ロボットに乗り込んだ男達。
全長20m、ざっと人間の10倍である。
何十もの機体で編成された大隊、それがいくつも、この夕闇に染まりつつある廃墟と化した街に展開していた。
そんな彼らに通信が入る。

『敵の新型だ。でかいぞ』
「ッハ! 余裕さ。数はこっちが圧倒してるんだ。いくぞ!」

一機がビルの影から飛び出した。
その時、

  ズズゥゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウン!!

目の前に巨大な肌色の物体が落ちてきた。
何かと思って見上げてみると、どもまでも続いてゆく肌色の先に、こちらを見下ろすくりくりっとした眼を見つけた。
何? 全体を注視してみる。
この肌色は人間の身体だ。あの上空に見えるのは人間の顔だ。目の前にあるのは人間の足の…指の腹だ。
ロボットに乗っているのにそれを見上げている。
指は周囲のビルの瓦礫よりも大きかった。

「うっそー、これが敵なの?」

そこに立つ全裸の少女は自分の足元の街に点在する小さな色の付いた点々を見渡して言った。
その裸体を誇るように腰に手を当て、大きな胸をぶら下げるように前かがみになり見回す。
頭に付けられたカチューシャがかわいらしい。
少女の身長は16000m。彼等のロボットが2㎜に見える大きさである。

「こんなの全然相手にならないよ」

男達は知らなかった。今まで自分たちの戦争してきた相手が10000倍の大きさの種族であることを。
今までの戦争は彼女達の種族にとって人形を使ったゲームの一端でしかなかった。
だが大きく拡大した戦線に、ついに本部は本物の人間を投入することを決定した。
ただし、選ばれたのは街でスカウトした極普通の女子高生だったりする。全裸は仕様。

少女は瓦礫都市の上を歩き始めた。
無数のビルだった瓦礫が足の下でサクサク潰れていく。
同時にたくさんの色の付いた点も巻き込んでいった。
きっとこれが敵のロボットなのだろう。
サクサク踏み踏み。足の裏に感じるビルのかすかな感触が気持ちいい。
次の一歩はロボットの前に降ろされた。
ロボットに乗り込んでたった2㎜ほどの大きさしかないのだ。小さすぎる。
少女はロボットの前の足の指を持ち上げた。

「ほらほら、とっとと逃げないと潰しちゃうわよ」

その声を聞いて慌てて後退するロボットだったが指はあっという間に追いついて踏み潰した。
太さ100mの指だ。大きすぎるのだ。
再び足が持ち上げられたとき、指の腹には潰れたロボットがへばりついていた。

散歩感覚で街とロボットを蹂躙してゆく少女。
その周囲からたくさんの光が上ってきた。
ロボット達が飛び上がったのだ。
バーニアを煌かせ空を飛ぶ。
ロボット達は雲よりも高い少女の上半身へと向かっていった。
だが突然影に包まれる。
上方が薄暗い肌色で占領された。
何かと思っているうちに彼等はそれに激突され砕け散った。

光が上ってくるのに気づいた少女は、タイミングを合わせその光の集まりを真上から胸で叩き落した。
いくつものロボットが下乳に当たったのを感じた。
胸の辺りを飛ぶロボット達はそれだけで十分だった。
身体を動かし胸を揺らすだけで周辺のロボット達は撃墜されてゆく。
胸がゆっさゆっさと弾むたびにそのどこかで爆発が起きる。
その乳首ですらロボットよりもはるかに大きいのだ。
胸を揺らすために動く少女はまるで踊っているようだった。
お尻が突き出されればそこで幾つものロボットが砕け散り、手のひらが振るわれれば無視の様に叩き落とされる。
足は密集するロボットを狙って正確に踏み降ろされていた。

「あはっ! なんか楽しい! 私は踊ってるだけなのに、それに巻き込まれて潰れちゃってる」

少女は夜目が利くのかこの夕闇の中で一機のロボットすら見落とさなかった。
一機がビルの陰に隠れていたが。

「そんなことしても無駄だよ」

脚を伸ばすとそのビルごと親指の下で捻り潰した。
跳んでくるロボットをペチペチと叩き落とす。
ターンをしたとき、その短い髪に巻き込まれるロボットもいた。
そして一機が、その少女の肩に降り立つことに成功した。だが…、

「あ、ダ〜メ」

迫る巨大な手。
ペチン。まるで蚊を潰すように簡単に潰されてしまった。
手がどけられた後には爆発して粉々になったロボットの破片だけが残っていた。

「あれ?」

ふと気付く。
足の間にビルではない何かがあることに。
親指ほどの大きさのそれ。

「なんだろう」

少女は身をかがめるとそれを摘み上げた。
見るとそれは戦艦のひとつのようだ。
大きさ3㎝ほどのやや細長い形をしている。

「わぁ小さーい。中に人はいる? 私のこと見える?」

覗き込もうとしてみるが小さ過ぎてどこに窓があるのかわからない。
くるくると回転させてみるが結局見つからなかった。

「なーんだ。残念」

クシャリ。
それを握り潰した。
パンパンと手をはたき残骸を落とす。
そうか、戦艦もあるのか。これからはそれを狙っていこう。
少女はステップを踏みながらその下に戦艦を踏み潰して行った。

夕闇の中、夕日を背にシルエットとなって瓦礫都市の上を踊る少女。
その肌から飛ぶ玉のような汗がキラキラと光って街に降り注ぐ。

そして次のステップで最後の戦艦を踏み潰し、振るった手で飛ぶロボット達をなぎ払った少女は、額の汗を拭った。

「あー面白かった。次のときも呼んでもらおうかな」

辺りを見渡し、自分の戦果を見て満足そうに笑顔を浮かべる。
その時、少女の周辺には生き残っている男達がいた。
最後なぎ払われた男達だった。彼等は叩き落とされる直前にパラシュートで脱出をしていたのだ。
手にライフルを持ち、最後の抵抗をしようとしたときだった。

「う〜ん」

少女が腕を上にして大きく伸びをしたのだ。
そのせいで胸が大きく前に突き出された。
そして何の因果か、彼等はその胸の上に降り立ってしまったのだ。
相対的に0.2㎜ほどの大きさしかない彼らにとっては、女子高生の胸も山のように大きいのだ。
その上に、楽に立つことができた。
更に、その表面に浮かぶ汗に吸着され、そこから逃れられなくなってしまった。

やがて少女が伸びをやめ歩き出した。
彼等は、そのゆっさゆっさと弾む胸の上に捕らえられたまま攫われてしまった。


その後彼等は、シャワーを浴びる直前に自分たちの存在に気付いた少女によって、永遠に彼女のおもちゃとなることを義務付けられてしまった。