突然体が小さくなった俺。
身長は1cmぐらいだろうか。
いつもの道に生えている草がまるでジャングルのように生い茂る。
俺のそばにあるアルミ缶はまるで家のような大きさで中に入って生活できそうだ。

ガサガサ……

草が動いたのだろうか。
俺は音のする方へ振り返ると草の中から巨大な黒い生物が現れた。

(怪獣!? 違う! あれはアリだ!!!)

普段は小さすぎて気にも止めないアリだが、今の大きさからすれば象のような大きさだ。
そのアリは3匹ぐらいの群れをなして俺の方へ近づいてきた。

(まさか俺をエサに?)

全身に寒気を感じた俺は全力でアリから逃げ始めた。
俺は足には自信があったのだが、アリのスピードは想像を越え、あっという間に距離を詰められた。
さらにでこぼこした道に足を奪われ、そのまま転倒してしまった。

(このまま俺はアリに食われてしまうのか!?)

アリに殺されてしまうと察し、俺は目を閉じた。

ズズゥン!!!


突然襲いかかる地震。
地面は激しく揺れ、風圧によって俺は吹き飛ばされた。

(何が起こったのか?)

俺は体を起こして状況を確認すると、目の前にはクレーターのような窪地が見えた。
そこには俺を食い殺そうとしたアリが3匹ぺちゃんこになっている。

(俺が手も足も出せなかったアリが一瞬で全滅?)

俺は周りを見渡す。
すると先程まで存在しなかったビルが目に入った。
黒い布みたいなものをまとっており、さらに動き出した。
それが地面に落下すると先ほどの縦揺れが襲いかかる。

(違う! ビルじゃなくてあれは……)

その正体は制服姿の女子高生であった。
ふくらはぎは黒のソックスで覆われ、白い太ももをプルンと揺らしながら歩いている。
一瞬見えたローファーの靴底には液体のようなものがうっすら見えた。

(アリを全滅させたのはあの女子高生だったのか!?)

その女子高生は3匹のアリを踏み潰したことに気づかず、そのまま歩き去っていった。
その姿を眺めていた俺の心拍数は無意識に高まった。

(俺が手に負えなかったアリを一瞬で踏み殺す女子高生って萌えるな~)

こんな状況にもかかわらず俺は興奮していた。
しかもスカートの中が丸見えだ。

(こんなチャンスは二度と来ないぜ! またここを通らないかな~)

すると再び地響きが起こった。
どうやら遠くから二人の女子高生がこちらに近づいているようだ。
二人は他愛もない会話に花を咲かせ、足元の俺に気づいていない。
徐々に大きくなる地響きに耐えながら俺は女子高生たちの足元に近づいた。
スカートがふわりと舞い、太ももがプルンと揺れる光景に俺は呼吸を忘れる。
そして俺を軽々と跨ぎ、その時にスカートの中身がはっきりと見えた。

(ぜ、絶景……)

この感動を言葉にできなかった。
俺はその場で仰向けになり、先ほどの景色を脳内で再現した。
しばらく妄想にふけっていると再び地響きが起こり、何かが近づいているのがわかった。

「っていうかマジであいつうざいよね!」

ズシンズシンと重々しい音を立てて巨大なものが俺に接近する。
その正体は女子大生だろうか。
素足にサンダルを履き、短パン姿で太ももの迫力がたまらない。
その女子大生は不機嫌な様子だ。
電話をしながら地面を踏み鳴らし、俺に近づく。
周辺の草を踏み倒し、近くにあったアルミ缶をぺしゃんこに踏み潰す。
近くにいた昆虫たちも恐れをなして巨大な足から逃げている。
俺も命の危険を感じ、立ち上がって逃げようと思った。
しかし、先ほど女子高生に踏み殺されたアリの姿が脳裏に浮かび、膝がガクガクと震え始めた。

(逃げなきゃ殺される!)

しかし、足が言う事を聞かず、女子大生のサンダルの底が徐々に俺に近づく。
女子大生にとっては一歩を踏み出しているだけかもしれない。
だが俺にとってはこの一瞬の時間がものすごく長く感じた。
薄汚れた靴底がジワジワと接近し、俺をあっという間に覆い尽くした。
俺の目の前は真っ暗になり、これまでに感じたことのない凄まじい圧力を全身で受けとめた。

ぶちゅ……



「ホント男ってバカだよね! あの時にやめていれば後悔せずに済んだのにね!」

女子大生は電話をしながらそのまま歩いていく。
いつもの道にはなぎ倒された草、踏み潰された空き缶。
ローファーの靴跡に3匹の潰れたアリ。
そして地面にめり込んだ一人の小さな人間が……
女性たちは普通に歩いているだけのいつもの道だ。

(終)