何度でも使い回そう…。だって好きなネタだから。



 『 おっぱい on 街 』



時計の針が夜の11時を過ぎた頃、一人の少女が自分の部屋の中央に置かれた低めのテーブルの前に座っていた。
空色のパジャマに包んだその体が火照っているのは風呂上りともうひとつ、自身の内側から湧き上がってくる情熱に熱されての事。
熱い息を吐きだし潤んだ瞳で目の前のテーブルを見下ろしていた。

テーブルの上にはまるで航空写真のように微細な光景が広がっていた。
縮尺、実に10万分の1という、地図を切り取ったような鮮明な地形がそこにあった。
しかしそれがただの地図で無い事は、そのテーブルの上にふわふわと浮かぶ、綿埃のような真白い雲が証明した。
これは実物である。
少女の不可思議な能力によって世界から切り取られ、テーブルの上に連れ去られた本物の大地である。
テーブルは四方1mほどの大きさであり、その上を埋める大地がそこにあるということは、切り取られた大地は実に1辺100kmという広大なものだ。
少女にとっての1cmがその切り取られた大地にとっては1kmに相当する。まさに地図を広げたかのような光景。

そんな大地を見下ろす少女の瞳はより揺らぎ、息荒く、そして体をブルリと震わせる。
これから行う卑猥な一人遊びを思って感じる背徳感。
そして、そこに罪の無い無数の人々を巻き込む罪悪感。
それらが快感となって少女の体を震わせた。
はぁ…。思わず吐き出された艶めかしく熱い吐息が手前を飛んでいた小さな雲を吹き散らした。


  *


とある国のいくつもの街は大混乱に陥っていた。
まずは突然の空の消失。あの青空が雲を残して消え去り、代わりになにやら人工物のようなものが現れた。
太陽の代わりに現れた、雲よりも遙か高くにある蛍光灯。
地平線の向こうに見える巨大な本棚。
同じくドア。同じく壁。
まるで空をスクリーンにどこかの部屋の中を映し出したような光景だった。
そして残りの一方に見えたのは、地平線の上から上半身だけを覗かせる少女の姿。
茶色のショートヘアー。着ているのは寝巻だった。
何処の国の娘だろう。アジアの様に思えるが。

人々はこの突然の現象をただただ呆然と受け止めていた。
ハリウッドか何かの大規模な宣伝だろうか。
ざわめく人々。目の前に広がる前代未聞の光景に無数の憶測を交し合う。
しかし誰にも答えを出せないまま時間だけが過ぎていった。

いつしか人々はカメラを手に構えそれらの光景を我武者羅に写真に収め始めた。
撮った写真を友人へ送信しようとする者が現れた。
ところが写真は送信できなかった。
おや? 訝しむ人々。
同時に電話もメールも、テレビもインターネットも使えなくなっていた。
人々の間に、漠然とした不安が漂い始める。
そしてそれは、あの空の彼方に投影された少女が息を吐き出すような仕草をした後、その前に漂っていた雲が散らされるように消失し、直後、街にハリケーンのような突風が襲来したことで恐怖へと変わった。


  *


少女は街全体をじっくりと見渡していた。
見ているだけで、溜めているだけで、体の中の疼きやより強く大きく首を擡げてくる。
待てば待つほど体が疼く。目の前に置かれている餌をお預けされているような気分だ。

だが、もう我慢できない。

少女はゴクリと生唾を飲み乾したあと、自身のパジャマのボタンに手をかけ、それをプチプチと一つずつ外してゆく。
胸下あたりまではずしたところで、抑える事の出来なくなった大きな胸がパジャマを押し広げて躍り出てきた。
風呂上りの温まった少女の瑞々しい肢体の象徴がブルンと躍動する。まるで待ちきれないと催促する子犬のようだ。

そして少女は、すべてのボタンを外し終えた。
胸板から前に大きく迫り出した乳房が、ボタンを外され羽織る形になったパジャマの前の部分を押し広げ自身の存在をアピールしている。
窮屈なパジャマから解放された胸は自由を喜ぶかのようにのびのびと自由に自らの形体を自然のものとした。少女も圧迫されていた胸を解放されてふぅと息を吐き出す。
当然ブラも付けていない。あんなものではこの胸を押さえる事はできないし、これからの行為の邪魔になるからだ。

束の間の開放感を愉しんだあと、少女は上半身を大地の乗っているテーブルへと向けて倒していった。
テーブルの上を埋め尽くす極小の、それでいて広大な大地の一部が、少女の体の作り出す影によって黒く染まってゆく。
胸板が傾けられるにつれ、柔らかく重い乳房は自重によって胸板にぶら下がるように揺れる。
途中、そのテーブルの上の大地の10cmほど上を浮かぶ白い雲が揺れた胸によって散らされた。
更に上体を倒し、その乳房を、真下に広がる大地に近づけてゆく。

そしてそのまま、そっと大地に押し付けた。


  *


あまりに異常な出来事が次から次にと起こり、人々は混乱の極みにあった。
あの空の彼方の少女が突如着物のボタンを外したかと思えば、そこから小惑星の様に巨大な乳房が揺れ弾みながら飛び出してきた。
とある町の住人数十万人がその光景を目撃していた。若い男子には刺激が強すぎた。
数十万の人間の前で胸を晒す事に全く羞恥を覚えた素振りを見せない少女のその様に、一部の住民は怒りと若い世代の道徳の乱れに悲しみを覚えた。

だが、それらの出来事が人々を混乱させた直後には更に別の混乱がやってきていた。
空の彼方にあってさえ巨大だったその少女の姿が更に巨大になったのだ。
空の一方に見えていたはずのその姿は瞬く間に彼らの上空を埋め尽くしていった。
実際には少女は大きくなったのではなく、元々大きかった少女が近づいてきたために起きた錯覚だった。
あの人工的な部屋のような空の景色は瞬く間に若い少女の肌の色で埋め尽くされた。
周囲が夜の様に濃い影に包まれる。この時人々は、この少女が映像やまやかしなどではなく現実に存在するのだと確信した。そしてその少女が、この街の上空を覆うように上体を倒してきている事も。

だがここに来てもまだ人々は急速に迫ってきている危機に気付いていなかった。
あまりに非現実的なその光景に白昼夢のような陶酔感を覚えていた。
気が付いたときには、街の上空には、あの小惑星の様な巨大な乳房が現れていた。街の大半が、その乳房の下に位置していた。数十万の人々全員が、一人の少女の片方の乳房を見上げていたのだ。
あまりにも巨大だった。凄まじい威圧感が、その魅惑的な乳房から放たれていた。
かつて空の彼方に見た姿も巨大であったが、今の距離からは先の比べ物にならないほどに巨大に見える。
だが恐ろしいのは、それでもまだ、この巨大な少女の体は空の彼方にあるという事だ。
上空を覆う巨大な乳房だが、それはまだ雲の飛ぶ高さほども上の存在だ。
にもかかわらず、真下の人々はもう空を見上げる事は出来なくなっていた。空が消えてしまっていた。
代わりにあるのは一人の若い少女の胸だけだ。空のどこを見上げても、少女の乳房しか見えなかった。

そしてその恐ろしく巨大な乳房は今なお降下してきていた。上空から雲を蹴散らしながら、直下の街に接近してきているのだ。
遂に人々は自分達が絶対的な命の危険にさらされている事に気付いた。
混乱に拍車がかかった。人々がなりふり構わず逃げ惑い始めた。
車やバイクが逃げ惑う人々を跳ね飛ばしながら暴走する。街の至る所で悲鳴と衝突音が聞こえた。

だがやがて街の人々全員が悲鳴を上げながら地面をのたうちまわり始めた。
その凄まじく巨大な乳房が降下して圧縮された空気が人々の体に圧力となって襲い掛かったのだ。
鼓膜が内側に押し込まれる。空気によって体が潰されそうになっていた。
更に押し潰された空気は突風となって外に逃げようとし、その風は地面に転がる人々や車を救い上げ遥か彼方に吹き飛ばしていった。

最早上空には肌色しか見えない。肌色の空が降下してきていた。まさに肌色の隕石だった。
人々は悲鳴を上げた。悲鳴と、精一杯の祈りを捧げた。
だがその小惑星のような乳房は、そのままゆっくりと彼らの上に覆いかぶさった。


  *


自分の大きく重たい乳房の下半分が大地に触れた。
支えができた事で乳房の重みが軽減され、同時に柔らかい乳房は自重で僅かに変形し横に広がった。
まるでケーキのスポンジに乗せているように柔らかくしっとりとした感触を下乳に感じる。
大地は冷たく、風呂上りで火照った体には丁度良いクールダウンだった。

ん…っ。
たったそれだけの事が、冷め行く少女の体とは裏腹に、心の奥に小さな炎を燃え盛らせる。
口からため息とも喘ぎとも取れる声を漏らし、少女は快楽に浸るかのように恍惚の表情を見せる。
少女としてはテーブルの上に乳房を下しただけだ。だがそこには確かに極小の街があり、何十万もの人が住んでいたはずだ。
電撃が走る。
何十万の人々が暮らしていた街が、自分の乳房の下敷きになっている。
無事であるはずがない。そこにいた人々にとって、自分の乳房は山よりも巨大なのだから。
今もなお自分の乳房に何十万の人が下敷きにされていると思うと興奮して仕方がない。
しかし少女は、上半身を起こし一度乳房を持ち上げた。
自分の乳房の下敷きになった部分がどうなったか見てみたくなったからだ。
もちろんわざわざ見なくとも、どうなっているかなど容易に想像できていたが。

乳房を持ち上げて見ると、そこには二つのクレーターが出来ていた。
緑色や茶色、街の灰色が入り混じる模様の大地の中では一際大きな茶色のクレーターだ。
乳房は押し付けたわけではないのだが、その自重だけで乳房は大地に深く沈み込んでいたようだ。
それぞれのクレーターの直径は少女の感覚では十数cm。大地にとっては十数kmと巨大な穴だ。
もしも雨水が溜まれば、この二つの穴は巨大な湖となろう。

少女はそんな二つの穴を見て更に興奮した。
自分がちょっと胸を乗せただけでテーブルの上の大地の中では巨大なクレーターが出来てしまった。
しかも胸の片方は図らずも街の上に降下したようで、その大半をクレーターの中に巻き込んでいた。
クレーターの周囲には下敷きを免れた部分であろう灰色の模様が僅かに残っている。
ほんの少し胸を下しただけで数十万もの人々を押し潰してしまったのは恐ろしく優越感を感じられるが、こうやって生き残った部分の人々が、先の、自分がちょっとおっぱいを下したことによる惨劇を間近で見てどれほど恐怖したか、それを想像するとまた凄まじく快感が押し寄せてくる。
これだからこの一人遊びは止められない。

すでに数十万人。そしてこれから数百万人と巻き込むのであろうが、それは世界にとってはただの一人遊びである。