<CENTER>
3.スールとナラーシャ(前編)


 黒い水着に白いハイヒールサンダルを履いたナラーシャが気だるく動く脚で熱帯雨林に壊滅的な打撃を与えている間に、きつめの赤いビキニを着たブロンド髪のスールは、ほほと耳の下にリオデジャネイロの超高層ビル群やスラム街を押しつぶしつつ頭を下げて、ナラーシャの足による破壊を間近で見ようとしていました。彼女らはアカデミーで出会って以来の親友だった。スールは内心、ナラーシャのほっそりした肢体と大きな乳房を賞賛していて、ナラーシャのほうも女性らしい程よい筋肉がついたスールの身体を羨ましく思っていた。
 ナラーシャは地面に対して微笑むと、四角い結晶の上に右足を持ち上げた。その美しい足が下ろされていく様子を、スールは畏敬の念を込めて見つめていた。結晶は足の裏がわずかに触れただけで崩壊し、かかとが地面につくより前に完全に地面と同化していった。
 そのときスールは見た。
―――周りの鉱物から何千という数の微細極まりない『点』が出てくるのを。
結晶の間にある『道』はあっというまにそれらの点によって溢れかえっていた。いくつかの点は色が識別できるほどの大きさだった。色の付いた大きな点は小さな点より早く動き、そのうちの青い大きな点が小さな点にぶつかって動きを止めるのを見た。
 やがてその一帯が暗くなったかと思うと、ナラーシャの足の指がそれらの点を地面に押し付け、その一帯は赤くなった。
 スールは自分が横たわったときにできた地面の窪みに足を置いて立ち上がった。
 ナラーシャはスールが何かを心配しているような顔つきをしているのに気付き、近寄ろうとした。スールはナラーシャの左足が地面に触れるのを見て、全身が震えるのを感じた。そしてスールはゆっくりとした口調で、「キャビンに行きましょう」と言った。
 

 2人はアカデミーの船のキャビンで密談をしていた。スールは彼女が見た点が知的生命体ではないかと言った。しかしナラーシャは船の計器が知的生命体を発見していないし、スールが計器にそこまで詳しいとは思えなかったので、スールの言葉を信じなかった。1時間も話したところで、2人は鉱物に住んでいる『点』のサンプルを入手することで意見を一致させた。
 もしスールの意見が正しかったなら、鉱物は数百の知的生命体が住んでいる建物だったということになる。彼らの家は様々で、この惑星中に広がって都市を形成している。彼らは輸送用の機械を作っていて、他の点にぶつかって死なせるくらい高速に動く。
 それら微細な生物はナラーシャが都市を平らにしたことで恐怖でパニックになったことだろう。彼らはそれがとてつもなく大きい異星人のサンダルであることも理解したはずだ。
 ナラーシャが眠った後も、スールは船の周りで破壊された何百の都市について考えていた。惑星に降り立った日に、それらの都市がたくさんあったことを思い出していた。いまは足跡と植物しか残っていなかった。

 その日、スールはナラーシャが気付かずに引き起こした恐怖と死の夢を何度も何度も見ては起きるを繰り返した。
 やがて朝が近づくと、今度はスール自身が足で都市を踏みつける夢を見始めたため、スールは夢の中の罪悪感と嫌悪感から逃れる方法について考えていた。やがて股の下で都市を押しつぶした夢を見たとき、彼女はそこに性欲を見出していた。
しかしそこでベッドが振動した。起床の時間だ。
 朝の会議は短かった。スールはミラとダンドラに、この惑星での発見を伝えずにいたところ、彼女らは士官候補生のために学ぶことは何一つなかったのでこれ以上この惑星にはとどまらない、と伝えてきた。今晩にも、別の惑星に向けて出発することだろう。

 彼女らの残したコンクリートのように圧縮された硬い足跡の上には植物が育たず、雨水は溜まるがそれもすぐに蒸発して、アメリカ全土が徐々に砂漠化していった。

 惑星を去って2時間後、スールは父親にメッセージを送っていた。『新たに見つけた惑星を買いたい』というものだった。
金持ちである父親は娘の風変わりな要求に驚きつつも、これが娘のちょうどよい誕生日プレゼントになるだろうと考えた。
そして3日たらずで、スールは惑星の所有権を手にした。しかしそれだけでなく、父親は新品のスペースヨットまで買ってくれた。

 次の休暇まであと3週間だった。例の「秘密のサンプル」を分析したあと、スールとナラーシャは一緒にあの惑星に戻りたいと思っていた。
 スールはナラーシャに地図を渡していた。それはあの惑星の地図で、赤いラインで世界がおおまかに3つに分けられていた。
「いい?」ナラーシャは言った。「1つはあなたの大陸。もう一つはわたしの大陸。3つ目は2人のものよ」
「わかったわ。ああ、はやくあの惑星に行きたい!!」ナラーシャが興奮気味に言った。
スールは続けた。
「今回はどこに着陸すればいいと思う?」
「そうね…」ナラーシャはある大陸を指で円を描いて示した。「ほら、ここなんてどうかしら」
「ここは何ていう大陸なのかしら」
「正しいか分からないけど、『ユーラシア大陸』と呼ぶそうよ。探査機によれば、場所によって使われている言語が様々らしいのよ」
「複雑なのね」
「結局のところ、私たちサイグリア人と彼らとは、大きさだけが唯一の相違だと思うわ。私たちと比べると2500分の1しかないみたい。でも、地形に目を向けると、このユーラシア大陸は非常に人口が多いの。このエリアには『都市』と見つけるのが本当に難しい小さな村が集まったエリアがあるわ」
「『都市』っていうけど、どの程度の建物が集まってるの?」
「えーっと、私たちが見たあの『鉱物の結晶』みたいなのが一番大きいんだってさ。あれでも彼らからすれば空にも届く大きさで、数千人の人々がいるそうよ。でも一番小さい建物は針の先くらいしかないわ。奇妙なことに、この惑星では金持ちほど小さい1つの家に住んで、その他の人々は大きい建物に集団で住んでいるのね。」
「空にも届く建物って…私は『足の指にも届かない建物』って呼んでやるわ。」
そう言うと、スールは空気清浄器のスイッチを入れた。それはマイクロチップの工場並みに極小の粒子ですら捕捉するものだった。

 またも地球は衝撃に揺さぶられた。
 しかし今回はニューヨークでの国際会議はなかった。なぜなら、そこは広大な5つの窪みがあるだけの砂漠化した土地だになっていた。政治家たちはロンドンで会合し、この異星人を止めることができないこと、そして何の対策も講じられないことを世界に発表した。
 海の向こう、ブラジルには、この政治家たちを痛烈に批判する男がいた。彼はリオにいて、ブロンド女の視線の下で恐怖で動けなくなった点の1つだった。
彼女の美しい身体が大地を沈めるのを目の当たりにして、彼はこれ以上の大惨事を防ぐために、彼女の顔を目指して走っていた。しかし当然彼女たちの注意を引くことはできず、その巨大な顔は向きを変えて上昇していった。そして大地が巨大な足によって震動させられた。山のような足指の動きによる崩壊と無秩序な音は彼の鼓膜を破った。建物が大地と巨大女の足の下で圧縮され、物をかみ砕くような低く鈍い音が大空に響き渡った。
 死と恐怖の破壊から生還した彼は、あるアイディアを手紙にしたため、世界中の政府に送っていた。それは、空港の誘導灯を使って、巨人女たちにサインを送ろうというものだった。

しかし世界の空港が必要量の灯火を注文している間に、宇宙船はまたもロシアに降下し、スールとナラーシャが再び姿を現した。今度の彼女らは下着姿だった。
「スール、今回はお互い単独で楽んで、暗くなったら船で会いましょう。」
「賛成よ、ナラーシャ」
着陸地点周辺には数百の人々しか住んでいない村がいくつもあったが、それらは彼女らのミュールの下で気づかれないまま潰された。貧しい住民たちは、これが途方もなく巨大な異星人の仕業だとは夢にも思わなかった。
 スールは最初の都市を発見した。彼女の身長からみると、それは大地にある染みのようなものだった。振り返ると、宇宙船の脚部の間にナラーシャのミュールが見えた。スールはナラーシャから完全に隠れたかたちとなっていた。邪魔が入らないことが判ったとき、スールは股の間に気持ちのよい疼きを感じた。二人は非常に親しい友人同士だったが、今回、彼女らはお互いが口に出せない行動に出ることを知っていた。
 赤や茶色の染みが家々の屋根であった。それらは黒いミュールの厚みにも届かなかった。
 そこにはただ建物だけが見えていた。小さすぎて、そこに生命がいるのか、活気があるのかどうかも判らない。だが彼女にはそこに人々がいることを知っていた。
 スールは決断しなければならなかった。
 彼らに罪はない。
 彼らは彼女から逃げることもできず、彼女のわずかな動きからも身を守ることができない。
 スールは自分の足を見た。足指の爪に深い青のマニキュアが塗られた、セクシーなハイヒールのミュールに包まれた足。それらを見ているうちに、股間の疼きは我慢のできない、ヒリヒリとした感覚になっていった。
 染みを――街を見る。さらに疼きが大きくなる。
 点を――罪のない無力な人々を見る。もう我慢できない。
彼女は右足を持ち上げて進み出ていた。

 キエフの人々は混沌の渦中にあった。
 一握りの冷静な人々だけが、超高層ビルの上から空港の灯火を見守っていた。
点滅した灯火は核兵器と同じくらい無意味であることが証明された。
 直径21メートルの超高層ヒールが、ガソリンスタンドに燃料を補給していた給油トラックを直撃し、15メートル地下に沈んだ。そしてヒールが持ち上げられたとき、その穴から目がくらむほどの爆発が起こった。火山から炎が上がったようにみえた。
“バローダ・トン“
彼女が異星の言葉で呟くと、都市の窓という窓が振動した。彼女の悪戯っぽい笑みは、彼女が意識して都市を踏み潰していることを示していた。誰かが消防隊を呼ぶように叫んでいたが、次の瞬間、隣の区画に巨大なミュールがゆっくりと降ろされていき、その誰かは自動車や瓦礫の嵐に飲み込まれていった。
ミュールが完全に着地すると、ミュールの膨大な圧力で沈んだ地面は逃げ場を求めるようにミュールの周りで盛り上がった。さらにアルファルトの道路は蜘蛛の巣状にヒビが入り、それらアスファルトの瓦礫の間に入り込んでしまった多くの自動車はドアが開かなくなった。運転手たちがフロントガラスに身を乗り出すと、ミュールの黒い壁の上に、巨大な足の親指が見えた。運転手たちが脱出を試みる前に、もう一つのミュールが空を覆い、そしてバリバリと音を立てて潰されていった。
 彼女は下着に熱い熱気を感じていた。
「トラックが…ああっ!」
うめくように言いながら、彼女の指は貪欲な陰部を愛撫した。
股の間に赤と青の光が集まるのが見えた。興味を惹かれた彼女は陰部に指を突っ込んだまましゃがみ、それをみた。彼女はそれが消防車であることを知っていた。彼女は右脚を上げ、意図的に消防士たちの上に右足のヒールを突き立てた。
スールは立ち上がるとパンティを脱いでストラップブラに結び付けると、ミュールの下の感触を味わいながら再び歩き始めた。

この町の市長は英雄と呼ばれるには程遠い存在だった。彼は町の郊外が破壊されるのを見るや否や、一目散に車に飛び込んだ。そしていつもなら混雑などしない市道に車を走らせようとしたが、ものの1分と経たないうちに渋滞に巻き込まれた。人々は車を捨てさらに後ろからパニックに煽られた車が次々と追突してきて、道路が車ですし詰め目状態になり、彼は車内に閉じ込められてしまった。
巨大女が歩く重い振動を感じ、パニックになった彼は防弾のフロントガラスを蹴破ろうとしたが、無駄な足掻きだった。
周囲に影が落ち込んだ。
彼はガラス越しに、巨大女のまっすぐに伸びた脚と、スタジアムと同等の大きさの陰部に轟音をたてて出入りする指を見て圧倒された。まさに山のような大きさの乳房が紐のようなブラに覆われていて、その上に見える女の顔は欲望に満たされているように見えた。
 女の左足のミュールが彼の車からおよそ30メートル後方に着地し、その場のすべてのものを平らにしたとき、彼に畏敬の念が沸き起こっていた。この市長は女性の足に対して性的嗜好をもっていたわけではないのだが、不用意にすべてを踏み潰す巨大な足の力を崇拝する気持ちになっていた。
 右足が持ち上げられると彼の車は衝撃で持ち上がった。彼にはミュールのヒールと、親指の一部が見えただけだった。
 しかし歩みはそこで突然止まり、彼が再び空を見上げると、そこにはスタジアムサイズの陰部と、そしてそれを覆う陰毛が建物を押し分けながら彼めがけて下降してくるすさまじい光景が映った。
次に彼が見た光景は、峡谷とも呼べる陰部から流れ出る洪水だった。彼の身体は膨大な体積の洪水に容赦なく叩き潰されて車から噴出し、周囲の液体と混ざり合っていった。

スールは都市を使って性欲を満たそうと思っていた。以前、都市があることに気付かずに、その上を歩いたことを思い出し、なんて勿体ないことをしたのだろうと思った。
 今回はわざと都市を踏み潰していた。彼女は足の下で死んでいく人々について考えていた。彼らは次にどこに足が踏み出されるか、知る由もない。
 やがて都市は死と破壊の足跡によって完全に囲まれ、残ったのは都市の中心部だった。
 彼女は再びしゃがんだ。オルガスムが近づいていた。彼らに対して侮蔑的な方法で性欲を満たしてやろうと思った。
 『空にも届く建物』は彼女の足の指に届く程度だった。スールは脚を広げて、都市の上に両膝をついた。家々が土中深く埋没し、長い脚が作るアーチは世界一巨大で刺激的だった。
 指を陰部から引き抜いてより脚を広げ、額を郊外の地面につけ、腰を下ろしていく。建物は陰部の毛が触れただけで崩壊していき、小さな家などは一瞬で塵となっていく。あまりにも弱い。彼女は再び指を陰部にあてがい、陰唇を開いた。
「イエス! イエス!」陰部が建物を押しつぶしている感触に歓声を上げた。
「もっと! もっとよ!」彼女の求めるまま、彼女の陰部は不運な街の上で前後に動いた。興奮して大きく突き出た陰茎が建物にぶつかり、粉砕していく。
「アリみたいな…あなたたちを潰して…イっちゃう!」
絶頂によって、残っていた建物も彼女の愛液の中に沈んでいった。都市は彼女の下で単なる泥に変わっていた。
 スールはその美しい胸を、走り回っている生存者を押しつぶすために使った。そうしながら、彼女は平らになった都市の上に女性器を擦り付けていた。彼女の若々しく突き出た敏感な乳首が、建物を崩壊させ、自動車の列を押し潰す精細な感触を彼女に与えた。オルガスムの興奮の余韻に十分な快感であった。
微笑を浮かべる彼女の途方もなく巨大な肉体は、柔らかい地面を沈み込ませていた。その美しい大地の陥没のまわりは彼女の足跡によって囲まれていた。両脚の間には愛液できらきら輝いた湿地帯があった。
 注意深く、スールは自分の陰部を観察した。陰茎と陰唇には無数の瓦礫と人の残骸がこびりついていた。無頓着に彼女は指でそれを拭い取ると、コンクリートのように固くなった巨大な足跡のクレーターに塗りつけた。
「あなたたちの街、気持ち良かったわよ!」
そう言い残して、スールは船に向かって歩いて行った。彼女は10人以上の生存者はいないだろうと思っていた。
<CENTER>