あの玄関に帰ってきた。絵里奈との遊びで体が汚れている、さっさとお風呂に入りたい気持ちに支配されるが、広司に会いたい。
紗綾もちゃんと飛んでいるのだろうか。不思議とあまり失敗するイメージが沸かなかった。
私の横には、金色の髪を少し濡らしまだ少し息の荒い絵里奈が座っている。
綺麗な白い指で搔き上げた髪が少しネバついていた。汗がしたたる首筋を見て、なんだかムラムラしてくる。
直しもしないYシャツは黒いブラジャーを付けた事により持ち上がった胸元をより際立出せていた。
先ほどの行為を思い出し、また股間が熱く成ってくる。
彼女のニーハイブーツを見ると、少しネバついた液が白い太ももから足元まで直線に伝った跡が見受けられる。
両足を地につけたそのブーツの周りには、小さい点がいくつも動いていた。伝った跡より圧倒的に小さな点。
ふと、そのつま先の方へ目をやると私が踏みつぶした跡だろう。床が足跡状に赤い染みが大量に付着していた。
その周りの点は私達の登場に驚き、作業が止まっているようだった。
自分のブーツに目をやると、やはりその辺に小さい点が動いている。
"なんで作業にも掛かってない小人がいるの"とせっかく解放されたイライラがまた少し込み上げてくるのだった。
「楽しかったね麗奈ちゃん。また一緒に遊ぼうね。」
髪を搔き上げながらこちらを向いて話してくる絵里奈。青い眼のギラギラは落ち着き、いつもの綺麗な目に戻っていた。
垂れる汗が妖艶さを際出される。
「はい!絵里奈さん。また色々教えてください。」
楽しかったあの都市での思い出が振り返る。思わず白い歯を出して笑顔に成ってしまった。
顔をブーツに戻す絵里奈。足先の赤い染みの塊に気付いたのかその黒く美しいブーツを振り上げる。
「ほんとこいつ等ノロマね。」
カァァン!周りに居た点を踏みつけ、赤い染みの範囲を更に広げていくのだった。
ふと、広司はどうしたのか、会いたい気持ちが高ぶってくる。
「絵里奈さん。広司どこかな?」
「シューズラックの案内してるはずよ、ほら青い光見えるじゃない。」
白いシューズラックの扉から青い光が見えた。
当然のように下界の点など気にせず、コツコツとヒールの音を鳴らしながら胸元までしか無いシューズラックの前に立つ。
"広司元気にしてるかな"そう思うと顔が自然と笑顔になるのだった。
扉に手を開け、前とは違い少し乱暴に開ける。広司に会いたい気持ちが麗奈にそうさせる。
何か点がこちらに舞ってくるが、気にすることなく青い光を見つめる。
私がこの間履いていたサンダルの前に青い光が見える。
光しか見えないので、少しかがみ目線をそのサンダルの前にやる。
扉の際に居る広司と紗綾、こちらを背にして顔だけが私の方を向いている。広司が何か小人を背負っている。もう一人小人がその小人を広司と一緒に背負っていた。
その奥には大量の小人が皆一様にこちらを見ているようだ。サンダルのソールにも満たない小人に落ち着いたゾクゾクが再燃してくる。
「広司、なに抱えてるの?」
"麗奈!ちょうどよかった。助けてくれないか!"
広司が私を求めてくれている。うれしくなる。
「いいよ~。」
"助けてほしい"とは何なのか。少し引っかかる、大量の小人が広司を取り囲んでいるように見えた。
「ってまさか!」この小人達は広司を襲おうとしているのでは無いか。ふと頭によぎる。
広司を守りたい思いからか、紗綾の白いモヤモヤが広司の方まで勝手に広がる。
"こいつらホントに!"急にイライラが頭を支配した。
「せっかく気持ちよく成ったのに、またこいつ等は!」
気が付くとサンダルを持ち上げていた。周辺に蠢く点にそのまま叩きつける。
ダァン!シューズラックが揺れる。点は減った物の吹き飛んだ点がまだある。
「何回言ったらわかるの!」
もう一度持ち上げ叩きつける。ダァン!横のパンプスの下に吹き飛んでいくのが見える。
無意識にサンダルを床に落とし、そのまま絵里奈が履いていたパンプスを持ち上げる。
点が大量に見える。"まだ居る"イライラが積もっていく。
ダァン!ダァン!その点が無く成るまで叩きつける。
シューズラックの壁と、逆側の青いパンプスの下に吹き飛んでいく点。
「広司に手を出すなんて!」
持って居た黒いパンプスも地面に落とし、その手で青いパンプスを持ち上げる。
「ほんと小人ってバカなんだから、なんで分かんないかな!」
まだ点はそこに隠れていたようだ。全部駆除したくなる。
ダァン!ダァン!その点に向かって叩きつける。
胸元のシューズラックの空間から大分点が減ったような気がした。
その青いパンプスの横にある赤いサンダルに目が行ったとき、絵里奈に声が聞こえてくる。
「麗奈ちゃん、あんまりやると居なくなっちゃうわよ。」
確かに元居た点はほぼ駆除できたが、イライラが収まらない。
立ち上がりこちらにコツコツと近づく絵里奈。私が落としたパンプスとサンダルをその足で退けると、顎の高さまで移動した白いモヤモヤとらえ、少しかがんで青い眼で白いモヤモヤを見る。
「なに広司、新しいの連れてるの?麗奈ちゃんが怒ってるじゃない。」
それを見て笑顔で話す絵里奈。"広司がかついで居た小人はどんなのだったか"あまり思い出せない。
「違うよ絵里奈さん、ここの小人達、広司を取り囲んでたの。」
イライラの原因を説明する。さっきまでの笑顔が急に変わり、眉を顰める。
「え・・・そうなの、なんなのこいつら、まだ立場が分かってないのね。」
青い目がシューズラックを射抜き口元は吊り上がっていた。
"絵里奈、すまないがこいつ死にかけてるんだ、助けてやってくれないか。"
広司からの声が聞こえてくると、胸元のモヤモヤに目を戻す絵里奈、
「その肩の子?いいけど・・・後で話ちゃんと聞かせてよね。」
"そういうえば、どういう関係なのか"と少し気に成り始める。
"ありがとう絵里奈!実はn”
広司が何か礼を言っているが、顔は既にシューズラックを見ている絵里奈。
「その前にこいつ等まだわかってないみたいだから教えてあげないと。」
その顔はまた口元が吊り上がっていた。
「麗奈ちゃん、そこの鏡開けてみなさい。」
絵里奈がシューズラックの横にある姿鏡を見ながら私に話しかける。
身体を鏡の前にさらし、取っ手に手を掛け開ける。中には白い紙が背丈まで詰まっており、見えないほどの小さな空間に小さな点が大量に蠢いていた。
何故か右足の前だけ綺麗に無くなり大きな空間に成っている。
「そこがね、小人の住処なの、麗奈ちゃんならどうやって教育するの?」
絵里奈の声が横から聞こえてくる。
"まだこんなに居るのかこいつらは"とイライラが再燃してくる。
小人を駆除する為、肩からその住処に突っ込んだ。
ダァァン!奥の壁に肩がぶち当たり全てが揺れる。
顔ごと入った事で小人の姿が見える。
"なんでまだ生きてんのよ"イライラが積もる。
外にあった左足も小人の住処を破壊すべく中に突っ込む。
ダァン!勢い余った膝が壁に当たり、目の前の小人が胸元に落ちていった。
そのまま前の住居を破壊すべく、体をシューズラックの方にぶつける。
ダァン!目の前の白い住居はほぼ無く成っていた。
その小人の巨大な住居空間を支配している私。少しスッキリする。
少し残った白い部分を手で押さえつけ壊しながら外に出る。
コツコツとヒールの音が床を叩く。
「アハハァ!汚れちゃったわね!麗奈ちゃん」
大きな声で手をお腹に当てながら笑う絵里香。
そのはだけ出した胸が震え、小さなモヤモヤを吹き飛ばしそうだった。
前を見てみると、ほぼ白い所は無く成り、元からあった木目が奥に見えている。
下の方にヒールとつま先の間にあった白い住居がまだ見える。
スッキリがイライラに支配されてくる。
"まだ懲りないの?"そう思うと、その足元にあった白い塊が靴底の汚れで染まるまで、踏みにじるのだった。
少し心が晴れた。
「麗奈ちゃん、汚れちゃったしお風呂入ろう?」
心が晴れたのか体のベタベタが気になってくる。
「お風呂!行きます!」
すっきりした体の感覚が欲しく成り、笑顔で絵里香に答えるのだった。

体中を白い紙と赤い染みに染めた麗奈ちゃんを見ながら、少しスッキリした気持ちに成る絵里奈。
玄関に腰掛け、蒸れた足を解放したくなる。
ジッパーに手を掛け、開けていくと外気にさらされた脚がスッキリしてくる。
脱いだ脚を床に着けると、床が私の蒸れで少し濡れていた。
コツコツとこちらにやってくる麗奈ちゃん。同じように横に座り、力任せにショートブーツを脱ぐ。
その褐色の綺麗な足も、私と同じように蒸れているにが分かった。
先ほど麗奈ちゃんが大量の小人を消費した。"くつの掃除をこのまま任せると終わらないかもしれない"と思い、
帝都で生命反応の残っていた住民を全て空間に転移させたのを思い出す。
そのまままだ履いているブーツの前に全部転送する。
「あんた達初仕事よ。」
命令したのにも関わらず、こちらに向かってこない蠢く集団。無意識にブーツを撃ちつける。
その横に紙で汚れた褐色の脚が現れ、未だ綺麗に光っているショーブーツが集団を踏みつける。
両方のブーツの周りには空間ができており、点が舞っている。
支配欲が込み上げてくるが、体のベトベトの方が気になっていた。
「ちゃんと床も綺麗にしといてよね!」
踏みつけたブーツをそのままズ---と引きづり、スポンと力任せに脱ぐ麗奈ちゃん。
同じように踏みつけたブーツをそのまま体の方に引き寄せると、ブーツの通った後は赤い街道ができていた。
そのままジッパーを下げ、私の脚を解放してあげる。
「できてないと、もう一回そうなるからね。」
脱いだブーツを集団の前ギリギリに置いてやる。
少し集団が引いたように見えた。横でもコツンとショートブーツを並べて置いている。
つま先の衝撃で小さい点が空を舞っていた。
奥のいつも靴を置いたら出てくる点が見えないことを少し疑問に思う。
「ソファーの下もそろそろ掃除しなきゃいけないかもね。」
そういうと、出てくる点、思わず笑顔に成ってしまう。
蒸れた足をペタペタと廊下に着けながら、先ほど麗奈ちゃんが掃除した姿鏡を閉める。
下は白い紙と赤い染みに占領されていた。麗奈ちゃんのブーツの跡だけが綺麗に地面を赤く染めている。
奥のシューズボックスからはお気に入りの靴が落ちて山に成っている。
"直すのめんどくさいなぁ"と小人に任せることにする。初仕事は一杯あったほうが良いだろう。
その汚れた床に彼らの重機を転送させる。
「ちゃんと靴戻しておきなさいよ。」そう彼らに言いつけると、先にペタペタとリビングの方に向かう麗奈ちゃんを追うのだった。

リビングに入り、白いモヤモヤが麗奈ちゃんの力によって、テーブルに降りる。
膝にも届かないそのテーブルにしゃがみこみ、広司に目を合わせる。
「先にお風呂行ってきますね!」元気に言う麗奈ちゃんはペタペタとリビングを出て行った。
"絵里奈、実は・・・"シューズラックの中での出来事を教えてくれる広司。
やはりあの小人達は始末しておいて良かったと思った。
広司が話をしている間、紗綾も追加で説明をしてくれる。
私を敬う宗教家のを聞いた時は思わず笑ってしまった。
紗綾と広司がこちらに話しかけている間、倒れ込んでいる女に見える小人と、こちらを見て何も言わず突っ立っている広司よりも二回りは大きな小人が気になる。
ボロボロの衣装にだが、頭だけは光っているのが目立つ。
空間に入れていた紗綾の店をテーブルに転移させる。
「私もお風呂に入ってくるわ、その二人綺麗にさせてあげてよ。」
そう言うと私もお風呂に向かうのであった。

リビングの前にある扉を開け、脱衣所に入ると麗奈ちゃんは既に中に入っている様で、ビチョビチョに濡れた紫のショーツだけが置いてある。服を入れる四角い窓に入れ損ねた様だ。
それを必死に引っ張る蠢く点が見て取れる。下の隙間から脱衣物入れに引きづり込もうとしている小人の群れだ。
濡れている為か全く動いていない。
小さな点と一緒にその紫のショーツ持ち上げ、脱衣物入れの四角い窓に投げ入れる。
何やらキーキーという声がしたが、さっさとしないほうが悪いのだ。
自分の衣服も脱ぎ、紫のより重たい黒いショーツを四角い窓に投げ入れた。

風呂場に入る。大人5人は余裕で入れそうな浴槽の端に、麗奈ちゃんが目を閉じ入っていた。
横にはシャワーが4個設置してあり、一か所は濡れている。
プラスチックの椅子に赤い染みが何個か見て取れた。
「ぁっ、絵里香さん、お先です!」
響く麗奈ちゃんの声。褐色の綺麗な肌を取り戻していた。
「どう?気持ちよくくなった?」
「はい!すごいスッキリしました。大きいお風呂良いですね。初めてです」
顔をふやけさせ、気持ち良い顔で答える麗奈ちゃん。大股を開け脚と腕をほっぽりだし、大きな胸は半分浸かっているが、腕に圧迫された胸は胸元に湖を作っていた。
その綺麗な髪は床に張り付いており、そこに小さな点が大量に集まって必死で髪の毛を洗っている。
「この小人髪を洗ってくれるんですね。淵で待機してるんで何匹か潰しちゃいました。」
少し照れながら言ってくる麗奈ちゃん。
「満足してくれて良かったわ。このために大きくしたのよ。」
「えっ、そうなんですか、ありがとうございます!。」
使用済みの赤い染みのついたプラスチックの椅子にドスンと腰かけ、蛇口を捻ると、暖かい水がシャワーから出てくる。
「麗奈ちゃんに喜んでもらえるかなって。広司とも入れたらよかったんだけどねぇ。」
「広司は同じサイズに成れないんですか?」
流れる水の後ろから少し残念そうな声が聞こえてくる。
「あの惑星の出身者は適性が無いみたいね。多分力を入れると弾けちゃうわ。麗奈ちゃんも何となくわかるでしょ?」
「なんか器が無いというか、何も入らない感じは確かにします。」
身体をスポンジでこすりながら会話を続ける。
「そうなのよ、紗綾も無理そうねぇ。ちょっとは入りそうだけど、あの広司が連れてた、新しい小人はかなり入りそうよ。」
「ぇあのごついのですか!?」
「違うわよ、担がれてた女の方よ。男で入りそうなのは見たことないわ」
「そうなんですね、あの女の人なんなんでしょう。」
先ほど広司と紗綾から聞いた話を麗奈ちゃんに教えてあげる。
「あの教団に捕まった人ですか・・。」
麗奈ちゃんはシューズラックに居た頃を思い出してだろうか、少し遠い声でそう答えていた。
一通り洗い終わったので湯舟に向かう。置いたスポンジに向かう小さな点が見えた。
相変らず脚をほっぽり出している麗奈ちゃんの横に入る。麗奈ちゃんほど長くない髪をペタンと床に這わせ、麗奈ちゃんと同じ格好をする。
心地よい暖かさのお湯が体を満たす。胸の前にはゴミ取りの小舟がひっくり返っていた。
「私はいつまで絵里奈さんと遊んでもらえるんですか。」眉を垂れさせ、怯えそうな紅色の目でこちらを見つめてくる麗奈ちゃん。
思わず笑ってしまう。
「フフ、もう麗奈ちゃんは私にはどうにも出来ないわよ。ずっと私と遊んでね。」
「えっ、どういうことですか?」
「麗奈ちゃんの存在は私にどうこう出来るレベルじゃなくなっちゃったのよ。もう貴女を私が縮めようとしても無理だわ、ホテルで半分ぐらい持って行かれたもの。」
「半分・・・そうなんですね、何かありがとうございます。」
また眉を下げこちらを見て礼を言ってくる麗奈ちゃん。
「そうね、その代わり私と楽しく過ごしてくれたら良いわ。」
「はい!頑張ります!」
今日一番の笑顔で答えてくれた麗奈ちゃん。
「あの広司が連れてる女は、麗奈ちゃんがどうするか決めると良いわ。」
「ぇ、私ですか。」
「そうよ、練習にちょうどいいじゃない。」笑顔で返す私。
「練習、どうするか、考えます・・・」少し暗い顔をする麗奈ちゃん。
「絵里奈さんはどれぐらいまで大きく成れるんですか?」素顔で聞いて来る麗奈ちゃん。
「限界が分からないのだけど、あの惑星ぐらいなら小人より小さくできるわよ。」"そういえば限界はどこなのだろう"と考えた事も無かったことを聞かれ、久々にまともに会話し楽しく成ってくる。
「えぇ!そうなんですか、そこまで成ると何も感じなさそうですね。」また笑顔にで答えてくる。
「でも、さっき町での麗奈ちゃんの攻撃はすごかったわ。」意地悪をぶつけてみる。
「絵里奈さんが、あのゲーム思いついたんじゃないですか!」いつもの笑顔に戻り、返事をしてくる麗奈ちゃん。
その後思う存分会話を楽しむのだった。


ドォン!ドォン!相変わらず周囲の音を書き消す音で廊下を踏みつける白と褐色の脚。
前後で暴れる4本の脚はその空間を支配していた。
広司は玄関の上を初めて見た。小さな点が廊下にもいるが、その白と褐色の綺麗な脚は、その点を踏みつけながら歩いている。
扉を二個ほど過ぎた当たりで、褐色の柱が相変らずの大音量を立てながら中に入っていく。
音が止まったと思うと、今まで浮いていた白いモヤモヤが彼女の膝より低い大きな平原に着いた。
遠くまで何もない茶色の平原が続いている。その先に巨大な褐色と白の柱が2本づつ並んでいる。
ゴォォォォ!という音と共に白い柱が折れ、青い眼がこちらを見つめる。

「先にお風呂行ってきますね!」

綺麗な声が体を震わす。あの白いモヤモヤが消えた事により、ダイレクトに声が体に突き刺さった。
ドォォン!ドォォン!ドォン!と遠ざかる轟音、地面が震え、立っていられない。四つん這いに成る。
その時白いモヤモヤに再び包まれた。絵里奈がもう一度包んでくれたようだ。
「絵里奈、実は・・・」その上空にある青い眼に向けて先ほどのシューズボックスの中での出来事を話す。
教団の話をした時、絵里奈のその筋取った綺麗な鼻から、大量の空気出て、轟音で平原に吹き付けていた。
紗綾も補足説明を横でしてくれる。顔が縦に揺れ、金色の綺麗な髪がキラキラ舞っていた。
一通り話をした後、ゴォォォ!という音と共に絵里奈が立ち上がる。目の前に白い柱が現れる。

「私もお風呂に入ってくるわ、その二人綺麗にさせてあげてよ。」
そう言うとドォォン!ドォォン!ドォン!と白い柱が遠ざかっていく。
後ろには紗綾の店が、ぽつんと建っていた。
「ぉ・・ぉぃ、あれエリナだよな。お前何普通に喋ってんだよ。」
ずっと、黙っていたヒロが話始める。足が震えている。
「話すと長くなるが、まぁそういう事だ。」
こいつには、詳しく話しても解らんだろうと、適当に答える広司
「あぁ、そうなのか・・・、って説明しろコラッ!」
流石に怒るヒロだった。
絵里奈のパンプスの前で起こった出来事から、爪に乗ってしまった事、その後の彼女達との成り染めを話していく。
「あれ、麗奈だったのかよ。あいつあんな綺麗だったんだな。」
分かっているのかそんな感想しか述べてこないヒロ。髭をなでるスピードがいつもより数段早かった。
何故かその話を聞いて横で「へぇ~」「そうなんだ!」と相槌を打つ紗綾。
青い女性はまだ動かなかった。
「とりあえず綺麗にしろとのお達しだ。紗綾、店の中にタオルとかあるのか?」
「一応2階で暮らせるように一式は揃っています。水出るのかわからないですけど。」
「電気ついてるし、出るだろ。」扉から漏れる光に、絵里奈の不思議パワーに最近何も感じなくなった広司。
「ヒロすまんが手伝ってくれ。」
まだ倒れて反応が無い青い髪の女性を担ぐ。
「おうよ!任せろ。」
気持ちいい返事で担ぎ上げるヒロ。そのまま紗綾の案内で店の中へ入っていくのだった。
扉を開けると、そこには倒れた棚や、商品が転がっていた。
「あのままなんですね・・・」思い出し少し怯えた顔に成る紗綾。
「とりあえず2階の住居?に案内してくれないか。」
そう広司が話すと、店舗の奥にある試着室を抜けさらに奥の工房から階段で上がっていく。
"案外広いな"と思いながら階段を紗綾の後を昇っていく広司。肩の女はスヤスヤと鼻息を立てて眠っていた。
2階の寝室に着くと、床に女を置き浴槽を紗綾と見に行く。
蛇口を捻ると水が出た。
「普通に出るんですね・・」ぽつっと呟く紗綾。
「あいつが綺麗にしろって言ったんだ、水出なかったらクレーム入れてやる。」
笑いながら話す広司。
「ほんと、広司さんって強いですよね。」
「姉ちゃん、こいつは昔からおかしいんだ。」
二人の同行者は何故か俺を貶してきた。

浴槽にお湯を張り、待っていると青い髪の女性が寝室から出てくる。
「なんだ、夢か、普通の家じゃないか。」
そのままこちらを向き、紫の綺麗な目を向けてくる。
「あんたら・・・助けてくれたのか、あのクソ坊主はどうしたんだい。」
どうしても、その大きな胸に目が行ってしまう広司とヒロ。鼻の下が伸びてしまう。
後ろからお尻を紗綾につねられる。
「絵里奈さんに言っちゃいますよ、潰されても知りませんからね。」
「ね、姉ちゃんそれは無しだぜぇ」
真剣に謝るヒロがそこにはいた。
「エリナ?あの女の事かい。あぁ、やっぱりここはまだあの中なのかい。」
少し暗くなる顔。
「絵里奈からあんたを綺麗にしろって言われたんだ。幸いこの紗綾の家には風呂がある。入って汚れを落としてくれ。」
「綺麗にする?もう何年振りだろうねぇ。まぁ良いさ、なんか体も痛く無いしねぇ。」
そう言うと、ノシノシと浴室に入っていく青い髪の女、目の前でボロ布を脱ぎ始める。
「広司さん、ヒロ、出て行ってください!」
紗綾に押し出され扉を閉められる。
「ぉぃ、姉ちゃん俺はどうしたらいいんだよ。」
「下の作業場にタオルいっぱいありますから、それでなんとかしてください!」
風呂に入れるとウキウキしていたヒロの肩ががくんと下がった。
階段を下り、大量のタオルを見つける広司とヒロ。幸い作業場の蛇口からはお湯が出た。
「わぁぁ、ホントに大きいですねぇ!」
「デカいだけで、なんの役にもたちゃしないよ。」
そんな会話が2階から聞こえてくる。
このヒロという男は鍛えすぎて自分で背中に手が回らない。
「ヘヘッ、すまねぇな広司。」
「なんかその内返せよ。」
つるっぱげの頭を自分で拭きながら、こちらに笑いながら言ってくるヒロの背中に白いタオルを当てるのだった。

幸い服飾店だけあり、店の方に服は大量にある。
汚れた服を脱ぎ商品を着る。ヒロは辛うじて入る皮のズボンがあったが、上はどれも肩が入らない。
作業場にあったエプロンを着て、裸エプロンに皮パン、コンバットブーツを履いた髭を生やした大男が出来上がった。
どう見てもこいつがこの作業場の主である。エプロンからは丸太の様な腕が血管をむき出しにしながら伸びていた。
「俺、こんな格好で絵里奈さんに殺されねぇか?」
真剣な顔で話してくるヒロ。
「大丈夫だろ。多分。」笑いをこらえるのに必死だった。

二階から女性達が降りてくる。
紗綾の後ろに続く女はやはりデカイ、ヒロと同じぐらいある。紗綾と比べると紗綾が子供の様だ。
「ヒロ、お前身長いくつあるんだ?」
「220cmだけどなんでだ?」
こいつも背が高い、女は背が2mを超えるようだ。
洗った髪は水色に近い青でキラキラと輝いている。
絵里奈にも負けない白い肌に紫色の目が神秘的に見える。
サイズの合わないTシャツがギチギチと胸をなんとか支えていた。
丈が足らず、締まったウエストを丸見えにして、その大きな尻のラインをきっちり出したデニムのショートパンツは前が閉まらないのかボダンを開けて、マイクロパンツに成ってしまっている。
そこから延びる白い輝く長い脚は筋肉で引き締まっていた。踏みしめる素足も整った足をしている。
「紗綾すまないねぇ、こんなデカイ女でさ。服伸ばしちまうよ。」
「良いんですよ、蒼さん、後で時間あれば私が作りますね!」
「服つくれるのかい?すごいねぇ紗綾は」
彼女の名前はアオイと言うようだ。
「靴は店舗の方にあるので取ってきます!試着室で待っててください。」
そう言うと男二人を置いて店舗の方へ行ってしまった。かすかにいい香りがしてくる。
「俺、風呂に入ったら怒られるかな。」
こっちを向いて聞いて来る、ヒロ
「辞めといた方が良いんじゃないか、その先カバーできんぞ。」
「そうだよなぁ。お前本当に美人運良いよなぁ。」
蒼があんなに綺麗だなんて思わなかった広司。ヒロから見ても蒼は美人のようだ。

すいません、合うサイズがこれしか無くて。
コツコツとヒールを鳴らしながら現れた蒼、濃い紫色のヒールの高い、オープントゥサンダルを履いた彼女。
白い脚と、紫色に包まれた踵、太いクロスしたベルトがしっかりと踝を支えている金色のバックルが輝いていた。
「似合うかねぇ。ヒールの高い靴なんて何年ぶりかね。」
相変らずの口調でこちらを見て、長い脚をクネクネしながら足元を見る蒼。
横でヒロが固まっていた。

店舗の待合室で4人で座って話をする。
やはり蒼は目立つ。そのサイズに合わない椅子に座り、白い脚を組みながら大きな胸を揺らし、豪快に話す彼女。さながら夜の女王のようだった。
絵里奈に滅ぼされた惑星に住んでいたという蒼。なんと彼女は軍人で絵里奈へ歩兵突撃していた。
昔からの恵まれた体格で、そのまま軍人に成ったと大きく笑いながら話す。
突撃を敢行するも、そのまま足が上がっていき、どこかに行ってしまったという蒼。このシューズラックの住民には珍しく絵里奈に怯えた事はない様だ。
「昔からあんまり考えない立ちでねぇ、気付いたら、あの女に特攻させられてたねぇ。」
大きく笑う蒼。本当にあまり考えない立ちのようだ。
ヒロが軍人自慢を始める。彼も絵里奈にロケットランチャーを打ち込んだ話や、素手で自動車を押しのけ出てみると、一面瓦礫で気付いたらあそこに居た。
などの話をしていた。
シューズラックでの生活の話に移ろうとしたとき、ドォン!ドォン!と音が聞こえてくる。
彼女達が帰ってきたと思い外に出るも、どちらも居ない。

「ちゃんとがんばってね!」大きな麗奈の声が聞こえると、同じ方向からドォン!ドォン!と音がしてくる。
2つのリズムがこちらに迫り、二人一緒に部屋へ入ってきた。
綺麗に成った二人の脚は光り輝いている。
そのまま二人で仲良く同じソファーに座ると、同じタイミングで脚を組んで、体を前に倒してきた。
ドォォォォン!ごぉぉぉぉ!ソファーに座った音と、体が空気を引き裂く音が聞こえてくる。
組んだ脚に肘を付き、手を顎に当てて、こちらを見下ろしてくる褐色と白の女神。
またお揃いのワンピースを着ている。
麗奈が赤いワンピース、絵里奈は黒いワンピースだ。相変わらずスリットの入ったそれは太ももを隠しきれていない。
奥に赤いショーツと黒いショーツが見えた。

「へぇ、貴方やっぱり綺麗ね。私のシューズボックスの中は綺麗の宝庫なのかしら。」
「もう、絵里奈さんったら。」
身体を震わせ笑いながら麗奈を見る絵里奈を麗奈が照れたように肩を叩く。
ダァン!と音がしてくる。

「それで?紹介願えるかしら?広司。」
絵里奈が優しい顔でこちらを見てくる。
「あぁ、このデカイ男がヒロだ。昔の仕事仲間だな。」

「へぇ、そうなんだ。ガタイは良いわね、頭が光ってておいしそうだわ。」
綺麗な声で、いたずらな目をして唇を舐める絵里奈。
「た・・・食べても美味しくないデス!」
変な声で答えるヒロ。その大きな体が小さく成って震えていた。
「おい、絵里奈あんまり虐めてやらないでくれ。」

「あぁ、ごめんなさい。ついついね。」
にやぁっと笑いながら話す絵里奈に、ますます怯えるヒロ。
「あなた、なんて格好してるよの。」体を震わせ再び笑う絵里奈。
横で麗奈もニコニコしている。

急に褐色の手がこちらに伸びてくる。
仰向けに成った指をこちらに差出し、麗奈が言う。

「近くで見たいから、乗ってよ!」
ドォン!と差し出された指。その爪は紫色のネイルで綺麗に光っていた。
意を決し、徐々にその段に近づくヒロ。そして脚を掛け、奥に進む。
何もない間が続く。紗綾が何故か怖がっている。

「あなたもよ、青い髪の人」
少し真顔に成った麗奈は蒼に向けて赤い眼を向ける。
「あぁ、あたしもかい?」
コツコツと普通に歩いて向かう蒼。綺麗な青い髪靡かせながら何事も無いように爪に乗り、怯えるヒロの横で肩幅に脚を開き堂々としている。
そのまま指は上空へ昇って行った。

「彼女は?」
麗奈の指先を青い眼で見つめながら聞いて来る絵里奈。
「彼女は蒼だ。ちょっとした縁で一緒に成ってな。」

「供物さんね!綺麗な髪してるじゃない。」
絵里奈が手の上に置いた顔を横に向け、顔まで上がった麗奈の指先を見つめながら話す。
"褒めてくれてありがとうねぇ。あんたにゃ何回も吹き飛ばされた女さ。"

「アハハ、よく生き残ってたわね。よろしくね蒼。」
楽しそうに話す絵里奈。

「ほんとに綺麗な髪、うらやましい。」
まだ真顔で話す麗奈。
"あんたの白髪の方が綺麗さ、でかいのに輝いて見えるねぇ。"

「フフッ、ありがとう蒼さん。」
笑顔が戻る麗奈。本当に物応じしない彼女だった。

「その靴、紗綾のかしら良いわねぇ。やっぱり紗綾のデザイン好きだわ。」
"紗綾の店で入るのがこれしか無くてねぇ、服もノビノビだよ。"
ニコニコ笑いながら話す絵里奈に普通に返す蒼。

「蒼さん、スタイルも良いよね。お胸もおっきい!」
"あんたらに言われると嬉しいねぇ、でもデカさでは流石に負けるさ、つぶされちまうよ!"
笑いながら話す蒼に、フフフと笑顔で返す麗奈だった。

「それで、あんたの恰好は何?鍛冶屋の店主かなんかなの?」
"か・・鍛冶屋じゃねぇよ。着る服がなくてよぉ。"

「もう鍛冶屋で良いじゃない、似合ってるわよ!」
アハハハ!と大声で笑う絵里奈、つられて麗奈も笑っているのだった。
なんとか認められたような二人、ヒロはオモチャのようだがまぁヒロだし仕方がない。

白いモヤモヤによって下に降りて来た二人。
その後ろでは白と褐色の脚がブゥゥン!ブゥゥン!と振られている。
相変らず堂々とコツコツ歩いて来る蒼。
その後ろを遅れないように腰をかがめ必死でついて来るヒロだった。

「服のサイズが無いのね、またお買い物行かなきゃ。麗奈ちゃんも自分で服選びたいでしょ。」

「絵里奈さん、良いんですか!?行きましょう!お買い物。」
上空で会話をする二人、少し自分の身支度の時間ができそうだ。
何をしようと考える広司。

「紗綾、あの惑星でなんか良い場所無いの?」
このサイズの会話にも慣れてきた。
"帝都で良ければ貴族街に大きなショッピングビルがありますけど。"

「もう帝都は無いのよ、どこか他の場所は無いの?」
”帝都は無く成ったのか"と自分の惑星が破壊された事を思い出す広司。
"ぇ・・あぁ・・。王国はファッションが盛んですね。王都には行った事無いですけど、大きなバザールがあるみたいです。"

「そうなのね、じゃぁ王都に行きましょう。ジューズラックの中に何か良いのあった?」
"ハイ!見させてもらいました。金色と銀色のパンプスが私は好きです。"
あの中での事を思い出し、8階に有ったパンプスを思い出す広司。

「あれね、わかったわ、早速行きましょう!」
その瞬間、目の前が暗くなる。"俺も行くのか"と少し残念な広司であった。


気付くと雑多な人に囲まれていた。
大きな交差点のようだ。
信号機はどちらも青で車は止まっているが、人が交差点に溢れている。
ふと頭上には大きな商業ビルが見て取れた。
四つ角共、大きなビルが建っている。
その各ビルに大きなオーロラビジョンがあった。
「あの、帝都消滅って書いてあるんですけど、ぁ・・私のブーツ」
オーロラビジョンにはデカデカと<<帝都、巨大な女に消滅させられた?>>というゴシックのような題名と共に、
天から落ちてきた赤い靴底のブーツのヒールがビルに刺さり、その衝撃でこちらに飛んでくる人や車の映像が流れていた。
ビルは衝撃で吹き飛んでいた。
大きく揺れるカメラ。その大地を蹂躙したヒールが持ち上がる。ビルの瓦礫を纏いながらどこかに消えたヒール。
その後またカメラが大きく揺れるのであった。
オーロラビジョンの為か音声が無い。しかし絵里香か麗奈のブーツがどこかのを踏みつけた際の画像のようだ。
「相変わらず派手にやるねぇ。あれに何撃っても効かないんだよ。」
そんな事を言う蒼の声が後ろから聞こえてくる。群衆から一つ出た頭がこちらを見下ろしている。その横に同じ背の大男が居る。
ヒロはその画像を見て、あんぐりと口を開けて固まっていた。
「やっぱり私生きてなかったですね・・・。」呟く紗綾に何も答える事の出来ない広司だった。
交差点が赤に変わる。人の波が止まり、周辺に人が溜まってくる。心なしか蒼とヒロの近くだけ避けられている様だった。
ププッ!とクラクションが鳴る。流れる車を堰き止め1台のリムジンが止まる。
運転席から金髪の女神が降りて来た。
その白い脚に金色のパンプスを履いた群衆から頭半分出た彼女は、こちらを見つめながらと手を振る。
「その頭分かりやすいわね!こっちよぉぉ!」またヒロが弄られているのだった。
彼女の前が自然と開く。その逆側から褐色の女神が出てくる。
銀色のパンプスを履いた彼女。同じようにこちらへコツコツと歩いて出てくると、手を振る。
「鍛冶屋さん~こっちですよ~」
「人気でよかったなヒロ。」そうデカ男に言うと。
「勘弁してくれよぉ。」と言いながらノシノシとリムジンに向かうヒロであった。
前を歩く蒼、コツコツとインターロックの歩いていく。青い髪が相変らず綺麗だ。
横から、「芸能事務所に興味ありませんか?」などと言ってくる者もいるが、彼女と視線が全く合わない。
白と褐色の女神にもう一人白い女神が加わった。
「蒼、あなた大きいわね!何センチあるのよ」
珍しく人を見上げる絵里奈。顔が上を向いている。
「身長かい?軍隊に入った時は210cmだったかねぇ。もう昔の話だけどねぇ。」
「やっぱり胸おっきい!」
「あんたもデカイけどねぇ。私は服のせいじゃないかい?」
そう言い合って居る風景は姉妹の会話のようだ。
「あんたもデカイわねヒロ!」
大柄の男に女神が話しかける。
「あぁ・・・、お前らこんな美人だったんだな。」
呆然としながら話すヒロに、絵里奈が自分の胸丈ほどのヒロの胸板を叩く。
「なんだと思ってたのよ。踏みつぶしちゃうわよ。」
笑いながら言う絵里奈に、ヘコヘコするヒロだった。
"ブーーー"リムジンの後ろからバスがクラクションを鳴らす。動かないリムジンにご立腹のようだ。
ヒロがバスをギロっと向くと、バスの運転手は手を頭に当てヘコヘコとしだすのだった。
「頼りにしてるわよ、鍛冶屋さん!」
そういうとコツコツとリムジンの中に入っていく女神。
窮屈そうに入っていく蒼の後、窓を開けた絵里奈が言ってくる。
「運転お願いね!」
どこかで見た通行の止まった歩道を背に車に乗り込み走り出すのだった。

助手席に座った広司、ごつい男が頭を天井に擦り付けながら運転している。
後ろではコの字に成ったソファーで女性陣が騒いでいた。
「ぉ、酒があるじゃないか、シャンパンかねぇ、あんまりオシャレな酒は似合わないけど旨そうだねぇ」
そういう蒼に麗奈が瓶を取って渡す。
「蒼さん、どうぞ。」
「すまないねぇ、いただこうかぁ」
そう言うとコルクを親指で簡単に抜き、そのままラッパ飲みを始める蒼
「蒼、もうちょっと雰囲気とか無いの?」
「おしゃれなのは似合わないだねぇ。」
後ろから笑い声が聞こえた。いい香りが後ろから漂ってくる。

楽しそうな後ろの女性陣を背に、ナビが角を曲がるように指示する。
5分ほど走っただろうか、アナログ時計は21:00を指していた。歓楽街はまだ明るい。
目的地に着く音声をナビが告げると、大きなホテルの車寄せに入っていく。
「今日は泊まって、明日お買い物に行きましょう。」
車を止めるヒロ、運転席を出てドアマンより先に扉を開く。
「ありがとう鍛冶屋さん。」
後ろから絵里奈の声が聞こえてくる。
広司も車を降りるのだった。

長身の美女3人はどこからでも目立つ。ドアマンがドアを開けずに固まっていた。
金色の持ち手を押し、ドアを開ける広司。
そのシャンデリアがぶら下がる空間に華が咲く。フロントに向かう彼女達についていく。
固まったドアマンにキーを投げるヒロ。そのドアマンが意識を取り戻し車に走っていくのであった。
どうも高級な雰囲気に似合わないヒロと落ち着いた雰囲気の紗綾が後ろから入ってくる。
ここのドアマンは仕事をしないようだ。
トランクマンが呆然とまだ立っている。
フロントに美女3人が立つ。全員が190cmを超えるその風景に縮尺がおかしく感じる。
横にトコトコと走っていく紗綾を見て、やっと縮尺が合う。
その紳士な白髪のフロントは、そつなく仕事をこなしていた。
「ツインとダブルしか空いてないって、違い何なの?」
麗奈がこちらを向いて話してくる。
「ベッドが違うんだよ。この前のはダブルだよ。」
「へぇ、広司なんでも知ってるね!」
紅色の目をキラキラさせて言ってくる麗奈だった。
「ちょっとイチャイチャしてないで行くわよ。」
ご立腹の絵里奈。<<高層階>>と書かれたエレベーターに6人で乗り30階を指すと止まる。
そのまま降りると、部屋割りが絵里奈から発表された。
「この部屋はダブルね!麗奈ちゃんと蒼で泊まってもらうわ」
「蒼さんとだって、よろしくね!」車の中で打ち解けたのか嬉しそうな麗奈。
蒼は黙ってうなづく。
「真ん中のツインの部屋は広司と鍛冶屋ね!」
ヒロは鍛冶屋で固定のようだ。
「私たちはこの先のダブルね、紗綾、明日の打ち合わせをしましょう。」
「ハイ、地図も貰いましたし行くところを見定めましょう。」
元気に言う紗綾に絵里奈が笑顔で返す。

そのまま各自ホテルの部屋へ入っていった。
男二人の暑苦しい空間でエプロンを投げ捨てたヒロ、余計に部屋が暑苦しく成る。
ダブルでなくてよかったと心底思う広司。冷蔵庫から2本700mmのビール缶を出し、腰掛の椅子にドスンと座るヒロ。
その前に同じように座ると、そのビール缶を1本片手で差し出してくる。
「まぁ、乾杯といこうや。」
下の売店で買ったのかわからないが、左手に持って居たビニール袋をガサガサと漁り、
ジャーキーを開けて机の上に出す。その次にウィスキーが出てくる。
「お前それ全部飲む気か?」軽く飲み口を重ねて乾杯をする。タブを開けて、大男は一気に飲み干す。
飲み干した缶を握りつぶしそのまま、また冷蔵庫からビール缶を出す。
「俺さ、今が現実なのか、夢なのかわからねぇんだ。」
グビグビとビールを開けて飲み干すヒロ。もう2本目だ"この男どんだけ飲むんだ"と思うと顔をこちらに向けてくる。
「さっきまで、汚れに汚れて、殺される日々を送っていたと思ったら、その対象が胸を叩いて笑ってくるんだぜ。俺可愛いと思っちまったぜ。」
ジャーキーをつまみながら話すヒロ
「なんだよ、夢なのかどうかはっきり言ってくれよ広司。」
「現実だヒロ。俺も一昨日まで同じ立場だったからな。」
そういってビールに口を付ける広司。
「そうか、そうだよなぁ。まぁ酒飲めるだけいいか。いつ振りだって話だ。」
また冷蔵庫に手を伸ばすヒロ。水のように酒を飲む男だ。
昨日の話をしながら、6本目が終わり冷蔵庫をヒロが空にした時、ドアにノックされる。
昨日の兵士を思い出し、緊張する広司。
「ねぇ、広司、時間ある?ちょっと付き合ってくれない?」
絵里奈の声がドアから聞こえた。
何も言わずウィスキーを開けながら手を振って追い払う仕草をするヒロ。
「いってくるわ。」
そう言い残し、ドアを明け部屋を出た。

金色のドレスに身を包んだ絵里奈。胸元が大きく強調されている。
「紗綾に見繕ってもらったの、良いでしょ!」
ざっくり空いたスリットから脚をニキョッと出しモデルポーズをする絵里奈。
「あぁ、綺麗だよ。絵里奈」
「もう、もっと反応してよ!」笑いながら言う絵里奈に心を射抜かれた。
コツコツヒールを鳴らしながら後ろをついて来る絵里奈。エレベーターに二人で乗り込む。<<最上階ラウンジ>>と書いた大きなボタンを白い綺麗な指が押す。
「紗綾はどうしたんだ?」
「紗綾は部屋で明日のお店探ししてるわ。張り切って相手してくれないのよ。」
ニコニコが止まらない絵里奈。すっと腕をつかんでくる。
大きな胸が肩に当たり、その感触が伝わってくる。
「広司と一度ちゃんと話したかったんだ。」
そう言うとしたを向く。背後の歓楽街の明かりが下方に成った時、エレベーターのドアが開いた。

「お客様、何号室にお泊りでしょうか。」
頭を下げたままウェイターが聞いて来る。
「3012だ。」端的に答える。
「かしこまりました。ご案内いたします。」
頭を上げたウェイターそのまま少し固まると、慌てて窓際の席へ案内される。
椅子を下げる広司。ざっくり背中の空いた金色のドレスはその綺麗な背中を際立たせる。髪をアップにした絵里奈。うなじがなんとも綺麗だ。
そのまま綺麗な尻を椅子に下ろす絵里奈。回って自分の椅子に座る。横を通った時、胸を腕で持ち上げる絵里奈。すこし自分の息子が反応してしまった。
三角ナフキンを真ん中に二人の時間が過ぎる。ウェイターが紳士な老人に変わっていた。
「お飲み物はお決まりでしょうか。」
「白ワインを頂戴、一番高いやつでいいわ。適当につまむの持ってきてよ」
メニューも見ず、答える絵里奈。
「かしこまりました。」と言って優雅に去る紳士。
周りの目が気にならない席を用意してくれたようだ。
「ねぇ、広司、私怖くないの?」
開口一番そんな事を言う絵里奈。この綺麗な女神は都市を破壊した事を思い出す。
「怖いとか通り越しちゃったのかもな。」
重労働と殺戮の日々を思い出す。あそこでは日々何も感じなかった。

紳士が、チーズとサラミの盛り合わせを持ってくる。
バケツに入れられたワインボトルを取り出し注ぐ。
「40年物の王国ワインでございます。」絵里奈の前にすっと置く。
「ありがとう。」自然と返す絵里奈。
自分の前に置かれたワインを取る。
紳士はまた静かに去っていった。
「私ね、今楽しいのよ。賑やかなのは久しぶりでね。」
ヒールを振りかぶりながら、叩きつけて来た彼女とは思えない綺麗な顔で語りだす。
「ずっと一人だったんだ。なんでもできるけど、何も無かったの。」
クルクルとワイングラスを回しながら語る彼女。青い眼がグラスを見つめている。
「でも、こうして広司とこの場所に居る事がすごく嬉しいわ。」
そう青い眼をこちらにやると、グラスを傾けてくる。
絵里奈のグラスより少し下げてグラスを合わせる。チン!グラスの合わさる音がする。
笑顔に成った絵里奈の顔を見て。二人でワインに口を付ける。
「絵里奈を怖いと思った事は無いよ。今も綺麗な姿で前に居るじゃないか。」
取り繕った言葉を投げかける。
「広司にそういって貰えると嬉しいわ。私なんとなく人の心が読めちゃうのよね。」
始めて"まとも"に会ったの時、呼び捨てにしていた事がばれていた事を思い出す。
「それでね、小人を虐めてる時、その感情が体に入ってきて止められなくなっちゃうの。」
また口を付ける彼女。同じペースを意識し、ワインを口に運ぶ。
「俺と、小人は別なんだろ?絵里奈」
「そうね、貴方と今日居たメンバーは何か違う物に思えるわ。」
「ならそれで良いんじゃないか。他人は他人だ。俺も皆が他人とは思えなくなっているよ。」
こっちをじっと見ながらチーズをかじる彼女。その指その口その歯が艶やかだ。動くたび胸元が強調される。
「そうね。広司の反応は楽しいわ。ちょっと驚きにかけるけど!」
そういってワインを飲み干す彼女、紳士がどこからか現れワインを次ぐ。
「麗奈ちゃんは、かなり貴方の事好きみたいよ。」
新しく入ったワインを取りまた回しだす彼女。香りを楽しんでいる。
「そうなのか、俺正直そういうの解らなくてな。」
紳士が俺のワイングラスにも新しく次いでいくと、またどこかに消えていった。
「もう私にも彼女は止められないから、ちゃんと受け止めて上げなさいよ。」
笑いながら伝えてくる彼女。またワインに口を付ける。
「私と一緒で感情も読み取るし、もうお酒や毒も効かないでしょうね。食事や睡眠も要らないと思うわ。」
不思議パワーに更に拍車がかかる。
「私も立候補して良いかな?」高い場所からかなり顔を下げて上目遣いをしてくる絵里奈。
「あぁ、もう射抜かれてるよ。」
「もう、ほんとそういう反応だけは薄いわね!」
楽しそうな会話をする彼女と、昨日の麗奈の事や今日の車内での話で時間が過ぎていった。

「そろそろ明日に備えましょうか。顔真っ赤よ広司。」
いつもの顔の絵里奈が話しかけてくる。
「絵里奈様は酔えないんだろ?俺たちの特権だ」
「もう、生意気ね踏みつぶしてやろうかしら。」
笑いながら話す絵里奈に支えられ、エレベーターを降りるのだった。テーブルにはリップの跡が残ったグラスが置かれていた。
部屋の前でバイバイをする絵里奈。満面の笑みを浮かべている。少し名残惜しいが、俺は鍵を開け部屋に入る。
クマの様なイビキを搔きながらそのまま椅子で眠る大男と、空のウィスキーのボトルが俺を迎えてくれた。


青い髪を靡かせ入っていく蒼の後に部屋に入る。
蒼さんは窓を開けるとその脇にある椅子に腰かける。
その長身のせいか、椅子がかなり小さく見える。
「麗奈ちゃん、まだ飲んでいいかねぇ。」
そう紫の目を弛ませながら聞いて来る蒼さん。
「いいですよ、好きなだけ飲んでください!」
蒼さんの晩酌に付き合う事にする。
車中のシャンパンやワインを全部空けた蒼さん。
その大きな胸はお酒が入っているのだろうか。
顔色は最初と変わらない。少し顔が緩んだだけだ。
麗奈は自分で冷蔵庫を明け、あるだけのお酒を持って行く。
「ありがとうねぇ、麗奈ちゃん。なんか申し訳ないねぇ。」
そう言うと銘柄も見ず、缶を開ける蒼さん。
すらっとした首筋で動く喉ぼとけが綺麗だ。
私もその椅子に腰かける。
「あんな風に見えるのかい?」下をその紫の目で見つめる蒼さん。
「もっと小さいです。本当に点に見えます。」
昨日の事を思い出す。
「あの道だと私の足が半分ちょっとしか入りません。」
片側3車線の道を見ながら昨日の光景を思い出す。ちっぽけな道、ちっぽけな箱。
そこに聳える自分の足。その周りに居る微生物のような人間達。夜の情景も相まって、少し股間が熱くなってくる。
2本目に入った蒼さんは、続けて聞いて来る。
「そうかい、そんな小さいのかい私達は、そりゃぁ勝てないねぇ。」
窮屈なシャツを脱ぎだす蒼さん。
「暑いねぇ、どんな感触なんだい?やっぱり固いのかねぇ。」
「正直何も感じません。私の性器でやっとちょっと感じるぐらいです。」
私も暑く成ってくる。
「麗奈ちゃんまで脱がなくて良いんじゃないかねぇ。」
自然とブラジャーとショーツだけに成っていた。ケラケラと笑う蒼さんは、大きな胸をブルンブルンと震わせながら下のデニムまで脱ぎだした。
紫のパンプスだけの姿に成る蒼さん。
その胸を見ていると昨日の絵里奈さんの攻撃を思い出す。
「でも、小人の町でやると気持ち良いんです。昨日も絵里奈さんにやられちゃいました。」
「へぇ、そうなのかぃ。そうやって帝都?やらであそんだのかい。」
言ってる間に次々とお酒を入れていく蒼さん。まだ座ってすぐなのに半分も無くなってしまった。
「はい、帝都も最初はこんな感じで大きかったんですけど・・・」
一昨日の事を思い出す。最初に広司と見た帝都は正に摩天楼だった。
そこに君臨する私、溢れてくる股間を止められない。
「蒼さんちょっと付き合ってください。」
「ぇ?なにをだい?」
そう言うと自分より大きい蒼さんの肩をつかみ、ベッドへ押し倒してしまう。
あまりにも力を感じなかった。
「麗奈ちゃん、力強いねぇ。押し倒されちゃったよ。」
ケラケラ笑う蒼さんの爆乳に、昨日の生き残りを転送する。
「なんだい?この小っちゃい点は。」
その乳首と比べてもあまりに小さな点を見て、ますます股間が熱く成ってくる。
「これが人かぃ?なんにも感じないねぇ。」
そう言うと自分の胸を人差し指で突き刺す蒼さん。弾力のある胸が指を押し返すが、そこに居る小人はその間に挟まれ死んでしまった。
キーキー叫ぶ小人に少しイライラしてくる。
「うるさいねぇ、声だけは一人前だ。」
そう言うと青いさんが、自分の胸をもみ砕く。
全ての点が消えてしまった。
「終わりかぃ?こんなんで楽しく成るのかい?麗奈ちゃん。」
私の股間に蒼さんの指が入ってくる。
「アァァァ・・・」ピンポイントな攻撃に思わず喘いでしまう。
「いいねぇ、麗奈ちゃん良い声で鳴くじゃないかぁ。」
紫の目がギンギンしている。絵里奈さんもしていたあの目だ。
蒼さんの性器に小人を転送させると、そのまま吸い付く。
「ウゥゥン、結構いいじゃないかぁ。」
開いている手で私の乳首を弄ってくる蒼さん。すごく上手い。
「アァァァァァ・・・イイ・・」もうどうでも良く成ってくる。快感にすべてを任せる。
蒼さんの豆を嘗め回す。
「ヴゥゥゥゥン、そこを攻めるのかいぃ?」
妖艶な声で呻く蒼さん。胸が寂しい。
蒼さんのお腹いっぱいに転送させた小人、それを胸で引き潰す。
「アァァァァ、イイワァ、そうよもっと頑張ってよぉ」
感触は無いが、その小人の恐怖心を感じ取った私は、より強く感じてしまう。
「そこがぁ、アウゥ、お留守なのかぃ?」
すり潰した胸をそのまま持ち上げ、蒼さんに甘噛みされてしまう。
激しくピンポイントで攻めてくる指と気持ちいい乳首の感触に早くも絶頂を迎える。
「ア゛、ア゛ァァッァアァァ・・・」
噴き出した股間に優しい刺激が続いている。
「"歴"がちがうんだよねぇ、麗奈ちゃ、ン!」
その後、何回逝かされたかわからないが、ずいぶん長い間攻められた。

息も絶え絶えになり、もう力が入ってこない。
でも蒼さんは、まだ一回も逝っていない。すこしにやけた程度で自分でやろうとしている。
十分自分の気は入った気がした麗奈は蒼を覚醒させようと決意する。
「蒼さん・・実は絵里奈さんから蒼さんの事任せるって言われてるんです・・・。」
重なりあった耳元でささやく。蒼さんの胸が当たって気持ちいい。
「任せるってあれかい?さっきみたいに小さくして玩具にされちゃうのかぃ?もうちょっと楽しみたかったねぇ」
紫の目が急に遠くを向いた。
「そうですね、でも、逆も出来ちゃうんです。」
そう言って、ボタンを押す麗奈。蒼から何かが溢れてくる。
「ん~?逆かい?私も都市を滅ぼしちゃうのかねぇ。」
ケラケラ笑う蒼さん、その胸に小人を転送させる、もう最後の在庫だ。
「やっぱり何も感じないねぇ、この小さいのがとっておきかい?」
「そうですよ!蒼さん!」
そう言うと胸の点の蠢きに白い歯を向けながら、迫る。
小人の恐怖感が感じられ、ゾクゾクしてくる。
「あぁぁ、なんだねぇこの感覚は。」
今まで出さなかったかすれた声を出す蒼さん。
そのまま指で性器を、口で小人と共に胸を攻める。
「あ゛アァッァァ、いいねぇぇ」背中が跳ね上がる蒼さん。
その綺麗な青い髪を指がくしゃくしゃにしていた。
舌で小人を巻き込み乳首を嘗め回す。
「そ・・・そう来るのかねぇェ。ア゛ァァァァァ・・」
私の指とホテルの床がべちゃべちゃに成っていた。
「蒼姉さん、どうだった?」
勝ったと、聞いてみる麗奈。
「ハァ、ハァ、」と顔を赤くさせた蒼姉さん妖艶な顔でこちらを見てくる。
「もう一回だねぇ、いいねぇ、もういっかいだねぇ。」
「もう在庫無く成っちゃいました。」
「無いのかね!そんなぁ麗奈ちゃんんん」
遠吠えがまだ煌めく街に響いた。


"良いとこまで行ったのになんでもっと空いてないのよこのホテル"部屋に入っていく広司を見ると、このホテルを踏みつぶしたくなる。
所詮小人のホテルだ、どうせ無く成るんだからと思う。しかし、紗綾や蒼が泊っている事を思い出し、少し落ち着く。
「ぁ、お帰りなさい!絵里奈さん!・・・あまり楽しくなかったんですか?」
自然と強張っている顔に成っている事に気づく。
「楽しかったわよ。ありがとう。この服。落としかける所まで行ったわ。」
口元が吊り上がっていく。
「そうなんですね!お役に立てて良かったです。」
嬉しそうな顔をする紗綾。机の上には丸を書いた地図が広がっていた。
「紗綾。ちょっと楽しい事しよう?」
「楽しい事ですか?是非!」
笑顔で承諾する紗綾の服を空間に飛ばす。
戸惑う紗綾に自分の服も空間に飛ばす。
そのままベッドに紗綾を押し付ける。
「絵里奈さん、楽しい事って・・・。」
そのまま小さな口に口づけをする。
舌で小さな口を攻める。小さな舌が私の中に入ってくる。
紗綾もまんざらでもない様だ。
「紗綾ちゃん、ここはどうかなぁ?」
指で豆を探りつつく。
「アアァァ・・」何も言わず気持ちよさそうに喘ぐ紗綾。
「気持ち良いのかなぁ?」
空間から宇宙戦艦を取り出す。30cmほどの棒だ。微生物のような小人が入ったまま保管してあった。
その棒を紗綾の割れ目に突っ込む。
「ア゛・・・・アアッァァ」更に喘ぐ紗綾。そのまま自分もその戦艦に割れ目を突っ込む。
「アァァァァ良いじゃないコレ!」興奮していたのか快感が流れる。
そのまま腰を振る。パァン!パァン!と心地よい音がする。
「アッ!アッ!」二人で部屋中に響く音で喘ぐ。
紗綾ちゃんも腰を振り出した。
パァン!パァン!パァン!ギシギシなるベッドと腰が打ち付ける音、そして二人の喘ぐ音が部屋中に響き渡る。
「あぁっぁぁ、い゛ぃぃぃぃぃイクゥゥ。」二人で一緒に絶頂を迎えるのだった。
ハァハァ息を立て、顔を赤くしている紗綾ちゃん。その戦艦だった物を抜く。
「アァァァ」少し喘いだと思うとそのまま茶色の目がこっちを見てくる。
「絵里奈さん、もっと欲しいです。」胸の下から言くる紗綾ちゃん。
私もまだ行けそうと思い、今度は船に浮かぶ洋上戦艦を出す。
そしてまたぶっ刺した。
「ア゛・・・ああぁぁぁ」先ほどより縮尺が上がった洋上戦艦からはサイレンと砲台の音が聞こえる。
関係ないとそのまま私のにも突っ込む。先ほどと違い角が当たって気持ちいい。
同じ気分なのか、紗綾もまた始めだす。パァン!パァン!
その日私のコレクションは15隻も無く成っていた。


酒が覚めたのか夜中に起きた広司、トイレに入り用を足していると、奥の部屋から喘ぎ声が聞こえてくる。
"お盛んだなぁ"と思ってよく考えてみると麗奈と蒼の部屋だった。
どうしようもない気持ちで床に転がり椅子にかじりついている肉塊を避け、自分のベッドに入ると逆の部屋からも同じような喘ぎ声とパンパンいう音が聞こえてくる。
布団にもぐりこみ意識が遠く成るまでかなり時間が掛かった。
目が覚めると、大男が鍛冶屋に戻っていた。
「おう、目ぇ覚めたか?朝飯食いに行こうぜ!」
そう言ったヒロは、水をガバガバ飲んでいた。
少し引きずる眠気に、朝の冷たい水が顔に当たると頭が冴える。
備え付けの歯磨きを使い、何故か一個空いている髭剃りと違う新しい髭剃りで顔を整える。
「お前髭剃り使うのか?」
「この頭はどうやって維持してると思ってるんだよ!」
「それ剃ってたのか・・・」
あの物資の無いシューズボックスで、どうしていたか非常に疑問だったがそっとしておいた。

エレベーターで一階に向かう。カフェについて大男と一緒に注文を取る。
朝から4セットとか言っている彼に多少びっくりするが自分の体積の2倍はある彼にその質問は愚問だと思い、コーヒーに口を付ける。
なんとなく置いてあった新聞に目を通す。
一面は帝都の話だった。航空写真と共にグチャグチャに成った大地と赤茶げた地面をえぐる大地が見える。時折取り残されたように街があったが、その街も建物が半壊しているようだ。
所々にクレーターと丸い穴と、つま先のソールの形をした足跡が見える。彼女達の作った足跡だろう。
新聞の内容を見ていくと、<<王国の最終兵器帝都陥落>>と書いてある。素晴らしい大本営だと思った。
二面は共和国の事だ、9mほどの女兵士が共和国軍とされる戦車を踏みつけている。破壊まで至らないようだがその戦車は沈黙しているようだ。
だが写真の奥には倒れている同じ大きさの男が移っていた。
<<所属不明の軍隊共和国を襲う。首都は目前!>>と書かれた記事に共和国の首都とされる場所と、壊滅したであろう場所が見て取れる。
周りの要塞等無視して突き進んでいるようだった。
次からは、貨幣通貨の崩落の話、帝国のカードや信用機関が使えなくなる趣旨の経済の話だった。
帝国の通貨は1=0.00000・・・と意味不明な桁を叩きだしていた。一方で共和国の平均株価はストップ高だ。
芸能覧を見るとドレッサー賞の話が載っている、絵里香の方が綺麗だなぁと思って読み進めていると、
バザールでの実質奴隷の問題について。という記事が載っていた。
そこで綺麗な青いネイルをした綺麗な白い指に新聞を取り上げられる。
「へぇ、派手にやってんだねぇ」
青い髪を搔き上げながら一面を見ている美女がそこに居た。
昨日と違い化粧をきちんとした蒼は一段と光って見えた。横に座ってずっと何かを食っている獣とは正反対だ。
ドン!とヒロの横に座る蒼。長い脚を組み紫のサンダルが机の上に来てしまう。デニムのズボンは今にも弾けそうだ。
「私にも横の奴の貰えるかなぁ、コーヒーでいいさぁ。」
固まるウェイターに注文する蒼。ロボットのように掛けていくウェイター。途中でコケていた。
「王国の最終兵器かぁ、たいしたもんだねぇ」
ケラケラ笑いながら言う蒼、相変わらず大きな胸が苦しそうなTシャツを着ていた。
「よく食うねぇ、ヒロ~」
そう話しかけられた食事中の獣は手に取ったサンドイッチを更に落とし固まっていた。
料理を机に並べるウェイターは蒼を見ながら顔を赤くしている。
「金とっちまうぞぉ。」
ケタケタと笑う蒼にウェイターは逃げるようにしてカウンターに入っていた。
「こりゃ、大儲けできそうだなぁ」
と言いながら綺麗に塗られた青い足先を見せつけるように揺らす。慣れた手つきでコーヒーと四つ折りにした新聞を楽しむ蒼。
広司も見とれていると横にいつもと違う香りを纏った紗綾がやってきた。
「おはようございます。皆さん。」胸が見えそうな肩をざっくり出したセーターに、タイトな皮のズボンを履いている。
ベージュのパンプスを履いた紗綾はどこかのOLのようだった。
栗色の髪がサラサラと流れる。皮のズボンが動くたび独特の音を出していた。
「おはよぉ、紗綾ぁ」独特な声が新聞をどけ挨拶する。
「おはよう、紗綾。」横の胸の谷間を思わず見ながら言ってしまう。広司。
今まで気づかなかったが紗綾はスレンダー美人だ。
「おぅ、今日は美人さんだな。」まだサンドイッチ手に持ちながら言う鍛冶屋。
新聞が紗綾の目に入る。
「帝都無く成っちゃったんですね、ホントに無くなったんだ。」
普通に言う紗綾。蒼が持って居た新聞を紗綾に渡す。
「私の貯金・・・」小さくつぶやく紗綾が少し肩を落としていた。
1時間は談笑していただろうか、4人で今日の予定などを話していると、後ろから歓声に似た何かが聞こえてくる。
赤と黒のワンピースを着た女神がエレベーターから降りて来たのだ。
コツコツ並んで降りてくる二人。
「ずいぶん遅いな、寝なくても良いんじゃなかったのか。」
「昨日は激しかったからね。余韻が収まらなかったのよ。突然つぶされたくないでしょ?」
モジモジし出す他の女性陣。昨日の夜中を思い出す。
?が浮かぶヒロは幸せ者だった。

「ここから5分ぐらいでバザールだから歩いていきましょう!」
「バザール楽しみ!」
満面の笑みで言う麗奈。
「ぁ、あとお金ね。あのカード使えなくなっちゃったのよ。」
新聞を思い出す。絵里奈の綺麗な指にポン!と10000と書かれた札束で出てくる。
今日は靴と合わせた金色のネイルだ。
カフェのメニュー表には1.2とか0.8とかが並んでいる。記号も一緒だ。
唖然としていると、麗奈の綺麗な手が伸びてくる。赤色のネイルからポン!と同じ札束が出てくる。
「広司足りないの?」
紅色の目がこちらを心配そうに見てくる。
「いやどれくらいの価値なんだこれ。」
青い眼でこちらを見てくる絵里奈に顔を向けると、後ろから呪文が聞こえてくる。
「私の店の売上の1000倍・・・私の店の売り上げの1000倍・・・」
ぶつぶつと呟くOLさんに麗奈が別の手を差し出す。
「紗綾足りないの?」
そう言うとポン!と同じ札束が出てきた。
「い・・頂きます。麗奈さん。」
その札束をポーチに仕舞う紗綾。
「私も欲しいんだなぁ。」と麗奈から貰った札束を胸の谷間に仕舞う蒼。
「どうぞ、蒼ねぇさん!」蒼は麗奈のお姉さんに成ったようだ。
「おれもくれよぉ。金ないと何も食えねぇでこまるんだよ。」
ツカツカと近づく絵里奈に少し身を引くヒロ。
「なに避けてんのよ、はい鍛冶屋の分」
そう言うとまたポン!と出した札束を受け取り、パツパツの皮のズボンに押し込むヒロ。
「あんたお金の使い方わかるの?」
「馬鹿にすんじゃねぇよ!」
ニヤニヤ笑いながら言う絵里奈に、顔を赤くしたヒロが反論していた。

今日はフロントに白髪のあの人はいない様だ。あんぐり口を開けて固まるフロントに金と鍵を渡して、ホテルを出る。
ドアマンは学んだのか腰を下げたまま頭を動かさなかった。
混雑する道を歩く一行。カツカツとヒールを鳴らして歩く一行はよく目立つ。
街の通行を妨げながら、バザールまで歩いた。
上に<<バザール>>と書いてある看板、その通りは歩行者天国の様で道一杯に人があふれている。
道路のど真ん中に露天が広がり、道の端にある2~3階の建物も全て商店のようだ。
「紗綾ちゃん、計画通り案内お願いね。」
そう言うと、紗綾が、蒼とヒロの手を引っ張る。
「私が案内します。お二人は大きいサイズなので専用のお店を回りましょう!」
「鍛冶屋しっかりすんのよ。」
「おう、いい加減鍛冶屋ってのやめねぇか。」
またニヤニヤする絵里香とやりあっているヒロ。
「よろしくたのむねぇ、紗綾ぁ」
学生と大人の様な蒼と紗綾は手を繋いでコツコツ行ってしまう。
「おい、置いていくなよ」
ヒロがその後を追いかけていった。
ケラケラ笑う麗奈と絵里香。
「広司と絵里香とデート!」そういう麗奈が腕を持って行く。
「もう、麗奈ちゃん!」絵里奈が逆の腕をつかむ。
両肩から胸の感触がして少し赤くなると、周りの男性陣からの殺気を感じた。
群衆の中を歩く。流石にこの中をあの体制で歩くのは無理だ。そして埋もれているのは俺だけだ。
ヒールを履くと190cm近い彼女達、歩くたびデカイ胸が躍るように跳ねる。
周辺には自然と空間ができて、彼女達は歩きやすそうだった。
途中の露天を見て回る一行。ふと広司は疑問に思う。
「なぁ、お前たちのサイズもそんな無いよなぁ。」
フリルのついたワンピースを真剣な目で見つめている麗奈。
「私たちにサイズとか関係あると思うの?」
「あぁ、すまん、意味のない質問だった。」
物のサイズを自由に出来る彼女達にサイズなんていう概念は無かったのだ。
奥に奥に進んでいく。主に麗奈が興味を持った服は片っ端から買っていく。
俺の両手が紙袋で一杯だ。
「広司持とうか?」
麗奈が紅色の目を向けて心配そうに聞いて来る。
「大丈夫だ麗奈。まだまだ持てるぞ。」
食いつく紐に痛みを感じながら、"男の意地だ"と麗奈の提案を断るのだった。
途中、生身の人間に服を着させて売る商店がいくつか見える。
学生のような子に娼婦の様な恰好の者まで様々だ。
その来ている服に興味を示す麗奈。
「べっぴんさん、その服が気になるのかい?」
胸元の大きく開いたカーディガンにミニスカートを履かされた女の子の服を見つめる麗奈。
高校生ぐらいだろうか、その成長した体に顔が追い付いていない。黒髪黒目の綺麗な子だ。
「その子なんで怯えてるの?」
店主を見下ろし聞く麗奈。
「怯えてる?そんな事言わないでくださいよ。これが彼女の仕事です。」
つばを悪そうに喋る店主に彼女達の能力と、新聞を思い出す広司。
「奴隷?なのか。」
あまり考えず言葉を発する。
「お前警察か!クソッ!」
そのまま女の子の手を引き奥へ逃げようとする店主。
「ダメ、なんで逃げるの。」
常人とは異なる能力を持った麗奈が綺麗な手で店主を掴む。
「くそぉ、この女、馬鹿力か!最近の警察はえらく美人も居るんだな!このアマ!」
投げ台詞を言う店主に麗奈の顔がどんどん強張っていく。
「小人の癖に生意気。」
そう言うと店主は突然消えてしまった。周辺の客と店主がビックリしている。
「ちょっと麗奈ちゃん。まだ早いわよ。」
ニヤニヤしながら話す絵里奈。目の前の服を全て持って行こうと服を重ねていた。
「ここは違反店として押収します。お騒がせしました。」
咄嗟の嘘に周辺が通常を思い出す。
「広司!ありがと!」
抱き着いて来る麗奈の足元に赤い染みが見えた。

少し離れたベンチでアイスクリームを食べながら座る麗奈と絵里奈。
真ん中にはあの女の子が居る。
「あなた名前なんていうの?」
「名前無いです。生まれてずっとあの商売です。」
優しく話しかける絵里奈に無表情で返す女の子。
「名前無いんだ・・」
アイスを片手に足を組んでその綺麗な褐色の脚をぶらぶらさせている麗奈周囲の男性たちの注目を集めている。
「とりあえず、一回ホテルに戻ろうか?」
「ホテルです?私お金ないです。」
「お金なら大丈夫よ、あのお兄さんが一杯持ってるから。」
笑った顔でこちらを見てくる絵里奈。
「そうですか。行く場所ないです。連れて行ってくださいです。」
黒い眼でこちらを見てくる女の子に、無言でうなづくのだった。


後ろから2つの壁がついて来る。
片方はカツカツとヒールを鳴らしながら、もう片方はノシノシと歩いている。
「あぁ、あそこでお酒売ってるねぇ。ちょっとまってねぇ。」
そう言うとカツカツと人の波をかき分け行ってしまう蒼さん。
「ちょっと蒼さん!」波に飲まれて違う方向に流されそうになる。
太い丸太のような手が私を掴む。
「嬢ちゃんあぶねぇなぁ」
ヒロが近くに寄り人の波をかき分ける。
「ありがとうございます。ヒロさん。」
「いいって事よ、ほらいくぞ。」
上も横もヒロさんは、人の波をかき分けながら私を連れて行ってくれるのだった。

「一番大きい酒貰えるかねぇ」
その露天の屋根を手で押さえながらかがんで注文する蒼。
店主は目の前にある胸を見て固まる。
「お金かねぇ、あるよぉ」
そう言うとその胸元をまさぐり札を一枚出す。
周辺の客もそのはちきれんお尻と輝く脚にくぎ付けだ。

露天の屋根を突き破りそうな蒼さんがそこに居た。
長い脚がキラキラと輝いている。
何やら樽の様なジョッキを持って満足しているようだった。
「紗綾ぁ、すまないねぇ。どうも、昨日から酔えなくてねぇ。」
その樽は人が片手で持つものなのだろうか。蒼さんの手が若干食い込んでいる。
グビグビ飲み干す蒼さん。ズン!とその樽を店前に置く。
「もう一杯もらえるかぃ?」
そう言うと、近所の露天商と一緒に同じ樽を3人で担いでくる。
蒼さんは、また片手で持ち上げるとそのまま口へ流し込んだ。
「人間やめてんな、あいつ。」
上でヒロさんが言う。何も返せなかった。
結局5樽を飲み干して「薄いねぇ」とだけ言ってツカツカとこっちに戻ってくる蒼さん。
周辺の人々は蒼さんから距離を取っていた。
「おう、満足したか?」
髭をモゴモゴ言わしながら言うヒロさんに、少し眉が下がった蒼さんが答える。
「全然酔えなくてねぇ、なんかおかしく成っちまったかねぇ。」
あんだけ飲んで全く変わらない引き締まったウエストに、"うらやましい"と思う紗綾だった。
二人の先導で目的の店を目指す。前のツインタワーは酒の話で盛り上がっている。
ふいに尻を掴まれる。
「キャッ!」と反射的に叫んでしまう。
振り返ると首根っこを掴まれた男が浮いていた。
「あんたねぇ、私の連れにてぇ出すのかぃ?」
見たことない怖い顔で捕まえた男を持ち上げる蒼さん。
私より小柄なその男は彼女の2/3も無かった。
「ごめんなさい、つい手が当たっただけなんです。」
かすれる声で言う男に野獣が詰め寄る。
「お前、しっかりつかんでたよなぁ?あぁぁん?」
同じ大きさの筋肉の塊がその男に詰め寄る。
騒ぎを聞きつけた警察官が2人こちらに向かってくる。
「どうされましたか?もめごとですか?」
「こいつがねぇ、わたしの連れにてぇだしたんだよぉ。」
男をひょいと持ち上げている蒼さんを見上げながらが訪ねる。
「わかりました、こちらで処理しますので、下ろしていただきますか?」
蒼さんが投げ捨てる。股間をビシャビシャに濡らした男はガタガタ震えながら警察官に連れていかれた。
「あそこで離してんじゃねぇかあいつ等。」
その後少し歩くと、警察官の方を見てヒロさんが言う。
「ワイロかねぇ、どこも一緒だねぇ」
そういう蒼さんはコツコツと変わらぬ様子で歩いていた。

目的の店に付いた一行。
<<大きい!>>と書かれた看板の店はあまり流行っていないようだった。
奥から出てくる普通の男性。
「らっしゃいませぇぇ、お二人大きいですねぇ。どのような服をお求めでぇ?」
八百屋のような掛け声でこちらに話してくる。
「とりあえずねぇ、着れればいいのさぁ。」
「そうだな、この格好酷いだろ?」
余り変わらない顔をした店員が、奥から服を持ってくる。
「服もいいんだけどさぁ、下着はないかねぇ。」
そう言うと、誰が履くんだろうと言うボクサーパンツやトランクス、色とりどりのランジェリーを両手一杯抱えて持ってくる店員。
「奥借りるよぉ。」
そう言うと店員が持ってきた下着類を片手で掴み、試着室に籠ってしまった蒼さん。
「俺もちょっと借りるわ。」
同じく奥に入ってくヒロさん。
「お客様、下着は試着できません!」
普通の口調に戻った店員にお金を渡す紗綾だった。
下着の試着が終わり、そのままの姿で店内の服をあてがっていく蒼さん。
店員とヒロが顔を赤くしている。
ちらちら蒼さんを見ながら、服を数着選んだヒロさん。
「これ貰うわ、これで足りるか?」とポケットから詰め込んだ札をカウンターに出す。
目を得$マークにする店員に、蒼さんが追加で服を出す。
「これも一緒に会計しておいてくれるかねぇ?」
そういう蒼さんは、がっつり胸元の開いたカーディガンにショートボトムパンツを履いていた。
余計に妖艶に見える気がするが"蒼さんが選んだのだ"と口をつぐむ。
「なんかあったみたいだねぇ」
遠くを見ている紫の目。その瞬間、目の前が真っ暗に成った。


女の子に居場所を奪われた俺は、彼女たちの後ろを付いて歩く。
「私が絵里奈よ、横の褐色の彼女が麗奈。後ろで付いてきてるのが広司ね。」
挨拶をするまでも無く、紹介を済ませる絵里奈。
「わかったのです。よろしくなのです。絵里奈さん、麗奈さん」
俺への挨拶は無かった。
ホテルに着きチェックインをしようとする。しかし"追加の人数変更"はできないと言われる。
見るからにイライラしている麗奈。またフロントマンを踏みつぶしてしまわないか不安だ。
「一回舟に帰りましょう。麗奈ちゃんは紗綾ちゃん達を待っててくれる?」
そういう絵里奈。
「蒼ねぇさんは転移できるよ。」
何気なく返す麗奈に、普通に納得した絵里奈はそのまま船に帰るのであった。



意識が戻ると、あの玄関の上に浮いていた。
横にはヒロさんが居る。その先に白い輝く壁が見えた。

「へぇ、これが小人かい?」
ドォン!足元から轟音が鳴る。白い輝く脚に履かれた紫のサンダルは小さな点を飛ばしていた。
綺麗な青いネイルをした足と比べてなんて小さい点なんだろう。
横に少し小さめの金色と銀色のパンプスが並んでいる、
その周辺から小さい点が逃げているのが分かる。

「根性だしなぁ、ほら逃げなよぉ。」
ドォン!ドォン!玄関を支配する音が鳴る。
上にある紫の目がギラギラとしていた。口元は吊り上がっている。

「ハハァ!こりゃいいねぇ!」
ドィォン!少し大きな音がしたかと思うと、金色のパンプスがコケる。
ドン!という音と共に周りの点を吹き飛ばした。

「蒼ねぇさん、遊んでないでこっちきてよ」
麗奈さんの爆音が聞こえる。

「麗奈ちゃん、わかったよ。仕方ないねぇ。」
パンプスのバックルに手を掛けると、革の紐を緩める。
その暴れていた紫のパンプスを乱暴に脱ぎ捨てる。
ダァン!ダァン!多くの点に直撃する。

「ちゃんと並べてきれいにしておくんだよ!」
そう言うとドォン!ドォン!と廊下を歩いていく蒼さんだった。
"やっぱ人間やめてたんだなあいつ"
ヒロの声が聞こえる。

「なんだぁ?あんたもつぶされてぇのかい?」
身体が震えるような声が上から降ってくる。
"かんべんしてくだせぇやぁ"
ケラケラと笑う声が廊下を震わせていた。

白いモヤモヤがあの広い地面に着く、私の店の前に広司さんと見知らぬ女の子が居た。
いつもの方向には褐色の塔と、白い塔が見える。
相変らずゴォォォ!ゴォォォ!という音を鳴らして揺れていた。

ドォン!ドォン!と移動する白い塔、ズゥゥゥゥン!と麗奈さんと絵里奈さんの逆側のソファーに座る蒼さん。

「どうしたんだい?急に帰るってさぁ。」
綺麗な声が聞こえてくる。

「また広司が新しいの拾ったのよ。」
「今回は私かもしれない・・」
ケラケラ笑う絵里奈さんに、すこしにやけ顔で話す麗奈さん。
"今回は俺じゃないよ"
広司さんのやるせない声が聞こえてきた。

「その子名前が無いの。」
紅色の目を女の子に向ける麗奈さん。ビクン!と女の子の身体が震える。

「とりあえず一晩考えましょう、家からは出ないようにね!」
そういうと、蒼さんの手を取って出ていく麗奈さん。
ドォン!ドォン!ドォン!と絶え間ない足音が響く。

「今日は絵里奈ちゃんが相手してくれるのかぃ?元祖はどんなんだろうねぇ」
そいいうとまたケラケラ笑う蒼さんの目はギラギラが増していた。

「負けないわよ!このおっぱいお化け!」
ぎらつく青い眼をした絵里奈さんが笑顔で答えていた。

「今日は一人、どうやろうかな」
ドォン!ドォン!と足音を鳴らしながら遠ざかっていく麗奈さんの紅色の目もぎらついている。

遠ざかる足音を感じながら、ヒロさんに声を掛ける。
「ねぇ、ヒロさんあれって・・・」
「考えちゃいけないんだ。解らない世界だってあるぜ。」
現実逃避をしながら私の家に向かうヒロさんだった。

「私紗綾って言います。よろしくね!」
店に帰った紗綾は、女の子に挨拶をする。
「俺はヒロだ、よろしくな。」
横の野獣はさっきの出来事で疲れたのかあまり元気がない。
「紗綾さんとヒロさんです。よろしくです。」
頭を下げ挨拶をしてくる女の子。
「この子名前が無いんだって、ずっと奴隷だったって。」
「私聞いたことあります、王国で奴隷取引がまだ残ってるって話。」
その後、私は知っている事を話す。
昔は王国では奴隷が普通だった事、現在でも一部残っており、戦争孤児などがその対象である事や、田舎の村で奴隷狩りがされたりしている事。
皆が黙って聞いていた。
「そうなんだな、結構根深い問題みたいだな。」
広司が手を顔に当てて考えている。その横でヒロが髭をさすっていた。
「麗奈さんがたすけてくれたです。」
すこし怯えながら話す女の子。さっきの風景を思い出したのだろう。
最初に女神達の姿を見ると恐怖で立てなくなってしまう。
私もそうだった。
「とりあえず、明日考えましょう。絵里奈さんも明日って言ってましたし。」
うなづく一行、寝室とリビングで男女に分かれて眠りにつくのだった。


トイレに向かう広司、ふと絵里奈の家から出るなの言葉が気になった。
出るなと言われると出たくなる。何かいたずら心で店を出た広司。ただひたすらに後悔した。
揺れ続ける地面、ダァァァン!ダァァァン!と爆音が部屋にこだまする。
「アァァァイイネェェ流石エリナちゃんだねぇ。」
艶やかな声が聞こえてくる。
「イ゛イィィィ!スゴォォイィィィ!」ダァァァァァンダァァン!と向こうの壁が震えていた。
絵里奈が吼えている。

違う方向からも咆哮が聞こえる。
「ソコジャァァァナイノォォォ!」 ダァァァァン!
「チガウッテイッテルジャァァァイ!」 ダァァァン!
「アァァァ、もうぅぅ、ん、今の良いじゃナイ?」
「ア゛アァァァァさっさと、ン、しなさいよぉぉぉ」ダァァァァン!
麗奈が吼えていた。
何が行われているのか詳しくは解らないが、彼女達の靴が飛び跳ねるほどの振動が船を襲っている。
実際そこら中から小人の悲鳴が聞こえてくる。ドン!ダン!と何か物が落ちているのだ。
だが彼女達の咆哮は止まらない。

「イィィネエッェェ!もっといい声出るん、ア゛アァァ!そうくるのかねぇぇぇぇ」ズガァァァァッァァァン!
「アオイィィィ!ぞこぉぉぉぉ!もっどぉぉぉぉ!」ダァァァッァアッァァン!
全てが壊れるような音がする。

そっと扉を閉じて店に帰った広司はスヤスヤと眠る野獣を見ながら、こいつはまだかわいいもんだと床に就くのだった。