※残酷系に分類されます。レベル低め。 細かい設定や描写をみんな放り出し書きたいように書いた。



 「 幻獣サラマンダー 」



「へぇー。人間界って結構ちっちゃいんだね」

そこに立った少女はおでこに手を当て周囲をぐるりと見回しながら言った。
少女、と言ったがその容姿は人間のそれではない。
幼さ残る肢体は灼熱しところどころに炎を巻いている。
赤色に輝く長い髪は炎の如く天に昇るのではなく大瀑布の如く流麗に背に流れている。
そして百獣の王ライオンのようなしっぽは先端に轟轟と炎を滾らせながらパタパタと振られている。
身には何も纏っていない。人間で言えば10代の前半か。
そんな幼子の全身は灼熱しところどころから炎が噴き出し渦巻いている。
炎を従わせるその姿、まさに炎の化身。

そしてその身長は140~150mはあろうか。
そこは森の中だ。周囲に生い茂る木々は少女の足首ほどの高さしかない。
かわいらしくも巨大な足が地面に降ろされているが、その少女の身のあまりの熱さに、地面がチリチリと焦げ付いた。
体温は部位によって1000℃を超え、触れたものを瞬く間に焼き尽くす。例え触れなくとも、その高温は近づくものを業火の火中に貶めるだろう。
現に、少女の足は森の木々には触れていないのに、足元の木々はメラメラと炎に包まれつつあった。森林火災である。

「ふふ、あっちには何があるのかなー♪」

初めて見る人間界に少女は上機嫌だ。
どちらともなく走り出し森を横断していった。
しかし少女の体温は、そこに運動が加わると途端に跳ね上がる。
動物が運動すると体温が上がるのと同じである。だがその桁が違う。
少女は森の木々を蹴散らしながら走り去っていったが、その足が森に踏み下ろされるたびに周辺の木々が一気に発火した。
体温は数千度まで跳ね上がったのか。触れてもいないのに、突然燃え上がった。
更にそこに少女の巨大な体が動く事で発生する突風が炎に風を送り込み、まるで爆発するように加速度的に炎上した。森は一瞬で火の海になったのだ。
それは少女が走り続ける限り、その後を追うように凄まじい速度で広がって行った。

  *

ズシン

ズシィン!

ズシィイイイン!!

巨大な足音が近づいてきて、街は大パニックになった。
巨大な城と多くの戦士を有する国だが、この王都を囲う高さ15mの城壁を以てすら防御の何の役にも立たないほどの巨大な存在を前に、混乱を隠せなかった。

「これが人間の街かー。わぁ~人間がいっぱい!」

城壁の前までたどり着いた少女はそこから王都の中を見渡した。
城壁は少女の足首よりちょっと高い程度だ。少女にとってそれは王都を綺麗に囲むための枠に過ぎず、それが外敵の侵略から都を守るためのものだとは気づかなかった。

城壁の前にはたくさんの兵士が並び、剣を構えて少女を迎え撃つ構えを見せていたが、兵士たちはその巨大さを前に唖然とするばかりだった。
目の前に降ろされている足だけでも家を軽々と踏み潰せてしまうだろう。地面を踏みしめる足の指ですら、彼らの身長ほどの大きさがある。
更に見上げてゆけば、若い少女の肢体が聳え立っている。赤色しているとはいえ形そのものは人間のそれに酷似している。一糸纏わぬ少女の姿に、疚しい気持ちが過らないと言えば嘘になるだろう。なんの防御も遠慮も無く、のびのびと曝け出された少女の肌。
しかし彼らを動かせないのにはその少女の魅力と巨大さ以外に、その熱がある。
現在1000℃近い体温の少女の体は、周辺にも凄まじい熱を放っている。その熱が戦士たちをそれ以上近づける事を許さなかった。まだ10m以上離れているのに鎧から出ている顔などが焼けつくような熱さだった。
そして非常に息苦しい。燃え盛る少女の体は周囲から酸素を奪ってしまうのだ。
熱と酸素不足で頭がくらくらした。

ふと、街の中を見回していた少女は、足元にいる戦士たちに気が付いた。

「あ、なんか街から出てきてる。あたしと遊びたいのかな? いいよ、遊んであげる」

くすっと笑った少女は、片足を持ち上げると、そこに並ぶ戦士の一人の上に降ろした。

戦士たちは、突然持ち上がった足に戦慄したが、その体を動かす前に足は彼らの一人の頭上に掲げられ、そして踏み下ろされた。

  ズシィィイイイイン!!

巨大な足が下された瞬間地面が激し揺れ、周囲にいた他の戦士たちは地面に転ばされた。
と同時に、足が近くに来たことで熱が強くなり、灼熱する大気に悲鳴を上げた。

少女が足をあげるとそこには焦げ付いた足跡がくっきりと残され、その中には潰れた鎧だけが残っていた。
もう片方の足を動かし、別の戦士を、足の親指と人差し指の間に挟み込んだ。
戦士にとって親指は自身の身長と同等以上の大きさを持つ巨大さだ。そんな指々に挟み込まれては身動きなど取れず、更に指に挟み込まれているという状況は精神的に攻撃の余裕すら失わせた。
それ以上に、その凄まじい体温が問題だった。

「ぎゃあああああああああああああ!!」

戦士の体は少女の灼熱する足の指に挟まれ恐ろしく熱せられた。鋼鉄製の鎧が赤く赤熱するほどだ。皮膚が焼けていた。
どんなに戦士が暴れても、少女はくすくす笑うばかりだ。足の指は暴れる戦士などまるで気にしていないようにビクともせず彼をそこに挟み続けた。
ジュウウウウウウ! 肉の焼ける臭いがする。仲間の戦士たちも熱を必死に我慢し、仲間の囚われた足に攻撃を仕掛けた。しかしどんな剣も槍も、少女のかわいらしい足に傷一つつけられなかった。
そのうち、

  ボッ!!

足の指に挟まれた戦士の体が燃え上がり炎に包まれた。
恐ろしいまでの少女の体温はついに戦士の体を発火させてしまった。
炎に包まれる戦士の断末魔が足の指の間から響く。だが仲間たちは、彼を助けることは出来なかった。

不意にしゃがみこんだ少女が戦士の一人を手の指に摘まみまた立ち上がった。
その戦士を目の前に持ち上げて観察してみる。

「ふふっ、ちっちゃ~い。かわいい~」

少女はくすくす笑っているが、指に摘ままれた戦士は絶叫を上げていた。
足の指と同じく、手の指も灼熱の体温なのだ。メリメリと挟み込む力に加えて、その熱が彼を苦しめる。
ふと、少女が息を吸い込んで、摘まんだ戦士に向かって吹き付けた。

「ふ~っ」

  ゴオオオオオオオオオオオオオオオ!!!

吐息は風ではなく凄まじい炎であった。
軽い「う」の形の口から吐き出された炎の中に戦士の姿は見えなくなってしまった。
ふー…。少女が息を吐きだし終えたとき、指の間に戦士の姿はなかった。

「あはは、燃え尽きちゃった」

そこには鋼鉄の鎧すら残っていなかった。
すべてが、少女の吐息の恐ろしい熱の中で燃え尽き消えてしまったのだ。

軽く足踏みして足元の戦士たちを全員踏み潰す少女。
巨大な足がズシンズシンと地面を揺らすたびに戦士の命が消えていった。
先端の燃え盛る長いしっぽを振って数人の戦士を薙ぎ払う。
戦士たちはあっという間に全滅した。

ただ歩くだけで城壁を跨ぎ、少女は王都に侵入した。
頼みの戦士たちが瞬く間に全滅し、人々は悲鳴を上げて城壁に囲まれた王都の中を逃げ回る。
少女の足はそんな人々と家を次々と踏み潰し、周囲の家々を炎上させながら、王都の中心にある城へと向かっていった。

「おっきいお城。あたしの腰くらいの高さ」

家々を踏みしめながらお城の前に腰に手を当て仁王立ちになる少女。
しっぽがぶんぶんと振られ、周囲に炎風が吹き荒れ火の粉が舞い散る。

そんな少女の目の前にある城の窓からは、巨大な少女の股間を望む事が出来た。
国王は恐怖に震えながらその光景を見上げていた。

国王が自分の股間を見て恐怖している事など知らず、少女この城をどう使って楽しもうか考えていた。
が、突然それを催した。

「ん…まいっか」

少女はくるりと後ろを向いた。
窓から見ていた国王の視界には、少女の股間ではなく少女の尻が広がる。
そのままわずかに腰を落とした少女はお尻が城の目の前に来るように位置を調節した。
まさに国王の視界の目の前に、巨大な肛門が広がっているわけだ。距離も近く、熱も凄まじい。
轟轟とした火を纏う、赤色した少女の菊門だ。

「せー…の!」

  ぷ~

少女はおならをした。

  ブオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!

肛門から、凄まじい熱気と臭気を伴った超高温のガスが噴出した。
風力、威力、熱力、いずれをとっても恐ろしい破壊力を持っていた。
炎の入り混じる圧縮し押し出されたガスは爆発を伴いながら城に向かって放たれ、城は一瞬にして粉砕された。
国王はその窓から飛び込んできた少女のおならの直撃を受けて一瞬で消し炭になり粉々に分解されていた。
城は、少女のお尻の前にあった上層階部分が吹っ飛ばされ、下層階だけがボロボロになりながらも原形を保っている。
周囲の王都には少女のおならの熱気と臭気が漂い、人々は鼻を押さえて悶えた。
そしてそのおならは都の火事をぐんと加速させ、都は火の海に包まれつつあった。
おなら一発で壊滅した城と火の海に変えられてしまった都に聳える少女。

「おならだけで壊れちゃった。ふふふ、ごめんね。あたしのおならちょっと大きかったみたい。それとも臭かったのかな?」

目の前で崩壊した城。足元の火の海。これが自分のおならのせいだと思うとちょっと気恥ずかしい少女だった。

「あ」

ふと、少女は自分の股間を見下ろした。

「ごめんね、おしっこもしたくなっちゃった」

そう言った少女はその場にしゃがみこみ、その幼い割れ目からシャーとおしっこを放った。

  ズドドドドドドドドドドドドドドド!!!

巨大な割れ目から噴き出してきた鉄砲水は、まるで溶岩か融けた鉄のように赤く輝いていた。
水なのに蒸発しないと言う理解不能な光景。しかし、幻獣である少女に常識は通用しない。
おしっこは家や人々を洗い流しながら次々と街並みを呑み込んで行った。
呑み込まれた家々は、その数千度もの温度のおしっこに触れたせいで一瞬で燃え上がり焼失した。
人間の体も、燃えたかと思った瞬間には燃え尽きおしっこの中に溶けて消える。
少女のおしっこが流れたあとには何も残らなかった。
街の一区画を押し流し焼き尽くしたところで少女のおしっこは止まった。

「すっきり。あは、おしっこで消えちゃうなんて人間ってよわいなぁ。もっともっと遊んでいこ!」

立ちあがった少女は別の街を目指して走り出した。
あとには炎の風と地響き、火の海を残しながら。
少女が去った後、後には燃え盛る王都だけが残された。

以来暫く、その大陸では炎を纏った巨大な少女が暴れまわるという噂が広がり人々を恐怖させたという。


しかしこれは、のちの、突然人間界に現れた幻獣たちによる大破壊の、ほんの序章に過ぎなかったのである。