<主な登場人物>
①幸雄(ゆきお・大学2年生)…主人公。テニスサークル所属。女子高生が好き。
②康太(こうた・大学2年生)…幸雄の友人。
③香織(かおり・大学3年生)…幸雄のサークルの先輩。
④汐里(しおり・高校2年生)
⑤奈緒(なお・高校2年生)
⑥由美(ゆみ・高校2年生)

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【ファーストフード店:サック】



香織「いらっしゃいませこんにちは! あれ? 幸雄くんじゃない?」

幸雄と康太はテニスサークルの飲み会の打ち合わせのため、ファーストフード店にやって来た。
店員は幸雄の先輩である香織だ。
黒色でセミロングの髪にツヤのある唇、切れ長の瞳の持ち主でとても美人だ。

香織「店内でお召し上がりでしょうか?」
幸雄「はい。それじゃあハンバーガーセットを2つで」
香織「かしこまりました。それと幸雄くん? この特製ソースをおまけするわ」
幸雄「いいんですか?」
香織「いいわよ。でも誰にも言っちゃダメだからね!」

香織は満面の笑みを見せてハンバーガーセットと特製ソースを手渡した。

康太「しかし香織さんって本当に美人だよな? 俺はああいう美女と付き合いたいぜ!」
幸雄「香織さんか。たしかにいい人だけど俺は年下の女の子の方が好きだ」
康太「例えば女子高生とか? この店にたくさんいるからナンパしちゃえよ!」
幸雄「馬鹿言え! 女子高生に声かけたら変態扱いさせられる!」

幸雄と康太は談笑しながら特製ソースをかけ、ハンバーガーをほおばった。
ニンニクが効いているのかとても香ばしく、コクのある味だ。
二人は無言でハンバーガーを頬張った。
食べ終わると満腹感からか強い眠気に襲われ、そのまま眠ってしまった。


幸雄「ん? 眠ってしまったか? ここはどこだ?」

幸雄は目を覚ました。
目の前に4つの木の柱がそびえ立つ。
さらにその上には康太が立っている。
両手を振って何かを幸雄に伝えようとしているが声は届かない。

幸雄「なんで幸雄があんなに高いところにいるんだ? 俺たちはファーストフード店でハンバーガーを食べていたはず……」

ズズゥン… ズズゥン… ズズゥン…


考え事をする幸雄に突然襲いかかる地響きを重低音。
恐怖を感じた幸雄は思わず体をすくめ、あたりを見渡す。
すると幸雄の目の前に大型バスより大きな赤いハイヒールが振り下ろされる。

どすぅぅぅん!!!


ハイヒールが床に落下した時に凄まじい衝撃波をうみ、幸雄は吹き飛ばされてしまった。
幸雄はこの状況に混乱している。
確かにあの赤い物体は女性の履物であるハイヒールであることはすぐに認識できた。
だか、あまりにもでかすぎる。
さらに幸雄の真横にはサンダルがズシンと重い音をたてて落下する。

女の子「ママ~! 待って~」

幸雄は巨大サンダルの行方を目で追うと、ビルのような大きさを誇る女の子の姿が目に映った。
しかもその女の子はとても幼く、歳は4・5歳と思われる。
巨人の世界に迷い込んだのか?
幸雄は頭を抱えながら周りを見渡すと目の前にはぺちゃんこになって床にこびりつくアリの姿が目に入った。
今の幸雄の体とほぼ同じくらいの大きさのアリが潰れているのだ。
しかも、先ほどこの場所に巨大幼女のサンダルが振り下ろされたのだ。

幸雄「どういうことだよ!? この黒い物体は間違いなくアリだ! もしかして巨人の世界に迷い込んだのでなくて……」

幸雄が何かに気がついたとき、再び体の芯に響く重低音を立てながら女性が近づいてきた。

香織「困ったね! ちゃんと食べ終わったのならあと片つけをして欲しいものだわ!」
幸雄「か、香織さん! そうだ! 香織さんに助けてもらおう!」

どすぅぅぅん!!!


黒いオフィスサンダルが幸雄の目の前に振り下ろされる。
高層ビルのような巨大さを誇る香織に助けを求めようとしたが、幸雄が小さすぎて気づいてもらえない。

香織「これは特製ソース……。もしかして幸雄くんたちが食べたのかな? クスクスクス……」

香織は笑いながら足元を見渡した。
幸雄は香織の真下にいる。
香織の視界に入らなかったのか気づいてもらえなかった。

香織「ということは体がアリさんサイズに縮小したわけね。たしか100分の1に縮むとか?」

香織の発言に幸雄は頭が真っ白になった。
しかし、これまでの不思議なことが一つに繋がった。
巨人の世界に迷い込んだのではなく、幸雄と康太の体が100分の1に縮小したのだと。
そして背筋が寒くなった。
先ほどの潰れたアリは幼女によって踏み潰されたということに気づいたからだ。
もしかしたら俺も誰かに踏み潰されて死んでしまうのではないか?
そう思った幸雄は真上の香織に向かって大声で叫び、助けを求めた。
だが、幸雄は思わず鼻血を出してしまう。
香織はミニスカートの制服を着ている。
それを幸雄はローアングルで眺めており、スカートの中の巨大な黒いものが下着であることに気がつき、興奮してしまったのだ。
黒い下着とか香織さんってものすごい大胆な人だ……
幸雄は思わず我を忘れ、ニヤニヤしていると地響きを立てながら香織は立ち去ってしまった。
幸雄の興奮は一瞬で覚め、再び潰れたアリを見ると恐怖で体が震え始めた。

ズズゥン… ズズゥン… ズズゥン…


再び床が揺れ始める。
しかも今までより強い揺れだ。

汐里「ねぇ? ここに座らない?」
奈緒「いいよ!」
由美「じゃあ私はここに座るね!」

上空では可愛らしい声が聞こえる中、幸雄の周辺は爆音を立てながら巨大なローファーが次々と落ちてくる。
幸雄はその爆撃に耐え切れず、チリのように体が宙に待った。
その爆撃がおさまり、ゆっくり見上げると幸雄の心拍数は急激に上昇した。
黒のローファーに黒のソックス。
塔のようにそびえ立ち、引き締まったふくらはぎにはちきれんばかりの太もも。
チェックのミニスカートの中には純白の下着。
生地が張り、少し汗ばんだ長袖のワイシャツを腕まくりしている。
この巨人たちは幸雄の大好きな女子高生であるとすぐに分かった。
3人の女子高生をローアングルで眺める迫力に幸雄は息を飲み、緩んだ顔で見上げていた。
しかし、康太の悲鳴に幸雄は我に返る。

汐里「じゃああたしはここに座るね! よいしょっと!」

ショートカットの女子高生汐里が腰掛けようとしている椅子の上には小さな康太がいるのだ。
もちろん汐里はアリのような康太の存在に気がつかずそのまま椅子に腰掛けた。
康太はあっという間に汐里のお尻の下敷きになり、下着に食い込んでしまった。
しかし、汐里のお尻は柔らかく、純白の下着に食い込んだものの体は潰れず、手足はかろうじて動かすことはできる。
だが、汗ばんだ女子高生のお尻により、湿気と温度は上昇し、蒸し風呂状態に。
さらにただでさえ圧倒的な質感と重さを誇る汐里のお尻に全身を押し付けられているのに、汐里は無意識にお尻をずり動かし、康太の体は引きちぎられそうになる。
下手したら大根がすりおろされるように原型を失ってしまうのではないか!
幸雄は友人のピンチに思わず駆け出したが、すぐに足を止めてしまった。
汐里がローファーを脱ぎ、黒ソックスをまとった足をぶらぶらと揺れている光景に見とれてしまったからだ。

汐里「ていうか最近暑くない? 靴下とかすごく蒸れて気持ち悪いんですけど!」
奈緒「だよね? 臭いとか気にならない?」
汐里「なるなる! なんか酸っぱ臭いっていうか? それより由美はなんで靴下履いてないの?」
由美「体育の時、更衣室に忘れちゃった! てへ☆」
汐里「じゃあ素足にローファー!? それってちょーヤバくない? 絶対に蒸れて臭くなるよ?」
由美「そうだね! じゃあローファー脱いで……」

汐里に続き、由美もローファーを脱ぎ、足をブラブラさせ始めた。
彼女たちの真下にいる幸雄は思わず咳き込み、鼻をつまんだ。
幸雄に黒ソックスや素足が接近し、強烈な足の臭いにやられてしまったのだ。
女子高生の足がこんなにも臭いものだとは……。
幸雄の甘い夢は無残にもぶち壊されてしまった。
そんななか、康太は汐里のお尻から這いつくばり、なんとか脱出することに成功した。
しかし、康太の足元はおぼつかず、そのまま椅子から落下してしまった。

幸雄「康太!!! げっ! あれって……」

康太は暗く、生暖かい空気の漂う空間に落とされた。
嗅いだことのない強烈な刺激臭に包まれ、決して居心地のよい場所ではなかった。
しかし、康太は汐里の大きなお尻に全身を押し付けられ、死にはしなかったが体力をかなり消耗したため、仰向けになって体を休めた。

幸雄「康太! 聞こえるか! 今すぐその中から出るんだ!!!」

外から幸雄の声が聞こえる。
しかし、康太の目の前には黒ソックスをまとった足がまるで生物のようにくねくねと動きながら接近する。
もちろん小さな康太など、石ころのように包み込んでしまうほどの大きな足だ。

幸雄「康太! それは女子高生のローファーの中だ! 今すぐ脱出しないと潰されてしまうぞ!」

しかし遅かった。
康太は汐里のつま先に全身を包み込まれ、ローファーの中敷きに押し付けられた。

康太「これがつま先? ジメジメしているし何より重い……」

しかし汐里は自分のローファーの中に小さな康太がいることなど気づかず、つま先をくねくね動かしたり、押し付けたりしている。
ローファーの外にいる幸雄は、中の康太の様子を見ることができない。
しかし、康太の悲痛な叫び声や骨が砕ける音、体の内部が潰れる鈍い音は耳に入った。
そんななか、彼女たちはおしゃべりに花を咲かせている。

汐里「ねぇ聞いてよ! 休み時間にクラスの男子が俺のことを踏んでくれってあたしに言ったのよ!」
奈緒「何それキモっ! んで汐里は踏んだの?」
汐里「足を踏んでやったけど男子はそこじゃないとか言っていたの! そのときの顔はマジでキモかった!」
由美「罰ゲームかしら? 男子ってみんな変態だね!」
汐里「ホントよ! 次は顔でも踏んづけてやろうかな! こんなふうに!」

ミシミシボキボキぐちゅ……


汐里がつま先に力をいれ、グリグリと踏みにじると心臓に悪い鈍い音が大きくなり、康太の叫び声が一切聞こえなくなった。
もしかして康太は女子高生のつま先でいともたやすくすりつぶされて死んでしまったのか?
幸雄は頭を抱え、友人の死に泣き叫んだ。
だが、小さな命を消した女子高生の汐里は全く悪びれた様子はない。
それもそのはず。
人を殺したことなど気づいていないからである。
ただつま先を動かすという日常的な動作で無意識に潰されてしまう。
幸雄は自分の無力さと女子高生たちの絶対的な力の差を痛感した。
そして怖くなり、逃げ出そうとした瞬間、幸雄にチキンナゲットが落下した。

由美「3秒ルール! 今食べればまだ大丈夫~!」
奈緒「やだ由美~。汚い!」

由美は床に落ちたチキンナゲットを急いで取り、口を大きく開けた。
ただ、このチキンナゲットに幸雄はしがみついており、由美は小さな幸雄も一緒に口の中に入れようとしているのだ。

幸雄「このままじゃ食べられてしまう!!!」
由美「あ~ん!」

由美の口が近づくと、幸雄は体を大きく動かし、しがみついていたチキンナゲットから手を離した。
そのまま太ももに落下し、トランポリンのように跳ねて、由美の足裏に着地した。
由美はローファーを脱ぎ、素足で右足を椅子の上にのっけて座っている。

由美「ほぇ? 私の足になんかついている?」

由美は自分の足裏に付着したものに気がつき、息を吹きかけた。
幸雄にとっては台風以上の強風でいとも簡単に吹き飛ばされ、そのまま床に落下した。

幸雄「危うくあの女子高生に食べられるかと思った。というか一瞬だが、あの娘の足裏に抱きついていたんだよな俺。偶然とはいえもっと抱きしめたかった……」

どすぅぅぅん!!!


幸雄の真横に巨大な素足が爆音とともに振り降ろされた。
度肝を抜かれた幸雄は見上げると一面を赤々とした足裏に覆われた。

由美「虫さんばいばい~」
幸雄「げ!? もしかして俺のことを虫だと思って……」

由美は無表情で素足をまっすぐ幸雄に振り下ろす。
突然のできごとに驚き、幸雄は死に物狂いで逃げ出した。

由美「ちょこまかとうっとおしい虫だこと。踏み潰してやる!」

先程までおっとりしていた由美は立ち上がり、勢いよく素足で床を踏みつけ始めた。
激しく床が揺れ、爆弾が落下するような勢いで巨大な素足が襲いかかるのだから幸雄は生きた心地がしなかった。
しかし、100倍もの体格差のある女子高生から逃げ切れる訳もなく、あっという間に幸雄は由美の素足に覆われてしまった。

由美「潰れちまえ!!!」

どすぅぅぅぅん!!! ぐちゃ……


この瞬間、幸雄は由美の素足の下で息絶えてしまった。
その後、由美はグリグリと幸雄を踏みにじり、幸雄は跡形もなくなってしまったのだ。
由美は無表情で素足を上げ、床にこびりついた死骸を見て鼻で笑った。

汐里「ゆ、由美? ど、どうしたの急に」
奈緒「いきなり立ち上がって虫とか踏み潰すからびっくりしたよ?」
由美「いやん! 私、虫踏んじゃった~。てへ☆」
汐里「可愛い子ぶらなくていいから! リアルに怖いんですけど!」
由美「なんでだろう~。昔から虫を見ると踏み潰したくなるのよね~。でもこんな趣味がバレるとマズイから絶対に内緒だからね! えへへへ……」
汐里「そうね。秘密にするわ。なんか怖いし……」

由美の豹変ぶりに友人たちも少し引いていた。

香織「床が汚れていますね。ただいまモップで掃除しますので少々お待ちください」

店員の香織がモップで幸雄の死骸を丁寧に拭き取った。

香織「よかったじゃない幸雄くん。あなたの大好きな女子高生に踏み潰されてね」

香織はクスクスと笑いながら仕事に戻った。
そして女子高生たちも何事がなかったようにハンバーガーをほおばり、他愛もないトークに花を咲かせていたのであった。
これがファーストフード店での出来事であった。


(完)