まるで宇宙でひとつのように堂々と。
その姿に少女は惚れたのだった。
一人で寂しかった少女。
目の前に現れた星は、たったひとつの青でもしっかりと輝いていた。
自分の髪と同じ色で。
自分に恥じる事も自分を憂う事も無く、己の存在を主張していたのだ。
寂しく生きる自分。死ぬ事もできず生まれてきた事を後悔さえした。
でもその星を見て、一人は寂しくないのだと学んだ。
それにもう一人じゃない。この星がずっとそばにいる。
それから少女は、あの青い星と共に暮らすようになったのだ。

そう青い星だけが特別だった。
あの青い星にはたくさんの人々が住んでいる事も知っている。
星と共に生きてきた人々だ。彼らも守ってあげたかった。
だが、他の星はそうでは無い。
例えそこに生きる人々がいようと、壊す事にためらいは生まれなった。
これまで少女が壊してきた星の中にもそういう人が住む星があったがそれを気にするような事はなかった。

先ほどのように殴り壊されたり蹴り壊されたり。
胸に挟み潰されるなど何度もあった。
何十億という人々が自分たちに危機が迫っている事を知る間もなく死んだ。
星と共に食べられた人々もいた。
そのほとんどは少女がかじった星をもぐもぐと租借する間に噛み潰されたが、奇跡的にも運の悪かった数人は生きたままゴクンと呑み込まれ、彼らがいた星が丸ごと入ってしまうような広大な胃の中に叩き落されて消化された。
星をも溶かす少女の胃液は強力で、胃に落ちてきた人間の大半がそこにある空気に触れただけで溶け、僅かに水面まで生き残っていた人々は落ちた瞬間にジュッという小さな音を立てて消えた。
これまで少女が食べてきた星の数は知れない。まさに星の数なのだから。
そこに暮らしていた人間が何人にのぼるかなど見当もつかない。
言えるのは 今まで少女に食べられた人間は一人残らず跡形もなくしっかりと消化されて、少女のあの乳房を大きくするのに貢献したと言う事だった。
そして少女はその大きくなった乳房でまた新たに星を潰していた。


   *


少女の周りに星はなくなっていた。
すべてが運動の溜めに消費されたのだ。
そこだけは銀河の空間になった。

その中央で大きく伸びをする少女。
小さな体をめいっぱい伸ばしたと、膝を抱えるようにして足に手を伸ばした。
足の指と指の間には星の欠片がこびりついていた。
つま先で蹴飛ばしたとき、指が星に突き刺さってしまいその時に着いてしまったのだった。

「汚れちゃった。綺麗にしないと」

言いながら指の間に手の人差し指を差し込んで汚れをこすり落とす。
星だったものは更に細かく磨り潰されて少女の指から落とされた。
汚れを落としてみれば、そこには太さ1500kmのかわいらしい足の指があった。
くいくいと動かせば指先についている爪が恒星の光に照らされてキラリと輝く。

「じゃあ戻ろうかな。そうしたらどうしよう。あの星と一緒にお昼ねしようかな。それともお話を聞かせてあげようかな。それともそれとも…」

少女は帰ったらすることをたくさん考えてわくわくした。
あれもこれもがみんな楽しいのだ。
あの青い星と一緒にいられるならなんだって楽しかった。

と、その時、少女の眉がピクリとはねる。
先ほどまでのあどけない表情とくりくりっとした瞳は消え、怒ったような顔と睨むような目がそこにあった。

「また…!」

少女は飛び去っていた。


   *


太陽系へと通ずる小惑星群を抜けた先、ぽっかりと空いた空間には無数の宇宙船が集まっていた。
そこに乗るのは宇宙の侵略者たち。
全員が女性でその体はなんと地球人の1000倍もの大きさであった。
彼女たちから見れば地球人など砂粒のようなものである。

彼女たちの着る粗野で挑発的な服。
黒いサンダルから覗く足の指ですら、地球人にとってはビルのような巨大なものなのだ。
そんな巨大な足が一歩踏み下ろされれば地球人は一度に何千人と踏み潰されてしまうだろう。
足の裏に無数の赤いシミができる。

大きな乳房の谷間に覗く胸元。
深い深い谷間は地球人が自力で脱出することは不可能な肉の檻であった。
いや、彼らの小さすぎる体はそこに引っかからず、彼女たちの腹部の前を数百mを落下してゆく事になるだろう。

または性の慰みものとして消費されてしまうのか。
手のひらに乗せられた数千の人間はぱっくりと開かれた谷のように巨大な陰唇の中へ落とされてじゃぶじゃぶとあふれ出る愛液に溺れながら巨大な指によってかき混ぜられ最後は膣の中で締め潰されてしまうのだろうか。

実際に、彼女たちはそういう事をする。
これまでもいくつもの星をこの大船団で攻め落としてきた。
一隻の宇宙船に数百人。その船は千を超える数がある。
つまりそこに乗っている巨大侵略少女たちは何十万から何百万にもなるのだ。
その星の住民の1000倍もの大きさを持つ彼女たちがそこに放たれれば星など瞬く間に廃墟になる。
彼女たちが履く靴やサンダルの下では彼らの高層建築物がぐしゃりと踏み潰され、同時に何百もの住人がその下に消えてゆく。
中にはそれらを履かない者もいて、そういう者は素足に建物や住民が潰れる感触を楽しんだ。

兵器でも数でも圧倒的な力の差を見せ付けられた人々はすぐさま降伏するのだが、そうやって降伏した人々はみな船に持ち帰られ彼女たちの夜のお供にされるのだ。
横になった、山のように巨大な全裸の上にばら撒かれた人々はそのまさに山のような乳房に登らされたりする。
全員がひいひい言いながらその山に登ってゆく。
それを彼女たちはゆうゆうと余裕の笑みで見下ろすのだ。
逃げ場など無い。自分たちが立っているのが彼女の体の上である以上 どこにも逃げられないのだ。

必死に乳房を登り終えたら今度はそこにある乳首に組みかかる。
家よりも大きな乳頭。乳首の上に立っているのに、その頂点を見上げる大きさだ。
人々はその乳頭に攻めかかった。
殴ったり蹴ったり。力の限り痛めつける。
人数が多すぎて乳頭に届かないものは足場でもある乳首を攻める。
ピンク色の乳首の上には数百人の人々がいた。
それを巨人はくすくすと笑いながら見下ろしてくる。
何百人と言う人間に乳首を愛撫させながら、何も感じていないように。

そうやって夜のお供を申し付かった者は、最後には殺される。
人々がいる乳首のある乳房の上に手が乗せられそのまま手は乳房を揉み始めるのだ。
その過程で彼らは一人残らず潰された。
結局、彼は快感を感じるための道具ではなく、優越感を感じ果てやすくするための道具に過ぎないのだ。

そんな彼女たちは何百万といるのだから、必要な夜のお供も何十億何百億何千億となる。
故に彼女たちは常に星々を侵略し、夜のお供を集めるのだった。

そして彼女たちが次に選んだのは地球と言う星だった。
青い色が特徴の惑星。
低文明で知能の低く、好みの1000分の1の小人系の人間が住む星だ。
船内のモニターにはその星の様子が映し出された。
原始的な建築物が乱立しその谷間を無数の人間が蠢いている。

動く人間の姿を見た瞬間、モニターを見ていたうちの何人かが口元を歪ませ舌なめずりをした。
夜の供としてうまそうな人間を見つけたからである。

地球に向けて大船団が動き始めた。

「そんなことさせないよ!」

そんな船団の前に、少女が立ちふさがる。
腰に手を当て仁王立ちのポーズ。
胸を張ったとき、その巨大な乳房がぶるんと震えた。

船団の巨大侵略少女たちは怯えた。
巨大だと思っていた自分たちよりもはるかに巨大な少女がそこに現れたからだ。
彼女たちの身長は1600mある。彼女たちが何百人と乗る宇宙船は全長30万kmを超える。
そして船も千以上の数があるのだが、この少女はその船団すらも片手に乗せてしまえる大きさだった。
これまで宇宙を我が物顔で好き勝手に蹂躙してきた女侵略者たちは、生まれて初めて仲間と抱き合って震えていた。

「お前たちの悪意はボクにはわかるの。これまで何度も同じように攻めてくる奴らがいたけど、一人も生かして返した事はないよ。あの星に近づく奴らは、みんな潰すから」

言うと少女は船団の左翼に手を伸ばした。
船の一隻は少女から見れば3mm強といったところで、そんなものがいくらあつまっていても、惑星を鷲づかみにする巨大な手には適わない。
指先にぶつかった船がボン! ボン! と爆発するが手の進む速度はまったく衰えない。
そしてその中央まで来たところで手をギュッと握った。これだけで数百の船が落とされた。
拳を、手のひらが船団の方に向くように向けると、その手のひらをゆっくりと開いた。
船団に乗った巨大少女たちからは、超巨大な指がゆっくりと開かれ、その中からクシャクシャに潰された自分たちの仲間の船が出てくるのを見た。
壁のような肌色の手のひらにぺしゃんこになってへばりついているものまである。
巨大すぎる手のひら全体から見ればゴマ粒のような船だが、実際には全長数十万kmであり、それはこの手のひらの凄まじい大きさを物語っていた。
残った船の中には逃げ出すものまで現れたが、大半がその手のひらに向かってレーザーやらミサイルやらを撃ち始めた。
それらを受けても少女は顔色一つ変えない。

「ふふ、さぁ次はお前たちの番だね」

少女はくすくすと笑っていた。
それは、地球を見つめるときのあのあどけないかわいらしい笑顔ではなく、温度の無い無慈悲で冷酷な微笑だった。
デコピンが放たれた。いくつもの船が巨大で強固な爪に激突して爆発した。
別の船は親指と人差し指の間でプチプチと押し潰された。
その後、それらの残骸は指の間でくるくると丸められ、ピンと弾かれたそれは他の船を落としながら船団の中を飛んでいった。
船団の中に手の指を突っ込んでわきわき動かすだけで勝手に数が減ってゆく。
それらの船団の中には、彼女たちの奴隷にされた人々が無数に乗っていたが、そんな事は少女には関係なかった。
笑いながら船を潰していった。

と、そのとき、また別の船団が周囲に近づいてきたのを感じた。
しかも、地球に近づいている。
こいつらの相手をしている場合ではなくなった。

少女は残っていた船団をバチンと両手の間でまとめて挟み潰し、急いで地球へと向かって飛び去った。


   *


太陽系。
地球の周辺には無数の船が集まっていた。
地球という環境のいい星を見つけ狙ってきたのである。

そこへ、

「その星に近づくなー!」

手を伸ばしながら少女が飛び込んできた。
その巨大な手は地球にもっとも近づいていた船団を巻き込み壊滅させた。
それでも船団たちは進むのをやめない。
この星が少女の弱点であると気付いたのだ。
星に降り立つ事ができればもう少女に手出しはできないと。
次々と地球に向かって進んでくる。
それら侵略者を、少女はひたすらに叩き落とし続けた。

右手に迫る船団は右手の中に握り潰し、左手に迫る船団は左足でなぎ払った。
正面から攻めてきた二つの船団は、その巨大な乳房で撃墜した。
惑星よりも大きな二つの乳房がぶるんと揺れ、そこを進んできていた船団の船たちはその乳房の表面に激突してパチパチと爆発した。
少女から見ればたかが3mmの船など乳首だけで押し潰せるのだから。

少女から地球を挟んで反対側から攻めた船団もいたが、それは少女が右足を曲げ、地球の下から救い上げるようにして伸ばし、船団からの盾にした。
船団の目の前に突然現れた巨大な足の甲。
そこに見えていたはずの青い星は視界が肌色の壁に埋め尽くされた事により見えなくなった。
その後 彼らは、その右足が今度は前に向かって振りぬかれたとき、その過程で足の甲に激突して爆発した。

上から攻めようとした船団もいたが、それに気付いた少女はそちらに向かって飛び上がった。
地球に向いていた船団からすれば、少女は正面から飛び込んでくるような形だった。
見てくれは自分たちよりも幼いただのガキだが、その大きさはとんでもないものだった。
その顔が近づいてくる。起こっている事はその表情を見ればわかる。
顔が更に。すでに視界は少女の顔で埋め尽くされていた。
それでも更に顔が近づいてくる。視界は、少女のキュット閉じられた口元のみを映し出していた。
その口が、ガバッと開けられた。

  ばくん!

少女はそこにいた船団を口の中に捕らえた。
たくさんの粒が口の中にあるのを感じた。
舌や歯を動かすとそれらがプチプチと弾ける。
ようく租借したあとゴクンと呑み込んでやった。

船団は潰れて行った。
内壁にぶつかるもの。
巨大な舌に絡め取られるもの。
歯に噛み砕かれるもの。
恐ろしい。実に恐ろしかった。
数百の船団が捕らえられているこの死と隣り合わせの暗黒の空間は、ひとりの少女の口の中なのである。
そして目の前で起きている凄まじい地獄絵図は、少女がただ口をもぐもぐ動かしている故に引き起こされているのだ。
レーザーもミサイルも、口の内壁にも舌にも歯にも何にも通用しなかった。
飛び散る唾液の一滴が船よりも大きい。
実に直径50万kmはあっただろうか。
逃げ道は無い。入り口は巨大な唇によってきゅっと閉じられている。
ここから出るには、呑み込まれて胃にいくしかない。
つまり、死ぬしかないのだ。
そうやって、これまでいくつもの星を侵略し無数の人々を奴隷として使い潰してきた何百万という巨大侵略少女たちは悲鳴を上げながら一人の少女の胃液の海へと落ちて行った。
まだ原型を保っていた頑丈な船は胃液の海に落ちるとちゃぽんという小さな音を立てそしてその中に沈んで行った。
やがて船は少女の強力な胃液によって船体をとかされ、穴が開いてそこから進入した胃液は内部にいた巨大侵略少女たちを溶かし消化していった。

少女の手足が振り回されるたびに船が何千と消える。
しかしまだ周囲には船が浮いていた。いったいどれだけの数がいるというのか。

その一つを手のひらで叩き落とす。
するとその時の乳房の間をゆうゆうと進む船の一団があった。
必死に片付けているのに、馬鹿にしているかのようにのろい。

「ああもう! 多すぎるよーっ!」

少女は乳房を両脇から押し、そこを進んでいた船団を乳房で挟み潰した。
胸を開けばそこには無数の船がぺちゃんこになって乳房に張り付いていた。

動き回るうちにいくつもの船が少女の髪に辛め取られたりしていたが、そんな事を気にしている場合ではない。
右手の船団を裏拳で叩き落し、左手の船団をその中に握り潰した。
そして目の前にいる最後の船団は、両手の間で思い切り挟み潰した。

  バチイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!

それは凄まじい衝撃波を生み出し太陽系全体を振るわせた。少女の背後にあった地球に影響は無かったが。
手のひらを開けばそこにへばりついたゴミたちは僅かな煙を立てていた。
これで終わりだ。

「ふぅー…。終わったー…」

盛大に息を吐き出し、緊張を解く少女。
そして笑顔で地球の方を振り返った。

「みんな。これでもう大丈…夫……―」

少女の笑顔が凍りついた。
青い青い大事な星。そのすぐ横に、一隻の船が接近していたのだ。
その船が、何かを発射しようとしていた。

はっと気付いた少女が速攻で手を伸ばしてその船を摘み潰したときには、それは発射されてしまっていた。
地球に向かって落ちて行ったそれは爆弾のような感じだった。

その瞬間、地球から凄い負のオーラが感じられた。
少女の鋭敏な感覚にはその詳細がわかる。
爆弾が爆発しようとしてる。
この星を、消し飛ばしてしまうほどの爆弾が。
爆発まで、あと十秒も無い。

少女は焦りに焦っていた。
自分が爆弾を取り除く事はできない。
そうやって星に触れてしまえば、それこそ星が壊れてしまう。
だが、このまま何もしなくても星は消えてしまう。自分の、大切な星が。
大切な大切な、宇宙でたったひとつの友達が。
消えてしまうのがわかっているのに、何もできない。
少女は、目から涙が溢れていた。
叫びた感情を、嗚咽とともに必死に堪えていた。

だが同時に冷静でもあった。
最早この星の消滅は避けられない。
なら、自分にできることは、星の遺志を継ぐ事だけ。
この星はそこに住む人々をずーっと守ってきた。
なら今度は、友達だという自分が彼らを守ってやる事が、友達に対してできる唯一の事なのだろう。

少女は地球に胸を近づけると意識を集中した。
爆弾は感じられないが、長年一緒に暮らしてきた人々は感じられる。
少女は人々を地球から引っ張り上げた。
何十億という人々が大気圏を貫いて宇宙に飛び出た。
あまりにも一瞬の出来事は人々に考える時間すら与えなかった。
そして少女は、救い上げた全人類を、自分の乳房の上に降ろした。
地球の大気と一緒に。
膨大な質量を持つ乳房に引力を発生させ、大気と人々をそこに安定させる。

その直後である。

  ボン!

青い地球の表面で小さな爆発が起こった。
するとそこを中心に赤い光が広がり、やがてそれは地球全土を覆った。
そして端からボロボロと崩れ始めた。

自分の友達が、宇宙でたった一つの親友が死んでゆく姿を見て少女は涙を流した。
だがすぐにその涙をふき取る。

「ボクは…君の友達だから、君の守ってきたみんなを守るよ。だから…心配しないで……地球さん…」

少女は、崩れてゆく地球が粉々になるまで、そこに立ち尽くして見守っていた。
友の最後を見届けたのだ。

少女は乳房を見下ろした。
自分の乳房には今 何十億という人々がいる。
突然の事に混乱してるはずだ。

実際 人々は突然 景色が変わった事に首を捻っていた。
家の中にいた者。森の中にいた者。海の上にいた者。
様々な環境にいた人間がいたが、気付けば全員が肌色の大地と星空の世界へ来ていた。

わけがわからずおろおろするばかり、すると一部の人間が空を指差して叫び始めた。
見ればそこには、そこに見えるが実際は空の果てには、とんでもなく巨大な少女の顔が見えていた。
幼さの残るあどけない顔。青い髪。くりくりっとした瞳。
それで自分たちを見下ろしていた。
そしてその少女の首は自分たちの足場へと繋がっている。
…もしかしてここは、ここは……。
人々が真実に気付き始めた。

少女は見下ろした乳房の上に全人類を感じていた。
きっと彼らは驚いているだろう。

「ごめんねみんな。地球さんは壊れちゃったから暫くはボクのおっぱいの上で生活してね。ちっちゃい地球さんに慣れたみんなにはボクのおっぱいは大きすぎるかもしれないけど、必ずちゃんとみんなに合った星を見つけてあげるからね」

そして少女は前を向き、宇宙空間を飛び始めた。
その乳房の上に全人類を乗せて。
友人との約束である彼らを守るため。

少女と人々は住み慣れた太陽系を離れ、外宇宙へと飛び去って行った。



   ---------------------------------------



 ~ 1,000,000,000倍(10億) ~

青い星、地球。
本来なら昼であるはずの部分にも光が当たっていない。
それどころか、地球全体が暗い暗い影に包まれていた。
人々は首を捻った。
夜が訪れたのに、そこに星空が見えないのだ。
真っ暗闇。
月明かりさえ無い真の夜が訪れていた。

それらは、地球が そこに立つ二人の少女の影に入っていたからだった。


   *


「へぇ、結構いいところじゃない。『たいよーけー』って言ったっけ」

そう言ったのは黒く長い髪をポニーテールにした少女。
腰に手を当て大きな胸をぐんと突き出し自信に満ちた目で周囲を見渡している。

「うん。小さいけど綺麗な星の集まったところなんだって」

答えたのは赤みのかかった茶色のショートヘアーの少女。
柔らかい物腰。胸を張っているわけでもないのにその特大の乳房はバイんと胸板から飛び出し微笑みながら回りの星を見ている。

二人の胸の高さ、二人の片方の乳房に挟まれるようにしてそこにある地球は 二人から見ればおよそ1.2cmの大きさである。

ポニテの少女はフフンと鼻を鳴らして笑った。

「全部で…九個? ちょっと少ないけど、足りなかったら別の場所に行けばいいわよね」

そしてポニテの少女は飛び去り、向こうに見えていた赤い星の元へと行った。

ふわりと火星の横に飛んできた少女はその小さな星に顔を近づけた。

「ホントに小さいわ。これで星だって言うんだから笑っちゃう」

少女の顔の前をふよふよと漂う火星。
指先ほども無い大きさだ。約7mmか。
その気になれば指の間でプチッと潰してしまえるだろう。

これまで星なんて数え切れないほど壊してきたけど、綺麗な星を壊すときはゾクゾクする。
背徳的な悦びを感じられる。
くくく…。
少女は瞳に黒い光を宿しながら火星に向かって手を伸ばした。

するとそこへショートの少女がやってくる。

「どうしたの?」
「おっと。つい一人で遊んじゃうところだったわ」

苦笑しながらポニテの少女は今にも火星を握り潰そうとしていた手を引っ込めた。
その途中で、「あっ」と何かを思いついたような顔をすると、その火星の後ろに回りこんでショートの少女を呼んだ。

「ねぇねぇ見て見て」
「?」

ポニテの少女は自分の胸元を指差した。

「私のおっぱい、星より大きいでしょ」

胸を張ったポニテの少女の大きな乳房の谷間には、小さな火星が漂っていた。
自分よりはるかに巨大な乳房に挟まれる火星。
その全土が乳房の作り出す深い影に入っていた。

それを見たショートの少女はくすっと笑った。

「本当だね。ポニテちゃんの胸の方がとっても大きいよ」
「でしょでしょ。こんなちっぽけな星、あたしのおっぱいでも……………」

ぐいと胸を張っていたポニテだがその言葉は段々尻すぼみになり、張られていた胸もしょんぼりと前のめりになっていった。

「…やめましょ。あんたの前でやっても空しくなるだけだわ…」
「ふえ? どうして?」
「ぬあああ腹立つ! 文字通り自分の胸に聞いてみなさいよ! そんなでっかいの二つもぶら下げてさぁ!」
「あぅ…」

ポニテがびしっと指差した先で、ショートは顔を赤らめながら両腕で胸を隠した。
むにっ。
腕から乳房がはみ出る。

「うわっ! それもムカつく!」
「で、でも、ポニテちゃんだって結構大きいじゃない…」
「あんた…自分の体がどれだけ完成してるかわからないの?」
「完成?」

その言葉の意味がわからなかったのか、きょとんとした表情で首を傾げるショートヘアーの少女。
さらさらの髪がふわりと揺れる。
そしてその下にはボンッ! キュッ! ボンッ! と艶かしい流線型の起伏が続いているのだ。
宇宙空間にただ漂う仕草すらかわいらしい。
美少女のそれだった。

しかし そのショートの少女を恨めしそうに睨みつけるポニーテールの少女もかなりのものである。
キリッとした目。
太陽風に揺れるポニーテールの髪は柔らかく 指をその間に通せばしっとりとした感触を得られる。
ショートにこそ及ばないが、アンダーの値を考えれば十分に巨大な胸だ。
引き締まったウェストは運動の賜物。
ヒップから繋がる脚線美のラインこそポニテの強みであった。

もっとも、そういった細かいところに一喜一憂するのが少女というものである。
自分のそれが優れたものであったとしても、他により優れたものがあれば、それに羨望を抱いてしまう事もある。
ポニテは、体型もあるが ショートのその女の子らしいしおらしさに嫉妬してしまうのだった。
そしてショートは自分のそれに気付いていなかったりする。

ふぅ…ポニテはため息をついた。

「まぁいいわ…。…それにしても…」

ポニテはショートの胸を見つめた。
特大サイズのショートの乳房は胸板の幅からはみ出すほどに大きい。
胸には何も着けていないのに、谷間が閉じてしまいそうだ。
深く暗い影ができている。

「ホント、大きいわよね…」
「そ、そんなにまじまじと見ないで…」(赤面)

ショートはまた胸を抱き身を捻ってそれを隠した。
木星よりも一回りも二回りも大きな乳房は少女の腕の中でぎゅっと寄せられていた。

ふと、それを思いついたポニテは胸の間にあった火星を摘み出し、ショートに寄っていった。

「ねぇ、ちょっとこっちむいて」
「?」

疑問符を浮かべながら振り返ったショート。
その特大の乳房も正面にいるポニテの方を向く。
ポニテは自分の前に現れた凄まじい大きさの乳房に一歩引いた。

「や、やっぱり目の前で見るとすごいわね…」

そこには自分の頭と比べても遜色ないほどに大きな二つの乳房があった。
思わず自分の胸を見下ろして見比べてみたくなったが、今それをすると立ち直れなさそうなのでなんとか堪える。

改めてその胸を観察する。
この『たいよーけー』最大の惑星よりも遥かに大きな乳房。
白い肌の表面は近くの恒星の光に照らされて光っていた。そのキメ細かさにツヤまで出ていそうだ。

そんな二つの乳房の間には深い深い谷間が自然に形成され、乳房の作る影によって光の無い闇の世界となっていた。
だがそこには、小さな惑星なら入れるほど広大な空間がある。

少女は片手をその谷間に突っ込んだ。

「えぇ!? な、なにするの!?」
「まぁまぁいいから」

友人に胸の谷間に手を突っ込まれ赤面するショートを、その友人であるポニテは笑いながら制した。
流石にその谷間に手が入るほどのスペースは無い。
ポニテの手は左右の乳房に触れていた。
柔らかく、とても暖かかった。
いつまでもここに手を入れていたくなるが、とりあえずそれは後回しだ。

ポニテは谷間に突っ込んだ手の親指と人差し指に摘んでいた火星をそこで放し、手を戻した。
ショートの乳房の谷間に、赤い惑星がちょこんと漂っていた。

「フフフフ、できた。見える? あんたの谷間に惑星があるのよ」
「え…?」

言われたショートは自分の胸の谷間を見下ろした。
乳房の間の空間。
影に入っていて見えにくいが、そこには確かに小さな小さな星が浮いていた。

「あ、本当」
「…こうしてみるとあんたの胸ってホントにでかいわねー。このちっぽけな星のいったい何万倍の大きさがあるのかしら」
「そ、そんなに大きくないよぅ…」(赤面)
「どの口でそういう事言うの? この星だってね、きっと生まれてから何十億年と経ってるのよ。いろんな危機も経験してきたし、長い年月を超えてきたプライドってものがあるの。そんな星としての経験やプライドを、女の子のおっぱいに超えられちゃったら悔しいでしょうね。苦節数十億年が、あんたの片方のおっぱいの数万分の1にしかならないなんて」
「えぇええッ!? この星を置いたのはポニテちゃんでしょ!?」
「でも胸の谷間に挟んでるのはあんたよ。きっとこの星はあんたの事 恨めしそうに見上げてるわね」
「ひ、ひどいよ~…」

ショートは泣きそうな声を出しながら体を引いた。
谷間に挟まれていた火星は、ようやく再び太陽の日の当たる場所に戻ってこれた。
が、すぐにポニテの太さ15000kmの巨大な人差し指と親指によって摘まれた。
その衝撃で 星全体がミシリと軋んだ。
摘まれた星はポニテの目の前まで持ってこられる。

「ねー。あんたから見たらあの子の胸なんてとんでもない大きさよねー。きっとあの子もあんたの事 おっぱいの周りを漂うゴミみたいにしか思ってないのよ」
「そんなことないよ!」
「あらそう? じゃああんたの胸の前にこの星 置いちゃうけど。そうするとあんたの大きすぎる胸の引力に引っ張られて寄って行っちゃうわよ。そしてそのおっぱいの表面にそっとくっつくの。まるでミルクを欲しがる赤ちゃんみたいにね」
「赤ちゃん……は かわいいけど…」
「ふふ、まぁいいわ。私の胸だとどうなのかしら」

ポニテは自分の乳房の前で火星を放した。
火星の横には巨大な肌色の球体があった。
ショートよりは小さいとは言え、木星より大きな乳房なのだ。

しばらくすると、火星はゆっくりと乳房に向かって動き出した。
ゆっくり、ゆっくり。火星に近づいてゆく。
その先には乳首があったのだが、火星はそのピンク色の表面にそっとくっついた。
乳頭の斜め上にあたる部分だ。

実際のそれは、火星が 乳房の膨大すぎる質量からなる引力に引かれその表面に隕石のように墜落したという事なのだが。
それはポニテの乳首に ポツンという感触を与えていた。

それを見たポニテはくっくと笑った。

「あは、くっついたくっついた。ホントに寄ってきちゃった」

そして少し胸を遠ざける。
するとまた火星は乳房を追いかけてきてその表面にくっついた。
また離して見ても、同じように追いかけてきてそっと乳房の表面にぴとっとくっつく。
まさに、母の乳房を求める赤子のように。

ポニテは笑いを堪えながら言った。

「あらあら おチビちゃん、そんなにお姉さんのおっぱいが恋しいんでちゅか~。まるで赤ちゃんみたいでちゅね~。…………プッ! あはっ! あはははははははは! 赤ちゃん! 赤い星に向かって赤ちゃんだって! ホントに赤ちゃんみたいにくっついてくる! アハハハハハハハハハハハハハ!」

腹を抱えて大爆笑するポニテ。
ポニテが腹を抱えるために前のめりになったとき、乳首に寄り添っていた火星は乳房に押されて前へと飛び出し 宇宙を高速で飛んで行った。

光速を超えた速度で太陽系の外に向かって飛んでゆく火星。
だがその先に、突然 肌色の壁が現れた。
ショートの手のひらである。

「もう、ポニテちゃんたら…」

火星はショートの巨大な手のひらによってそっと受け止められた。
それを見下ろした少女は、手のひらの上にポツンと乗る小さな小さな火星を見て胸がキュンとしたのに気付く。

「…かわいい♪」

くすっと笑ったショートはもう片方の手を伸ばし、その人差し指で手のひらの上の火星を転がし始めた。
指先と手のひらに、小さな小さな丸い惑星の存在を感じる。
実にかわいらしい。
さきほどポニテもやっていたが、この小さな惑星は自分たちに寄り添いくっついてこようとする。
まさに赤子。ううん、従順なペットだった。

指先でピンと軽く弾いてみる。
弾かれた火星は手のひらから飛び出して行ったが、暫くするとその勢いは減速し、やがて自分の方に向かって戻ってき始めた。
その火星を、今度は胸で受け止めたショート。
さっきはちょっと忌避したが、ペットだと思うとこんなにかわいいものは無い。
ショートは火星を胸の谷間に置いた。
そこで、小さなペットを守ってあげたかった。
胸の谷間の小さな小さな赤い星を見下ろしてショートは微笑んだ。

その時である。

「隙ありッ!」

ショートの背後からポニテが飛び込んできた。
ポニテはショートのわきの下から腕を差し込むと、背中越しにその乳房を鷲づかみにした。
ズン!
ショートの乳房は寄せられ、そこにいた火星は乳房に挟まれ見えなくなった。

「あぁっ!」
「う~ん、手で触るとよくわかるわ~。この柔らかさとその大きさ。とても手の中に納まんない」

言いながら乳房をぐりぐりと揉むポニテ。
ショートは動かされる自分の胸の間で ペットの星が潰れて行くのを感じていた。

慌ててポニテの手を振りほどき胸を開いて見たときには もうそこにあの赤い星の姿は無く、かわりに自分に小さな汚れが着いていた。

「あぅぅ…」
「何 落ち込んでんの。たかが一個潰れたくらいで。星なんてまだいくらでもあるのよ。その中から気に入ったの好きなだけ持って帰ればいいじゃない」

その言葉にショートは耳をぴくっと動かした。
そうだ。星はこれひとつではない。
もっとかわいい星をもっとたくさん手に入れればいい。

「うん! もっと探そ!」

ショートは笑顔で振り返った。
そのとき、胸についていたペットの火星だった汚れを 無意識の内に払い落としていた。


   *


「でも、結構星少ないよね」
「そうね。ここで足りなかったら別のところにいけばいいじゃない」
「それもそうだね」

少女たちは気軽に惑星の選別を開始した。

「これなんかどう?」

と、ポニテが差し出したのは大きさ1.2cmほどの金星である。
指先の間に簡単に摘まれていた。

「うーん、金色で綺麗だけど ちょっと寂しい感じがするかな」
「そ。じゃあいらないわね」

  くしゃ

金星は指の間で潰された。
選別に外れた星は処分していたほうがもう一度選別してしまうなど二度手間が防げるため効率がいい。
指についた金星だった砂をさらさらとこすり落として、次の星へと向かうポニテとショート。


   *


そこに浮かぶは青い星。
直径約50,000m。地球のおおよそ3倍の大きさを持つ天体、海王星。
太陽から離れているので表面は氷点下を遥かにぶっちぎった凍てついた極寒の世界であり、深い青に包まれた星であるが海は存在しない。
太陽系の中では大惑星の部類に入る。

そんな惑星の背後からぬっと迫る巨大な手。
がばっと開かれた指は、その巨大惑星を容易く鷲づかみにした。

「なかなか綺麗な星じゃない。この青さは気に入ったわ」

海王星を掴みしげしげと観察するポニテ。

「でもペットにするにはちょっと大きいかしら?」
「そうだね…もうちょっと小さいほうがいいかな」
「そうよね。じゃあこれもいらないわね」

言ってポニテは手の力を込めた。
海王星全体がミシリと軋み、指が星にめり込んだ。
と、そこで何かを思いついたような顔をしたポニテは力を込めるのを止めた。

そしてにやりと笑ったかと思うと、海王星を掴んだ手をショートに押し付けたのだ。
その巨大な乳房に。

面食らうショートを他所に、海王星を掴んだポニテの手はショートの乳房にそれをぐいと押し付けていた。

  ぐしゃあ!

海王星は溜まらず粉々に潰れ去った。
そしてポニテは海王星を押し付けた手でそのままショートの乳房を揉み始めた。

「きゃあ! な、なにするの!?」
「あぁ~いい感触。柔らかくて暖かくて。ホント、羨ましいったらないわ」

もう片方の手でも乳房を揉み始め、その谷間に顔を埋めるポニテ。
ショートは友人の行動におろおろするばかりだった。

「気持ちいい~。私 ここで寝れるわ」
「ぽ、ポニテちゃん!?」
「別にちょっとくらいいいじゃない。私には無いものを堪能してるだけよ」

ぐりぐりと顔を動かす。
自分の頭ほどの大きさのある乳房は、自分の頭を左右から優しく包み込んでくれた。
ぬくもりに意識がとろんとしてくる。本当に眠ってしまいそうだ。
惑星よりも大きな乳房は包容力も絶大だった。

対するショートは無理にポニテを引き離す事もできずおろおろしたままだった。
ただポニテの呼吸が胸の谷間をくすぐる快感に頬を染めていた。
思わず谷間に埋まるポニテの頭を抱き寄せ、胸板に押し付けてしまいたいほどに。
流石にそんな事は恥ずかしくてできないので、ショートはそうしたい気持ちを必死に堪え腕を後ろに伸ばしていた。

その谷間からポニテはショートの顔を見上げた。

「くく、ここは極楽ね」
「は、恥ずかしいよ…」
「あははは。まぁそう嫌そうにしないで……あれ?」

笑っていたポニテは視界の端を横切るものに気付いた。
何かと思い、胸の谷間から顔を離してそれに手を伸ばす。
指先に摘んだそれを目の前に持ってくると、そこにはなんとあの火星よりも小さな小さな星が摘まれていた。
冥王星。
かつて、確認できる限り太陽系最外惑星と言われていた星である。
その大きさは約2300km。
地球の5分の1ほどの大きさで、少女たちにとっては2mm強の星である。

自分の指先にちんまりと乗るその星を見て呟くポニテ。

「へぇ…こんな小さな星まであったんだ…。全然気付かなかった」

気付けたのは偶然だった。
その星が、胸の谷間から見上げるポニテの視界を、ショートの白い肌を背景にして横切らなければ その存在には気付けなかっただろう。

「それも星なの?」

ショートもポニテの指先に乗る小さな小さな星を見下ろした。
今、冥王星から見上げる空は、二人の少女の顔で埋め尽くされていた。

「さすがにこれはペットにはできないわね」
「あはは、そうだね。ちょっとちっちゃすぎるかな」
「ってもこんなの潰す必要も無いでしょ。あったって見つけられないんだから。んー…何かに使えないかしらねー………っと?」

冥王星を指先に乗せたまま唸っていたポニテだったが、一瞬の「おっ」という顔のあとすぐに笑って その指先に乗る冥王星を舌先にぺろりと舐め取った。
友人の突然の行動に驚くショート。
その 冥王星のくっついた舌を一度引っ込めたポニテはショートの顔を見てにや~…っと笑った。
その表情にショートは少し後ずさった。

「な、なに…?」
「ペットにもできないし潰す価値もないならどうしたっていいわよね」

そしてポニテの顔がショートの顔にぐんと近寄ってきた。
あまりの速度にショートは対応が遅れる。
気付けば、目の前にはポニテの目が迫っていた。
そのまま、

  はむっ

二人の唇が重なる。
目を見開くショート。
そんなショートの目を見て、目の前のポニテの目は半目になった。にやりと笑ったのだ。

繋がった二人の唇。
その間を、冥王星を乗せたポニテの舌が侵攻する。
そしてそれを迎撃すべく出てきたショートの舌と激しい戦いが始まった。
それぞれの舌が相手の舌を押しのけようと絡みつく。
惑星さえもぺろりと舐め取ってしまう超巨大な舌の攻防だった。

そんなデッドヒートを続けながら、二人は相手の目を見て語る。

「もごもご(わ、私…こんな趣味無いのに……)」
「もごもご(私だって別にレズッ気なんかないわよ。ただこれをあんたに呑ませたいだけ)」

舌のバトルは続く。
二人の口の中は夥しい量の唾液で溢れ、そんな大荒れの大海を二つの巨大な怪獣である舌が絡み合う。
一滴で地球全土を覆えるほどの唾液を振りまきながら鎌首をもたげる舌。
ポニテの舌には、唾液の中に沈みながらも なんとかその舌先にくっつく冥王星の姿があった。
なんとかそれをショートの口の奥に運ぼうとするポニテの舌と必死にそれを防ごうとするショートの舌。
まったくの互角であった。

二人の少女のディープキスは、エロさとは別の展開で熱く燃えていた。

「(さすがショート。簡単には通らせてくれないわね。……なら悪いけど、盤外から攻めさせて貰うわ)」

そしてポニテはショートの背中に手を回すと、そこの指でツー…と線を引いた。
瞬間、ビクリと体を震わせ目を見開くショート。
くすぐったがりが弱点であるショートは一瞬そちらに気を取られてしまった。
その隙にショートの舌をかわしたポニテの舌はショートの口の奥に侵入し、そこに冥王星を置いて出た。

二人が口を離す。
お互いの舌の間には唾液の白い糸が引いていた。
星を引っ張る事ができるほどの粘り気を持った糸だった。

ポニテの舌が出て行って平和を取り戻したショートは口の中に溜まっていた唾をごくんと呑み込んだ。
そこにいた冥王星も一緒に。

ほぅ…と息を吐き出すショート見てポニテは笑った。

「どうだった? 星の味は」
「うぅ……ひどい…ポニテちゃん……」

目に涙を浮かべたショートは宇宙空間にへなへなと座り込んだ。
ずーんと落ち込んでいるのが目に見えてわかる。
ブラックホールでも形成できそうなくらいに暗い空気になっていた。

それを見て流石のポニテも苦笑する。

「あらら、さすがにやりすぎちゃったかしら。ごめんごめん、今度パフェおごるから」

パフェ、という単語にぴくっと反応したショートの耳。
座り込んだまま、ポニテの顔を見上げる。

「本当…?」
「ホントホント。なんだったら金魚鉢でもいいわよ」
「ありがとうッ!」

バッと立ち上がったショートはポニテに抱きついた。
ポニテもショートの背中に手を回してポンポンと叩いてやる。

「やれやれ…。この子、こういうところは単純なのよねー…将来心配……」

ポニテは苦笑しながらその頭を撫でてやった。

ちなみにこの間、二人の超巨大な乳房が押し付け合い、そこの密度は凄まじいものになっていた。


   *


また別の惑星を手に取っていた少女たち。

「ふっ」

ポニテの少女が息を吹きかけると、土星を囲っていた環は綺麗に吹っ飛ばされてしまった。
残っていた土星本体も、少女の手の中でくしゃりと握り潰された。
手を開き、土星のカスをサラサラと飛ばすポニテ。

「あんまりいい星は無いわねー。そっちはどう?」

ポニテはショートの方を振り返った。

「うん、こっちも…。この星は少し大きすぎるかな…」

見ればショートはこちらに向かって進んできていた。
その胸の谷間には一つの惑星を挟んでいる。
太陽系で太陽を除く最大の惑星・木星である。
それが、少女の特大の乳房の間にぎゅうぎゅうと挟まれていた。
木星などよりも遥かに大きな乳房の谷間に。
その凄まじい圧力に、今にも潰れてしまいそうである。

「ぴったりと安定してるように見えるけど?」
「でも…ちょっと窮屈…」

と、ショートがちょっと自分の胸の谷間を覗き込もうとしたとき、

  バコッ!

ほんのちょっと寄せられた胸の間で、ギリギリ圧力に耐えていた惑星はついに潰れてしまった。
大小さまざまな粉々の岩になってそこを漂っている。

「あ…潰れちゃった…」
「まぁあんたの胸に挟まれて無事でいられる星があるとも思えないけどね」

ポニテの言う中、ショートは谷間を開いてそこに残っている木星のカスを吹っ飛ばした。

ふぅ。
息を吐き出して周囲を見るポニテ。

「もう大して星 残ってないんじゃない? こんな小さな宇宙だし」
「そうだね…。残念だけど………あれ?」

ふと、ショートは視界の端に輝くものを見つけた。
この暗黒の宇宙であそこまで綺麗に輝くものは…。

顔を見合わせた二人はそれに向かって飛んで行った。


二人の目の前。
そこには、青く輝く星があった。
青いと言っても海王星とは違い、緑や白の鮮やかな模様の入った小さな星だ。
太陽系3番目の星にしてもっとも生命に溢れた星、地球。
歯からずしも、少女たちがこの太陽系にやってきて初めて接近した星である。
二人はその星に顔を近づけて、その星のあまりの美しさに目を輝かせていた。

「綺麗…」
「綺麗…」

ほぅ…と簡単の息を吐き出した。

「こんな綺麗な星、私 見た事無いわよ」
「私も…。本当に綺麗…宝石みたい…」

その星の美しさに、二人は頬さえも染まっていた。

「ねぇ、この星をペットにしたら?」
「え? でも、こんな綺麗な星、私だけのペットにしたら…」
「いいのいいの。あんたのペット探してたんだから。ほら、早く捕まえちゃいなよ」
「…うん!」

二人は地球から顔を離し、ポニテは更に一歩引いた。
ショートは手を伸ばすと、その指の間に地球を摘んだ。
目の前で観察するとそれは本当に形容しがたいほどに美しい星だった。
こんな美しい星を自分のものにできるかと思うとドキドキした。

そして摘んだ地球を、胸の谷間に下ろした。
小さな青い星の左右には、はるかにはるかに巨大なショートの乳房。
その巨大な白い球体の中には、あの木星すらも簡単に納まってしまう。
ならそれよりもはるかに小さい地球なら、いったい何百、いや何千と入ってしまうのだろう。

乳房の先端にある乳首ですら地球の何倍も大きかった。
乳頭まできてようやく同じ大きさになれる。
逆に言えば地球は乳頭の大きさほどしかないという事だが。
もしもここからミルクが一滴でも垂れれば、それは地球の大半を瞬く間に押し流してしまうだろう。
海はミルクになり、この美しい青さは失われてしまうはずだ。
そこにいる何十億の人々も溺れてしまう。
そんな人々は、まさか自分たち全人類を溺れさせているこの乳白色の液体が一人の少女のたった一滴のミルクだとは思いもしまい。
たとえその味を知っている人間でも、雲よりも高い津波となって押し寄せてくるそれすべてがミルクなどとは考えられなかったはずだ。
若い少女の甘い甘いミルクは一人も逃すことなくその中に沈めるだろう。

そんな事さえ可能なショート。
だがその穏やかな笑みには残酷な事をするような心の闇は見えなかった。
もっとも少女にも、自分が胸の谷間に挟む青い星の上にいる 全70億人の人間は見えていなかったが。

やがて地球が乳房に向かって動き始めた。
乳房の途方も無い引力に引かれたのだ。
そのとき、地球上でも様々なものが空に引き寄せられるという事件が起きていたが、そんな事ショートにはわからない。
凄まじい引力によって人はおろか、車や家、果てはビルなどまでが空に吸い上げられて行った。

そして地球は、乳房の表面にそっと触れた。
触れた後 わずかに転がり、それはまるで小動物が自分の乳房に頭をすりよせているように見せたショートはにっこりと微笑んだ。

「ふふ、大切にしてあげるからね」

言いながらショートは指先で その胸に寄り添う地球の表面を優しく撫でた。


そんなショートに、今までどこかへ行っていたのか、飛んできたポニテが話しかけてきた。

「じゃあいきましょうか」
「うん。…でも、なんか私ばっかりもらってて…」
「そんな事無いわ。私だってほら、ちゃんと見つけてきたから」

ポニテは指を立てその上で星をくるくる回していた。
ショートが胸に挟む青い星よりずっと大きな星だった。
天王星である。

「もうひとつ……はい!」

言うとポニテはショートの顔の前に足を持ち上げた。
突然目の前に足の裏を突きつけられてびっくりしたポニテだったが、その足の指の間のひとつに、小さな小さな星が挟まっているのに気付いた。
水星だった。

足を下げ、笑うポニテ。

「ね。私だってちゃんと楽しんだわよ」
「そっか」

二人はくすくす笑いあった。

「それじゃそろそろ帰ろうかしら。あんたに金魚鉢パフェおごらないといけないしね」
「え、で、でも…やっぱり悪いような…」
「いいのよ。約束でしょ」
「うん……じゃあ、はんぶんこしよ」

にっこりと笑ったショートヘアーの少女。
それを見て釣られるように笑うポニーテールの少女。

二人は笑顔で太陽系を去って行った。
その手にいくつかの星を持ったまま。

あとには、構成する星が太陽だけとなった太陽系が残されていた。



   ---------------------------------------



 ~ 10,000,000,000倍(100億) ~

宇宙空間を行く二人の少女。
一人は身長が高く、もう一人は低かった。
体型も身長の高い少女はぱっつんぱっつんであるのに対し、身長の低い少女はまっすぐな子供であった。

少女たちは銀河の中を進んでいた。
そんな彼女たちの体のいたるところでパチパチと何かがはじけている。
それは、星。
大小無数の星々が少女たちの超巨大な体にぶつかられ爆発を引き起こしているのだ。

身長の高い少女のその身長は1700万km。
低いほうの少女の身長は1400万kmである。
どこか遠い銀河にある地球という星がおよそ1.2万kmであるとすれば、その星は、彼女たちから見れば1.2mmという砂粒のような大きさだ。
今、彼女たちの体にぶつかって爆発している星も同じような大きさである。
多少大きい、10kmという星もあるが、それも彼女たちには1cmの星であり、そこにぶつかって爆発する事にかわりは無かった。
その星は身長の大きな少女の乳房に弾かれて爆発したのだが、少女はそれを見てもいなかった。

顔の前にあった太陽系を片手で払い、身長の高い少女はため息をついた。
それを横で見ていた身長の低い少女は首をかしげながらその顔を覗き込んだ。

「どうしたのトールちゃん?」
「なんでもないのよリトル。ただ最近ちょっと胸が張ってきちゃって…」

トールと呼ばれた長身の少女は自分の大きな胸を見下ろした。
宇宙的にも途方も無い大きさであるその乳房は、今 目に見えて張っていた。
まるで膨らんだ風船のようにパンパンである。
ミッチミチであった。

それを下から「ほえー」という表情で覗き込むリトルと呼ばれた身長の低い少女。

「痛いの?」
「少し…」
「おっぱいがたまってるんじゃない? あたしが絞ってあげるよ?」

きょとんと首を傾げるリトルの顔が、自分の胸の谷間の向こうに見えた。
トールは苦笑しながら言う。

「ありがと。でも触ると痛いからあまりやりたくないの。何もしなくてもそのうち治ってくれると思うんだけど」
「ふーん」

そう言って自分の胸をぺたぺた触るリトル。
自分の胸はぺたんこなので、そういう胸が張っていたい、という経験はしたことがなかった。
大変なんだろうなーと思う。

ふと、思いついた。

「あっそうだ! あたし、胸を痛くないように揉んでくれるところ知ってるよ! 連れてってあげる!」

言うとリトルはトールの手を取って高速で飛び始めた。
トールは呆気に取られたままただリトルにしたがっていた。


   *


とある宇宙の一角。

「はい。ここがそうだよ」
「ここって…」

二人の少女の目の前にあるのは、ブラックホール。
少女たちから見れば両手に収まるほどの大きさだ。いいとこ30cmくらい。
それが自分たちの目の前で渦巻いていた。

「こんなの何に使うの…?」
「いいからいいから。はい、そこに胸を入れてみて」

トールの後ろに回りこんだリトルはその背中を押し、トールの胸をブラックホールに突っ込ませた。
巨大なトールの乳房が、半分ほどブラックホールの中に消える。
彼女たちがブラックホールに引き込まれ消滅する事は無い。
この超重力も、髪を揺らすそよ風のような引力だった。

トールはここはリトルの言うとおりにしてやろうとため息を突きながらそれに従い胸をブラックホールの中に入れた。
すると乳首にむずむずという感触を感じた。ブラックホールの引力だろうか。
ブラックホールに入った胸全体が、やさしい力で引っ張られる。
それは 若干の快感を生み出していた。

「え、うそ。気持ちいい…?」

胸に感じる力。それはまるで愛撫のように優しく胸を撫で回していた。
全体を、そっと、やさしく、なめるように余すところ無く。
特にブラックホールの深いところにある乳首はこね回されるような弄り回されるような感触だった。

「やだ…! 感じちゃう…」

いつの間にか頬を赤くしていたトール。
口元からは熱い吐息が吐き出され、それもブラックホールに吸い込まれて行った。

くりくり、くりくり。乳首を愛撫される感触。
手で触ると痛かったのに、今の感触は痛みなどまったく無く、とても気持ちいい。
その気持ちよさに思わず喘ぎ声を上げてしまうトール。
そんなトールを、リトルは横で笑顔で見守っていた。

快感に悶えながらブラックホールに胸を突っ込んでいたトールだが、次に鋭い愛撫のような引力を受けたとき、そこで起きた事に目を見開いた。

  ぴゅー

なんと、ミルクの出る感じがしたのである。

「うそ!? なんで!?」

出るはずの無いそれ。
だが確かに、自分の乳房からそれが飛び出ている感じがする。
快感の海でまどろんでいた意識が一気に覚めた。
だがブラックホールは相変わらず最高の愛撫をトールに提供し続け、その気持ちよさにトールの覚醒した意識はまたまどろみの中に戻される。
すごい…うまい。
沈んでゆく意識の中で考えられたのはそんな事くらいだった。

ブラックホールに乳房を愛撫され、そこから出たミルクをブラックホールに吸われている。
あまりの気持ちよさに、股間からは愛液が溢れてしまった。

「あれ? トールちゃん おしっこもらしちゃったの?」

ブラックホールの下にしゃがみこんだリトルは目の前にあるトールの股間を見つめた。
そこからはじゃぶじゃぶと無限に液が湧き出てきていた。
一滴が、星を包み込める大きさだ。
そこで自分の股間を眺めるリトルをどかす力も、快感に悶えるトールには残されていなかった。
心地よすぎる愛撫。快感とともに放出されるミルク。
気持ちが高まる。
頭に血が上る。
絶頂が、近づいてくる。

  プシャアアア!

トールは果ててしまった。
ブラックホールによる愛撫があまりにも気持ちよすぎて。
そして股間からは爆発するように大量に噴き出したのだが、それは目の前にいたリトルにかかっていた。


   *


「うわぁ~びしょびしょ~」

と、言いつつもはしゃいで周囲を泳ぎ回るリトル。
まぁ海に行けば落とせるものではあるが。

そんなリトルを尻目にブラックホールの横で力なく座り込んだようにして浮くトール。
息を切らし、絶頂を迎えた心地よい疲労感の中 そこを漂っていた。

「な、なんだったの。いったい…」

恐ろしいまでに気持ちいい愛撫に、なぜかミルクまで出てしまった。
おかげで胸の張りは解消できたのだが。

「ブラックホールにこんな効果があったなんて…。リトル、あなたはよくこんなこと知ってたわね」
「えへへ。あたしのお母さんもね、昔おっぱいが張ったときこうやって治したんだって。前に聞いたの」
「すごいお母さんね…。まぁいいわ。胸の張りも解消できたし気持ちよかったし、気分は最高ね。…あ、ごめんねリトル、体汚しちゃって。星の海に行って体洗いましょ」
「洗ってくれるの!? わーい!!」

嬉しくてまた周囲を飛び回るリトルだった。
そんなリトルを微笑みながら見ていたトールはその手を取った。

「ありがとう。あなたのおかげで助かったわ」
「えへへ~」

にっこりと笑うリトル。その顔を見るとこっちまで笑ってしまう。

「さ、いきましょ」
「うん!」

二人は海に向かって飛び去って行った。
その刹那、トールは思った。

「また来よう」

忘れられない快感。
病み付きになりそうだ。

こうしてブラックホールが少女たちの間で性のおもちゃとして有名になった事は言うまでも無い。



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※ 作者後記的な

 ここまで無駄に長い文章を読んでいただきありがとうございます。
 基本的におぱーい中心の話にしたつもりですが、途中から久々にスイッチが入ってしまい いつもの超巨大娘乱舞が始まってしまいました。

 この作品は十六夜の得意な倍率がわかりやすく出てしまいましたね。明らかに文字数が偏ってますw
 まだいくつかやりたい描写が残っていたのですが、その場のシーンや話の都合からいくつかカット。というかカットしないと終わらなかったんです。 続きはまた別の機会に。
 
 後半、妄想の暴走による勢いで書いてたもので最初と最後で話が食い違うところとか出てしまいました。(特に1億倍)
 その辺はかるく聖水に流してノリを楽しんでいただけたらと思います。

 色々な方々からのリクエストから生まれた話なのですが、それがうまく反映されているかどうか。結局はそれらを突っぱねて自分の道を突き進んでしまった気がします。
 納得いかない方もいらっしゃるかもしれませんが、そこはもう十六夜だし…と思って諦めてくださいな。

 では、長文失礼しました。