※嬲り系。アナザーストーリーというかなんというか、本編には干渉しないけど本編の設定を持ってくる。最近それが多いなー。



 「消臭惑星EX 女の子が地球人の存在を知ってたら」




70億もの人口を有する青い星。
今、それが輝くのは暗黒の宇宙…ではなく、巨大な少女の足の指の間。

自分の部屋で制服から着替えぬまま椅子に座り、右足の親指と人差し指の間に地球を挟み込む黒髪ツインテールの少女。

「ほんと、こんなちっぽけな星にもヒューマノイドが住んでるっていうんだから驚きよね。しかも10億分の1って…微生物以下じゃない」

言いながら少女は指に挟む地球をころころこねる。

「あんたたちは悔しくないの? 星ごとこうやって簡単に掴まれちゃってさ。あたしからしたらあんたたちの星なんて飴玉みたいなものよ」

実際そうだろう。地球は、挟み込む少女の足の親指よりも小さいのだ。
少女からすれば1cmちょっとの大きさの球だ。ビー玉よりも小さい。

そして地球は今、その全土が少女の足の臭いによって壊滅的な大災害を被っていた。
呼吸ができないのだ。吸い込めばむせるような酸味の臭い。鼻が赤くなり、喉の奥がヒリヒリし、玉ねぎを切ったように涙がボロボロこぼれた。

決して、少女の足の臭いが尋常ならざるほどくさいのではない。
ただ少女があまりにも大きすぎて、その分臭いも強烈になっているのだ。
もともと足の指の間は汗のたまりやすい場所だ。
学校で一日を過ごし帰ってきたばかりの少女のそこはそれら汗の発する酸味のある臭いが溢れかえっていた。
地球の大気が少女の足の臭いに塗り替えられた。
地球を包み込んであまりある量なのだ。
世界のどこに逃げても少女の足の臭いがそこにある。
地球そのものが少女の足の指の間に挟まれているのだから、その上をいくら逃げ回ったところで、そこが足の指の間である事に変わりは無い。

「自分たちの住んでる星ごと足の指に挟まれるってどんな気分なのかしら。あたしは絶対いやよ? だってどこまで逃げても足の臭いしかしないってあり得ないじゃない」

少女は足の指を開いて、間から地球を解放した。
地球は床の上をコロンと転がる。
だがすぐに少女の長さ24万kmの足がズシンと踏み下ろされ、地球は親指の下に押さえつけられた。

「ほら、星をあんたたちごと簡単に転がしちゃえるのよ。あんたたちの星なんてあたしの足の指にも勝てないんだから」

親指と床との間で転がされる地球。
無数の人々を有する星は少女の脚の指だけで簡単に弄ばれてしまう。
このまま少女が親指にちょっと力を込めれば、地球はひとたまりも無くクシャっと潰れてしまうだろう。
少女にはそれだけの力がある。
地球の存亡は少女の気分次第なのだ。

「ま、そんなことはしないけど」

少女は足の指をどけ、出てきた地球を手の指で摘まんで顔の前まで持ってくる。
すんすん。匂いを嗅いだ。

「あたしの足の臭いはしないわね。ほんとに全部吸い取ってくれちゃってるんだ。でもこんなちっぽけな星に臭いを全部吸ってるんだったら凄い密度になっちゃうわけよね。やっぱり辛いのかしら」

指先の間でコロコロと転がす小さな星は青く美しい。
見ていると吸い込まれてしまいそうな魅力がある。

「でもごめん。あたし今、あんたたちの星よりいい消臭惑星持ってないからあんたたちを使わないといけないのよ。だからそれまで我慢して、ね」

少女はその小さな星にキスをした。
先ほどまで足の指の間に挟まっていたとか関係ない。
そんなこと無にする美しさがその星にはあった。

そして少女は再び地球を足の指の間にしまいこみ、勉強机へと向かって歩き出した。