前中盤は眠いです。後半が皆さんの好みに成れば幸いです。
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気が付くと、ホテルの一室に居た。
ツインのベッドとサイドテープル間接照明が部屋を照らしている。
カーテンは閉まっており僅かにこぼれ日が見えた。
奥に浴槽があるように見える。
更にもう一つ部屋があるようだ。

そして麗奈も横に居た。
「ねぇ!絵里奈様の声聞こえた?なんか頭の中に直接聞こえてきたよ!絵里奈様と直接話しちゃった!」
「あぁ・・・そうだな聞こえた。」
彼女は褐色の肌を赤くして嬉しそうに跳ねている。絵里香と話せたのがよっぽど嬉しかったのだろう。
しかし彼女が跳ねる度に、黒い汚れが綺麗なカーペットを染め上げていく。
ボロ雑巾の様な服に元が何か解らない靴を履いた二人は、あまりにもこの場所には不釣り合いであった。
「仕度しろって言ってたな、まずは汚れを落とそうか先に入っておいてよ」
彼女を先に風呂に進めると思わぬ答えが返ってきた。
「入る?どこに?」
腰まで届きそうな白い髪を傾けながら、紅色の目でまっすぐこちらを見つめてくる。
「風呂だよ風呂、仕度しろって言われただろ?」
彼女の反応は何も変わらない。
「お風呂って何?」
「風呂を知らないのか・・・」
「ごめん、解らないよ」
一緒に入る訳にも行かず、風呂を説明して何とか彼女に入ってもらう。
「あついぃぃぃ!」「ぁ気持ちいい・・・」等賑やかに風呂を楽しんでいる様だった。
広司は浴室では無く、洗面台でタオルを濡らし体を拭いていた。
扉一枚挟んだ先に彼女が居るのだが、どうも心が落ち着かない。
「広司~これいつまで入ってればいいの~?」
無垢な声が聞こえてくる。
「満足するまで入っていて良いぞ」
「そうなの?絵里香様なんか待ち合わせ時間言ってなかったっけ」
ハッとして時計を見るとまだ朝の6時であった。
大丈夫と声を掛けると彼女は安心したようで、賑やかな風呂場の声が戻ってきた。

体を拭いた広司は着ていた服を脱ぎ、クローゼットの中を調べた。
下着と服が畳んで置いてある。革靴と、高いヒールのサンダルが並べておいてあった。
サイズが合うのかとか、彼女の下着と服を少し恥じらいながら風呂前に置いたりしていると、彼女が風呂から出てきた。
「ねぇ広司、濡れたまんまなんだけど部屋戻っていいのかな?」
「そこにあるタオルで体を拭いて出てこい」
「わかった~!」
彼女の常識はどうなっているのか、と考えながら少し経つと、素っ裸の彼女が部屋に現れた。
日頃気付かなかったが、大きな胸と縊れたウエストに目が行く、そして細く綺麗な脚が目に入ってきた。
少し惚気ていると、彼女は不思議そうな顔でこちらを見てくる。
「ふ・・・服あっただろ・・・」
「あれ着ていいの!?やったぁぁぁ!」
嬉しそうな顔をしてこれまた形の良い尻を見せながらコトコトと脱衣所の方に入っていった。
”着ていいんだよな・・”と少し不安になりながら彼女の身体が脳裏に張り付いていた。
「これどうやって着るの?」
再び全裸で現れた彼女にため息を付きながら、結局脱衣所で全てを教えながら服を着せるのであった。

緑色の深々とスリットが入ったワンピースと黒いヒールサンダルを履いた彼女。
大きな胸と尻、スリットによって長い脚が強調されていた。
日頃ぼさぼさだった白い髪は元が良かったのか洗ったことでサラサラに成り、輝くような白に変わった。
その髪を後ろで結びポニーテールにしている。
化粧なんてものは彼女自身当然解らず、広司が遠い過去の彼女がやっていた記憶を頼りにやった。

そこには日頃見ていた彼女とは全く違う、スーパーモデルの様な女性が居た。
元々同じような身長だった事もあり、ヒールを履いたことで175cmある広司より背が高くなり、自分と釣り合わない気がしてくるほどだ。
「広司ありがとうねぇ!こんなの初めてうれしい!」
クルクルと回りながら嬉しそうにはしゃぐ彼女を見ながら、自分が何をしに来たのか分からなくなってきた。
「ねぇ丸越百貨店て何?絵里香様言ってたよね。」
絵里香の名前で我に返り、何をしに来たか思い出した。
どうやって場所を調べようかと考えていると、彼女かふいにカーテンを開けた。
「うわぁ。すごい!」
明るい日光と共に、見渡す限りのビル街が見えてくる。
真下は大通りだろうか、豆粒のような自動車と点の様な人でごった返しているのが見て取れた。
そしてホテルであろうこの建物の目の前に〇の字に越がデカデカと書かれた建物が見えたのであった。

彼女が宇宙船生まれで異惑星のハーフである事、お互い身寄りのない事や、両親の記憶が無い等、生い立ちや日々の生活を話している内に、良い時間に成ってくる。
"絵里香を待たせるとヤバイよな・・・"と思い立ち待ち時間の一時間前にホテルを出でるのであった。
会計等は済ませてあると言われ、地下を通って百貨店前の歩道のベンチで待つ。
ベンチに腰掛け、足を組み、スリットから大段に出された脚を見せながら待つ麗奈を見てくる現地人の男は皆、鼻の下を伸ばしていた。
麗奈は気にせずニコニコしながら広司の方を見て手を繋いでいる。

また何処からかあの振動がやってきてこの町はどうなるんだろう、あの道より絵里香の足の方が大きいよな・・・ビルを踏みつぶしながら来るのか、等
想像振動と衝撃を思い出しながら待っていると、目の前に黒塗りのセダンがハザードを炊きながら止まった。
運転席が明くと、そこから金髪の女神が現れた。
麗奈と同じ形の赤いスリット入りのワンピースを着た何度と見たヒールの高い黒いパンプスを履いた女神だ。
後ろのトラックの運転手が急に止まった車に何か言おうと、窓から身を乗り出し、そのまま幸せそうに固まっている。
「お二人さん、ちゃんと来たわね。待たせたかしら?」
麗奈と広司は目を丸くしながら口を明け固まっている。
「同じサイズだ・・・」
思わず口に出してしまう広司
「馬鹿、買い物に行くって言ったでしょ」
いつも聞いている綺麗な声が通常の音量で聞こえてくる。
「そ・・そうですね、絵里香・・・さま」
「絵里香でいいわよ、どうせ日頃呼び捨てで言ってるんでしょ、知ってるんだから」
日頃の口調のせいか、ぎこちなくなってしまう広司、それに女神は知っているし、呼び捨てにして良いという。
「殺されないよな俺・・・」
思わず口に出てしまう。
「馬鹿言ってんじゃないわよ、さっさと車乗って、あんた運転できるんでしょ。」
「後、麗奈ちゃんだっけ、泣いてないで行くわよ。」
麗奈は感極まったのか泣いていた。
通行が止まった歩道を背に、車に乗り込みナビ通り運転をする。
後ろからは女性二人の会話が聞こえてくる。
「絵里奈様、こうやって喋って良いんですか」
「いいわよ、それに様付しなくていいわ。買い物に来たんだものおかしいじゃない」
「ぇ・・・でも、私話してる・・絵里奈 さんと話してる。」
先ほどまでのニコニコはどこへやらすっかり小さく成っている彼女の横に、普段は見せない笑顔で話しかけている優しい女神が居た。
「それにしても麗奈ちゃん綺麗ね、こんな子が居ると思わなかったわ。」
「広司に化粧とか教えてもらって・・・」
「そうなの、やるじゃない!広司!」
「広司は優しいので・・す。絵里奈さん」
「イチャイチャしちゃって羨ましいわ、部屋一つだったけど大丈夫だったの?」
大きな声で笑いながら女神が楽しそうに話している。
「なにも無いですよ・・・」広司は平常を装って絵里香に返事をする。
その返事を聞いてキャッキャキャッキャと笑って過ごす女神であった。

バックミラーに見えるたわわな胸と美女の二人の顔を眺めながら30分程度走っただろうか。
綺麗な並木道の道路に差し掛かった所で、ナビが目的地の案内を終了した。
路肩にある、時間制のコインパーキングに車を止める。
美女二人を車から降ろし、見るからに高そうなブティックへ、ツカツカと入っていく女神。
後を追って麗奈と店に入る。

ドアマンが一瞬息を呑んだ後、機械的にに話しかけてくる。
「ご紹介はおありでしょうか?」
紹介制のお店のようだ。
「ないわよ、お金ならあるから入れて頂戴」
女神が相変わらず綺麗な声で見下ろしながら、ドアマンにこたえる。
「当店は紹介のないお客様は入店できません、お引き取りください。」
「何よケチね遠くから来たのに、どうなっても知らないわよ」
「何を言われようと、ご案内できません。お引き取りください」
見上げるドアマンと見下ろす女神の押し問答は、ドアマンのプロフェッショナルが勝利した。

その後表通りの店を10件は回っただろうか、いづれの店も紹介が無いと入れないの一点張りだった。
話を聞いているとここは帝国で貴族しか入れない店が多くあるようだ。
そんな状況に笑顔が絶えなかった女神が、いつもの女神に戻ろうとしている。
「全部踏みつぶしてやろうかしら・・・思いっきり踏みつぶしてクレーターに変えてやるわ」
恐ろしい事を言い出す女神。
「絵里香様、お買い物では?」
思わず茶化す広司に女神は少し拗ねたような顔をしてプイと顔を横に向けた。
麗奈はどうしていいかわからず、あたふたしている。
店を回っている途中で裏路地を何本か見つけていた。
路地に小さなお店が有る事に広司は気付いていた。
「絵里香様、少し小さいお店でよければご案内できるかもしれません」
少し茶化したように女神に言うと、いじわるそうな顔をして
「あんたにこの惑星の店が案内できるのかしら、いいわ、してみなさいよ」
そういうと少し前の笑顔の女神に戻った。

一本入った裏路地の狭い店、表通りの店と比べてショーウィンドウも小さく、作りも少し悪い。
そこに広司一行は入っていった。
「いらっしゃいませ!わぁぁぁ、綺麗なお連れ様ですね。」
店に入ると広司と同じ肌色の美人なお姉さんが迎えてくれた。
「私、革職人をしています紗綾といいます。気に入った物があれば試着していってくださいね。」
愛想よく自己紹介をした主人。麗奈は深々と「よろしくお願いします。」と買い物客に似つかわしくない挨拶をし、
女神は商品棚に視線を移し笑顔の女神に戻っていた。
「このブーツというのは、長いけど履きやすいの?」
女神が質問する。
「お客様ブーツをご存じないのですか?」
紗綾が女神にブーツの説明をする。長さや形等、真剣に聞き入る女神であった。
「よろしければ試着されますか?」
紗綾の提案に女神は躊躇なく返事をする。
「するわ、ちょっと手伝ってくれる?麗奈も来なさい。」
ヒールの高い、黒く、靴底の赤いニーハイブーツとショートブーツを手に取った女神と麗奈は奥の方へ試着しに行った。

広司は絵里香がブーツを知らなかったのが意外だった、靴磨きをしていた時もサンダルや、パンプスしか無かった事を思い返す。
ふとニーハイブーツ等という物を絵里香が手に入れれば靴磨きが大変になる事に気づいてしまい、どれだけ時間が掛かるのかと憂鬱に成りながら二人を待っていた。

「ねぇ、どう似合ってる?」
ニーハイブーツを履いた絵里奈がコツコツと音を鳴らしながら出てきた時、"それはダメだ"言おうと決心していた広司は、口を詰むんでしまう。
絵里香に似合わないものなんて無いのだ。
「似合ってると思うよ。」さっきまでの言葉とは別の言葉が口から出てしまう。
「広司どうかな・・・?」自信無さげな声と共にショートブーツを履いた麗奈が聞いてくる。
「似合ってるよ」もう何も考えずに言葉を出す広司であった。
「お二人ともすごくお似合いです。いかがでしょうか?」
紗綾が購入を促すように聞いてくる。
「いいわねこれ、足首疲れないしこのシャープなシルエットも最高だわ、靴底もオシャレよね、これ剝がれてこないの?」
「持ってきていただければ、修理させてもらいますよ」
「あなたに修理してもらえばいいのね。分かったわ。持って帰るわよ。
それとこれ、ネックレスなんだけど、あなたにあげるわ。鞄でも何でもいいから肌身離さず持っていなさい。」
どこから取り出したか解らないが、小さな青い宝石のネックレスを紗綾に渡そうとする。
「お客様からこんな綺麗なネックレスいただけません!」
びっくりした声で受け取りを否定する紗綾
「チップだと思って受け取りなさい。私からのチップ受け取れないの?」
少し冷たい声で投げかける絵里奈。
その声に負けたのか、恐縮しながら紗綾は受け取った。

こうして絵里香は満足して買い物を済ませたのだった。

「買い物は終わったのか?」
「予定より良いものが見つかって良かったわ。あなた達と来て良かったわ、楽しかったし。」
笑顔で答える絵里香。
「もう一泊ホテルで泊まっていきましょう、広司は別室ね」
笑いながら話す絵里香。あの恐怖の対象はどこに行ってしまったのか感覚が狂ってきた広司であった。

店を後にし、商品を包んでもらい車へと帰っていると表通りから出てくる客が見えた。
中年男性が一人と若い女性が3人、大量の紙袋を抱えたスーツの男が一人、
広司が乗ってきた車の前に止めてあったリムジンに向かって行く。
道中中年男性がこちらを見た。
そしてスーツの男に耳打ちをすると走ってリムジンに荷物を置き、広司の方へ走ってきた。
「ご主人様がお二方をご所望です。すぐに同行するように」
スーツの男は命令口調で絵里奈と麗奈へ投げかける。
「馬鹿じゃないの、なんで行かなきゃならないのよ」
その時、通行人が皆一斉に振り返った。
「彼女が嫌がっていますので、やめてくれませんか。」
通行人が一斉に広司達から離れていく。
「拒否なさるのですか!」
「当り前じゃない、何考えてんのよ。馬鹿じゃないの!」
スーツの男性は驚いたように言うと、絵里香が強く即答する。
そのままスーツの男性は既に中年男性が乗ったリムジンに乗り込み、そのまま走り去っていった。
去り際に黒塗りの窓から視線を感じたような気がした。

広司達がセダンに乗り込む際、並木道の綺麗な風景とは似つかわしくない軍用のトレーラーが数台煙を上げながら駆け抜けていく。
その上には4mほどになる自動小銃が裸で乗せられていた。
周りからは、戦争や侵略という言葉が聞こえてくる。
それを見た絵里香がつぶやく。
「彼らまだ来ないのかしら、私があいつら共々やってちゃおうかな。」
冷たい笑顔をした絵里香をその日唯一見た瞬間であった。

ホテルに帰り周囲から視線を集めながら、再度チェックインを済ませる。
フロントの男性に部屋を変えないか耳打ちされた。
何故そんな事を聞かれるのか解らず、無視しているとそのままカギをもらう事が出来た。

エレベーターに乗り、この状況も慣れてきたなぁと思いながら二人の部屋の前に付く広司
軽く二人に別れの挨拶をする。
その際思いがけず絵里奈から頬にキスをされた。
「今日はありがとうね。また明日も遊びに行きましょう。」
呆然とする広司に後ろでモジモジしていた麗奈もキスをしてくる。
「広司ありがとう。また明日ね。」
溢れんばかりの笑顔で部屋に入っていく二人を見送り、"俺に身長があればカッコ付いただろうなぁ"と思いながらがら、自分の部屋に入る広司であった。

部屋に入り、テレビを付けた広司。
何やら横の彼女たちの部屋からドンドンいう音が聞こえるが、楽しそうだなぁと気にしないことにする。
チャンネルを回していると、その日のニュースが流れてきた。
この国は帝国で、この大陸には帝国しか無い事、
この惑星には2個の大陸があり、もう一方の大陸では共和国と王国が戦争している事が報じられていた。
また二つの争いのニュースが終わると、
特報!
という言葉と共に画像が流れた。
9mぐらいの男が軍服をまとい、共和国の村とされる集落を襲っている画像だ。
男は小さな屋根に手を伸ばし破壊、家をまさぐると、人をつかみ上げ見定めるような仕草をする。
その後カメラの方に目を向けた。カメラが必死で森林を逃げている画像が流れ、振り返ると巨人が乗る大きさの戦車が家を道端の缶を潰すように村を通行している画像に成る。
そこで後ろの森がガサガサという音がしたと思うとその画像は途切れた。
"巨人がいるのか、変な惑星だなぁ"と思い興味を失うと、コメンテーターの”帝国は大丈夫”という言葉を聞いて、安心し
冷蔵庫に入ったビールに手を伸ばしそのまま眠りにつくのであった。


広司にキスをした絵里香。そのまま車の中で打ち合わせした様に、麗奈も広司へキスをする。
まるで女子学生のようなテンションのまま部屋へ入った二人。
「絵里奈様ありがとうございます!」
麗奈は顔を赤くしてお礼を言う。
「様は無しって言ったじゃない。いいわよあの男反応薄いわねぇ・・・」
にやりと笑いながら話す絵里香。
「それにしても、麗奈ちゃんお客さんが居るわ10人ぐらいかしら」
絵里奈が床を残酷な笑顔で見下ろす。
「ぇ?お客さんですか?」
「そうよ夜の遊びには調度良いわね。麗奈ちゃんもきっと楽しいわよ」
何のことか解らず麗奈は立ち尽くしていると、絵里奈は麗奈にベッドまで歩くように指示する。
「あそこまでとりあえず歩いてみて」
「歩けばいいんですか?歩きますよ」
褐色の美しい足を踏み出す麗奈。今日一日でヒールサンダルにも慣れたのか、モデルの様なウォーキングでベッドまで歩いていく。
そしてベッドに足を組んで座った。
「フフフ・・いいわねぇ、怯えてるのを感じるわ。次は私が歩いてそっちまで行くわ。足元をよく見ておきなさい。」
そういうと扉からベッドまで向かってくる絵里香。足元を見ておけと言われた麗奈は実直に足元を見ていた。
ふと、その白い綺麗な脚が纏ったパンプスが振り下ろされた際、チカチカと小さな発光が見えた。
そしてパンプスが振り下ろされると共に小さな何がが飛んでいくのが見えた様な気がした。
「麗奈ちゃん見えた?先客の皆さまよ。」
飛んで行った小さい点を見下ろす絵里香。次の一歩はその点の真上に力強く踏みつけられる。
「これで一匹なくなちゃったね・・・、あと9匹は麗奈ちゃんの足元で頑張ってるわよ」
麗奈は足元を見る。小さい発光が所々からみられる。
よく見ようとして、ヒールサンダルを置きなおした瞬間その小さい発光は止まり小さい点がわずかに動いているのが解る。
「この惑星の人間が私に勝てると思ってるのかしら、本当に馬鹿ねっ!」
言葉と共に麗奈から一番遠い点の上にパンプスを踏みつける絵里奈。
彼女がパンプスを踏みつけるとその他の小さな点が隅へノロノロと移動しているのが解った。
「麗奈ちゃんもお仕置きしてあげなさい。」
麗奈は絵里香に言われて、組んでいた足をわずかに持ち上げ、足を組んだまま力強くその場で踏みつけた。
カツン!という音がすると共に、逃げていた点が動かなくなったのが見えた。
「絵里香さん、これはまさかこの星の人間ですか。」
「そうよさっきの男のじゃない?人の部屋にまで入り込んで、どうなってるのかしらこの国」
麗奈は昨日と逆の立場に成った事を理解した。
しかしながら恐怖等は無く、どうしようもない残虐心と高揚感が体から溢れてくる。
そして、組んだ足をほどき、力いっぱい点に向かって踏み下ろした。
ガツゥゥン。部屋に響くヒールサンダルと床が当たる音。
そして点は20cmぐらいだろうか吹っ飛んでいき、その一個の点だけではなく、その他の点も麗奈の足から少し離れていた。
麗奈は自然と笑っている事に気づく、しかし体から溢れてくる高揚感は止めようが無い。
「麗奈ちゃんそれ面白いわね。私と小人PKごっこしましょうか。」
そういうと、床の線をパンプスのつま先で示しながら、
「この線を超えたら麗奈ちゃんの得点ね。ベッドの下に行ったら私の得点でどう?」
麗奈は黙って立ち上がった。
「良いわねぇ麗奈ちゃん。じゃぁ私から始めるわよ。せぇのぉぉ」
カツゥゥン!勢いよく振り下ろされた黒いパンプスより繰り出された音は部屋中に響き渡った。



帝国軍帝都防衛軍第905部隊は皇帝継承権第103位の男性の依頼を受け、二人の女性の確保を命じられた。
女性二人を確保するだけの任務にもかかわらず暗視ゴーグルやサブマシンガンを携帯し、失敗した際は皇帝の名誉を気付付けない為、殺害をも実施する部隊であった。
町中の監視カメラで車を追跡し、ホテルに入った事を確認した部隊長は、ホテルの端末をハッキングし、彼女たちの泊まる部屋を意図的に操作していた。
部屋には部隊の10人を配置し、部隊長は特殊トレーラーでその様子を見守っている。
運転手と含めるとトレーラーには二人しか居ないがこの帝都で帝国軍を襲うような人間は居ないので目標の確保を優先した。

ホテルのカメラから同行している男性と部屋の前でいちゃ付いている様子が確認できる。
対象は見たことのないほどの美人な金髪白色肌と白髪褐色肌の女性であった。
金髪女性が扉を開けた瞬間部隊から訳の分からない無線が飛んできた。
違う場所に転移しただの、地震が起きている等一斉に無線が入ってきたのだ。
何故か運転手も騒いでいる。一体何が起こったのか部隊長には全く想像もつかなかった。


扉が開いたと思った瞬間一番先頭に居た隊員はズシィィズシィィイズズシイインという鼓膜の破裂しそうな轟音と体が飛び上がる振動に襲われた。
目標であった扉があった方向には端が確認できない巨大な褐色の塔が2本と同じ大きさの黒い土台に白い塔が2本並んでいた。

褐色の塔が、ズズズズシィィィィンと音を立て方向を変えると隊員は四つん這いに成らないと跳ね飛ばされそうに成っていた。
ゴォォォォっと風切り音が上空ですると綺麗な声が体を震わせた。

「絵里奈様ありがとうございます!」

褐色塔の上の方が下に向かって迫り、白い塔に向けて頭を下げているように見えた。
その時隊員は気付いてしまった。この塔が対象である女性達であると、
よく見ると前の建物のような物体はヒールの高い靴の様な形をしている。
カメラで見た際、思わず息を呑んでしまいそうな美人であった彼女達、今彼らの前に巨大なビルのような大きさで姿を現した。
しかしヒールだけでもビルの様な大きさに見え、先ほどの振動に恐怖を叩きつけられた隊員は銃を塔に向かって乱射し始めた。

「様は無しって言ったじゃない。いいわよあの男反応薄いわねぇ・・・」

白い対象が長く綺麗な手を腰に掛け、足を少しずらした。
ズシィィィン!

その美しい声が体を震わせた後、またしても大きな振動と衝撃派が彼を襲う。とても立っていられず、またもや四つん這いに成ってしまった。

「それにしても、麗奈ちゃんお客さんが居るわ10人ぐらいかしら」

もう声が体を震わせることに麻痺してきた頃、白い金髪美女と視線があった気がした。
"殺される"直感で感じた隊員は近くの褐色の塔に向かって銃を乱射していた。

「ぇ?お客さんですか?」

「そうよ夜の遊びには調度良いわね。麗奈ちゃんもきっと楽しいわよ」

再び白い金髪美女が褐色の美女に話しかける。
銃を打っているはずなのに、銃声が全く聞こえず反動も感じなかった。

「あそこまでとりあえず歩いてみて」

「歩けばいいんですか?歩きますよ」

あの塔に何発打っても反応すらない、彼女達は銃声を無視して会話を続けていた。
黒いサンダルを履いた褐色の塔がこちらに向いて動き出す。
コォォォォという風切り音と共に隊員の横に黒いサンダルのヒールが落ちてきた。

衝撃と共に体ごと吹っ飛ばされる。白い衝撃波が見えた様な気がした。
更にゴォォォという風切り音と共にもう一方の足が奥の方へ流れていく。
ズシィィィン。けたたましい音と共に二発目の衝撃派と体が浮き上がる衝撃派が退院を襲う。

そして徐々に小さく成る衝撃派の後、低い籠ったズゥゥゥゥンという音と共に一連の流れが終わった。
遠くの方に居るはずの褐色の女神が足を組んで座っている様が見て取れる。
赤い眼が上空の白い女神を見ているようだった。

「フフフ・・いいわねぇ、怯えてるのを感じるわ。次は私が歩いてそっちまで行くわ。足元をよく見ておきなさい。」

白い女神がズンズズズンゥゥンとその場で方向を変え、こちらに向かって黒いパンプスが振ってきた。
「わぁぁぁぁぁぁ」彼は銃を黒いビルの様な塊に乱射していた。

また体が分解するかのような衝撃波にぶっ飛ばされた。持っていた銃はどこへ行ったかわからない。
逃げなければならないのは解るが、体がもう動かなかった。

「麗奈ちゃん見えた?先客の皆さまよ。」

白い女神が青い眼でこちらを見ている。声が体に響き痛い。朦朧とする意識の中で急に周りが暗くなったのが感じられた。
コォォォォという風切り音と共に黒いビルが降ってくる。その中にはゴミや何故か赤い血の様な物が見えた気がした。
ドォォォォォン!彼は、絵里奈に踏みつぶされた。



ベッドの前で固まって待機していた部隊員は扉が開くなり立てない振動に襲われる。
そして先方の隊員が居るはずの場所に白と褐色の巨大な彼女達をとらえた。
褐色の彼女が頭を下げると後ろに纏めた白い髪がさらっと垂れる。その風がどうかは解らないが、軽い風と共にいい匂いが漂ってきた。
何やら彼女たちが会話をしているが、先方の隊員だろうか無線がうるさく何も聞こえない。
白い彼女が足を少し動かした。その白い脚はすっと動き、黒いパンプスが地面に着地する。
ズゥゥン!重低音が体に響く、そしてグラグラと地面が揺れるのだ。
相変わらず五月蠅い無線を切った所で彼女たちの会話が聞こえて来る。

「あそこまでとりあえず歩いてみて」

「歩けばいいんですか?歩きますよ」

綺麗な声が体を震わす。褐色の彼女が歩いてくるようだ。
最初は呑気に考えていた。
褐色の足がその一歩を踏み出す。
ズゥゥゥン!黒いサンダルが着地した際先ほどと同じような音と振動が響いた。
次の一歩がまたこちらに向かってくる。
ズゥゥゥゥゥゥン!少し大きくなった音と、立てないような振動が襲ってくる。
ズゥゥゥゥッゥゥゥン!もう一歩が迫ってくる彼女の長い脚が歩幅を大きくしている。既に這いつくばらないと耐えれない振動だ。
ガァァァンンンン!少し衝撃波で体が持っていかれそうになる。体は飛び上がり制御なんてできなかった。
ふと周りが暗くなる、彼女のサンダルが巨大なビルのような大きさに見えた。
サンダルが地面に当たる瞬間体が吹っ飛んだ。コロコロと転がりながら、体を悶えさせる。
ズゥゥゥゥゥゥゥゥン!
さきほどとは違う低く、大きな音が体に響いた。いずれにせよ這いつくばらないと耐えられない振動であった。
吹き飛ばされた先を見てみると、褐色の足を包み込む黒いサンダルが巨大なビルの様にたたずみ、その上空は褐色の巨大な塔が見えている。
わずか上空にもう片方のサンダルが見え、不気味な音と共に揺れている。
褐色の女神はベッドに座って足を組んでいるようだ。

「フフフ・・いいわねぇ、怯えてるのを感じるわ。次は私が歩いてそっちまで行くわ。足元をよく見ておきなさい。」

白い女神がまた体を震わせる。

ズゥンズゥンと足の位置を変えたような音がした後、大きくこちらへ踏み出した。
ズゥゥゥン!慣れてきた振動を感じる。

「麗奈ちゃん見えた?先客の皆さまよ。」

先方の隊員が銃を打っているのだろうか光っているのが確認できる。
白い女神は先ほどよりも大きく足を上げ、同じような場所を踏みつけた。
ズゥゥゥン!再び周りの音は足音に支配される。
先ほど光っていた部分に落ちたような気がした。
先行の隊員を見て彼らは思い出した、銃があるのだと、そして一斉に褐色の塔へ向けて発射を始めた。
ダダッダダ・・と乾いた音が銃から発せられる。しかしあの塔からは何の反応も感じられなかった。

「これで一匹なくなちゃったね・・・、あと9匹は麗奈ちゃんの足元で頑張ってるわよ」

彼女達が声を発すると銃の音と振動が感じられなくなる。
そして内臓が踊るような感覚に陥るのだ。
ふと目の前のサンダルが一瞬中に浮いた。
そして少しずれた位置に再度墜落した。
ドォォォォォォン!ゴォォォォォォォ
またあの衝撃波だ。銃を撃つどころかまともに立てもしない。
そして褐色の女神が大きな胸をこちらに落としながら、白い髪を滝のように垂らし、顔を出した。紅眼でこちらを見つめている。

「麗奈ちゃんもお仕置きしてあげなさい。」

身体が震えたと思った瞬間目の前の巨大なサンダルがグワァァッァっと持ち上がった。
そして再度同じ場所に降臨する。
ズガァァァァァァ!各隊員は衝撃波によってぶっ飛んだ。かろうじて意識のある状態で再度女神たちを見ている。
銃はどこかへ行ってしまった。体もいう事を聞かない。
彼女たちが何か喋っているのだろう、朦朧とする意識の中身体が震える感覚だけが伝わってくる。
ズズズズウゥゥ何か上空で擦れるような音が聞こえた。
そして黒い塊が再度こちらに降ってくる。

確実に先ほどよりも大きな衝撃波が襲い、体が地面を転がっている感覚だけがあった。
また彼女たちが何かを話しているのだろう、体が震える。
このままではいけないと動かない体に鞭打って立ち上がろうとする。
ズゥゥゥゥン!また大きな衝撃波だ、吹き飛ばされるほどでは無いが、体が跳ね上がる。
そして仰向けに成った時、褐色の彼女が立ち上がったのだと気付いた。
遠くの方でズズズッィという音や、ズンズンという音が聞こえる。
白い女神が何かをしているのだろう。
漆黒の女神の、紫色のショーツわずかに滲んでいるのをその時確認できた。

彼女たちがまた会話している今度は一体何を話しているのか・・・もはや何も解らない。
ズォォォン!また大きな衝撃波がドアの方向からした時に意識は完全に吹っ飛んだ。



絵里香が打ち付けた衝撃で麗奈の近くに居る点が少し動いた。
しかしそれ以降動かない。なぜ動かないのか、麗奈はイライラしてくる。
そして次は自分の番だ。思いっきり足を振り上げ、体重を乗せてサンダルを地面にたたきつける。
カアッァァァン!ホテル中に響くような音が鳴り響いた。少し周りの調度品が揺れている。
近くにあった点は何か赤い物に変わっていた。

「麗奈ちゃんやりすぎよ、衝撃で小人弾けちゃったじゃない」
腰に手を当て、大きな声で笑いながら絵里香が言う。
「絵里香さん、ごめんないさい、なんか動かなくなるとイライラしちゃって。小人って、もろいんですね。」
昨日まで自分が居た立場の人をなんとも思わなくなっている。
「そうなのよ、すぐ動かなくなるの。でも一杯いるから大丈夫よ。明日はこの惑星全部をオモチャにしようね。」
「私が大きく成れるんですか・・・」
麗奈は不安に思った、絵里奈とは違う自分を思い出したのだ。
「ちょっと小細工すれば大丈夫よ。後で付き合ってね。」
「はい!」
即答する麗奈。
「その前にこれの処理どうしようかしら、彼らの指令室?みたいなんだけど」
絵里奈がそういうと、麗奈の前に1cmほどのトレーラーが現れた。
自分の脚と比べるとなんと小さい事だろうか、これは遊べるのだろうか。
そう考えた瞬間、先ほどのPKゲームを思い出した。
「絵里香さん、さっきの続きをしましょう。」
「え?」
絵里香が疑問を投げかけると同時に、麗奈は長い脚を少し振りかぶり、そしてその小さなトレーラーを蹴った。
瞬間、トレーラーははじけ飛び、無くなってしまった。
「また、なくなっちゃった。なんなのもう・・・。もうちょっとちゃんとしてよ。」
再び絵里奈が大声で笑う。
「麗奈ちゃん強すぎよ、加減を覚えないと一瞬で全部消費しちゃうわよ。」
「絵里奈様、そうなのですね・・・是非明日その辺を教えてください。」
「やる気ね分かったわ、じゃぁこれからちょっと小細工をしましょう、裸になって・・・」
麗奈に近づきながら絵里奈は言う。
「はい、絵里奈様。ってちょっとうわ・・・」
絵里奈は麗奈に抱き着いた。
「気持ちいい事しようねぇ麗奈ちゃん。」


そのまま彼女たちは朝方まで激しく部屋を揺らすのだった。


騒ぐ運転手と隊員と連絡の取れない隊長。
ふと周りの雰囲気が変わると目の前には黒い壁があった。
なにやら少し揺れておりその揺れがトレーラーにも伝わってくる。
運転手は何かを叫んでいるが意味不明な言動を繰り返している。
「殺される、無理だ、殺される踏みつぶされるんだ・・・」

「絵里香さん、さっきの続きをしましょう。」

トレーラー全体が大きく震えた。PC画面などは割れてしまっている。
先ほどあった黒い壁はどこかへ遠退き、風が吹き荒れていた。
ほどなくして、ジェット機が真上を飛ぶような音がしてくる。
ゴォォォォォォォォ!
遠くから褐色の脚の様な物が見え、どんどん大きくなってくる。
そして、目の前が黒くなった瞬間。隊長はただの染みに変わっていた。




ドォォォォォンンンン、ズゥウゥゥゥゥ・・・。バァン
広司は目を覚ました、あの振動が襲ってきた、寝る前までの状態は夢だったのか。
そう思った。しかし、周りを見てみるとあのホテルの一室に居る。
天井はグラグラ揺れて、調度品も散乱している、二人は大丈夫だろうか。と心配をしていると、あの声が聞こえてきた。

「広司、早く屋上に上がりなさい。早くしないと麗奈ちゃんに踏みつぶされちゃうわよ。」

あの綺麗な声は相変わらず体に突き刺さるように聞こえてくる。そして窓ガラスが割れた。
窓ガラスから見えた景色に広司は唖然とした。
昨日見えたはずの百貨店は無くなっており、そこには黒い丸みを帯びた平原が広がっていた、途中から垂直に上がっているが何かわからない。
横を見てみると少し離れた場所にも似たような構造物がある。しかしこちらは丸い塔の様な円柱が見えその奥は赤かった。上の方は褐色の輝く何かに成っていて、上に行くにつれ膨らんでいる。
そしてその足元は隕石が衝撃したようなクレーターができていた。道路も何もかも吹き飛んで、もうもうと煙が立っている。

「もぉ、絵里奈さん、広司さん踏みつぶしちゃうわけないじゃないですか。」

綺麗な声だがいつもと違う声が体に刺さる。そして、その赤い壁を持つ何かが遠くの方へ移動し、街をに打ち付けられた
ドァァァァン!突風がホテルの部屋を襲う。その赤い壁を持つ何かが着地した場所は、建物は全て無くなり、周辺ではビルが傾いたり、道路を走っていた自動車は全部飛び跳ねあっちこっちを向いている。
あれが昨日購入したショートブーツを履いた麗奈だとその時気付いた。

「麗奈ちゃん気をつけなさい。本当に広司さん殺しちゃうわよ。」

その案じている声さえも広司にとって恐怖に感じられた。

目の前に見えている黒い平原は絵里香のブーツのつま先の上だった。そのまませりあがっている所までは確認できる。
二人の女神は550メートルの女神となって、その惑星に降り立ったのだ。
「何故麗奈まで・・どうなっているんだ。」
とりあえず広司は屋上へと走り出した。。