<主な登場人物>
 ①友樹…妹大好きなシスコン高校2年生。最近の楽しみは妹の背が低いことをからかうこと。
 ②智恵…友樹の妹。心優しい高校1年生だが、背が低いことにコンプレックスを抱いている。
     身長142cm。足のサイズ22.5cm。
 ③優香…縮小研究部の部長。過去にクラスメイトの男子とトラブルがあり、男子の事を嫌っている。
     身長164cm。足のサイズ25cm。
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【デパートの中】

晴天の休日。
友樹は妹の智恵とショッピングに出かけていた。

智恵「お兄ちゃん! この服、智恵に似合うと思う?」

チェックのミニスカートが可愛らしい制服を身にまとった智恵が、夏物の洋服を手に取る。
肌の露出の多い大胆な服に、兄の友樹は赤面するも、照れくさそうに、

友樹「智恵はチビだから、その服を着てもブカブカだろうな!」
智恵「なによっ! 智恵はそんなにチビじゃないよ!」
友樹「じゃあ、この棚の一番上にある特大ぬいぐるみを取れるか? ジャンプしても届かないよな! ハハハ!!!」
智恵「もうお兄ちゃんの意地悪!!!」

智恵はローファーでズンズンと床を踏み鳴らしながら友樹から離れる。
目に涙を浮かべていた。

智恵「せっかくの休日で楽しみたいのに。智恵がチビのことをバカにしないでよ……」

いつかお兄ちゃんを踏んづけてやりたい!
悔しい気持ちでいっぱいになった。
智恵が涙を拭っているところに、黒髪で切れ長の瞳をした女子高生が声をかけた。

優香「アハハハハ! あんた、あたしたちの実験に協力してくれない?」

唐突に実験の話をされ、はじめは智恵も戸惑っていたが、この黒髪の女子高生の話を聞き、実験に協力することになった。

智恵「この薬を飲むと背が大きくなるんですね……」
優香「そうよ! 悪い話じゃないと思うんだけど?」
智恵「やってみます!」

智恵はその場で透明の液体を飲み干した。
智恵は自身の心拍数が上がっていることに気づく。
黒髪の女子高生は立ち去り、入れ替わるように友樹がやってきた。

友樹「よぉチビ智恵! もしかしてここで泣いていたのか? ……!?」

友樹は智恵を馬鹿にするはずだったのだが、その場で腰を抜かしてしまった。

智恵「ほぇ? 本当に智恵、大きくなっちゃたの?」

智恵は天井に頭がぶつかる程大きくなっていた。
身長は7mほどだろうか。
一番上の棚にある特大ぬいぐるみをいとも容易く摘み取り、友樹に見せる。
友樹のあいた口がふさがらない。
そんな友樹の惨めな姿を見て、智恵は友樹をがっしりと掴んだ。

智恵「フィギュアみたいだね~」
友樹「うわあ!!! やめてくれ!!! 下ろしてくれ!!!」

智恵は友樹を掴み、その腕を振り回して遊んでいた。
友樹は振り回されて酔っていたが、智恵はお構いなしに友樹を文字通り振り回し、笑みを浮かべていた。
今まで兄に身長のことを馬鹿にされた鬱憤を晴らし、智恵の心はスッキリと晴れ渡ったようだ。

智恵「このまま両手で握ったらぐしゃって潰れちゃうかもね。」
友樹「ご、ごめん! 今までチビだなんて言って! もう言わないから離してくれ……」

友樹はそのまま床に落とされた。
突然落とされて驚いたが、目の前の光景に息を呑んだ。

智恵「む、胸が苦しい……。 ハァハァ……」

智恵は胸に手を当て、呼吸を荒げている。
するとみるみると智恵の体が大きくなっていくのがわかった。
座った状態で天井に頭がぶつかり、天井はヒビが入り、崩壊する。
目の前で巨大化する妹にたじろぐ友樹はすぐさま逃げ出した。
しかし、崩壊する天井の下敷きになってしまった。
さらに智恵は巨大化し、頭が天井を突き破り、大型デパートはガラガラと大きな音を立てながら崩れていった。
突然の事態に周りのお客さんはパニック状態になるも、がれきの下敷きになり、智恵が伸ばす腕に吹き飛ばされて道路に叩
きつけられる人もいた。
1分が経過しただろうか。
智恵の足元には、デパートの残骸が広がる。
ゆっくりと立ち上がると、そこにはミニチュアのような町が広がっていた。
足元から悲鳴が響き渡る。

「巨人だ! 巨大女子高生だ!」
「逃げろ!!! 踏み潰されるぞ!?」
「喰われるぞ! 早く離れろ!!!」

智恵の足元には消しゴム位の大きさの人間たちがちょろちょろと逃げ回っている。
今の智恵の身長は約70m。
高層ビル群ですら今の智恵に見下ろされるほどの大きさだ。

智恵「やだぁ! 智恵、巨人になっちゃったの!?」

智恵が思わず右足を一歩後ろに踏み出す。
たったそれだけの動作だが、地響きが起こりアスファルトが砕け散り、残骸が宙に舞う。
11mはあろう巨大ローファーに逃げ惑う人々は悲鳴をあげながら下敷きになる。

智恵「あっ! 街を壊しちゃった。 ごめんなさい。」

たじろぐ智恵は右足をゆっくり上げると、そこはクッキーのようにひび割れた道路と、無残な姿になった人間の死体が散ら
ばっていた。

智恵「やだっ! ホントごめんなさい!」

智恵は人間を殺してしまったことに罪悪感を抱いていた。
困った表情で下を見ると、フラッシュのような光が目に入った。
どうやら男性数名が巨大な智恵を真下から撮影しているようだ。

智恵「あの? ここは危険ですから離れてください。」

智恵は足元の人間に気遣って声をかけたが、男性たちは逃げる気配がない。
なぜ足元で撮影しているのだろうと考えると、智恵は顔から火が出るほど恥ずかしくなった。

智恵「智恵のパンツを盗撮しないでください!!!」

智恵はその場で地団駄を踏んだ。
激しく大地は揺れ、爆弾が落とされたような爆音が起こり、粉塵が舞う。

「巨人が暴れたぞ!!!」
「巨人の足元にあたしの彼氏が!!!」
「わしの愛車が!!!」

智恵の足元には何も残っていない。
人間も自動車も建物もみな粉砕され、原型をとどめていない。

智恵「もうやだ!」
「巨人がこっちに来たぞ!」
「ママ~! 助けて~!」
「逃げろ!」

智恵はいても立ってもいられなくなり、走り出した。
智恵の一歩で死に物狂いで逃げる人々は踏み潰され、建物は一瞬でガレキと化す。
巨大な足跡を多数刻み、そこにはぺちゃんこになった人間がこびりつく。
変わり果てた姿の人間に寄り添い、大声で泣き喚く子ども。
踏み潰された車の中にいる人を救出しようと躍起になる大人。
凄まじい振動に耐え切ることができずに転倒し、吹き飛ばされるガレキの下敷きになる老人。
智恵に蹴り飛ばされた高層ビルから多数の人々がゴミのように落下し、地面に叩きつけられる。
智恵の通った道は大惨事だ。

智恵「そういえばお兄ちゃんはどこにいるの? お兄ちゃん助けて……」

一方、友樹は……。

「もう少しだ! 頑張るんだ青年!」

ガレキの下敷きになった友樹は、二人の男性に救出してもらっているようだ。
立派な繁華街が、巨大女子高生智恵によって更地と化した。
ズシィン、ズシィンと鳴り響く地鳴りとともに、悲痛な叫びも耳に入る。
踏み潰されて骨が砕け、肉が飛び散る鈍い音も耳に入る。
悪気は無いとは言え、一人の巨大女子高生によって街中の人々は恐怖を感じていたのだ。
すると、だんだん地響きが大きくなっていくのを感じた。

智恵「お兄ちゃん? どこにいるの?」

巨大な智恵は友樹に近づいている。
しかし、智恵は遠くを見ており、足元の友樹の存在に気づいていない。

友樹「智恵! 俺はここにいる! お前の足元だ!!!」

友樹は見上げ、大声で智恵に話しかける。
しかし、友樹の視界に入ったのは智恵のローファーの靴底だった。
所々に血痕がついていて、友樹は震え上がる。

「青年よ、すまん! 俺たちはまだ死にたくないんだ!」
友樹「ちょっ! 待ってください!!! 見殺しにするつもりですか?」

友樹を救出しようとした男性二人は、友樹を見捨てて逃げ出した。
ガレキの下敷きになった友樹は逃げることができない。
じわじわと近づく圧倒的質感を誇るローファーの靴底。
このローファーと智恵の体重で多くの建物をガレキにし、人々をシミにしたのだ。
あんなもので踏みつけられたら確実に死ぬ!

友樹「智恵ええええええ!!!!!!」

友樹の目の前は真っ暗になり、凄まじい重さを全身で受け止め、痛みを感じるまもなく飛び散ってしまった。

智恵「どこにいるんだろうお兄ちゃん。確かデパートはこのへんだったんだけどな。」

今しがたガレキごと兄を踏み潰したとは知らず、智恵は友樹を探し続けた。
ズシンズシンと周りのがれきを踏み砕きながら歩く智恵。
しかし、突然めまいがしてその場で倒れてしまった。


そして数分が経過した。


智恵「ここはどこかしら? お兄ちゃんは?」

智恵の目の前には巨大な肌色の柱が二本立っているのがわかった。
まだ、呆然としている智恵に聞き覚えのある声が耳入った。

???「実験は失敗のようね!」

すると智恵は何者かにつままれた。
目の前には黒髪で切れ長の瞳の女子高生。
デパートで大きくなる薬をくれた女子だ!

優香「どうだった巨人になった気持ちは? でもたった3分じゃ物足りないわよね?」
智恵「さっきの人? 今度はあなたが巨人になったの?」
優香「違うわ。周りをよく見なさい!」

ガレキに倒れた人間。
全てのものが大きく見えた。

智恵「え? も、もしかして……」
優香「そうよ! あんたはありんこサイズになったのよ!」

なんと智恵は100分の1サイズに縮小してしまったようだ。
すると優香はローファーを脱ぎ、智恵をローファーの中に放り込んだ。

優香「この巨大化の実験を知る者がいてはいけないわ! だからあんたを踏み潰して殺してあげる!」

逃げ場のないローファーの中に閉じ込められた智恵は絶望するしかなかった。
じわじわと接近する巨大な5本の足指。
ローファーの中に充満する芳しい足の臭い。
むわあっとした湿り気のある空気に胸焼けしそうだ。
智恵は親指に全身を押し付けられ、そのままローファーの先端まで運ばれてしまった。

優香「アハハハハ! あたしの素足ローファーの中でいつまで命が持つかしらね! 臭いと湿気、重さを全身で感じなさい
!」

優香はそのまま歩き出した。
その後、智恵がどうなったかは容易に想像することができるだろう……。

優香「それにしても巨大化っていいわね。全てのものを破壊しつくし、人間どもの心を支配する……」

優香はニンマリと笑みを浮かべ、高笑いした。

優香「この実験を成功させるためにもっと研究を重ねるわ! 成功すれば、あたしから敵がいなくなり、すべてを支配でき
る……」


(終)