ポケモンをこよなく愛する方はこの先に進まれないことをお勧めします。
いや、もう「天使のような」で一回やっちゃってるんだけど。

擬人化。マクロ。またはノーマルかは読者の妄想に委ねる。まぁ十六夜の中では場面ごとに違ったりする(巨大化すると擬人化したり)。
つか、ツンデレが書けない。あの性格は難しい。

そしておまけの方が文章多い件について。


 *****


とある道路を冒険中の主人公とグレイシア。
青い髪を靡かせて、さらに周囲が冷気で冷やされキラキラ光り、幻想的な雰囲気を醸し出す。
誰もが自分を振り返る様を見てふふんと笑う。
時折触れても良いかと訊かれるが、そういう者にはプイと顔を逸らして嫌であることを全力でアピールする。
自分に触れても良いのは、主人公だけだ。

その主人公は今 自分の一歩前を歩いている。
自分に、初めて触れてくれた人。

 *

かつて、吹雪に包まれる高い高い山の上、孤独の中を雪と共に暮らしていた。
何者も近づかず、足を踏み入れることの無い、暗く白い世界で。
昼か夜かしか判らない雪の降り続く空は、一度たりとも晴れたことは無く、それは、これまでをたった一人で過ごしてきた自分の心を表しているようだった。
生まれたときも独り。これまでも独り。そしてこれからも独りで生き、やがては独りで死ぬのだろう。
毎日、変わらず吹雪く空を見上げながらそう思っていた。
いっそその時がすぐにでも来てくれれば。

今日も変わらず吹雪の空を見上げていたときだった。
生まれてからこれまで変わることの無かった日常に初めて変化が起きた。
それは、自分以外の存在の来訪。
吹雪の向こう、山の麓の方から現れた影は、こちらへ向かって歩いてきた。
その身体が目に見えて震えているのは、この吹雪の寒さのせいなのだろう。
自分にとってはそよ風の様なもの。
それがこの存在にとっては、身を裂くほど厳しいらしい。
脆弱。
それが、生まれて初めて見た、自分以外の存在の感想だった。

その存在は自分の前まで来ると、自分の目を見つめてきた。
自分も、何と無くその存在の目を見つめ返す。
吹雪に睫毛を凍らせて、冷気に吐息を凍らせて、しかし両手で肩を抱えながらも自分を見つめてくるその瞳に宿る光りは、微塵も凍り付いていなかった。
笑った気がする。
するとその存在はさらに自分へと近づいて、手を伸ばしてきた。
よろよろと近づいてくるその存在を、振り払うのは簡単だろう。
だがそうする気にはならなかった。
いつでも出来るという確信もあったが、何よりその存在が何をしたいのか興味があった。

存在の手が、自分の手に触れた。
その瞬間、その存在の手がパキパキと凍り付いた。
自分の手はこの吹雪よりも冷たい。
雪さえも凍りつく自分に触れて、凍らないはずが無かった。

ところがその存在は手が凍り付きながらも自分の手に触れるのをやめはしなかった。
ゆっくりと動かし、手をさすっている様だった。
更に凍結が進み、腕さえも凍り付かんとしているのに。

しかしこのとき、自分はその存在の凍り付いた手に何かを感じた。
それは、—この吹き付ける吹雪にも感じたことは無いが—この世界を支配する『冷たい』とは対極のものだった。
それが何なのか。それを感じたことの無い自分には分からなかった。
ただそれは、ほんの僅かなそれは、一瞬で手から全身へと駆け巡り、身体の中を満たしていった。
目を見開いていた。
初めて感じる『それ』に。
その答えを求めるように、もう一度その存在の目を見た。
その存在は変わらず、笑顔だった。自分の手に触れるその手は、今もなお凍り付いていっているのにだ。

その存在は空いている手を腰に伸ばすとそこから小さな球を取り出した。
赤と白に塗り分けられた球だった。
それを、自分の方に差し出してきた。

確信だった。
自分も、笑顔になっていた。
『答え』は、この球の中にある。
そっと、その球に触れた。
すると開いた球から光りが飛び出し、自分の身体を包み始めた。
その光は、周囲の雪に反射して世界を埋め尽くしていった。
暗かった世界は、一気に眩いほどの光で覆われた。

光に包まれる中、ふと、吹雪がやんでいるのに気づいた。
雪の飛礫がやみ、空を覆っていた厚い雲が消えていた。
そこには、生まれて初めて見る青空が広がっていた。

 *

シャンシャンと尻尾を振り歩くグレイシア。
その首に輝くのは黒いチョーカー。
二人の出会いの記念であった。
目の前には主人公の背中。
愛しい背中を見ていると知らずうちに顔もうっとりとしてため息をついてしまう。
ぶるり。主人公は身体を震わせた。
グレイシアの吐息は絶対零度の温度である。

 *

夜。
ベッドへと入る主人公に続いて身を滑り込ませるグレイシア。

「別に一緒に寝たいとかじゃないんだから! ね、寝冷えしないように温めてあげるだけなんだからねっ!」

プイと顔を逸らしながら言う。
素直になれないのは恥ずかしいから。
どうしても、強い言葉になってしまう。
それでも主人公は笑顔で受け入れてくれた。
それがまた更に顔を紅くさせ、反応を困らせる。

主人公の横へと身体をもぐりこませたグレイシアはそこに丸くなる。
主人公の腕の中、ぬくもりを感じながら。
『あたたかい』がこんなにすばらしいものだとは知らなかった。
夢心地。
やがてグレイシアは笑顔のまますーすーと寝息を立て始めた。
グレイシアの吐息は絶対零度。
主人公は凍えるような寒さに苦笑しながらグレイシアを抱きかかえた。

 *

バトルでもその冷気の威力は健在。
身に纏う異常なほどの寒さの冷気は相手の動きを大きく鈍らせる。
周囲の水を凍結させるほどの冷気を凝縮して打ち出される『れいとうビーム』はあらゆるものを氷像へと変える。
敵が間抜けな姿で凍り付き戦闘が終了。ふふん、グレイシアは鼻で笑った。
戦闘の緊張が解除され、くるりと振り返るとそこでは主人公が自分の勝利を褒めてくれながら寒さに震えていた。
バトルが始まる前、ここは花壇あり噴水あり緑豊かな公園だったはずだが、今はまるで南極にでも来たかのような凍結具合。
草木は凍り付き、噴水は水の脈動をそのまま閉じ込めたようにカチンコチンのオブジェと化し、道行く人々は寒さに震えるような格好をしながら時間が止まったかのように凍り付いていた。
自分がバトルをするといつもこうなってしまう。力が強すぎるようだ。
グレイシアは眉を寄せながらペロっと舌を出して頭を下げた。

 *

次のバトルの相手は強敵だった。
寒さをものともせず、二撃三撃と休む間もなく攻撃を仕掛けてくる。
もともとすばやく動くことが得意手ではないグレイシアは敵の奔放な動きを前に防戦を強いられていた。
口から吐き出された『れいとうビーム』が空気中の水分を凍結させながら敵を狙うが、そのすばやい動きの前に当てることは出来ず、外れた光線はそこにあった林の木々を凍結・粉砕していた。
すでに周囲は極寒地獄と化しているのに敵の動きにはまるで変化が無い。
今までこの空気さえも凍り付くような寒さの前には、ほとんどの敵が動きを鈍らせていたのだが。
相性の悪い相手だった。
やりにくい相手を前に歯軋りをするグレイシア。
だが主人公の見ている手前、みっともない姿を晒すことは出来ない。
タン! 凍り付いた地面を蹴り、相手に飛び掛った。
にやりと笑った敵も同じようにグレイシアに飛び掛る。
二人の影が、空中で交差した。
スタン、地面へと降り立ったグレイシアは間髪入れず敵を追いかける。
ところがその敵が、指に引っ掛けくるくる回しているものが目に入り動きが止まる。
それは、黒いチョーカー。
バッと自分の首を触り、それが無いことを確信する。
自分の素早さを見せ付けたかったのだろうか。
あの刹那、ほんの一瞬の交差の間に、自分の首からチョーカーを掠め取ったのだ。
ぎりり。歯を食いしばる。
沸騰するような怒り。と、共に暗く凍り付くような悲しみが襲ってきた。
奴がその手に軽く弄んでいるそれは、自分と主人公の出会いを記念する思い出の品。
それを奪った敵への怒り、容易く奪われた自分への怒り、そして思い出を汚されたことへの悲しみが、グレイシアの身体から光となってあふれ出す。
吼える様に叫んでいた。

「それに触るなぁぁあああああああああああああああああああ!!」

閃光が周囲の氷に乱反射して、一帯を爆発したような光りで埋め尽くした。

 ズズゥ…ン!!

同時に地面が重々しい振動で大きく揺れた。
光が収まったあと、目を手で覆っていた敵は、そこにたたずむヤマブキのビルよりも大きな対戦相手を見て呆然とした。
風に靡く青い髪はキラキラと冷気を降り注がせ、バサッと振られた尻尾は冷風を巻き起こす。
横にあった林の木々など、比べてみれば鉛筆ほどの長さも無い。
ただの民家なら、その足の下に軽く踏み潰してしまえるだろう。
何が起こったのかわからない相手とそのトレーナー。

事情を理解しているのは主人公ただ一人。
主人公は山のように大きな自分のパートナーを見上げた。
おおよそ、100倍ほどの大きさはあろうか。
これこそが、グレイシアの本来の大きさ。
あの黒いチョーカーは、装備者に『ちいさくなる』の効果を持続させるアイテム。
あのアイテムのお陰で、グレイシアは身体の大きさと能力を押さえ込めた。
もっとも、その強力過ぎる冷気は抑えきれずに漏れ出してしまっていたが。
かつてグレイシアがいた山が常に吹雪いていたのもグレイシア自身の能力。
無意識のうちに山を冷気で覆ってしまい、山は常に雪に覆われていたのだった。
その能力を抑えるアイテムが、博士に作ってもらったあのチョーカーだったのである。
が、そのアイテムは敵に奪われ、そのせいで本来のグレイシアに戻ってしまった。

「よくも…よくも私と主人公の思い出のアイテムに触ったなぁぁああああ!!」

グレイシアは足元の敵をガシッと掴みあげると顔の高さまで持ち上げて拳をギリギリと握り締めた。(『しめつける』)
次いで敵を足元の地面へとたたきつけた。(『たたきつける』)
そしてその上に足を思い切り踏み降ろした。(『ふみつけ』)

「この! このぉ!!」

 ズドォォォオオオン!

  ズドォォォオオオオン!

何度も何度も、怒りのままに足を踏み下ろす。
その衝撃で凍り付いていた周辺の木々や建物はガラガラと崩れ、同時に巨大化し威力も増した冷気は町全体を凍らせていった。
ビルさえもパキパキと凍り付き、次いで足踏みの振動で崩れ落ちる。
グレイシアの怒りがおさまる頃には町の建物はすべて凍り付き砕かれたあとで、グレイシアの周辺は氷の飛礫が降り積もる以外何もなくなっていた。

 *

  ヒュウウウウウウウウ

町はあっという間に雪原と化し、その上にひとりペタンと座り込むグレイシア。
空からは雪が降り注ぎ、望みもしないダイヤモンドダストがキラキラと光る。

「はぁ…」

ため息をつく。そのため息さえも吹雪となって地表に襲い掛かった。
見渡してみれば林も町も無くなり、そこはまるであの孤独な雪山のようだった。
白い地獄である。

ふと、足元の雪がもこもこと動いたのに気づいた。
何かと思い見下ろしていると、その中から主人公が現れた。
自分が巻き起こした雪に埋もれてしまったんだ。
その様を見てまた落ち込む。
が、雪から這い出てきた主人公がなにやら手を振っていた。
よく見てみると、なんとその手にはチョーカーが握られていた。
この雪の中から探してきてくれたというのか。
それは、冷えかかっていたグレイシアの心を一気に暖めてくれた。

手を伸ばし、雪の上の主人公をそっと掬い上げ顔の前へと持ってくるグレイシア。
手の上の小さな小さな自分の主人は、全身しもやけになりながら笑顔を見せてくれていた。
あの日、雪山の上に座っていた自分の手に触れてくれたときと同じ笑顔だった。
触れるだけじゃない。その笑顔も温かい。
あの時主人公が『ぬくもり』を教えてくれたから、今自分はここにいる。
その主人公は今、自分の雪で震えていた。

グレイシアは主人公を乗せた手を頬にあてがった。
ほっぺに、主人公を感じる。
そのままゆっくりと頬を動かした。
これが、自分に出来る精一杯の『あたたかい』を与えられる行為だった。



 おわり



 *****



 おまけ

『ブイズの休日』


今回は全員擬人化イメージ。少(幼)女。



主人公が他のポケモンを連れてジョウト地方へ旅に出ている頃。
退屈だったブイズはパソコンを飛び出してカントー地方へ遊びに来た。

 ズズゥゥンン

   ズズゥゥゥウウウウンン!

     ズドォォオオオオオオオオオオオン!

そこにあった家、山、森を下敷きに踏み下ろされた16本の脚。
踏み下ろされた足の指は、今しがた潰された家々よりも大きかった。
大きさ1000倍。
ブイズ8匹は、ハナダの上に立っていた。
長さ200mにもなる足が16もあれば、街などあっという間に踏み均されてしまう。
ズズン。ハナダのジムをその足の下に踏み潰し、大きく伸びをしながらブースターは言った。

 ブースター 「着いたぁ! さ、遊ぼうよ!」

その言葉に、足元の家を踏みにじったグレイシアが応える。

 グレイシア 「仕切らないでくれる? あんたに指示される覚えは無いの」
 ブースター 「なんだとー!」

いがみ合う2匹。
ポン。2匹の肩が叩かれた。

 エーフィ 「ほらほら、ケンカしないの。せっかく来たんだから楽しく遊びましょうよ」

2匹をなだめるのはみんなのお姉さんエーフィ。
いがみ合っていた2匹はフンと鼻を鳴らして顔を離した。

 エーフィ 「ふふ、ほんとこの2匹はケンカが絶えないわねー。協力すればメドロ○アだって撃てるのに。ねーブラッキー?」

言いながらエーフィは後ろを振り向いた。
声をかけられたブラッキーは腕を組みプイと顔を背けた。

 ブラッキー 「別に好きにさせとけばいいだろ。いつものことなんだから」
 エーフィ 「あらら、あなたも困ったちゃんね」

こそこそとブラッキーに歩み寄ったエーフィはその背中にツーっと指を走らせた。
きゃあ! 悲鳴と共に前につんのめったブラッキーはまた新たに家々を踏み潰した。

 ブラッキー 「な、何するんだよ!」
 エーフィ 「そんなプリプリしないの。お姉ちゃんが遊んであげるから」
 ブラッキー 「べ、別に頼んでねーよ!」

じりじりと迫る怪しい笑みを浮かべたエーフィとゾワゾワと後ずさる汗を流したブラッキー。
その間も町を踏み潰す二人の足の周りでは人々が悲鳴を上げながら逃げ惑っていた。

 ブラッキー 「う…、うわぁぁぁぁあああああ!!」

ダッと走り出したブラッキー。
エーフィもそれを追いかけて走り出した。
その間際、

 エーフィ 「じゃあねみんな。夕方になったら帰るからそれまで好きに遊んでてねー」

そう言い残してエーフィは地響きを立てながら走り去っていった。
フン。その姿を見送ったグレイシアが鼻を鳴らす。

 グレイシア 「言われなくてもそのつもりよ。リーフィア、いきましょ」

返事が無い。

 グレイシア 「リーフィア!」

振り返ってみればリーフィアは大あくびをしながら目をこすっていた。

 グレイシア 「あくびなんかしてるんじゃないの! ほら行くわよ!」

そしてグレイシアはズンズンと。リーフィアはその後ろをトコトコと着いていった。
残された初代組4匹。

 ブースター 「じゃああたしたちはどうしようか?」
 サンダース 「ワタシはいきたいところがある…」
 シャワーズ 「私もそうですね」
 ブースター 「イーブイは?」

イーブイと呼ばれた一番年下のブイズは耳と尻尾をピンと立てもじもじとしながら言った。

 イーブイ 「えっとね、えっとね。イーブイは『たまむししてぃ』にいってみたいの」
 ブースター 「そっか。それじゃあたしとイーブイはタマムシに行くよ。二人ともまたあとでね」

頷き合ってそれぞれは自分の行きたい場所へと散っていった。
カントーに、8匹の1000倍ブイズが解き放たれた瞬間である。

 *

 ズシィン!

   ズシィン!

大地が規則的に震える。
木々がざわめき、山が崩れた。
それらはすべてこの二匹のケモ娘(ポケ娘)が歩いている故に引き起こされていた。
炎のような鬣(?)。ふかふかの尻尾。ブースター。
くるくると動く耳。パタパタと振られる尻尾。イーブイ。
素足。
木よりも大きな指は小さな家を踏み潰したくらいでは気づかない。
森さえも、二匹にとっては短い草みたいなものである。
ブースターは足元のことなど気にせずスタスタと。
イーブイはその後ろを足早にトコトコと歩いていた。

あっという間にタマムシに到着する。
二匹の身長は幼子のそれである。今回は皆同じようなものだが。
デフォルメされていると言ってもいい。本来なら140cmほどか。イーブイにいたっては130cm未満になるか。
が、それでも今は1400mと1300mの大怪獣であり、人々にとって二匹の到着は世界の終わりを具現化したにも匹敵する。

 イーブイ 「わぁーちっちゃいのがいっぱいー!」

目をキラキラと光らせながら足元を見下ろすイーブイ。
ちっちゃいのとはビルである。
デパートが7階建てと仮定して、およそ20mと少し。
二匹にとって、それは足の指よりも少し高い程度の高さ。
それが足元にみっしりと詰め込まれていたのだ。
町の前に四つんばいになって嬉しそうに尻尾を振るイーブイだった。

 ブースター 「あたしは他のところに行くけどあなたはどうする?」
 イーブイ 「えっとぉー…、イーブイはもうちょっとここでみてる」
 ブースター 「そっか。まぁあなたなら危険は無いし遠くからでも見えるから迷子にはならないと思うけど、危ないことしちゃだめだからね」
 イーブイ 「うん!」

そしてイーブイは視線を町に戻した。
小さな小さな町並みの更に細かい道路の上をもっと小さな人々が逃げ惑っているのを見ていた。

 ブースター 「まぁ楽しいならいいかな」

ブースターはとりあえず西を目指して歩き始めた。

 *

しばらくすると広い森が見えてきた。
トキワの森かな。
足の下に森のふわふわ感を感じながらその上を歩いていた。
もちろんそのあとには巨大な足跡が残されたが。
で、しばらく歩いていると森の中に、デン! と山のように大きなものが丸くなっていることに気づく。
リーフィアである。
眠っているのか?
ブースターは近づいていった。

 ブースター 「何してるの?」
 リーフィア 「…気持ちいい…」

森の上に横たわるリーフィアは目を閉じたままかすかに呟いた。
上を見上げれば照りつける太陽。光合成でもしているのか。
その様はまるで草原にでも寝転がっているようでとても気持ちよさそうに見えた。
その下が正真正銘の森であるとわかっていなければ。
身長1400mの少女が寝転がればそれはもう大変な面積が下敷きになるわけで。
森の生命力を以ってしても、これほどのダメージを回復するには膨大な時間を要するだろう。
さらに今は、そのエネルギーとなる太陽光さえもリーフィアに吸収されてしまいエネルギー供給が不足している状態にある。
存続の危機であった。
リーフィアは頭をニビ、足をトキワに向けて、横向きに寝転がっており、ニビの住民からは森の上に置かれたある種山のように巨大な頭を、トキワの住民からは長さ200m超の巨大な足の裏を見ることが出来た。
こうやってまったりモードに入ってしまったリーフィアはもうテコでも動かすことは出来ない。まぁ重機でも不可能だが。

ブースターはリーフィアに見切りをつけて別の場所へと歩いていった。

 *

岩山洞窟を目指して歩くブースター。
たしかサンダースはこっちに来たはず。
と、岩山の尾根に手を乗せ、その上からひょいと覗き込んでみれば、その姿はすぐに見つかった。
地面にペタンと座り、無表情の中、どことなくうっとりした感じが見える。

 ブースター 「いたいた。どうしたの、座り込んで」

山の上から声をかける。
サンダースはそちらに顔を向けぬまま応えた。

 サンダース 「…充電だ…」

見ればサンダースのお尻の下にはなにやら施設のようなものが見える。発電所?
どうやらそこから電気を吸収しているらしい。
その刺激が甘美なものなのか、時折身体をビクンビクンと震えさせる。
ブースターは目を凝らした。
するとサンダースの脚の間、お尻の下でほとんど潰れてしまっている発電所からいくつかの小さな点が逃げ出して、そこを走っているのが見えた。

 ブースター 「人間いるけど?」
 サンダース 「どうでもいい…」

尻の下から電気を吸収するのに忙しいらしい。
ただその表情はいつもの『れいせい』なサンダースでは見られないほど嬉しそうだった。
頬が紅く染まり、口元からは涎が垂れ落ちそうになっている。
脚を「ハ」の字に投げ出して座っているサンダース。
その山脈のような巨大な脚の谷間を、発電所の数少ない従業員が必死に走って逃げていた。
サンダースのお肌ぷにぷにの脚は直径の太さは100mを優に超え、長さも数百mはある。
通り抜けるためにはそれなりの時間を要するだろう。あと触ると感電しそう。

 ブースター 「本人楽しいみたいだし、まいっか」

悦に浸っているサンダースを置いてブースターは歩き去っていった。

 *

キョロキョロと辺りを見渡しながら歩く。
遠方を見ているので足元には注意が行かない。
逃げる人々にとってはいい迷惑である。
シオンを始めとし、釣りの名所の12番道路、トレーナーの集まる13番・14番道路をことごとく踏み潰し、ブースターはセキチクへと来ていた。

 ズズン ズズン

町の上に足を踏み降ろして海を眺める。
海のあるこの町ならシャワーズもいると思ったんだけど。
海は水平線の向こうまで穏やかだった。

 ブースター 「こっちには来てないのかな」

別の場所へ行こうとしたときだった。

 ザバァ!

突然海中から腕が飛び出し、ブースターの脚をガシッと掴んだ。

 ブースター 「えっ!?」

次いでその腕に引きずられるように大量の水を押しのけてその巨体が現れる。
シャワーズである。

 シャワーズ 「いらっしゃい」
 ブースター 「あービックリさせないでよー」

ブースターは尻餅をついた。
あのテーマパークの上に。
水から上半身だけを乗り出したシャワーズは海岸の上にうつ伏せて脚を開いて座り込んだブースターを見上げた。

 シャワーズ 「パンツ見えてますよ」
 ブースター 「え!? やだー!」

ギュッと脚を閉じるブースター。
真正面に位置していたシャワーズからはバッチリだった。

 シャワーズ 「どうしました?」
 ブースター 「え? ああ、みんな何やってるのかなーって思って」
 シャワーズ 「そうですか。私は御覧の通り楽しんでいますよ」

海岸の上に両手で頬杖を着きブースターを見上げながら足と尻尾をパチャパチャと動かすシャワーズ。
200m級の足が軽くとは言えバタ足をすればそれはもの凄い大波を引き起こすことになり、そこにいた大人のお姉さんや海パン野(ryはそれに巻き込まれて海中へと引きずり込まれていった。

 ブースター 「人間溺れてるけど?」
 シャワーズ 「あら、少し足を動かしただけなのに」

バタ足をやめるも、もうそこに人間は浮いていなかった。

 ブースター 「沈んじゃった」
 シャワーズ 「ふふ、大丈夫ですよ」

言うとシャワーズは尻尾を使って海をかき混ぜ始めた。
すると今しがた沈んだ人間たちが水面近くまで巻き上がられてきた。
その人間たちに、シャワーズは尻尾でそっと触れる。
するとその人間たちは、尻尾の表面からその中へと吸い込まれた。
透き通る尻尾の中に、点のように小さな人間たちが吸収されてゆく。
それらの点が、身体の方に向かって移動し始めた。
やがてそれは見えなくなったが、しばらくすると、シャワーズが口をもごもごと動かし始めた。
そして、

 ペロ

舌を出した。
するとその上には人間たちが乗っていた。

 シャワーズ 「はい。この通り」
 ブースター 「そっか! 『とける』かー!」

シャワーズの身体は水に近い構成。
そのシャワーズが『とける』を使えば自身を水と同化させることもできる。
今のは身体を海水と同化させ人間たちを身体の中に引きずり込み口へと移動させてきたのだ。
舌に付いた人間を取って砂浜に並べる。

 シャワーズ 「気を失ってるだけですね。水も飲んでないみたいですし、すぐに目を覚ましますよ」
 ブースター 「よかったー」
 シャワーズ 「くす、こんなに小さいと大変ですね。私たちがちょっと遊ぶだけで目を回しちゃうんですから」

言いながら人間をつつくシャワーズ。
10mほどの指が2mもない人間を砂浜に埋めた。
ピク。何かを思いついたのか、シャワーズの動きが止まる。

 ブースター 「どうしたの?」
 シャワーズ 「おすそ分けです」

シャワーズはブースターを見た。
彼女は自分の前にぺたんと女の子座りをしている。
その太ももの上に左手の人差し指で触れる。

 ブースター 「?」
 シャワーズ 「ふふ」

そして今度は右の人差し指で、並べられている人間の一人に触れた。
するとその人間はシャワーズの指の中に吸収され、そしてブースターに触れている左手の人差し指の先から出てきた。

 シャワーズ 「その人間はあなたのものですよ」
 ブースター 「えぇぇえええええええ!?」

シャワーズは手をどけた。
ブースターの白い太ももの上にはポツンと点のような人間が残された。海パン野郎である。

 ブースター 「やだー! 取って取ってーーッ!」
 シャワーズ 「ふふふ、では」
 ブースター 「え!? ま、待って!」

だがシャワーズは海へと飛び込み、そのままどこかへと泳いでいってしまった。

残されたブースター。
太ももの上に人間を乗せていては動くこともできない。
さらに、自分にはシャワーズのような能力は無く、こんな小さな人間をケガさせないように触る自信は無かった。
何も出来ないまま時間だけが流れていった。

 *

海パンは目を覚ました。
が、目を開いて見えた景色は、最後自分が見た景色とは大きく違っていた。
確か突然津波に襲われて海に沈んだはずだが。
見える限り一面の肌色の地面。軽く湾曲している。しかしどこにも水気は無い。
見ればこの肌色の地面の向こうに海が見えるが、随分と下方にあるようだ。
というかここはどこなんだ?
と、辺りを見渡そうとしたとき。

「うー…」

唸り声のようなものが聞こえた。
ここには凶悪なポケでもいるのか!?
海パンは声のしたほうを振り返った。
するとそこには、山のように大きなポケモンを見上げることが出来た。

ブースターは自分のふとももの上に人間が目を覚ましたのに気づいた。

 ブースター 「あ、起きた!」

人間も自分のことに気づいたようだ。
慌てている様が良く見える。

 ブースター 「ねー早く降りて」

だが人間にその場を動く気配は無い。
腰でも抜かしたのだろうか。
だがそんなことどうでもいい。知らない人間にこれ以上触れていたくない。

 ブースター 「早く降りて!」

ブースターは片手の人差し指を伸ばして人間に近づけていった。
海パンは、太さ10mにもなる指に迫られ慌てて太ももの上を膝の方に向かって走り出した。
長い長い距離だった。水泳で体力は鍛えられていると思ったが、恐怖のせいで余計に消耗してしまう。

息も切れ切れ走り続けたが、やがて膝に近づくにしたがって足元の肉が湾曲してくるのに気づく。
そして立ち止まった。これ以上進めば、この超巨大なブースターの脚の上から転落してしまう。
どう見ても、ここの高さは100m以上ある。
転がり落ちて無事で済む理由が見つからない。
しかし指は、彼のすぐ後ろに突き立てられた。

 ブースター 「ほら早く。落とっしゃうよ」

ビルのような大きさの指がじりじりと迫ってくる。
が、こんな高さはどう合っても降りられない。
丸くカーブを描いているからにじりにじり降りていったとしても途中から先に進めなくなる。
更に、生粋の海の男を自称する彼の手持ちには水ポケしかおらず、空を飛ぶを覚えている者は皆無。
こんなところでタッツ○を出してなんになるというのか。
前は膝の絶壁。後ろは巨大な指。進退窮まった。

人間はそこから動かなくなってしまった。

 ブースター 「もう、ほんとに落としちゃおうかな」

しかし、ただ止まったわけではなさそうだ。
一応うろうろしているようには見える。

 ブースター 「…もしかして降りられないの?」

脚の上からも降りられないとは。
どうしよう。摘んで持ち上げられるだろうか。
でももしも失敗したら大変なことになってしまう。
えーと…えーと…。
ブースターは必死に考える。

 ブースター 「………………………そーだっ!」

ピコン。頭の中で『フラッシュ』。
ブースターは海パンの前に突き立てていた指をふくらはぎの方へ移動させる。

 ブースター 「こっち。こっちから降りて」

ブースターは今、女の子座り(パターンA)である。
太ももの横にふくらはぎが来ておりそのまま行くと足首。
そして小高いかかとを越えると上を向いた足の裏のスロープが続きその先は足の指の麓がある。
ここからなら降りられるだろうという判断。

海パンはその指示に素直に従っていいものか迷ったが、この巨大ポケの頬が膨れるのを見ておとなしく従うほか無かった。
膝からふくらはぎの丘を越えてゆく。それなりの勾配があった。
そのふくらみを越えたあとは細くなってゆく脚を足首に向かって歩く。
細いといっても幅何十mとあり、自分ひとりが歩くのになんの支障も無い。
というか下手したらなんかのパレードでも通行できそうな広さがあった。
足首を過ぎると今度は上り坂。丸っこいかかとの山に登ってゆく。
高さ数十mの傾斜。手も使わずには入られないほどだった。
よじよじ、よじよじと、息を切らしながらかかとの上に登り切ると、今度はそこから長さ200mを越える長い下り坂を見下ろすことが出来た。
目も眩む高さである。
だが、ここを降りなければ地面までたどり着けない。
自分が立っているところは変わらず100mほどの高みである。
横にはいい景色が広がっていた。
逆にはふっさふさの尻尾が丸まっている。
で、上を見上げれば、肩越しにこちらを見つめてくる巨大ポケ。
海パンは後ろ向きになると、足の裏に斜面を少しずつ下っていった。
慎重に、一歩ずつ。もしも転げ落ちれば200mノンストップだ。
それどころか土踏まずの湾曲に誘導され、足から落ちてしまうかもしれない。
ほんの少しの油断が命取りとなる。

十数分後、海パンは足のつま先、指の付け根の肉の上にまで来ていた。
あと少し。
もう少しで地面へと降りることが出来る。
指先まで行けば、ポケの技でなんとか飛び降りることが出来るかも。
肉を越え、中指の裏を走ってゆく。

 ブースター 「ひゃん!」

それまで、必死に堪えていたくすぐったさが、指の裏を走られたことで爆発した。
思わず指をもぞもぞ動かしていた。
それは海パンに取って死活問題であり、海パンは突然暴れだした指々の上で悲鳴を上げながらうずくまっていた。
まるで大荒れの海の上で船に乗っている気分だった。
ズルリ。足がすべたった。
海パンは足の指の間へと落ちかけていた。
必死に指にしがみついて落ちないようにしていたが、まだかすかにもぞもぞと動く指のせいでじりじりとじりじりと手が滑っていった。
たかが指とはいえ10mを超える太さがあり、それは、ここがまだ建物の3階相当であるということだ。
向かいには別の指が見えた。その谷間は指同士がくっつきあい、そこに落ちれば、とりあえず地面まで落下することは無いだろう。
だがこんなもじもじと動く指の間に落ちては一巻の終わりである。
ゴリゴリとこすれあう指がおとなしくなるのをひたすらに待ち続けていた。

やがて指の動きも収まった。
この期に指の上へと戻った海パンは、今度は慎重にその上を歩いていった。
指先。眼下10m下には地面がある。あと少しであった。
指に張り付くようにして、指を降りてゆく。
幸いなことに、指はその途中で木に触れていた。
あそこまで行けばそれ以降を降りるのは簡単である。
指の丸みの半分くらいまで来たところで木の方に移り、そこから地面へと降り立った。
地面から見てみると、そのポケの巨大さが改めて分かる。
目の前にある指はその指先ですら家よりも大きく、指一本一本が小さなビルほどもあったのだ。
自分が降りたことに気づいたのだろう。
身体がゴゴゴゴと動いて、上から足元を見下ろしてきた。

 ブースター 「もう降りたよね? あー変な気分」

パンパンとお尻をはたきながら立ち上がるブースター。
そしてブルブルっと身体を震わせたあと、いずこかへと歩き去っていった。

 *

パタパタ尻尾を振りながら歩くことしばらく、大きな町が見えてきた。
ヤマブキだった。
大きいといってもそこに乱立するどんな高層ビルも、自分の膝程度の高さしかないが。
そんな町の中に動く大きな影。
グレイシアだった。
町の中に座り込み、なにやら手のひらに向かって話しかけている。
乱立するビルを蹴飛ばしながらグレイシアに近づいてゆくブースター。

 ブースター 「何してるの?」
 グレイシア 「なんだ、あんたかー。見ての通りよ、トレーナーとバトルしてたの?」
 ブースター 「バトル?」

グレイシアの手のひらの上を覗き込めば、そこには数人の人間とポケがいた。

 グレイシア 「とっても強いって言うからちょっと相手してもらったのに、あっという間に全滅しちゃったのよ。私の指一本にも勝てないの? 私の苦手なかくとうタイプなのに、それで何が空手王よ」

つまらなそうに吐き捨てるグレイシア。
よく見れば人間たちはみな道着を着込んでいた。
ポケも力の強そうなものばかり。
が、みんな目を回して倒れている。

 グレイシア 「ちょっと指を乗せたら一人分。つついたら一人分。ペシってはじいたら一人分。それだけで終わり。もう少し楽しませて欲しかったわ」

はぁ。ため息をつく。
するとそのため息は吹雪となって手のひらの上の人間とポケに襲い掛かり、彼らをカチンコチンに凍らせた。

 グレイシア 「もうこの道場もいらないわね」

するとグレイシアは体育座りのような座り方に変え、片足を伸ばすと、そのつま先の下で道場を踏み潰した。
ぐりぐり。
持ち上げてみるともう道場は跡形も無かった。
動かしすぎた指が隣のジムに突っ込んで半壊させてしまったがまぁいいだろう。

 グレイシア 「あ〜あ、足が汚れちゃった。ねぇ、ちょっとベロリンガ捕まえてきてよ」
 ブースター 「えーやだー! 何十匹捕まえればいいの!?」
 グレイシア 「じゃああんたが舐めなさいよ!」

ズイと今しがた道場を踏んだ足をブースターの顔の前に突き出す。

 ブースター 「う…」

ブースターは目の前のつま先を見た。
その指の間には道場の瓦礫が挟まっていた。
指が少し動くと木片がパラパラと落ちる。
中指と人差し指の間から、道場の看板が飛び出ているのが見えた。

 グレイシア 「ほら! 綺麗にしてくれるんでしょ!?」

にやにやと笑うグレイシア。
このままつま先を頬にぐりぐりと押し付けるのも面白いか。
そう思っていると、ブースターが息を吸い込み、そして吐き出した。

 ブースター 「ふぅー」

※ブースターの吸い込んだ空気は体内の炎袋で熱され、1700度の炎となって吐き出される。
またの名を『火炎放射』

 ボォォオオオオオ!

 グレイシア 「熱っ! あっ、あっ! 熱っ! 熱い!! 何すんのよ!!」
 ブースター 「熱消毒。これで綺麗になったでしょ」

フンと鼻を鳴らすブースターの前で、足を抱き寄せてふーふーと吹雪を当てるグレイシア。
その足をズンと踏み降ろし、立ち上がった。

 グレイシア 「よくもやったわね!」
 ブースター 「先に変なことやったのはそっちでしょ!」

ガルルル…!
実際はただのバトル。
ただこの二匹のそれは怪獣決戦を超える。
ダン!
アスファルトを砕きながら後方へと跳び距離をとったグレイシアの口から『冷凍ビーム』が放たれる。
が、その直線的な攻撃をさらりと身を交わして避けるブースター。
反撃とばかりに『火炎放射』を放つ。
炎は跳んで避ける前のグレイシアの足元に着弾し周囲へと爆散した。
ヤマブキの町が火の海に包まれる。
悲鳴を上げながら逃げる人々。
だが、道路を踏みしめるブースターの巨大な足がそれを許さなかった。
空高く飛び上がったグレイシアは身体をくるんと縦回転させながらビームを吐き出した。
正面方向から見れば「点」だった光線が、今度は「線」となってブースターに襲い掛かる。
ブースターは横方向に鋭く跳ぶことでこの一閃を回避。
グレイシアの放った『ビーム』はまるで巨神○の光線の如く町を縦に断絶し、そこに巨大な氷河を形成した。
ビルを踏み潰して着地する二匹。
町の一方は業火に包まれ、もう一方は氷河に凍りついた。

グレイシアに向かって走るブースター。
足が踏み下ろされるたびにその周辺の人々が宙に舞う。
そのブースターの周囲を、大気中の水分から精製された氷の塊が取り囲み、襲い掛かった。
『氷の礫』。
速攻の手の一つである。
前方の私に集中していたブースターには避けられない。
礫がブースターの身体に命中した。
だがその瞬間、ブースターの身体は炎となって掻き消えた。

 グレイシア 「な…っ! ……………『影分身』ッ!?」

ガバッと後ろを振り返ったグレイシアの頭上からは、すでにブースターが技を繰り出していた。
放たれた炎は『大』の字になりながら大きく広がってゆく。
命中すれば町に大きな『大文字』が焼き付けられることであろう。
その中心は自分となる。
自分に向かって振ってくる炎を見上げながら、グレイシアは落ち着いて身体から冷気を放出した。
そのあまりの寒さに、周囲にダイヤモンドダストが輝き始める。
すると、あの巨大な『大文字』はその中心から消え始め、グレイシアに命中する頃には完全に消え果ててしまった。
それは、グレイシアの放ったこの凄まじい冷気の『バリアー』に触れたからだった。

 グレイシア 「『影分身』なんて…いつの間に覚えてたのよ」
 ブースター 「えへへ、この前、技マシン使ってもらったんだ」

ブースターの表情には余裕がある。
それは新しい技を持っていることも含め、全体的に自分がおしているからだった。
このまま行けば勝てる。
そう思っていた。

だが、視線の先でグレイシアがにやりと笑った。

 グレイシア 「フン。で、まさかそれだけで勝ったつもりになってるの?」
 ブースター 「え…?」

グレイシアの右手にエネルギーが集中する。
それは、本来グレイシアの持ち得ないタイプの攻撃だった。

 グレイシア 「技マシンを使ってもらったのはあんただけじゃないのよ!」

エネルギーは、空気中の水分を吸収し、そこに拳大の水球を作り出した。
その水球を纏った右手を前へと突き出す。
ボン! 水球が弾けた。

 ズァァアアアアアア!!

前方、何事も無かったビルや道路が突然ずぶ濡れになった。
それらの水は一瞬にして夥しい量となり町を水没させる。
そしてそれは、ブースターにも効果を表した。
見えなかった攻撃。ビルなどが水に濡れて初めてその攻撃の正体を悟る。が、それは放たれた攻撃を避けるには遅すぎる理解だった。
横に飛び退る間もなく、ブースターの身体が全身水に濡れる。
炎ポケにとってはこの上無いダメージ。
ズズン!
水に包まれ、力を奪われたブースターは片膝を着く。

 ブースター 「う……み、『水の波動』…」
 グレイシア 「ふふ、その通り。波動そのものは目に見えないわ。周囲の水滴から攻撃を見切ったみたいだけど、ちょっと遅かったようね」

ゴウ! グレイシアの纏う冷気が一段と鋭く冷たくなる。

 グレイシア 「こんなに水と氷に囲まれてたら満足に発熱もできないでしょ。今ならあんたを凍らせることもできそうよ」
 ブースター 「ま、まだ負けて無いもん!」
 グレイシア 「フン、強がらないの。今すぐ氷付けにしてあげるから! 間抜けな格好のオブジェになるといいわ!」
 ブースター 「氷なんかに負けないから!」

立ち上がるブースター。
そして二匹は、大きく息を吸い込んだ。
ヤマブキの町に、熱気と冷気の渦が巻き起こる。

二匹の口から、同時にそれは放たれた。
グレイシアの口からは『冷凍ビーム』。触れたものを凍結させる冷気の光線。
ブースターの口からは『プロミネンスビーム』。触れたものを蒸発させる熱気の光線。

 グレイシア 「…って、ちょっと待ちなさいよ! それ違うゲームの技でしょ!」
 ブースター 「だって炎タイプに光線技ないんだもん!」
 グレイシア 「ぐぬぬ…! でも私が勝つ!」

冷気と熱気。
それぞれのエネルギーが凝縮された光線が、互いに向かって突き進む。
が、その両方が町を一発で壊滅させられるほどの威力を有しており、対極に位置するこれらのエネルギーがぶつかり合えばメド○ーアなのは必至。カントーを吹き飛ばす恐れがあった。
ギュン!
人々が頭を抱える中、遂に光線はぶつかり合おうとした、その刹那、間に黒い影が割って入る。
影は左手に『冷凍ビーム』を。右手に『プロミネンスビーム』を受け止めた。

 グレイシア 「う!?」
 ブースター 「え!?」

二匹が放った全力の光線はその手のひらに弾かれ霧散、周囲に僅かな氷と火の粉を散らして消え去った。
攻撃の僅かな衝撃が大気を振動させたが、カントー消滅に比べれば実に些細なものだった。
攻撃を止められぽかんとする二匹の間、そこに立っていたのはブラッキー。
その手のひらからはかすかに冷気と熱気の煙が昇っていた。
ブラッキーは何とも無いように手をプラプラと振って煙を払う。

 ブラッキー 「お前らもう少し回りに気を遣えよ」

 フワリ

 グレイシア 「あ!」
 ブースター 「う、うわ!」

二匹の身体が宙に浮かび上がった。
1400mの巨体が、まるで重さを感じさせないように軽々と。

 「ほんとよねー。ブラッキーが間に入ってくれなかったらみんな吹っ飛んでたわよ」

 ズズン!

   ズズン!

ブラッキーの背後から現れたエーフィは言う。
二又の尻尾がクイクイと動かされ、それによってグレイシアとブースターは浮かばされている。
『サイコキネシス』
意思だけで物体を動かす力。エーフィの十八番である。
宙をふわふわと浮かびながらグレイシアが反論する。

 グレイシア 「だ、だってブースターが…!」
 ブースター 「あー! あたしのせいにするの!?」
 エーフィ 「はいはい、ケンカしないの。まったく…。あーあ、随分と壊したもんねー」

腰に手を当てて周囲を見渡すエーフィ。
実際、ヤマブキはほとんど廃墟になっていた。
ビルというビルが崩れ、ガラスというガラスが割れ、道路という道路が陥没している。
町の隅には、灼熱と吹雪に怯えてガタガタと震える人々がいた。

 エーフィ 「ほら、彼らに謝りなさい」
 グレイシア 「何でよ! 私は悪く無いわよ!」
 ブースター 「私だって悪く無いよ! 悪いのは全部グレイシアだよ!」
 グレイシア 「なんですって!?」

浮かんだままいがみ合う二匹。
ふぅ。エーフィはため息をついた。

 エーフィ 「反省が足りないようね」

くい。尻尾が動かされた。
すると宙に浮かぶ二匹の身体が高速で回転し始めた。

 グレイシア 「え!? わわわ!! やめてエーフィ!」
 ブースター 「め…目が回るううううううううううう」

ギュンギュンと回る二匹。
あまり速さに球体になって見える。
その球からは悲痛な悲鳴が発せられていた。
それを見上げてクスクスと笑うエーフィだった。

そんなエーフィを横からジト目で見るブラッキー。

 ブラッキー 「(ぼそぼそ…)バカな奴らだなー…。エーフィに逆らったって痛い目見るだけなのに…」
 エーフィ 「何か言った?」
 ブラッキー 「う!?」

ずい。エーフィが笑顔を向けてきた。
慌てて否定するブラッキーである。

 ブラッキー 「ななな何も言ってねーよ!」
 エーフィ 「ふーん、あなたも回りたいの?」

エーフィは笑顔のままブラッキーへ片手を向けわきわきと動かす。

 ブラッキー 「ちょ、ちょっと待てよ! 俺は『あく』だぜ!? 『エスパー』は効かねーぞ!!」
 エーフィ 「あら、お姉ちゃんに不可能は無いのよ。試して見せましょうか?」

じりじりと近づいてくるエーフィ。
汗をだらだらと流しながらブラッキーは頭を下げる。

 ブラッキー 「ごめんなさい…」
 エーフィ 「ふふ、そうそう、素直が一番。…さて、こっちの二匹ももう良いかな?」

エーフィはグレイシアとブースターのゆっくり止める。
二匹は目をうずまきにしていた。

 ブースター 「ほにゃ〜…」
 グレイシア 「き、気持ち悪い…」
 エーフィ 「反省したようね。じゃあ彼らに謝りなさい」

町の隅から見上げている人々。
二匹はそっちに向き直り呟いた。

 ブースター 「ご、ごめんなさい…」
 グレイシア 「わ、悪かったわね…」

  ズゴン!

二匹の頭が足元の道路を砕いて地面に沈み込んだ。

 エーフィ 「ちゃんと頭を下げなさい。頭を」
 グレイシア 「いだだだだだだ! わかった! わかったわよ!!」
 ブースター 「首が折れるうううううううううう!!」

ガバッ。念力から開放された二人は正座をして頭を下げた。土下座である。

 ブースター・グレイシア 「すみません。もう二度といたしません。許してください」

ぺこぺこと頭を下げる二匹。
その所作のせいで崩れかけのビルがいくつも崩れたが、最早些事であった。

 エーフィ 「よしよし。それじゃあそろそろ帰りましょうか。あまり遅くなっても心配させちゃうからね、じゃあ残りの子を連れてきて」
 グレイシア 「え? 私たちが行くの? いたたたたたたた! わかった! わかったわよ!」
 エーフィ 「あなたもよ、ブラッキー」
 ブラッキー 「俺もか? いや、わかった。行ってくるよ…」
 ブースター 「わ、私もー…」
 エーフィ 「あなたは待ちなさい」
 ブースター 「えぇ!?」

怯えるブースターの前で笑うエーフィは足元を指差した。

 エーフィ 「あなたは町の後片付け。少しでも町の復興に貢献なさい」
 ブースター 「えー! やったのはほとんどグレイシア…」

ズン!
エーフィの足が足元にあったビルを踏み潰した。
笑顔でブースターを見つめたまま、ぐりぐりと踏みにじる。

 エーフィ 「ん?」
 ブースター 「喜んでやらせていただきます…(ガタガタ)」

ブースターはビルの瓦礫をどけて回った。
すでにほとんどのビルが倒壊した今、そこら中が瓦礫だらけである。
人間が重機を使ってもどけられないような大きな瓦礫も、ブースターにとっては指先で摘めるような大きさなので、作業に困るということは無い。
ひょいひょいと摘み上げもう片方の手のひらの上に乗せ、ある程度溜まったら町の一角に集めておく。
10階建てなど小さなビルが崩れかけていたらその上に指を乗せそっと押し潰す。大きなものは手のひらを乗せてやればそれで済む。
もう使えそうに無いビルも一緒に摘んで瓦礫の山に捨てた。

町の中を歩き回るブースターの足元で人々は力を合わせて作業していた。
瓦礫を集め、トラックに載せ、瓦礫の山へと捨てに行く。
町の奥に進むために瓦礫を除去する重機を使い道を作りその後ろを数台のトラックがついて行ったり。
そうしていると進行方向にまだ崩れていないビルが立ちふさがったりするのだが、

 ブースター 「これ邪魔でしょ。どけてあげるよ」

彼らの目の前にあったビルは巨大な指に摘まれると、ズボッ! と土台ごと引っこ抜かれ宙へと消えていった。
引っこ抜かれたビルは瓦礫の山に向かって放り投げられる。
8階建てのビルはクルクルと回りながら宙を飛び、瓦礫の山に墜落して砕け散った。
この巨大ポケには重機など要らないのだ。

ブイズが全員集合するまでには、町はすっかり片付いていた。
ほとんど何も無くなった町が夕日に染まる。

 エーフィ 「じゃあ帰りましょうか。きっともうご主人様も戻ってると思うわ」
 ブラッキー 「(ぼそぼそ)結局エーフィは何もしてないじゃねーか…」
 イーブイ 「楽しかったねー」
 サンダース 「…また、来よう」
 シャワーズ 「あ、いいですね。そのときは私も呼んでください」
 グレイシア 「…酷い目に遭った」
 リーフィア 「ふわ〜…(あくび)」

わいわいがやがやズシンズシン。
8つの巨大な影が歩き去っていった。

そのうちのひとつが振り返り、とててて…と戻ってきた。
ブースターである。

 ブースター 「町壊してごめんね。これはおわび」

ブースターは尻尾の中に手を突っ込むと、そこからひとつの『きのみ』を取り出し、それを町の上に置いた。

 ブースター 「じゃあね」

ブースターは笑顔で手を振ると前の7匹を追いかけて走っていった。
ビルの無くなった町の上に、50mにもなる巨大なきのみが残された。

カントーは消滅こそ免れたものの被害は甚大。
果たして復興できるのだろうか。


 おわり。


 *****


 おまけのおまけ

『ブイズとお風呂の入り方』

・ブースター
生粋の炎ポケでお風呂が嫌いです。
無理に湯船に入れようとすると怒って湯水が一瞬で蒸発するほどの発熱をするので火傷には注意してください。

・サンダース
お利口でお風呂でもじっとおとなしくしています。
ただし湯船に入れると漏電して感電する恐れがあるので一緒に入るときは全身ゴムスーツを着用してください。

・シャワーズ
湯船に入れると溶けます。
その湯船に身体を沈めるということはシャワーズの体内に入るのと同じで、身体中をぺたぺたと触られると思いますが我慢してください。

・イーブイ
まだ一人で湯船につかることは出来ません。
一緒に入るときは腕に抱え腰の上に乗せるなどして安心させてあげてください。

・リーフィア
草ポケということもあり、湯船に浸かるよりもシャワーを浴びることを好みます。
ただ放って置くといつまでも浴びているので、ある程度満足させたら湯船に入れてください。

・グレイシア
一人でお風呂に入れる風を装っていますが、実際は怖くてたまらないので一緒に入ってあげましょう。
ただし浴槽の水はあっという間に氷点下になるので心臓麻痺には気をつけてください。(お風呂の水は凍りません)

・ブラッキー
我慢強いブラッキーはいつまでも湯船に浸かっていますが、それは強がりなので早めに湯船から上げましょう。
ツンツンしていますが抱きかかえてあげればおとなしくなるので言うことを聞かない時は後ろからそっと抱いてあげてください。

・エーフィ
一緒に湯船に浸かるとノリノリで絡んできますのでそれなりに相手をしてあげましょう。
ただしあまり調子に乗らせるとあなたのことを操ろうとしてくるので一線を超えないよう心しておいてください。


 おわり。


 *****


おまけの(脳内)設定

ブースター
サンダース
シャワーズ
→仲のいい3匹

グレイシア
リーフィア
→親分と子分? 舎弟? そんな感じ。

エーフィ
ブラッキー
→姉妹 (ブラッキーは♂でもいいかなって思ったけど) あと他のブイズよりも少し年上。

イーブイ
→ 一番年下。みんなの妹。


 *****


 おまけ2

『ブイズとキャンプ』

湖畔。
その横でキャンプをする主人公とブイズ(1倍)。

 ボォォオオオオオオ!

火を吹き、BBQを焼くブースター。

 ブースター 「うー…弱い火を吹いているとムズムズする…。もっと強い火でやったらダメ?」
 グレイシア 「あんたが本気出したら一瞬で炭になっちゃうでしょ! じっくり焼くの」
 ブースター 「ぶー…」

 ちゃぷ

湖からシャワーズが顔を出した。

 シャワーズ 「魚がいっぱいますよ。サンダース、お願いできますか?」
 サンダース 「…了解した」

水から上がるシャワーズ。
ボン!
サンダースは100倍に『おおきくなる』。
テント他主人公たちを足の間に挟んで立つサンダースは一歩前に進み出ると片足を湖面にちゃぷっと入れた。
長さ20数mの足が入れられ水面が僅かに波立つ。
そして

 バリッ!

『ほうでん』。
一瞬、湖面が光ったような気がした。
しばらくすると、水面に無数の魚が浮かび上がってきた。

 サンダース 「…獲れた」

湖面から足を引き抜いて元の大きさに戻るサンダース。
主人公の膝の上のイーブイが耳をピンと立てて喜ぶ。

 イーブイ 「わぁー! いっぱいとれたね!」
 グレイシア 「向こうの方、ギャラドスも浮いてるけど?」
 エーフィ 「あらあら、サンダースの電撃でやられちゃったのね。4倍ダメージだから」
 グレイシア 「それ以前の威力だと思うけどね」
 シャワーズ 「じゃあお魚集めてきますね」

言うとシャワーズは湖に飛び込んだ。
すると、

 ズーン…

   ズーン…

大きな足音が響いた。
背後の森の木々の上からリーフィア(100倍)が顔を出す。

 リーフィア 「ふぁ〜…薪 集めてきたよ…」

あいも変わらず眠そうなリーフィア。
テントの横に 集めてきた薪(木)をガラガラとなだれ落とす。

 グレイシア 「へぇ、この森 若い木が多いと思ったけど、ちゃんと枯れてる木を見つけてきたのね」
 リーフィア 「んーん」

リーフィアは首を横に振った。
そしてそこに生えていた木を一本引っこ抜く。

 シュゥゥウウウウウウウ…

見る見るうちに枯れてゆく木。
やがてカラッカラの枯れ木になってしまった。

 リーフィア 「『ギガドレイン』…」
 グレイシア 「あんたね…」
 エーフィ 「ではこの木でキャンプファイヤーの準備をしましょう」

 くいっくいっ

エーフィの尻尾が動くと枯れ木は宙に浮かび上がりカチャカチャと櫓の形に組みあがってゆく。

 エーフィ 「こんなものかしら。もうちょっとディティールに凝ってもいいんだけど…」
 グレイシア 「どうせ燃やしちゃうのに」

 ズン ズン

木々の陰からブラッキーが顔を出す。
その肩には大きな熊(非ポケ)を抱えて。

 ブラッキー 「これぐらいのでいいか?」
 エーフィ 「ありがと。これで夕飯の食材も大丈夫ね」

 ズドン

放り投げられる熊。
ブラッキーの倍以上の体躯のある巨大熊だが、ブラッキーはまるで小石でも投げるように軽々と投げた。
パキン。その熊が凍り付く。

 グレイシア 「こうしておけば腐らないでしょ。あとはシャワーズが戻るのを待つだけね」

  ザバァァァアアアアアア!

湖の水が盛り上がり、大量の飛沫を散らしながら現れた100倍のシャワーズ。

 ブースター 「ああ! 水がBBQにかかっちゃうよー!」
 シャワーズ 「ふふ、ごめんなさい。お魚も集めてきましたよ」

家さえも乗せてしまえる手のひらの上に山積みになる魚。
砂浜の上に降ろされた。

 ブースター 「あれ? もっとたくさんいなかったっけ?」
 シャワーズ 「少し小腹が空いたので…先に頂いちゃいました」
 グレイシア 「あ、ずるい!」
 エーフィ 「まぁまぁ。じゃあみんな揃ったことですし、とりあえずお昼にしましょうか」

丸太を椅子のように並べてその上に座る一同。
BBQや焼き魚を皿に取り分け一人ひとり手渡してゆく。
主人公も手伝おうとしたのだが、

 グレイシア 「あんたは座ってていいの!」
 エーフィ 「そうですよ。はい、これがご主人様の分です」

盛り付けられたお皿を手渡され座りなおされてしまう。
何も出来ず苦笑する主人公の横では、お皿に盛られたBBQを見て涎を垂らすイーブイがいた。

 イーブイ 「ねぇねぇ、そのコーンのところもらってもいーい?」
 ブースター 「じゃああたしのもあげるよ」
 イーブイ 「やったー!」

ブースターの尻尾に顔を突っ込んでもふもふするイーブイ。

 エーフィ 「ちゃんと行き渡りましたね。では食べましょう」

「いただきまーす!」

8匹と一人は口にBBQを頬張った。

楽しい楽しいキャンプは、まだ始まったばかりである。


 ブースター 「櫓に火をつけるときは『メルトダウン』使ってもいい?」
 エーフィ 「ダメ♪」


 おわり


 *****

脳内設定暴走してますが、仕様です。