私は孤児だった。なんで捨てられたのかは知らないが物心ついた時から施設住まいだった。
この容姿が嫌いだ。青い髪、紫の目、そして長身。
何時頃からか人を見上げる事が無かった。

学生時代、その風変わりな風貌に虐められるわけでもなく、ただ恐れられていた。
友達らしい友達はおらず、皆何か余所余所しかった。
その体格からか、スポーツは何をやっても万能で、引っ張りだこだった。
ただチームプレーは嫌いだった。私がやれば全部一人で点を取ってしまうのだ。
他が邪魔でしかなかった。
そんな中で出会った、剣道。一人で出来、打ち込んだ。
毎日打っていた大木は途中で倒れそうになり、既に10本目だ。毎朝かかさず木刀をふるった。
師範代を学生時代に破り、全国制覇までした私は、男性の部に出場した。
そのままなんと優勝してしまったのだ。男と言っても私より小さい奴しか見た事が無かった。
その成績を買われ、軍隊に就職する。
きついと言われる訓練も、大したことは無く、辞めていく同僚がなぜ辞めていくのかあまり理解できなかった。
20代を迎えた頃、初めて運動に邪魔な問題が出てくる。胸が成長し続けるのだ。
これは何をやっても邪魔で、妨げにしかならない。一度比較的仲の良かった同僚に相談したが、怪訝な顔をされ理解してもらえなかった。
そんな体を見た軍部は、私をスパイに成るよう誘ってきた。どうでも良かった私はそのまま承諾した。
敵国で暮らす日々、知合いなどという物は出来なかったが、まぁ今までと何も変わりない。
2年ぐらい経っただろうか、私の国は惑星を掌握し敵国は無くなってしまった。
そのまま内部スパイとして働く、溜まり続ける貯金に何の意味も見いだせなかった。
そこで出会ったのがお酒であった。運動に邪魔と考えていた酒を飲むと何もかも忘れられる。
そして、スパイを降ろされた。
この惑星第三の都市の防衛隊として、勤務していたその年である。
急に、緊急警報が出され山の中に作った塹壕で臨戦態勢をとる、自動小銃を手に何と戦っているのか全く分からなかった。
無線から聞こえてくる音によると、第一首都は消滅したようだった。
意味が分からなかった。翌日、第二首都が消滅。私の居る都市は、第三首都に成った。
人口集中が問題視されていた時代、第一首都と第二首都だけで人口は9割に成る。
実に惑星の9割がどこかへ消えてしまった。
情報が回ってくる、大きな女性の形をしたエイリアンがこの惑星を襲っているとの事だった。

臨戦態勢に入ってから4日目、始まりは調整池の波紋からだった。その波紋はどんどん大きく成っていく、
ドォォン!ドォォン!という音と共に塹壕が揺れる。
穴から外を見ると、機械兵団が蟻のように潰されている所だった。
平原に展開する機械兵団。レーザーやミサイルを撃ちまくるが、その黄色い物体に何も被害を与える事ができない。
双眼鏡をはずし見るとそれは女性用のパンプスに見えた。
その上に白い塔が存在し、服だろうか黒い布に包まれた丸い尻と縊れていくウエスト、胸がデカいのか角度が悪いのかここからは顔は解らなかった。
ズズズズズゥゥ!大地が轟音を立て塹壕が崩れそうになる。その音が終わると機械兵団は文字通り消滅していた。
「アハハハハ!もっと怖がりなさいよ!」
塹壕が崩れそうな声が上から降ってくる。ある物は耳をふさぎ、ある物は戦意が無く成ったのか奥の方で頭を抱えている。
目の前のレーザー砲基地がその白い塔に攻撃を開始する。12機のレーザーがずっと光っている、
よく見るとその女の身体中が光っていた。
「もっと頑張らないと、止められないわよ!」そう言うと、別の山に足を突っ込む女。
天地がひっくり返るような振動に、天井に叩きつけられる。
"第1防衛隊かいm・・"
もう一度天井に叩付けられ、無線は完全に沈黙した。
指令室が無く成ったのだろう。ここから400m離れた"後方"にあるはずの指令室。
ドォォン!ドォォォン!と女が移動する音がする。何度かその振動が聞こえた後、塹壕の奥は崩壊していた。
幸い前線部隊に居た私は助かるが、奥の上級士官たちは全滅だろう。
目の前のレーザー基地が首をもたげ激しく光る。
「なんの役にも立たないのね、うざったいだけだわ。」
そう言うと目の前のレーザー砲基地が黄色いパンプスに踏みつけられた。
ダァァァッァァア!監視穴が砕け壁が爆発する。
ズブズブと斜面を踏みつけるパンプスはヒール部分が完全に山に刺さり、すこしつま先部分が持ち上がるおかしな形をしていた。
その白い脚が目の前に見える。「「突撃ぃぃぃぃぃ!」」別の部隊長だろうか、あまりにも小さな声が聞こえてくる。
私も軍人だ、塹壕から出て突撃を敢行する。気付くとあの女は光っていなかった。
闇夜に青く光る眼と金色の髪が月明かりに照らされている。
パンプスを持ち上げその近くにまた爆撃をする。
ごぉぉぉぉぉ!だぁぁぁっぁあぁん!
近くを走っていた兵士が、銃弾の速さで迫る何かに飛ばされ、どこかへ消えてしまう。
必死で地面に這いつくばり耐えた。
「ぁ、ちっちゃい町があるじゃない。」
身体が痛い、あの女が喋ると空気が震え体がバキバキと痛みつけられる。目の前のパンプスはゴォォォォ!という轟音と共にどこかに上空に消えてしまう。
どこかに叩きつける。ダァァン!ダァァァン!という音が山の後ろから聞こえてくる。山が彼女に震え恐怖していた。
「アハハハハ!いっぱいいるじゃなの!」
音が暴力と化し、何回も何回もする爆音と振動。
どれぐらい続いたのかわからないが、私の防衛していた2億人都市からは光が完全に失われたようだった。
「もう、全然満足できないじゃない。この微生物共!」
最後に捨て台詞を吐かれ体がビリビリしびれると、しばらくの静寂が訪れる。動いている物を何も感じられない。
"こんにちは、この星の皆さん"
そんな声が頭に響いて来る。
"喋ると消し飛んじゃいそうなので直接話しかけるわ"
あの女が私たちに送ってきているのか、耳をふさいでも聞こえてくる。
"試しに話してみるね"
そう言うと、地面が、山が、惑星が揺れる。背後にあった山は向こう側へ完全に無くなっていた。ただ少しボコボコした地面がどこまでも見えた。
何がどうなったのか分からないが、私は意識があった。
空を見上げるといつもの空と違い、青い光が見える。
さっきの女の顔が思い出される。あの女があんなに"デカく成ったのか!"初めて人を見上げた気がした。
"もっと怖がりなさいって言ってるでしょ、全然足りない、もう良いわ"
何かすべてを押しつぶす何かが、地平線の彼方から迫ってくる、大地は割れ、苦しそうにマグマを噴き出している。
そこで意識が遠のく。終わったのだと思った。

気が付くと白い空間に居た。
目の前には黄色い何かがある。
「あなた達、死にたくなかったら私の靴掃除してなさい。」
また体が痛い音がする。あの女が喋っているのだ。
目の前の黄色はパンプスだ。それを履くバカでかい白い足とそこから延びる白い柱が見える。
座っているのか、それ以上は見えない。あの惑星破壊に巻き込まれたのか、周りの奴らは皆ボロボロの姿だ。
突然その目の前を支配しているパンプスが上空に上がる。
ごわぁぁぁ!という空気が吸い込まれる音がする。
そのままごぉぉぉぉ!っと黒い靴底が迫ってくる。ダァァァァァァン!!私の近くにその黄色いパンプスは落ちた。
私はどこかへ飛んで行っている。
遮蔽物の無いこの空間では、ただひたすらに飛ばされる。
そして地面を転がる感覚が続いていた。

気付くと、知らない人に声を掛けられる。
何色かもわからないボロボロの髪に、何を着ているのか分からない。
その人は巣に案内してくれた。
長い長い階段を上がるとあの女サイズの靴が並んでいる空間に出る。
その逆側にちっぽけな入口があった。
中に入ると薄汚れた白い壁が迷路のように成っている。その個室に皆が住んでいる様だった。
外からの景色を思い出し、こっちは姿鏡の裏では無いかと思う。
自分だったらその端っこはめんどくさくて見逃すだろうと、端を探す。
途中階段があったが上に行った所で仕方がない。
どれくらい歩いたか解らないところに、茶色い壁の個室を見つけた。
とりあえず自分の着ていた上着を置く。それ以外何も持って居ないからだ。
そして必要な物を取りにあの女の靴底を漁りに行った。

何度も吹き飛ばされ、何度も死にかけたが生きていた。
途中見つけた木の棒を毎朝振っている。朝が自分の起きた時なのだが。
グループで行動するのが多い中、私は一匹狼だった。ここでも高い身長が災いする。
稀に同じような身長の男は見かけたが、関わる気は無かった。

急に光が入ってくる。
「なんであんた達私のいう事聞けないのよ!」
日々、体を痛めつけるあの女の声が聞こえてくる。
ダァァァァァァン!住居が惑星崩壊のように震える。簡素な壁に体を打ち付ける。
「ウフフ、分かったら次からはいう事聞くのね。」
光が失われる。
個室の外を見ると、あの女に踏みつけられたのか、グチャグチャに成った壁がそこら中に折り重なっている。
その間からは人の亡骸が無数に見えた。
打ち付けたせいか、体がまともにいう事を聞かない。
「くそ、あの女。」
久しぶりに声を出した。その瞬間、頭の後頭部に打撃を受け意識を失った。

朦朧とする意識の中やっと視界が広がってくる。
体は未だにいう事を聞かない。何故がこちらに頭をさげる集団。
「生贄が必要なのだ!」
たまに見るあの集団がまたカルト集会をやっているのだ、調度教祖とか言うのが横に居る。
一度いってやりたかった言葉を叫んでやる。体中から声を出す。
「何いってやがる、このクソ坊主。そんな信仰しようが何も変わらないねぇ!」
そこでしびれていた背中が熱く成った。
そこからは何を言ったか覚えていないが、体が熱く成り意識が遠のいていった。

上下左右も意識が分からない中、かなりデカイ肉塊が見えた。その横にはここに似つかわしくない姿の女性が立っている。
ぼんやりと見える姿に、どこか別の場所に飛ばされたのだと、助けを求めた。口から出たかは分からなかった。

知らない天井が見える。自然と体は痛く無い。違う場所に飛ばされたのかと思う。
動くたびに黒く汚れる床に、自分の身体だと意識が戻ってくる。
なにやら扉の向こうでワイワイ聞こえる。集団行動は嫌いだが何もわからない状況では仕方ない。
扉を開け、そこはあのぼんやり見えた大男と女性。そしてもう一人男が居た。
「なんだ、夢か、普通の家じゃないか。」
一斉にこちらを見てくる。
「あんたら・・・助けてくれたのか、あのクソ坊主はどうしたんだい。」
先ほどの状況を思い出す、また突き出されるかもしれない。
急にイチャイチャしだす前の集団。
その会話に"エリナ"という言葉が聞こえた。
あぁ、やっぱりまだあの中なのかと状況の整理がついた。
前の男はそのエリナから私を綺麗にしろと言われたという、何がなんだかわからない。
スパイ時代を思い出し、素直に従う事にする。
狭いが風呂なんていつぶりだろうか、あの女が私の面倒を見てくれる。
生まれて初めて人の親切に触れたような気がする。
私の胸を見てその女が褒めてくる。
こんなデカイだけの物、何が良いのかと普通に答えてしまった。
「お名前なんとおっしゃるんですか?」
笑顔で聞いて来る女に。"名前はなんだったか・・・"と少し考える。
少しも顔を崩すことなく聞いて来る彼女に思い出して答える。
「"蒼"っていうんだ、紗綾だったか、よろしくねぇ。」
人と風呂に入るのも孤児院依頼だなぁと思い出す。
そこから身支度をする。この女の店だというこの場所で服や靴をもらう。
彼女のサイズだろうか、シャツは胸でノビノビに成っていた。
貴重な服を申し訳なく思う。
「紗綾すまないねぇ、こんなデカイ女でさ。服伸ばしちまうよ。」
ふと基地での同僚の怪訝な顔を思い出し、やってしまった。と思う。
「良いんですよ、蒼さん、後で時間あれば私が作りますね!」
怪訝な顔なぞせずに、別に良いという。なんなら自分が作ってやると。
「服つくれるのかい?すごいねぇ紗綾は」
何も考えずに会話したのは、いつぶりだろうか。幼少期の素直な自分が戻ってきた気がした。
彩に色々靴をあてがってもらうが、なかなか入る靴が無い。
「でかいだけで、何の役にも立たないのさ。」
何故か自然と自分から話してしまう。
「蒼さんの足綺麗ですよ。こんな綺麗なのは二人しか見たことありません。」
足を褒めてくれる紗綾。一言一言心に何かが積もっていく感触がする。
ヒールの高いサンダルを持ってきた紗綾。脚にあてがうとデザインからか、収まる事が出来た。
「良いのかねぇ、こんな綺麗な靴履いてもさ。」
「はい!蒼さんの足には敵いませんが、私の作った靴綺麗って言っていただいてありがとうございます。」
満面の笑みで嬉しがる紗綾。
「へぇ、紗綾が作ったのかい、良い腕してるねぇ。」
エヘヘと照れだす紗綾に。この靴は特別だ。と思えるようになる私であった。
男性陣の待つ作業場へ移動する。
久々のハイヒールだったが、スパイ時代ずっと履いていた事もありこの感触が懐かしい。
「似合うかねぇ。ヒールの高い靴なんて何年ぶりかね。」
紗綾の作った靴を履けることに嬉しく成る。自分の足にフィットするその紫のサンダルを何度も見返す。
あの大男と目が会うが、固まって動かなかった。

その後4人で会話する。
大男がヒロで、男が広司という名だ。どちらもシューズボックスの中で働いていたようだ。
見かけた事が無い。
会話の中にヒロが居るだけで目線が合う人間がいるとこうも違うのかと思う。この男座高が高いのか座ると私より顔が上に来る。
人を見上げるのは2回目だと、1回目の過去を思い出してしまう。
何を話したか必死で覚えていなかったが、ヒロが同じ元軍人だという事だけ印象に残った。

ドォン!ドォン!とあの音が聞こえてくる。不思議と振動は少ない。
「ちゃんとがんばってね!」
聞いたこと無い爆音が聞こえてくる。噂の二人目だろうか。シューズボックスの中で奴らが話していたのを思い出す。
そのまま促されて外に出ると、また見たことないすべての縮尺がおかしい部屋が存在した。
2人分の足音が空間にこだまする。
二本の褐色と白色の柱が現れ、寸法違いのソファーに座る。
風を切り、あの青い眼がこちらをとらえている。
星を破壊した、絵里奈という女で間違いなさそうだ。
新しい女は紅色の目をしていた。
しかしあの時とは違い光っていない。宝石の様な透き通る目だ。

「へぇ、貴方やっぱり綺麗ね。私のシューズボックスの中は綺麗の宝庫なのかしら。」
あの女が私に向けて話してくる。こんな顔をしていたのかと初めてまともに顔を見た。
横の女とじゃれあって居る。
紅色の目の女は麗奈と言うようだ。あの特徴の女をシューズボックスで見た気がする。"まさか"と思いその思いはどこかへやった。

横で広司が普通にヒロの紹介をしている。
なにやら楽しい雰囲気だ。こんな会話の中には入った事が無い。
そういえば、"彼女達"の声を聞いても体が痛く無い。何か不思議な感覚だった。
綺麗に手入れをされた褐色の指と黒い爪が降りてくる。
ドォン!と大層な音と立ててこちらに来た爪にヒロが乗っていく。
あの大男が小さく怯えていた。私は感覚がおかしいのかあまり恐怖を感じない。

「あなたもよ、青い髪の人」
麗奈と呼ばれる女がこちらにその紅色の目を向けてくる。
「あぁ、あたしもかい?」
思わず出た私も会話の中に入っていたのだ。そのまま、コツコツとこの感触の良いヒールを鳴らし、爪の上に乗った。
そのまま上がっていく爪。彼女達の胸を超え、顔まで上がってくる。
紅色の目の前で上昇は止まった。横であの青い眼がこちらを見てくる。
ガクガクと震えるヒロ。あの日の光った目と違い優しそうな眼に私は何も感じなかった。
広司が紹介してくれる。そうだ私は蒼だった。

「供物さんね!綺麗な髪してるじゃない。」
先ほどまでの出来事を思い出す。彼女はもう知っているようだった。
「褒めてくれてありがとうねぇ。あんたにゃ何回も吹き飛ばされた女さ。」
この青い髪を綺麗だと言ってくれる絵里奈。今まで嫌悪されてきた事が嘘の様だ。
スパイ学校で習った、"相手を怒らせない話し方"と違う言葉を連ねてしまう。"しまった"と久々に心が動揺する。

「アハハ、よく生き残ってたわね。よろしくね蒼。」
笑いながら答えてくれる絵里奈。また心のピースが埋まっていく感覚がする。

「ほんとに綺麗な髪、うらやましい。」
麗奈もこの髪を褒めてくれる。うらやましいとまで行ってくれるのだ。
自分の事を羨ましいなんて言う人は紗綾以外2人目だ。心が満たされていく。
もう教育など忘れ素で話す事に決めた。
「あんたの白髪の方が綺麗さ、でかいのに輝いて見えるねぇ。」

「フフッ、ありがとう蒼さん。」
皮肉を込めたのに笑って帰してくれる麗奈、この子もいい子だ。

「その靴、紗綾のかしら良いわねぇ。やっぱり紗綾のデザイン好きだわ。」
もこんな靴は滅多に見れないと思う本当に良い靴だ。
「紗綾の店で入るのがこれしか無くてねぇ、服もノビノビだよ。」
また笑ってくれる皆、会話とはこんなに楽しかったのか。

「蒼さん、スタイルも良いよね。お胸もおっきい!」
また褒められた。なんだ良いやつじゃないか。声はバカでかいけど。
先ほど通り過ぎた胸を思い出す。怯えるヒロを見ながら言う。
「あんたらに言われると嬉しいねぇ、でもデカさでは流石に負けるさ、つぶされちまうよ!」
ニコニコした雰囲気は壊れない。いい空間だ。

「それで、あんたの恰好は何?鍛冶屋の店主かなんかなの?」
「か・・鍛冶屋じゃねぇよ。着る服がなくてよぉ。」
エプロン姿のヒロに確かに鍛冶屋っぽいと思う。

「もう鍛冶屋で良いじゃない、似合ってるわよ!」
絵里奈と麗奈が笑う。私もつられて笑ってしまった。笑ったのは初めてかもしれない。

楽しい空間が過ぎ、白いモヤモヤが私たちを包む。そして浮き上がるとそのまま下へ沈んでいく。
遠く見える床に、ぽつんと建つ店。この風景が彼女達と過ごして一番怖かった瞬間かもしれない。

彼女達は私とヒロの為に買い物に行こうという。
買い物とは一体どこへ行くのか。少し疑問に思っていると、別の惑星の出身である紗綾と絵里奈が会話を始める。
紗綾の惑星は正に今絵里奈に侵略されているようだ。
その惑星に買い物に行くと言っている。何か今までの事がどうでも良くなってきていた。

気付くと久々に活気のある街にやってきた。
人の頭が流れ、街が躍動している。
オーロラヴィジョンには侵略した絵里奈の画像だろうか。町が破壊される様子が写っていた。
自分の星もあんな感じだったんだろうかと基地を破壊した黄色いパンプスを思い出す。
「相変わらず派手にやるねぇ。あれに何撃っても効かないんだよ。」
レーザー兵器をなんともしない絵里奈を思い出す。
横にヒロが立っている。唯一私と同じところに視線がある人物だ。ヒロは横幅も大きい。
その髭の中で何かモゴモゴしていた。
周りの頭が止まる。
すごい旧式の車が大量に走り去っていく。文明はそんなに進んでいない様だ。
横の車道に一台のリムジンが止まった。
先ほど地面を揺らしながら歩いていた絵里奈が、私と同じ縮尺でそこに居る。
彼女も背が高く、そんなに目線を気にしないで話せる相手のようだ。
此方に向かって手を振っていた。
後ろから同じ縮尺の麗奈が出てくる。一回り小さいが、同じ目線で話せる相手だ。
同性の会話相手を初めて持った。
道中わずかな距離だが話しかけてくる輩が居る。正直うざったい。私に関わるなと思いながら進む、

言われるままリムジンに乗り込む私、まだ運転手が必要なようで、ヒロが運転している。ごつい肩で前が半分見えない。
当たりを見渡すと、紗綾以外似たような所で会話する事が出来る。なにか嬉しく成る。その紗綾も私を褒めてくれる人なのだ。
ふと酒瓶が目に入った。いつぶりだろうか飲んでいない。こんなにうれしい気持ちで飲める酒はどんなに旨いんだろうと思わず口に出てしまう。
「ぉ、酒があるじゃないか、シャンパンかねぇ、あんまりオシャレな酒は似合わないけど旨そうだねぇ」
麗奈がその長い腕で私に渡してくれた。気の利くいい子だ。
「すまないねぇ、いただこうかぁ」
軍隊に居た時の癖でコルクを明け、瓶のまま飲む。
体に染み渡るアルコールに細胞が喜んでいるようだ。でも不思議と昔の感覚と異なり、満足感が少し少ない気がした。
「蒼、もうちょっと雰囲気とか無いの?」
「おしゃれなのは似合わないだねぇ。」
少し照れくさい。こんな和やかな雰囲気は初めてだ。
その後も麗奈は酒を渡してくれる。あんな"力"を持つこの子が世話を焼いてくれるのだ。
周りはその様子を見てかニコニコしている。気付いたら棚の酒を全て飲んでしまっていた。
体と心が満たされる。また心のパーツがハマった気がした。
この空間は私にとって気持ちい特別なものだ。"初めて手放したくない物"を手に入れた。

どうやらこのホテルに泊まるようだ。高そうなホテルだが、従業員の教育が成っていない。
ドアマンがドアを開けないホテルとは何なのだろう。
広司のエスコートで中に入る。フロントで酒を売っているのを見つけ少しうれしく成る。
エレベータに乗って高層階へ行く、その道中も楽しい物だった。

今日は麗奈ちゃんと一緒の部屋の様だ。空き室が少ない事で相部屋に成った。
前までであれば、かなりウザかっただろうが、今は違う。楽しい空間が続くのかと楽しく成ってくる。
昔の癖で窓を開ける。冷蔵庫の近くに椅子で座ると、同室者に一応の確認を取ってまた酒を楽しむ。
麗奈はまた社内の続きをしてくれるようだ、なんだか彼女の時間を奪っているようで申し訳なく成る。
それでも麗奈ちゃんはニコニコと笑いながら前に座ってくれた。
ふと下を見ると、小さな小さな街並みがそこに見えた。あの"力"を持つ麗奈ちゃんに聞いてみたくなる。
「あんな風に見えるのかい?」
「もっと小さいです。本当に点に見えます。」
もっと小さいという、そんなもの感触はあるのだろうか。
思わず私の惑星に居た頃を思い出す。
「そうかい、そんな小さいのかい私達は、そりゃぁ勝てないねぇ。」
おもちゃのように潰されていく戦車。あの地面に見えるものより小さい物が攻撃してきても自分でも何も感じないだろう。
飲みすぎたのか熱く成ってくる。貰った物で恐縮だが体を圧迫するこの服を脱ぐ。
「暑いねぇ、どんな感触なんだい?やっぱり固いのかねぇ。」
「正直何も感じません。私の性器でやっとちょっと感じるぐらいです。」
やっぱり感じないのか、そうだろうなと思った。この子私の何って言った?
そう言うと麗奈ちゃんもそのワンピースを脱ぎ始めた。
「麗奈ちゃんまで脱がなくて良いんじゃないかねぇ。」
私もどうでも良く成り、体を解放する。アルコールと心を満たされ自然と笑い声が出てくる。
「でも、小人の町でやると気持ち良いんです。昨日も絵里奈さんにやられちゃいました。」
「へぇ、そうなのかぃ。そうやって帝都?やらであそんだのかい。」
あのオーロラビジョンでの画像を思い出す。あれは麗奈ちゃんだったかもしれない。酒が進む。
「はい、帝都も最初はこんな感じで大きかったんですけど・・・」
徐々に赤い眼があの時のように光り出す。"これは・・・"と思うと、急に何かに付き合ってくれと言われる。
「ぇ?なにをだい?」
肩を掴まれ信じられない力でそのままベッドに押し倒される。
この体のどこにそんな力があるのか。ニコニコしているが眼の光がますます増してくる。
なんだかそれも楽しくなってきて、ケラケラ笑ってしまう。
ふと自分の乳首の周りに小さい点が現れる。
「なんだい?この小っちゃい点は。」
さきほどの窓からの風景を思い出し、口に出てしまう。
「これが人かぃ?なんにも感じないねぇ。」
ホントに何も感じない。昔吹き飛んだ思い出がよみがえり、どんな物かと触りたくなる。
自分の胸を小さい点と一緒に押す。
本当に何の感触もない。
この楽しい空間に入り込んだ異物だと思ってしまう。何かキーキーわめいているが邪魔だ。
そのまま、胸をもみしごいて、潰してしまう。
それでも指の感覚しかない。
「終わりかぃ?こんなんで楽しく成るのかい?麗奈ちゃん。」
これで満足しているのか、という思いと、さっきまで晩酌に付き合ってくれた麗奈ちゃんを喜ばせたくなる。
スパイの頃の経験でこういうのは得意だ。
久々に女を鳴かせてやろうと、その場所を刺激する。
「アァァァ・・・」
なんとも艶やかな声で鳴く麗奈ちゃん。やっぱりこの子はいい子だ。
何か私も興奮してくる。点では無くて、麗奈ちゃんにしてほしい。
そうすると小さい点を私の豆に出現させる麗奈ちゃん。何も感じないと思っているとそこに吸い付いて来る。
「ウゥゥン、結構いいじゃないかぁ。」
私も少し喘いでしまうが、この程度前戯だ。
探索が完了したもう一方の手を胸の方を攻めさせる。
「アァァァァァ・・・イイ・・」
良い声で鳴く麗奈ちゃん、私も興奮が高まってくる。
吸い付いていた口の中で豆を嘗め回された。
「ヴゥゥゥゥン、そこを攻めるのかいぃ?」
今のは少し来た。
胸で見えないが、その先に点を出現させたのだろうか、キーキーする声が聞こえてくる。
そこに胸を擦ってくる麗奈ちゃん。
「アァァァァ、イイワァ、そうよもっと頑張ってよぉ」
勝手に興奮し出す。胸が感じやすいのかとそっちを攻める事にする。
「そこがぁ、アウゥ、お留守なのかぃ?」
まだ豆を攻めてくる麗奈ちゃんの指にちょっと反応してしまう。
さっき点をすり潰した胸を少し咬んでやる。
「ア゛、ア゛ァァッァアァァ・・・」
激しくのけ反った麗奈ちゃんは逝った。
「"歴"がちがうんだよねぇ、麗奈ちゃ、ン!」
昔の経験を思い出し、この子に教えてあげる。それでも麗奈ちゃんは私に奉仕を続けてくれた。
何回も噴き出す麗奈ちゃん。

底なしなのかこの子はと思った時、何か違う事を言い出す。
「蒼さん・・実は絵里奈さんから蒼さんの事任せるって言われてるんです・・・。」
このまま小さくされてすり潰されると思った私は少し残念な気持ちに成った。
「そうですね、でも、逆も出来ちゃうんです。」
「ん~?逆かい?私も都市を滅ぼしちゃうのかねぇ。」
自分の防衛していた都市と先ほど見た光景を私と置き換えてみても現実味が沸かない。
何か急に変な物が体の芯から込み上げてくる。この楽しいに心が喜んでいると、自然と笑ってしまう。
また胸に小人を出現させる麗奈ちゃん。最後の在庫だという。
何か体の奥がゾクゾクしてくるが何も気持ちよく感じられない。
麗奈ちゃんの顔がその胸に近づいて来る。
ゾクゾクが体を支配し気持ちよく成ってくる。
「あぁぁ、なんだねぇこの感覚は。」
素で喘いでしまう。一体この子は何をしたんだ。
そのまま小人ごと胸を咥える麗奈ちゃん。
ゾクゾクゾク!と快感が押し寄せてくる。もうどうでも良く成ってくる、この快感がもっと欲しい。
乳首を小人と吸う麗奈ちゃん。同時に股間も指で攻めてくる。
ゾクゾクで体が爆発しそうになる。
「あ゛アァッァァ、いいねぇぇ」
背中が無意識に飛び上がる。
舌が乳首を嘗め回す。ゾクゾクがもう限界だ。
「そ・・・そう来るのかねぇェ。ア゛ァァァァァ・・」
そのまま逝ってしまった。なんて気持ち良いのか。
「蒼ねぇさん、どうだった?」光る紅色の目がこちらを見て聞いて来る。
こんな息が荒く成るまで逝ったのは初めてだ。
もっともっとしたく成る。
おねだりをしてみる。
「もう在庫無く成っちゃいました。」
「無いのかね!そんなぁ麗奈ちゃんんん」
此処で終わりなんて、なんてすごい子なんだ麗奈ちゃんはと思ってしまう。
惑星を破壊された時の事を思い出す。
"もっと怖がりなさいって言ってるでしょ、全然足りない、もう良いわ"
感情を求めていたのはこの感覚だったのかとこの時初めて体感した。

その後、その力について説明を聞きながら一緒にお風呂に入る。
「麗奈ちゃん、あのゾクゾクはなんなんだねぇ?」
「その、感情が読み取れるようになっちゃうんです。そしてやめられなくなります。」
「それで帝都みたいになっちゃうのかねぇ。」
「そうです。建物や小人の兵器自体も多少は感じるんですけど・・・たまに普通に感じるものあるんですけどね、やっぱり彼らの心が揺さぶる力が大きいと思います。」
「そうなんだねぇ、日常生活たいへんじゃないのかぃ?」
「まぁ、慣れますね!色々感じられて面白いですよ!最初は歩くだけで逝っちゃいそうになりますもん。」
そんな事を話していると、太陽が昇っていた。
「私はちょっと気持ちを落ち着かせます。」
そう言って布団に入る麗奈ちゃん。邪魔しては悪いと少し化粧をして1階へ向かうのだった。

エレベーターの中で"歩くだけで逝く"という言葉にあの画像を重ねてみる。
あのカメラマンがどれだけ恐怖したのかと思うと、なんだがまたゾクゾクが込み上げてくる。
私もやってみたいと、徐々に大きく成る街並みに少し残念な気持ちに成ってしまう、
エレベーターの扉が開く、待っていた客が固まっている。
邪魔なので少し当たりながら進むと固まったまま、扉が閉まった。そこらへんに居る虫の様な存在に感じる。
奇妙な連中がいるものだとカフェの方を見ると、見覚えのある光る頭が見えた。
広司が持って居る新聞に写真が乗っていた。荒野と化した街に彼女達の足跡だけが刻まれている。
「へぇ、派手にやってんだねぇ」
思わず声が出る。どれだけ気持ちいいのかと想像もできない。
一区画ぐらいもうやって良いんじゃないのかと思うが、流石に思いとどまる。
そのまま新聞を貰うと、ヒロの横に座った。
少し席が狭いがお互い様だ。なんだかこの窮屈感も普段と違い楽しい。
横で一心不乱に食らいついているヒロにそんなに美味しいのかと同じものを食べたくなる。寝ていないが朝はコーヒーだ。
「私にも横の奴の貰えるかなぁ、コーヒーでいいさぁ。」
若いウェイターに注文すると彼のドキドキとソワソワが伝わってくる。そのまま彼はコケた。
なんだかペットを見ている気持ちに成ってくる。
「王国の最終兵器かぁ、たいしたもんだねぇ」
見出しを見ると笑ってしまう、確かに最終兵器だ。
横でむさぼりついているヒロに声を掛ける。
「よく食うねぇ、ヒロ~」
止まってしまうヒロ少しのドキドキが感じられる。なにか嬉しかった。
料理を持ってくるウェイター、そのドキドキがさっきより大きく増している。
こちらをチラチラ見ながらサンドイッチとコーヒーを並べていた。
このペットを揶揄いたくなる。
「金とっちまうぞぉ。」
いたずらが楽しい。あのペットは恥ずかしさのあまり隠れてしまった。
株の変動相場を見て、次は共和国とかいうとこの株を買ったら大儲けできるな。
と楽しい時間を過ごしていた。
紗綾が降りてきて、帝都が無くなった事にショックを受けている。
彼女が住んでいた場所だ。何かブツブツ行っていると思ったら貯金を心配していた。
大損扱いた奴がここに居たのだ。

麗奈ちゃんと絵里奈が降りてくる。
その佇まいに周りの虫共が感嘆していた。
「昨日は激しかったからね。余韻が収まらなかったのよ。突然つぶされたくないでしょ?」
そんな事を広司に話している絵里奈。さっきの事を思い出して少しゾクゾクが沸いて来る。
麗奈ちゃんも同じ感触のようだ。手からポンポン出す札束を貰い買い物に行向かう。
この皆で行く買い物がすごく楽しみだ、

バザールまで歩いて向かう。
相変らず頭しか見えない流れる人が虫のように見えてくる。
これだけいるとウザったい。全て潰してしまいたくなる。
気持ちを抑え、歩いていく。
バザールは紗綾が私とヒロをエスコートしてくれるようだ。
他の3人と別れもっとゴミゴミした空間に入っていく。
イライラが抑えられなく成りそうになる。全て駆除したい、本当にそう思う。
ふと酒の文字が見えた。
「あぁ、あそこでお酒売ってるねぇ。ちょっとまってねぇ。」
同行者に伝え、周辺の邪魔な物をどけて歩く。酒が飲みたいのだ。

露天の酒商に付いた。何か色々あるがこの気持ちを抑えられればどうでもいい。
「一番大きい酒貰えるかねぇ」
とりあえず量だ!早く持ってこいと、札をカウンダーにダァン!と置く。
少し怯えた店主は奥から樽を転がしてくる。
重そうな酒樽を店の前に置く。
酒だ!とそのまま樽の上を手でかち割って、樽を掴む。
こんな軽い物にモタモタしていたのかと、店主に対してイライラが込み上げてくる。
ヒロと紗綾が近づいて来るのを感じる。周辺のと明らかに違う雰囲気に声を掛ける
「紗綾ぁ、すまないねぇ。どうも、昨日から酔えなくてねぇ。」
そうなのだ、あんだけ飲んだのに酔いが完全に冷めてしまったのだ。
あの満たされる感覚を求めて、出してきた酒をとりあえず飲む。
まだ足りない。
「もう一杯もらえるかぃ?」
ノロノロと持ってくる露天商にイライラしながら奪うようにしてそのまま飲む。
何も変わらない。少し樽が手の形に凹んでいた。なんて弱い素材を使っているんだとまたイライラしてくる。
自然と打ち鳴らすサンダルを見て店主がやっともう一個持ってきた。
遅い!途中で奪い取る。信じられない顔をしている3人の店主に飲みながら目をやる。
サンダルをカツン!と鳴らしてやる。
3人でしんどそうに持ってくる樽をまた奪い取る、今度は何も言わなくても持ってきたようだ。
そのまま奪い取り口に流し込む。しかし全く酔わない。
そこで店主に売り切れと言われた。
足に力が入ってしまうと、インターロックの床がビキビキと音を立て割ってしまった。

満足したかヒロに聞かれる。
全然満足していないが、彼らの笑顔が見れたので良しとしよう。
歩きながらヒロと惑星の酒の話を楽しんでいると、後ろで紗綾が悲鳴を上げた。
「キャッ!」恐怖に染まる紗綾の顔に、先ほどまでのイライラが頂点に達する。
その汚い何かをつまみ上げる。本当に人なのだろうか重さを感じない。
「あんたねぇ、私の連れにてぇ出すのかぃ?」
"大切な物”を汚された気がして初めて声を荒げて怒ったかもしれない。
此処でこのまま絞め殺してやろうかと思うが、まだ買い物は終わっていない。
横でヒロも怒ってくれていた。股間を濡らし漏らす男。もう一段と汚く成ったそれを、
警察官が欲しいという。どうでも良く成ったそれを地面に投げつける。
そのままズルズルと引きづっていってしまった。
雑踏の中そいつをまた見ると警察官に金を払ってどこかへ行ってしまった。
この国ごと駆除しなければ。と真剣に思う、いつ始めよう。麗奈ちゃんと絵里奈と相談しようと決めたのだった。

目的地の店に付いた、何やら大きいサイズの専門店だ。紗綾が私たち用に探してくれていたようだ。
外装がピンクで目立つ店だが、あまり人は居ないようだった。
中に入ると店主が声を掛けてくる。この男は私たちを見ても動じない。いい店員だと思った。
私からでも取りやすい位置に服が並んでいる。
とりあえずこの窮屈な感じをどうにかしたい。
「とりあえずねぇ、着れればいいのさぁ。」
店員に伝えると、見ただけでサイズが分かるのか、奥からあれやこれやと出してくる。
全部買って帰れば良いかと思いながら、置いては戻っていく店主に声を掛ける。
「服もいいんだけどさぁ、下着はないかねぇ。」
さっきからのイライラで特に敏感な部分がいう事を聞かない。まともに保護したくなる。
その男は何も言わず奥に行くとまた"ちゃんとした"サイズのランジェリーを出してくるのであった。
対応に満足した私。できるだけ買ってやりたくなる。横のヒロもご満悦の様だ。紗綾が選んだだけあって良い店だ。
当の本人はずっと上を見上げている。
一度どんな物か来てみたくなる。<<試着室>>と書かれた看板に無意識に足が向かう。
あの店主が運んで来た物を左手で全部掴んで中に入った。
なにやら外から聞こえてくるが気にしない。
とりあえず、今着ている物を脱ぐ。途中色々あったからか、解放感がすごい。
店主から受け取ったランジェリ-を試してみる。どれがヒロは好きかなぁ。と思いながら着心地が良い物を選ぶ。
このピンクのランジェリーは、かわいらしいが私に似合うのだろうか。なんだか恥ずかしく成ってきた。
下着が決まれば服を選びたくなる。もう自分の空間だと思ったこの店。着ていた服は下着の山に埋もれ探すのが面倒だ。
そのままサンダルを履いて外に出る。ヒロと店主の反応は上々のようだ。そのまま掛けてある服を探す。ちょっと露出が多い方がヒロは喜びそうだと
胸元のがっつり開いたカーディガンをそのまま羽織る。特注の軍服のように違和感は無い。
一緒に重ね掛けしていたズボンを取りそのまま履く。布切れのようなローラーイズパンツだが、鏡を見て良いじゃないかと納得する。
ヒロがお金を払っているようだ。
"蒼ねぇさん、ちょっとアクシデントだから、先に船に帰ってるね。"
青く光る空から響いてきた時と同じ感覚だ。だが声の主は麗奈ちゃんだった。
何かあったのだろうか。とりあえずそこら辺の服をガッっと纏めて取ると、レジカウンターに置いてやる。
店員がアワアワしている。なんだ可愛いじゃないかこいつ。と少し嬉しくなる。
少し暗くなってきている窓に私の紫の目の光が反射して居た。
「なんかあったみたいだねぇ」
そう言うと、紗綾とヒロを保護するように船に戻るのだった。

最初の転移だが上手くいった。失敗する感じが全くなかった。
これがあの"力"か先ほどからゾクゾクが込み上げてくる。
膝の横にはヒロと紗綾が居る。私が浮かせているのだ。息をするようにできる。
その下には、私のサンダルより一回り小さい金色と銀色のあのパンプスが並んでいた。
小さい点が一杯くっ付いている。その点を見つめるとゾクゾクが増してくる。
あぁ、これがあの快感か、もう少し欲しい。
「へぇ、これが小人かい?」
新しい主の登場を奴らに教えてやる。やはり恐怖しているのか、あの感覚が奴らから感じる。
だがすぐに収まるその感覚。慣れてしまっているのかすぐに焦りの感覚だけが伝わってくる。
足元を見ると小さな点がここから離れようとわずかに動いていた。
"それではダメだ"とこいつらに教えてやらなければと足を振り上げる。
それだけでまたゾクゾクが返ってくる。なんて気持ちいいんだ。
点が集まっている地点に紫色のサンダルを置いてやる。
カツン!軽快な音を鳴らし地面に着地するサンダル。
その音が成ると、何倍ものゾクゾクが返ってくる。もっと欲しい。もっと欲しい。
小さな点が吹っ飛んでいるがこいつらからはもう何も感じられない。
「根性だしなぁ、ほら逃げなよぉ。」
さぁ怖がれもっとゾクゾクを私にくれ。
カツン!カツン!と成る音に伴って奴らの焦りの感覚にゾクゾクが上塗りされていく。
"いいぞ、もっと怖がれ!"
「ハハァ!こりゃいいねぇ!」
少し力を売れてもっと教えてやる。
カツゥン!玄関がその音で震えた。関係の無い所からもゾクゾクが集まってくる。
もうこいつら全部にわからせてやなないと!
「蒼ねぇさん、遊んでないでこっちきてよ」
「麗奈ちゃん、わかったよ。仕方ないねぇ。」
麗奈ちゃんは焦らしの天才のようだ。
サンダルのバックルに手を伸ばす。
それだけでまたゾクゾクが奴らから帰ってくる。
乱暴にサンダルを脱いでやる。倒れる紫のサンダル。その周辺の小人が怖がっている。
これだけで良い反応をしやがる。思わず口元が緩む。
もう一方も脱いで点の上に脱ぎ捨ててやる。良い反応だ・・。
綺麗に揃って並んでいる金と銀のパンプスを見て自分の行動が恥ずかしくなってきた。
でも私が直すのはおかしいんじゃないかと思う。
「ちゃんと並べてきれいにしておくんだよ!」
こいつらにやらせることにした。

廊下に歩みを進める。この船は私が存在するだけでゾクゾクを返してくれる。
"やっぱ人間やめてたんだなあいつ"ヒロが私に言ってきているようだ。
「なんだぁ?あんたもつぶされてぇのかい?」
思わず笑顔でそう答えてしまう。
"かんべんしてくだせぇやぁ"
少し怯えたような声。しかし床下のこいつらと違って、その声を聞くと気持ちが穏やかになる。
最近酔えないが、この気持ちが酔いの変わりを満たしてくれた。

リビングに入ると絵里奈と麗奈ちゃんが仲良くソファーに座っていた。
スネ当たりの高さにある机の上にポツンと小さい箱があった。
その前に、広司と知らない女の子が立っている。そこに向けて紗綾とヒロを降ろしてやる。
私は空いている逆側のソファーに座った。この空いている感覚が何か寂しい。

何故急に帰る事に成ったのかを訪ねる。
そこの女の子を広司が拾っただのなんだの、ワイワイ話している。
思わず私も笑ってしまう。
まだ"会って"数分だが、この女の子も大切な物の中に含まれているようだ。
名前が無い等不思議な子だったが、床下の小人の様な感じは無い。少し怖がっている程度だ。
ヒロも怯えているのがなんだか楽しい。
今もソファーの下からあいつらは私を見て怯えている。隠れていても存在が分かる。
絵里奈がもう明日にしようと言う。このままソファーで寝るかと、ソファー下の存在をどうしてやろうかと考えていると
絵里奈に手を引っ張られる。
「今日は絵里奈ちゃんが相手してくれるのかぃ?元祖はどんなんだろうねぇ」
昨日麗奈ちゃんに焦らされたままだ、その続きをさせてくれるようだ。思わず笑顔になってしまう。
「負けないわよ!このおっぱいお化け!」
あの青い光る眼に成った彼女がこちらを見上げながら言ってくる。形成逆転だ。
しかしあの時とは違い、彼女も笑っていた。

リビングの横にある寝室に入ると外の景色が見えた。本当に宇宙に居るんだと実感させられる。
そして両壁のクローゼットからはおびただしい数の存在を感じる。
「ねぇ、蒼はどこまで感覚を感じるの?」
「そうだねぇ、ここは一杯いるのはわかるねぇ。」
「そうなんだ、もう存在の感知はできるんだ。彼らの感情は入ってくるの?」
「ゾクゾクした何かを感じるねぇ。あれは良いねぇ。」
「そうなんだ!じゃぁ今日は楽しめるね!」
そういうってまたベッドに押し倒される。
この子達は少し積極的すぎないだろうか。そしてゲームのように勝ち負けを決めてくる。
今から楽しみすぎて、今までに無く胸が高鳴っている自分もあまり変わらないなと心の中で笑う。
ギンギンに発光した青い眼は、あの夜を思い出させる。
あの日、私の惑星では彼女を満足させられなかった。今日は徹底的に満足させてやろうと心に決めるのだった。

接吻から始まったそれは熾烈を極める。
絵里奈は今まで侵略してきた惑星のあらゆる物を使ってくるのだ。
建物、戦艦、宇宙コロニー、そして無限と思われる小人。
怖がらせ方もよく知っている。彼女が何かする度、ゾクゾクがすごい勢いで入ってくる。
彼女は小人を使ったそれの"歴"が長い。意識が何回もぶっ飛びそうになる。
しかし私も"歴"はあるのだ。道具は向こうさんの提供だが、若い彼女に負けていられない。
私たちの行為が声が、船を破壊せんばかりの戦いは数時間と続くのだった。

流石に疲れてくる頃合いに成ると、涎を垂らして満足そうに寝ている絵里奈が下に成っていた。
女の私でも少しドキッっとしてしまう。美の化身だ。
ベッドはもみくちゃで、何故が床や壁におびただしい数の赤い染みが見て取れる。
その白い綺麗な肌にもいくつもの残骸や、赤い染みが存在してる。
部屋の存在がほぼ無くなっていた。
床に落ちているピンクのショーツとブラジャーを小さな点が引っ張っていた。
数が少ないのか全く動く気配がない。"それはお前達にの為に買ったのではないのだ"
そのまま拾ってその点を踏みつぶした。
少し体の汚れが気になる。そう思うと手にバスタオルが握られていた。
そのまま脱衣所と書かれたドアを明け、少し体を拭く。横の風呂場からわずかにお湯の香りがする。
このまま入るとこのピンクのランジェリーを買った意味がない気がして、居ないだろうがヒロを見に行くことにした。

昨日と違い少し乱雑なリビング小物が倒れ、落ちている。
そしてやはり存在は少なく成っていた。何も感じなくなったソファーの下を少し残念に思いながら腰掛ける。
そこに何かをしているヒロが居た。
集中してみると腕立てをしているようだ。毎朝木刀を振っていた事を思い出す。
「朝から律儀だねぇ。」
ヒロに声を掛ける、こんな状況でも日課を続ける彼はやはり偉い。
ふと乱雑に成った周りを見て、ちゃんと寝れたか気になる。
「よく眠れたかねぇ。ちょっと激しかったもんで、心配になっちまうよ。」
先ほどの事を思い出す。対戦相手は夢見心地のようで起きてくる気配は無い。
「おう、よく眠れたぜ、大変だったな。」
此方を向いてねぎらってくれる。いい男だ。
「そうだねぇ、久々に本気になっちゃたさ。」
少し雑談をしていると、彼の日課を邪魔している事に気づく。
少し申し訳なくなり、続けるように促す。
「訓練はいいのかぃ?邪魔しちゃったかねぇ?」
ずっと話していたからか喉が渇いて来た気がする。すると手にペットボトルが現れる。
それを呑むが前のように満たされたりはしない。
ヒロは見ていても面白くないと言ってくる。私は見ているだけで楽しい。その場で空間を共有させてもらう事にする。
あの大きな体を支える筋肉が動く様子が見て取れる。わざと負荷をかける為にゆっくりやっているようだ。
若干の汗があの頭をより光らせる。
指で押せば潰れるような存在が必死に成って鍛えている姿が愛おしくなってくる。また初めての感情を手に入れた。
しばらく楽しく見ているとヒロが話しかけてくる。
「ここよ、負荷がかかるもんが無くてなんかねぇかな。」
その自重だけでは足りない様だ。周りを見渡すが、何かの反動で彼を潰しかねない。
少し考えた結果、私の指を使ってもらうのはどうか、と提案する。
先ほど少し拭いておいて良かったと思いながら指を彼の前に出す。
指よりも小さい彼は爪を必死で持ち上げようとしている。
指は何も感じないが、その気迫だけは感じられる。彼は何をやるのにも必死だ。
ふと嫌な感じがする。ヒロの気迫が一段と上がる。反射的に指をどかせた。
「それ以上やると筋痛めるねぇ。」
その愛おしい物が壊れてしまう恐怖に駆られる。大丈夫だろうかと心配に成ってくる。
「おう、流石だ、びくともしねぇな!」
汗だくで笑顔を向けてくる彼。また彼の訓練の邪魔をしてしまったようだ。
何か別の物は無いかと、考える、私のパーツでは彼を壊してしまいそうだ。
ふと昔の昇降訓練を思い出した。
先ほど小人を踏みつけた足と違う方の足を彼の前に慎重に置く。
少しはしたない恰好になるが、彼の前ではなんとも思わない。
「昇り切れるかねぇ。」少し面白くなって発破を掛ける。
よく見たくて顔を近づけたいが、息が邪魔をするとイケないと思いその足に肘を付いて顔を手に載せて、見守る事にする。
愛らしい彼が私の足の裏を昇っていく。あまり感触は無いが、確かにそこに居るのだけは感じる。
数分経っただろうか、幸せな時間が過ぎる。
彼が私の足を昇り切った。
「どうだぁぁ!昇り切ったぞぉぉ!」
その愛おしい彼が喜んでいる。私も嬉しくなる。
「流石だねぇ、ヒロ、さっき別のでやらせたら一匹もできなかったさ。」
喜ばせたく成り嘘をついてしまう。でも彼が喜んでくれるならそれでよかった。
幸せな時間だ、彼ばかりにうごいてもらっている。何か返せる物は無いかと考える。
邪魔なだけだと思っていた胸を彼が何度も見ていた事を思い出す。
汗が光る彼。私も、丁度風呂に入りたかった。ある事を思いつく。
彼を爪乗せる。少し疲れているのではないのかと、声を掛けると彼は元気に挨拶をしてくれた。

脱衣所に向かう。途中床に居る小人が見えたが、"この幸せを邪魔するな"とわざと潰してしまう。
ゾクソクは来ず、ただ邪魔だという感覚に支配される。
中に入り、潰してしまう可能を考え一度彼を洗面台に置く。こんなに大切にした事は初めてだ。
再び彼を大事に運ぶと浴槽に入る。

始めて入ったが大きい風呂だ。久々で嬉しくなる。
マナー違反だが彼を守るためだ仕方ない。少し汚れた体でそのまま湯舟に入る事にする。
淵に何故か大量の小人が並んでいる。また邪魔をしてくる。視界に入るなと思ってしまう。
足で乱暴にそいつらを退ける。赤く滲むその姿に、何をやっても邪魔だと若干イライラしてくる。
そのイライラを打ち消すように湯船に入る。彼が怖くないように慎重にだ。
丁度いい温度の湯舟は、体の疲れをほぐしてくれる。
一度胸まで沈めると、やはりできた。何度も見た事のある谷間にお湯が張っていた。
彼を再び見る。目の前まで近づけてみても怖がってはいないようだ。
良い体つきをしている。がっしりとした体格に隆々とした筋肉がまとわりついている。
その顔はスキンヘッドにもじゃもじゃ髭。目は切れ目でどこかの悪人のようだ。
だが私は、彼が優しくて、実直で、怖がりな一面を見て来た。
すごく愛らしいこの気持ちは大切にしたい。
「やっぱり、良い体してるねぇ。」
思わず口に出てしまう。その体はどんな物か、自然と舌ズリをしてしまう。
また彼に与えられてしまった。そうじゃないと目的を思い出す。

「到着だねぇ、小人様さん、さ。」
指を胸に降ろし、少しおどけて、そのまま彼を案内する。
小さな彼が私の胸に上陸する。
波立つ湯舟は彼を飲み込んでしまいそうだが、私の胸元は穏やかだ。
胸が大きくて良かったと初めて思う。また初めてが増えた。
「そのまま前進だねぇ。」
どこに向かったらいいのかわからず周りを見渡している彼に行先を案内してあげる。
ゆっくり着実に移動する彼がまた愛おしくなる。
「どのくらい行くんだよ!」
その小さい体からは目的地が見えないのか聞いて来る。
「もうちょっとだねぇ、私の足に勝った男はそんなもんなのかねぇ。」
頑張れと発破を掛ける。彼はやり遂げる男だ。
胸元に来ると、少し止まる彼。やはり見えていなかったのか私の胸元の水たまりを見て少しびっくりしている。
「そうさねぇ、ご褒美さ。蒼風呂たのしんでさ。」
おどけて、入るように促す。恥ずかしい気持ちに成ってくる。
そこに入った彼は楽しんでくれているようだ。

さっきから耳元でキーキーやかましい、私の髪へ小人が近づいてきている。
こんな時まで邪魔するのかと、思わず腕でひっぱたく。
その赤い染みを見て、他の小人が逃げていく。
少しゾクソクがしてくるが、この幸せには勝てない。
再び彼と私の時間が続く。体も包まれ気持ちいい。
"こんな時間がずっと続けばいいなぁ"と幸せな時間を過ごすのだった。

どれくらい経っただろうか、朝だった事を思い出す。
皆が待っているといけないと思い、彼を掬い一度浴槽を出る。
さっきの腕の威嚇が効いたのか近くに小人は居なかった。
きちんと体と髪を洗うため、一度彼を洗面台に置いて、体を洗いに行く。
その間も機嫌はよく、目の前で慌てふためく小人を見逃してやるのだった。

すっきりした体で、風呂場を出て、洗面台に向かう。
そこには何故か囲まれたヒロが居た。
左腕がダランとしている彼、周りの小人は手に武器を持って居る。
洗面台の底には小人が何人か貯まっていた。

初めての大きな怒りを感じた。
意識を集中し、ヒロの保護膜を可能な限り厚くして、その周辺の害虫を駆除する。
ばちぃぃぃん!小さな害虫がそこらへんに飛び散る。
一匹も許してやるつもりはない、何度も何度も手を叩きつけて害虫を駆除する、
自然と息が荒くなる。洗面台が割れてしまっていた。
「絶滅させてやるからね。覚えときな。」
この部屋の存在を全て潰してやると怒りが収まらなかった。
彼の左腕も壊れてしまっている事を思い出し、治癒するよう意識を向ける。
彼を治すその不思議な"力"に感謝するのだった。
心配に成り洗面台に居る彼を見て謝る。
元気に成ったのか、"大切な人"は冗談を言いながら腕を回していた。
「体中ズタボロだったのに、よく言うねぇ。」
心配が口に出てしまうが彼の明るい声を聞いて心にあの感覚が戻ってくる。
「でもまた汗掻いちまったや、何ラウンドしたんだ俺。」
汗だくな彼を見て、再び浴槽で幸せな時間を過ごすのだった。
心に最後のピースがハマった。

もう一度洗面台に戻り"大切な人"を失わないように手の届く範囲に居てもらう。
この空間に居る小人共に解らせるようにわざと大きな音を立てて椅子に座る。
ついでに壊してしまった洗面台を綺麗にする。この力はなんでもできる。
麗奈ちゃんに教えてもらった力の使い方で髪の毛を整え、そこにある高そうな化粧類を使い軽く顔を整える。
ヒロを乗せ再びリビングに戻ってくる。
その小さな箱の前に彼を降ろす。
そのままソファーに座ると朝彼に出会った時の風景に戻る。
しかし心は満たされていた。
ふと彼は満足したのだろうかと不安に成ってくる。
聞いてみると、冗談を交えて楽しかったと答えてくる。
途中のアクシデントさえ無ければと本当に思う。あの小人共をどのように殲滅してやろうかと頭が支配されていくとき、
「気にしてないぜ!助けてくれたじゃねぇか。ちょっと好きになりそうだぜ。」
大切な人に好きと言われた。ハマったピースがあふれ出し心が膨らんで弾けそうになる。
「私もヒロ好きだねぇ。」
自然と出てしまった。顔が熱く成ってくる、恥ずかしく成りヒロの顔を見れない。
少しの時間が流れいたたまれなく成った私は口が恋しく成り、昔食べていたプロテインバーを手に出現させる。
それを食べ平静を装う。
「なに食ってるんだよ、俺にもくれよ。」
彼が欲しいと言っている。そのまま差し出した。
「そのままじゃ食えねぇよ、小さいのくれよ」
ドキドキしていてそんな事も忘れていた。
唇に付く違和感をぬぐって彼にあげる。
「ありがてぇ、腹減ってたんだよ!」
彼が両手に食べカスを持って礼を言ってくる。あぁまだ幸せな時間だ。
でも皆もうすぐ起きてくる。
ふと自分が自然と裸なのを思い出す。身支度をしなければ、昨日買った服がまだ空間に在った事を思い出し、
彼の服を転移させてあげる。
喜んでくれた彼に名残惜しい気持ちで身支度にいこうとする。
腹を満たすために出現させた訳では無い小サイズのプロテインバーを口にほおりこみ、最後にもう一度彼と約束をする。
「また二人で遊ぼうねぇ。ヒロ」
また顔が赤くなってしまいそのまま部屋の外に出た。

そとに出たはいい物の、絵里奈はまだ起きてこない。
その<<絵里奈>>と書かれた部屋の前には麗奈の部屋がある。
見慣れない廊下がその奥まで続いている。そこに自分の名前が書かれた扉があった。
部屋に入る。突然宇宙空間なんてことは無く、絵里奈と同じ間取りの部屋だ。
ただ小人の存在は一切感じない。新しい雰囲気の部屋にちょっと嬉しくなる。
今日は朝から嬉しいが続いている。
気分よく昨日買った服をクローゼットに転移する。
気分が良いので派手目の恰好で行こう!と服を漁る。
ふとスパイ時代に同僚が網タイツで誘惑し落としていたのを思い出す。
あの店員はやはり出来る様だ。中に黒いタイツがあった。それに似合う何かと
胸の下までのチューブトップのシャツに、短い皮のパンツを選ぶ。
ヒロが履いていた皮のパンツ同じような色だ。なんだか嬉しくなる。
ウエストが丸見えだが今日は気分がいいのでこのままの恰好で部屋を出る。

リビングに戻ると麗奈がソファーに座って楽しそうに彼らと話していた。
私も逆側のソファーに座り談笑の輪に入る。
光る頭と怯えている女の子が少し気に成った。

少しして絵里奈が部屋に入ってくる。
あの涎を垂らした顔はどこへやら、いつもの綺麗な絵里奈様が居た。
挨拶を済ませ、麗奈の横に座る絵里奈。
二人は同じような背丈で姉妹の様だ。実際かなり仲良しな様子でお話をしている。
「昨日は、激しくて、店がまだちゃんとあって良かったわ。」
彼女も激しいという認識があったようだ。笑顔でこちらを見てくる彼女に笑顔で返す。
「それでね、昨日から入ったその子なんだけど。流石に名前をつけてあげようと思うの。」
指名された女の子は怯えてヒロの陰に隠れてしまったようだ。
その指先にも満たない小さな家をかこむ巨大な脚が6本。空を覆うのような顔が彼らを見下ろしている風景を思い浮かべる。
絵里奈がソファから立つと、そのソファーをすこし尻で退けながら女の子座りをして顔をテーブルに合わせる。
なるほど、そうすれば目線が合うじゃないか、と私も同じようにする。
怯える小人の感覚がうざったい。
絵里奈と麗奈の顔が目の前にある。
その顔と比べると小さな小さな紗綾の店。私の新しい物語が始まった所だ。
絵里奈が女の子の名前を決めようと提案する。
広司がカグヤという名前を出した。
竹取物語か、と他の皆も知っている事に少しびっくりするが、麗奈は知らない様だ。
カグヤは真ん中に出てきて自分の名前を言いながら回って喜んでいる。
幸せな空間だ。その前にドン!と絵里奈の指が差し出される。
麗奈も同じように差し出すので私も出す。
余計その店が小さく見えるが、カグヤは物応じせず、各指にタッチして回る。
「よろしくねぇ、カグヤちゃん。」
"新しい仲間”が増えた。
彼らをホテルに飛ばし、靴を履きに行く。
相変らず遅い作業に絵里奈が苛立っている。
「ほんと、とろくさいわねぇ。」
昨日夜中大地震を起こしていた本人が小人を罵っていた。
そのまま金色のパンプスに足を通して小人を払い、カツン!と一発踏みつけるとそのまま消えていった。
「次出来てなかったら、皆さん潰しますね。」
そういうって銀色のパンプスを履く彼女。脚を振るうとそのまま踏みにじる。
ズリズリいう音が聞こえる。最後にあげたヒールをカツン!と鳴らす。
ゾクゾクが少し感じられる。しかし昨日ほどではない。"慣れる"とはのこの事だろうか。
「蒼ねぇさん行きましょう!」
麗奈がこちらを向いて言ってくる。
「そうだねぇ、皆待たせちゃ悪いしねぇ」
綺麗に並んでいる紫のサンダルに足を通す。
ゾクゾクが襲ってくるが、皆が待っているのだ。
「麗奈ちゃんは絵里奈と靴のサイズが一緒でいいねぇ。」
足を振るいながら話す。
「蒼ねぇさんもサイズ変えればいいじゃないですか。」
「ぁ・・・・そうだねぇ、麗奈ちゃん頭いいねぇ」
カツン!と鳴るサンダルで周りの点が吹き飛ぶ。
しかしそうか、サイズを変えれば良いんだと初めてこの時気付いた。


ホテルの客室の前に転移する、待っていた5人は楽しそうに廊下ではしゃいでいた。
エレベータに乗りロビーを目指す。
カグヤちゃんは相変わらずご満悦のようで皆に自分の名前を教えてピョンピョンしていた。

フロントで何やら話をしている絵里奈と広司。
何故か知らないが晩餐会に招待されたようだ。正確には招集された。
勝手な国だと、警察官を思い出す。あまり政治はうまくいっていない様だ。
事前に受付に来いと書かれたその紙を見ていると、絵里奈と麗奈と広司で行くと言っている。
私とヒロはカグヤちゃんの護衛でショッピングモールへ向かう事に成る。
相変らず紗綾のエスコートだ。
黒塗りのセダンに乗り込む3人を見送った後、
ホテルの従業員がリムジンを回してくる。また腰を下げたままのドアマン。彼の顔は見ることが無さそうだ。

ヒロの運転でショッピングモールへ向かう。相変わらず続く高くても10階程度の雑居ビル群。そんな風景を見ながら時間が過ぎる。
カグヤと紗綾は楽しそうに会話をしていた。
ふと酒が追加されている事に気づくと、そのまま手に持って、また片手で開けてしまう。
今日は茶化す人物は居ない。なんだかさみしい。
そのまま口に付ける。
「いいねぇ、蒼様は晩酌かい?」
前の運転席からバックミラーを見て茶化すヒロ。
「あんたも飲むかい?」
「俺は運転中だ、色々めんどくさいだろ」
そういって前を見てしまうヒロ。
「ねぇ蒼さんそのお酒ってのは美味しいんです?」
「そうだねぇ、旨いねぇ。」
「美味しいんですか、カグヤにもくださいです。」
「ダメだねぇ、若くして飲んじゃうとこう成らないよ。」
胸を揺らしながら笑って答えてあげる。
「そうなのですか、残念です。今日の蒼さん綺麗です!」
「うれしいねぇ、カグヤちゃんも綺麗だよ。」
「網タイツですか、蒼さん脚も長いので目立ちますね!」
「紗綾も履けばいいじゃないかぁ。広司が振り返るかもよぉ。」
ケラケラ笑いながら話すと、紗綾が少し顔を赤くしていた。
「紗綾さん、顔真っ赤ですぅ!」
その様子を見て更に茶化すカグヤ
「もう!蒼さん!」
怒る顔がまんざらでもなさそうだった。

平べったい建物が見えてその中に入る。
立体駐車場を上がっていくと、その途中の<<一般/大型>>と書かれたエリアにリムジンを止める。
バスなどで来ている小人はそのリムジンを何者かと見ていた。
ヒロが運転席から出てくる。大柄のイカツイ男に周囲が見てはいけないと視線を外した。
「威力抜群だねぇ、鍛冶屋さんはさ。」
「鍛冶屋じゃねぇやい!」
ケラケラ皆で笑いながら中に入っていくのだった。
吹き抜けに成った店内5階まであるのがよくわかる。
そこら中に人が歩いていた。
「まずは一階のエリアから攻めましょうか。」
そう言うとカグヤの手を取り歩き出す紗綾。コツコツとヒールを鳴らしながら群衆に向かって行く。
不思議と群衆の中でも彼女達が分かるように成っていた。
その後を歩くヒロの周りには人が寄り付かず、すぐに空間が出来。追い付いて行った。
私もいくか、と思い歩みを進めようとすると、太ももの当たりに何かが触れる。若い男がにやけた顔でさすっていた。
頭を掴みそのまま少し吊り上げる。ばたつく男を少し離れた場所に置くとどこかへ逃げ去っていった。
「まだ、はじまってすら居ないんだがねぇ。」
少し先が思いやられる。楽しそうなカグヤの顔を思い出し我慢する事にした。

そのままコツコツと4人で歩く。やはりヒロと私は目立つ。
でも何か二人の空間があり嬉しくなる。
ブランドの名前だろうか、店の上には名前が書いてあり。各店に着飾ったマネキンとその服を着た従業員が客引きをしている。
店に入る度に、ヒロと私を見て固まる店員活動を開始しだすと。抱えきれない服を持ってくるカグヤと紗綾にまた店員が固まるのだった。
私はどうしても服の縮尺がおかしくてイメージが沸かない。さっき麗奈に言われた言葉は理解しているつもりだが、あのバザールの店を思い出してしまう。
横の店横の店と進んでいく内に紙袋で埋もれていくヒロの腕。
「ちょっと貸しなぁ。」
と服奪い取り空間に入れて行く。
「ありがたいぜぇ。」
と笑顔で返してくるヒロだった。

そうこうしている内に半分の3階まで来る。
何度触られたか解らない脚と尻にこのまま店ごと踏みつぶしてやろうかと思えてくる。
「お昼食べませんか?」
「飯か!そうだな!飯だな!」
「ご飯です~。ご飯です~。」
と騒ぐ皆。
「蒼さん、お腹空いてないですか?」
「あぁちょっと飲みすぎたみたいだねぇ。」
此方を見て聞いて来る紗綾にケラケラ笑いながら答える私だった。
フードコート式の食堂にはお昼時なのか多くの人が居た。
ぎらつく目で席を漁るヒロにソファー席の人が思わず席を開ける。
「サンキューな!」
ヒロが言うが、その目線の先にその人たちは居なかった。
仲良くオムライスを食べる紗綾とカグヤ。
私は結局居酒屋風の魚介店で干物と日本酒をピッチャーで貰う。
「蒼さん、まだ飲むんですね。」
「あぁ、最近酔えなくてねぇ。困ったもんさ。」
そう言うと日本酒も無くなってしまった。
コツコツ歩いて先ほどの店に行く。
「また貰えるかねぇ?」
ピッチャーを差し出すと、店員にびっくりされる。
「姉ちゃん!よく飲むねぇ。樽有るけど要るかい?」
奥から現れた見るからにノンベェな大将。樽を回しながらこちらにやってくる。
店員に札を渡す。
「毎度ぉ!」
そう言われて出て来た樽を片手で持って席に戻るのだった。
周りからヒソヒソ言われているが気にしない。どうでも良い奴らだ。

席に戻ると周りの人は掃けて、空間ができていた。
6kgほどの肉塊にかぶりつく大男。
「ヒロさん、すごぉぉいです!」
と目の前で喜んでいるカグヤ。
口をあんぐり開けて固まっている紗綾。
その中に入っていく私。
「相変わらず、よく食うねぇ。」とドン!と酒樽を横の机に置くと、壊れてしまった。
「お前には、負けるわ・・」髭を肉汁で汚しているヒロに言われるのであった。

酔いは回らないが楽しい空間を過ごした後、残りの店を片付ける。
途中服材店などで大量に買い付け、一人工事現場のように成っているヒロ。
重そうなロールなどを、後ろから全部さらって持ってやるとびっくりした顔でこちらを見てくるのだった。
最後の階でアクセサリーショップに入る。
「珍しい、共和国のお店ですねここ。」
「共和国の店て珍しいのかい?」
「えぇ、なんせ戦争中なので、共和国は金が有名なんですが王国にあるとは思いませんでした。」
他の金製品と違う、大きな紫のオパールのネックレスに目を引かれる。
「共和国は宝石も豊富なんですよ!」こっちを見てか補足説明してくる紗綾。
「きれいです。」
「おまえ、欲しいのかよ。」
そう言うと店員が白い手袋でそのネックレスを出してくる。
金のチェーンを開けて「どうぞ」と言ってくる。
ヒロが私に掛けてくれるが大柄な私にはやはり窮屈だ。
店員も少し困った顔をしている。
「私がチェーン作りますよ!」
そういうや否や、
「これくれ!」
ズボンの中からくしゃくしゃに成った札束を出すヒロ。
店員はそれを数える。
「お客様申し訳ありませんが、あと2万ほど足りません。」
なんともカッコ付かないヒロに私の手持ちから2枚出して買って帰るのだった。
「次は指輪ですね、ヒロさん」前でごつい腕をつつかれているヒロは少し背中が丸まっていた。

全ての店を回り終わり、人目のつかない場所で全部の商品を入れる。
ヒロが買ってくれたネックレスだけは自分の胸元に仕舞っておいた。なんだかんだ嬉しかった。
そのまま一階に降り、反対側のリムジンまで向かう。
「でけぇなぁこのショッピングモール」
「100mぐらいあるみたいですよ!」
「私の足よりちょっと大きいぐらいかねぇ」
そう言うと2人の足が止まる。
「蒼さん、おおきいです!」
カグヤちゃんだけがはしゃいでいた。

コツコツ歩いているがやはりまだ触ってくる手は絶えない、いい加減我慢しきれなく成ってくる。
ふいに目の前に突っ込んでくる輩が居た。
「すいません。」とニヤニヤした顔で見上げてくる。
思わず足で蹴り飛ばしてしまう。
パリィン!
男はショーウィンドウを突き破りマネキンを吹き飛ばしていた。
「どういたしましたか。お客様。」
警備員が走ってくる。そのまま太ももに触れる。
「やかましぃねぇ。」
その警備員も怒りに任せ蹴り飛ばす。
周辺の客と一緒に別のショーウィンドウに入っていった。
「あんたら、なんなんだね、ペタペタペタ触ってきてさぁ。」
追加の警備員が抑えに来るが、3人まとめて蹴り飛ばしてやる。エスカレーターまで吹っ飛んで行った3人。エスカレーターが揺れて止まる。
警棒を振り回しながらやってくる10人ほどの警備員。もう害虫にしか思えない。
手の届く範囲にきた警備員を片手で掴み投げ飛ばす。
2階のショーウィンドウが割れる音がする。
怒り任せに振り上げたサンダルを地面に付けると、地面が陥没していた。
それを見た残りの警備員が逃げ出す。
「逃げるんじゃぁ、ないねぇ」
通路にあったソファーを片手で持ち上げ投げつける。
固定したボルトが破断していた。
「蒼さん、すごいです!」何故か喜んでいるカグヤに
顔を覆い隠すヒロと紗綾。
「こいつらが悪いんだねぇ。」
そのままコツコツと車に向かうのであった。

車に戻り、そのままホテルへ向かう。
ショッピングモールでの思い出話に花を咲かせながら、車を走らせる。
「警察は追ってきてないぜ。」
「見えたら教えてさ、踏みつぶしてしてやるよ。」
ケラケラ笑いながら車中の酒を楽しむのだった。

ホテルに戻るがまだあの3人は帰ってきていない様だ。
お気に入りに成ったカフェへ向かう。
あの席に座り、ゆっくりした時間を過ごしていた。
注文を取りに来るウェイターは相変わらず扱けたり逃げたりと騒がしい。
一番強い酒をくれと言うと、瓶で75%と書いた酒を渡してくる。
もう有名人な彼女は、なんの違和感も無くその酒をラッパ飲みするのだった。
カグヤちゃんが相変らず楽しそうにしている。
なんだかんだで楽しい時間だった。

3人が戻ってくる。
カグヤちゃんが、麗奈と絵里奈に向かって走っていく。
なにやら楽しそうに話していた。
「さすが、蒼ねぇさんですね。」
「まぁねぇ、どこも一緒だねぇ。」
麗奈に聞かれて、そのまま答えた。

結局私は晩餐会に行くようだ。
去り際に紗綾が私の足のサイズを測って帰る。
新しい靴を作ってくれるようだ。楽しみが増えた。

紗綾が仕立ててくれた紫のドレスを部屋で着る。
麗奈と見せ合いながら部屋を出ると、絵里奈に会った。
麗奈も絵里奈も綺麗な姿で、流石紗綾だと思う。
エレベータで居り、ロビーに向かうと相変わらず小人共はこっちを見ている。

無視してそのままリムジンに乗り込んで王宮とやらに向かう。
結局酒に手を伸ばす私。
「最近酔えないんだよねぇ。」
そう愚痴をこぼすと絵里奈が言ってくる。
「貴方もうお酒に酔う事は無いわよ。」
なにやら、寝なくても良いし、食べなくても良いようだ。毒も効かないという。
「蒼ねぇさん。ごめんなさい、何も言ってなかった。」
少し暗い顔をして謝る麗奈。
「今度は毒でも飲んでみるかねぇ。」
ケラケラ笑いながら言ってみると、顔がいつもの笑顔に戻る。
やっぱりこの仲間は良い。

高速道路を降りると車が止まる。
なにやら検問渋滞しているようだ。
麗奈と絵里奈が渋滞している車を蹴り飛ばす話をしだす。
なんでも手早いと思い笑ってその話を聞いていた。
私も練習してみるが、どうも力加減が分からない。繊細な作業は彼女達に任せようと思う。
しかし長い、どれだけ待たせるんだと私もイライラしてくる。
麗奈ちゃんの吹き飛ばし方を実際にやってやろうかと思って居た時。
前から拡声器で兵士が何やら叫んでいる。
「3012号室諸君、君たちは以下の罪状で包囲されている・・・」
呼びつけておいて、包囲して私たちを逮捕しようとしている小人。
あまりにも生意気な。イライラしていると、麗奈と絵里香の力によって体の中が熱くなった。

気付くと街並みははるか下に見える。
ドン!麗奈が先ほどの拡声器を持った一団を踏みつぶしていた。
ゾクゾクゾクとその周辺からこの前の快感が襲う。
私の足元にはそのサンダルが収まらない道路とその周辺の箱を倒壊させている。
ヒールにも満たない小さな箱。その間の筋をゴマの様な無数の自動車がヘッドライトをつけて走っていた。
早く気づけと、脚を振り上げてその光る車列と、周囲の建物にサンダルを打ち付ける。
ドォン!点のような小人とゴマの様な自動車が吹き飛ぶ。その周辺の建物は崩壊し、私のサンダルの周りからは存在が消えていた。
その近くからゾクゾクが集まってくる。気持ちいい・・・。
遂に小人の町に君臨した私は600mを超える侵略者に成ったのだ。