※破壊系



  『 少女たちの戯れ2 』



人々が悲鳴を上げて逃げ惑う。
背後から、彼らの家々を踏み潰しながら、巨人が追いかけてくるからだ。
身長は1600mにもなろうか。一糸纏わぬその裸体を惜しげも無く晒しだし、足元を逃げる、彼女から見た2mmにも満たない人々を見下ろしてくすくすと笑っている。

「小さすぎて一匹一匹は見えないわね。この辺りにもいるのかしら?」

少女は笑いながらその場所をゆっくり横断していった。
当然、そこにも逃げ惑う人々はいた。
当然、少女も知っている。
だが少女から見る2mmにも満たない人々や5mmに満たない車などは、人々から見る、少女の全長240mにもなる巨大な足にとっては、踏みつけても何も感じる事の出来ない存在だった。
せいぜい、1cmにも届かない彼らの家をいくつも踏みつけて、ようやく「くしゃっ」っという感触を感じる程度だった。

少女は町の上をゆっくり歩き回っている。逃げ惑う人々を追い回しながら。
極小の街の上には無数の人々が悲鳴を上げながら逃げており、少女の巨大な足は、町のどこに下されようと彼らを数百人と踏み潰していた。
家よりも大きな足の指がもぞもぞと動く。それだけで足周辺でかろうじて原形を保っていた家もその指に激突されガラガラと崩れ落ちた。

「小人の家は小さすぎて、わたしの足の指も入れないんじゃない?」

実際に、下されている足のその指よりも、その足の指の前にある家の方が小さかった。
家の屋根に上っても、足の指を見上げなければならなかった。
足の指だけを持ち上げ動かし、下に来た家の上にそっと乗せると、その家は少しも耐える事無くぐしゃりと潰れてしまう。
少女の足の指は重すぎるのだ。
本来万難から住人を守るはずの家も、こんな巨大な足が降ってくることは想定していない。
人々が何日もかけて建築する家は、足の指がそっと乗せられただけで屋根が潰れ家全体が歪み、ほんのちょっと力を入れれば潰れてしまう。
自身よりも大きな足の指に潰された家は完全に粉々にされ原形などほとんど残らない。

地面に下した足を、そのまま横にスライドさせる。
足は住宅をゴリゴリ磨り潰し、瓦礫を津波のように盛り上がらせながら、同時に、逃げ惑う人々も呑み込んで行った。
足がスライドした後には何も残っていなかった。
一瞬で数百m四方の完全な空地が完成した。

 ずしいいいいいいいいいいん!!

   ずしいいいいいいいいいいいいいん!!

恐ろしく巨大な足で凄まじい距離の歩幅で歩く少女。
何かを狙っているようではなく、ただ歩いているだけのようだ。
しかしその少女の若い裸体に見とれる者など一人もおらず、みなその巨人から逃げようと必死だった。
少女はただ歩くだけで足の裏に感じる枯葉を潰したような儚い感触を楽しんでいた。
それがただの枯葉ではなく、人々の家だと知っているからだ。
そして感じられないが、同時に何百人と踏み潰していると思うとより楽しい。



だが、少女の本当の楽しみは他のところにあった。
人々は必死に「少女」から逃げている。少女しか目に見えていない。それが少女を愉しませた。
街は直径で40kmほどの円形の大きさだ。踏み尽くすには面倒な広さ。もともと踏み尽くすつもりなどない。
こんな小さな町に意味など無い。
そして今、自分から必死に逃げている人々のその行為にも意味はない。
逃げ切れば助かると思っているゴマ粒の様な人々のなんと滑稽なことか。
仮に逃げ切れたとしても、なんの意味も無いのに。

極小の街の上を散歩していた少女は視線を町の中央に向けた。
そこには少女から見れば家よりも大きな小山があった。高さは10mくらいだろうか。
少女にとっての10mは足元の人々にとっては1万mになる。巨大な山だった。

その山に歩み寄った少女はそれを見上げた。
ゴツゴツとした表面は重厚感にあふれ麓に立てばその巨大さに圧倒される。
この町で、唯一少女が見上げる存在だ。

少女はその山の表面を軽くノックしながら言った。

「どう? なんか感じる?」

すると遥か彼方から恐ろしく巨大な声が聞こえていた。

『ううん、全然。ショートちゃんが歩いてる小さーい感触がするくらい』

  ゴゴゴゴゴゴ……!!

巨大すぎる声に大気が震えた。

「そうなの? 一応何十万人っているはずなんだけどなー」

ショートヘアーの少女は笑いながら街の彼方に視線を向けた。
地平線のずっと向こうの向こう。そこには、まるで空の彼方に見える太陽のような巨大な少女の顔があった。
雲よりも、ずっと彼方の存在だ。ぼんやりと、霞んでいる。

「でもこれって結構楽しいね。ゴマ粒くらいの大きさしかない小人があたしから必死に逃げてる。そんなことしたって無駄なのに」
『そのゴマ粒サイズの小人さんが巨人だって大騒ぎするショートちゃんも、私から見たらゴマ粒サイズなのにね』

遥か彼方にある巨大なロングヘアーの少女の顔がくすくす笑った。

今、ショートがいるのは、ロングの右の乳房の乳首の上である。
ロングの直径4cmほどの乳首の上に1000分の1サイズに縮んだショートがいて、更にその足元には1000分の1に縮んだショートから見ても1000分の1の街並みが広がっているのである。
つまりは、ロングにとっては100万分の1サイズの街並みが、自身の乳首の上に広がっているのだ。
街のサイズは40kmほどの範囲を縮めたもの。
超巨大少女ショートから逃げ惑う人々は、まさか自分達がすでに更に巨大な少女の乳首の上に乗せられているなどとはまるで気づきかなかった。

「くすくす、小人に自分が今、私の1000倍も大きな女の子の乳首の上にいるって教えてあげたいよ」
『あはは、どうせわからないよ。私が小人さんの存在を何にも感じられないように、小人さんも私が女の子だって感じられないかも』

実際その乳首だけで町が丸ごとひとつ入る巨大さである。そこに暮らす人々は、まさか自分達の住む町が少女の乳首の上に移されていたなどと、夢にも思わないだろう。

今ロングは床に寝転がっていた。
大きな乳房は胸板の上に置かれたスライムのようだ。ずっしりとした重量感を持ってそこにある。
その右の乳房の乳首の上にショートのいる極小の街はある。
街の人々にとってはショートは1600mにもなる大巨人で、そのショートから見ても、ロングの乳頭は家よりも大きな小山である。
人々にとっては自分達が暮らす街よりも大きなその乳首ですら、その乳房全体からみればほんの一部に過ぎない。
標高1万mの乳頭のふもとに広がる極小の街だが、実際そこは標高十数万mの乳房の上にあるのだ。
縮小されてのこの値だが、実際にロングが巨大化していたら、地球上にロングの乳房よりも高い山は存在しない。
世界最高と言われるエベレストですら標高9000m弱。ロングの乳房の10分の1にも満たない高さ。というよりも、その乳頭だけでエベレスト以上の大きさがある。
人々が命がけで挑戦する山よりも更に巨大なものが、ロングの乳房にはツンと飛び出ているのだ。

「さて、あたしはもう楽しんだからいいわ。後始末お願いね」
『うん、いいよ』

言うとショートの姿が消えた。
人々はあの大巨人が消えた事に驚きながらも、歓声を上げ安堵の声を漏らした。
だがすぐに別の異変が現れた。
直後、空に何か巨大なものが現れたのだ。
たった今まで町を蹂躙していた大巨人よりも巨大なソレ。
ある種、閃きにも似た天啓を得たものは、それが、あの大巨人の少女すら摘まむ事のできる、更に巨大な指先だと悟った。
直径10kmを超える巨大な指だ。
ゆっくりと下りてきたそれは街に触れた。それだけで町ひとつが消滅してしまうほどの範囲が押し潰された。あの大巨人の破壊など、比べ物にならない破壊の規模だ。
そのままその超巨大な指は街の上を滑り始めた。
人々は悲鳴を上げる間すらも無く、その指と乳首の間で磨り潰されていった。
僅か数秒で、直径40kmの範囲の街が消え去った。
ビルや家などは砂粒以下にまで磨り潰され、最早原形をとどめている物は何も無かった。
街が磨り潰され取り払われた後は、元の綺麗なピンク色が顔をのぞかせていた。
そこにいた人々から見れば、ピンク色の地平線が広がっていた事だろう。

ロングは乳首の上の街を指で軽く撫でて取り払った。
街はあっという間になくなった。
まだ乳首の付け根辺りにいくらか残っていそうだけどそれはどうでもよかった。
もしかしたらまだ何千人と生き残っているかもしれないが、その命も今日の夜までだ。シャワーを浴びれば終わるだろう。
体を起こしたロングはブラを着け、制服のボタンをとめていった。
それと同時に、服を着たショートが部屋へとやってきた。

「終わった?」
「うん、終わったよ」

立ち上がったロングがパタパタとスカートをはたく。

「あードキドキした。誰か来たらどうしようかと思っちゃった」
「ねー。あんたったら突然教室でヤリたいとか言い出すんだもん。あたしですらビビったわ」

言いながらショートはロングの背中の埃を叩き落とす。

「次はどんなことしようか」
「そうねー。あんたの股間に1万分の1に縮めた小人を何万人か放り込んでみるとか」
「ええー。そんなの私かゆくてたまらないよー」

二人は笑いながら教室を出て家路へとついていった。