目が覚める。床で寝ていたが、布団があるだけ、いつもよりマシだ。
外の空気を吸いたくなる。広司はまだソファーでスヤスヤ寝ていた。
出来るだけ音を立てないように、ギシギシなる床を忍び足で歩く。

階段に差し掛かると蒼が初めて綺麗な姿で目の前に現れたのを思い出した。
輝くような白い脚鍛えられた筋肉の見えるウエスト。そして見たことない爆乳。
だがその上にある顔はもっと衝撃的だった。
筋の通った細い顎に、プルンとした唇、筋の通った高い鼻、釣り目ではあるが吸い込まれるような紫の目。
切れ長の青い眉。そして同じ色の髪の毛。その耳はモチモチして触りたくなってしまう。そんなパーツが完璧な場所に収まっている。
最初見た時、動けなくなってしまった。少し俺より背の低い"だけ"の彼女は、想像していた女神よりも美しい。
なんとなくあの宗教家の気持ちがわかってしまう。まぁ彼女はそいつに殺されかけたのだが。
階段を降り、店舗を抜ける。
あの紫のサンダルを履いた彼女が思い出される。背丈が俺と変わらなくなった彼女。目線が合ってしまう。
紫の目に、意識が吸い込まれてしまうような感覚に陥る。
こんな女は初めてだがどう考えても、野獣の様な俺とは釣り合わない。別種の生物だと思ってしまう。
結局皮のパンツで上半身裸のままだった俺は、デカイ肩を鳴らしながら外に出る。
底には茶色い平原が広がり、何か酸っぱい香りが漂っていた。"女くさい"そう思ってしまう。
この場所は宇宙船で、外の空気など存在しないのだ。と少し残念に思った。
日課の筋トレを始める。その髭が根元まで付くようにゆっくり腕立てをしていると、ドン!ドォン!ドォン!と誰かが近づいてきた。
白い綺麗な柱は、中に筋肉の存在が確認できる。無機物ではなく有機物の美しさをかもしだす巨大な太ももはこちらに近づいて来る。
ドォォン!腕を着いている地面が激しく振動する。ゴォォォ!ドォォォン!少し低い音と共に、その白い柱の主は平原の先にある巨大なソファーに座った。

「朝から律儀だねぇ。」
上から轟音が聞こえてくる。青色の髪をくしゃくしゃにした蒼はその綺麗な顔で挨拶をしてきた。

「よく眠れたかねぇ。ちょっと激しかったもんで、心配になっちまうよ。」
昨日のようにケラケラと笑う彼女の笑顔は綺麗だった。
下着姿の蒼、その白い肌にピンクの下着は、彼女を女にしている。
「おう、よく眠れたぜ、大変だったな。」

「そうだねぇ、久々に本気になっちゃたさ。」
ニコニコ話す蒼、なにやら楽しかったようだ。青い髪が何があったのか物語っているようだ。

「訓練はいいのかぃ?邪魔しちゃったかねぇ?」
どこから持ってきたのか、水の入ったボトルを呑みながらこちらに聞いて来る。動く喉が美しい。
「今からやるところだ、見ててもおもしろくねぇぞ!」

「いいやぁ、私もヒロの訓練気になるさ。見させてもらうねぇ」
その綺麗な爆音を聞きながら、もう一度体を伏せ日課を繰り返す。
彼女からの視線を感じ、何か話さなくては行けないと思ってしまう。
「ここよ、負荷がかかるもんが無くてなんかねぇかな。」

「ん~、重りかぃ?私の手でいいんじゃないかぃ?」
ドン!その指が目の前に降りてきて、大地を揺るがす。青くネイルされた指が綺麗だ。
少し試してみる。威圧感を感じる指に近づき、爪を持ち上げようと踏ん張る。
全身に力を入れ地面が抜けそうなほど踏ん張るが、何も起きない。

「おぉ~頑張るねぇ。」
上空から爆音が聞こえてくる。上を見上げると空を覆う顔がいつもよりニコニコしていた。
絶望が襲う中、体中が悲鳴を上げてくる。意地に成って再び体に力を入れるとスッっと指が上空に消えていった。

「それ以上やると筋痛めるねぇ。」
そう言って少し下がった眉で見てくる紫の目。
「おう、流石だ、びくともしねぇな!」
腰の手を当て、上空の綺麗な顔に笑いかける。

「うぅん、こういうのはどうかねぇ。」
ゴォォォ!という音と共に、その組んでいた脚をほどき此方に投げ出してくる。
思わず腕を顔の前にやり防御態勢を取ってしまう。
ドォォォン!目の前に現れる全長100mほどの足裏。高さ30mほどだろうか、10階建てのビルのようにそびえる。
彼女がテーブルに足を投げ出したのだ。脚を曲げているのか、そのピンク色のショーツが丸見えに成っている。
「お前!こんなの持ち上がる訳ないだろ!」
目の前にそびえる建物のような壁に抗議する。

「持ち上がる訳ないねぇ、昇ってみればいいじゃなのさ。私も軍人時代よくやったのさ。」
そんな事を言ってくる彼女。その足裏は所々赤く汚れている物の、白く綺麗な足裏だった。
意地で一番高そうな指の根本に挑戦する。
少し膨らんで逆バンクに成っているが、なんとかなるだろう。最初の手を掛ける。
フニィとした感覚にすべすべした触感が伝わってくる。

「昇り切れるかねぇ。」
またケラケラ笑う蒼は、はしたなく出した脚に肘を置き、その上に顔を乗せて優しい顔でこちらを見ている。
伴って足裏の角度が緩く成った。少し難易度が下がる。
うれしそうにこちらを見ている蒼。その期待に応えるべく慎重に昇っていく。
足から放たれる湿気と、匂いに上半身裸で良かった。と思う。
途中何度か足を滑らせたが、なんとか登頂した。その山の上で両手を上げ、アピールする。
「どうだぁぁ!昇り切ったぞぉぉ!」
白い脚が山脈のように続き途中で"くの字"に曲がっていた。そこから空中に浮かぶ巨大要塞のような太ももは脂肪の中に少し筋肉見え隠れしている。
肘をついてこちらを見ていた顔がニコっと笑う。"やめてくれ惚れちまう"と心で何度も繰り返す。

「流石だねぇ、ヒロ、さっき別のでやらせたら一匹もできなかったさ。」
嬉しそうな顔でこちらを見つめる蒼。"もう別で実験してたのか"という思いと、"彼女の思いに答えた"という思いが襲ってくる。
気付くと腕が伸びてきた。ゴォォォ!と空気を切り裂く指。綺麗に手入れされた指が足に突き刺さり凹ませる。

「乗りなよ、ご褒美をあげるさぁ。」
目の前にある爪に乗りこむと、そのまま急上昇していく。若干Gがキツイ。
目の前に紫の水面が広がっている。

「大丈夫かぃ?」
最初、麗奈の指に乗せられて紅色と青い眼に見られた時と同じ状況だが、その時のような恐怖は感じなかった。
「へへ!蒼様よぉ。どんな褒美をこの小人にくれるんだ?」

「そうだねぇ、気に入るかねぇ」
少しGがきつかったが、見栄を張って元気な姿を見せてやった。
ドォン!ドォン!と移動を開始する蒼。
胸元に移動させた指。目の前のピンク色のショーツが揺れるたびギシギシと苦しそうに鳴いている。
部屋を出て、その前の扉を開けると洗面台と風呂場の扉が見えた。
指が洗面台の方へ降りていく。

「ちょっと待つんだねぇ。」
そう言うと少し傾けた指に従って転がって落ちた。
洗面台の上だろうか白いツルツルのホウロウ肌が感じられる。
「逃げろ!なんだあの新しい女は!」「いいから早く離れろ!」
掃除をしている小人だろうかあちこちで物陰に隠れる小人達の声が聞こえてくる。
目の前では巨大なストリップショーが繰り広げられる。
ダァァァン!ダァァァン!両足からピンクのショーツを部屋を震わせながら脱ぐ蒼。
ブラジャーを外した時、その爆乳がブルン!と姿を現す。解放された脂肪の塊は、そのままブルンブルンと自由に動いていた。
何故か少し赤い染みが見える。

「待たせたねぇ。」
それだけ言うと再度こちらに指を向けてくる蒼。
その爪に乗る。先ほどから彼女の裸が脳から離れない。
ふっと、履いていたズボン下着と靴消える。俺も裸にさせられた。
後ろで踊り狂う胸の圧力を感じながら風呂場に向かう。
ガラッ!と開けると、そこは湯気で満たされていた。

「へぇ、結構立派だねぇ。」
そういうと、ドォン!ドォン!と足音を立てながら一直線に浴槽へ向かう蒼。
その大海原は全て湯気で満たされている。

「なんだね、邪魔だねぇ。」
そういうと浴槽の端に並んでいた小さい点を足で薙ぎ払う。
そのまま浴槽に入っていく蒼。ダァァン!ダァァン!と水面を爆発させながら入水する脚。
綺麗な脚を折りたたむと、バァァァァン!と大きなお尻を着水させ大津波を引きおこす。
湯船に浮かんでいた小人が10人ぐらい乗った船が至る所で転覆する。
最後に胸で水面を爆発させると、大しけだけが浴槽に残った。

「ふぅぅ、大きいのはやっぱり気持ちいいのさ。」
浴槽中を響かせながら、水中の白い化け物のような脚を伸ばす蒼。
フリーな方な手を前に伸ばし伸びをしているようだ。
そのまま神話に出てくる大蛇が倒れるように水面を割る腕。
水面に渦が巻く。大津波が押し寄せる。また小人の船が引きこまれて沈んでいる。
気にも留めていない彼女は紫の目でもう一度こちらを見てくる。

「やっぱり、良い体してるねぇ。」
舌で吊り上がる口元と白い歯が見え、唇を舌がぬぐっていた。
乳首が目に見えて大きく成っている。

「到着だねぇ、小人様さん、さ。」
そう優しく言うと、指を傾けて、真っ白な大草原に転がされるのだった。

「そのまま前進だねぇ。」
そう言われ進んでいく。水面から山のように丸く出ているこの島は彼女の心臓の音でわずかに揺れていた。
白いモチモチを進んでいく。
「どのくらい行くんだよ!」
彼女の体温か、浴槽の湯気か体がサウナの中に居る様で汗を大量に掻く。

「もうっちょっとだねぇ、私の足に勝った男はそんなもんなのかねぇ。」
そう言うと首を曲げて、こちらを見ている顔がニヤニヤと笑っていた。

「おまえ、これ・・・」
島と島の間に大きな風呂ができていた。
水底には吸い込まれそうな谷間が見て取れる。

「そうさねぇ、ご褒美さ。蒼風呂たのしんでさ。」
少し顔を赤くさせた彼女がこちらを見ながら行ってくる。
恐る恐るその谷間に入っていく。相変わらず心臓の音とそれに伴って揺れる水面だが、外海よりかなり穏やかだ。
立ち泳ぎの形に成るが、体温のような温度につつまれ気持ちよくなる。

「邪魔するんじゃぁないねぇ。滅ぼされたいのかねぇ。」
そんな事を言いながら、大蛇を水面から出すと、床に向けて
ダァァァン!と叩きつける蒼。
動きに伴って持ち上がる目の前の島。しかし振動はあまり伝わって来なかった。
外海をまた大津波で襲い帰っていく大蛇。

「あぁ、久しぶりだねぇこんなのんびりした時間は・・」
そう言うと顔を上に向けリラックスしている蒼、キラキラ輝く首筋がなんとも艶やかだった。

どれぐらい経っただろうか、自然とこの絶妙な温度のお湯はずっと心地よい。

「そろそろ出るかねぇ、皆起きちまうよ。」
久々の轟音と共に、その白い指で掬われる。
ざぁぁっぁ!と滝を落としながら立ち上がる蒼は、最後に片方の胸を掴み、蒼風呂の水を抜くと、
体も吹かず地面を揺らしながら洗面台まで来る。途中恐る恐る下を見ると、その綺麗な足と比べると霞むような小さな赤い点が石畳の上に大量に付着していた。

「ちょっと、ここで待っててくれるかい?体洗ってくるねぇ」
また洗面台に落とされた俺。ドォォン!ドォォン!とその尻をフルフル揺らしながら、また風呂場に入っていく蒼様であった。
待っている間暇なので、洗面台の上にある化粧瓶だろうか、大きな液体の瓶を押して、"うごかねぇなぁ"なんて思っていると、
その陰から濡れた小人が何人か出てくる。
「お前、あの女と一緒に居ただろ!」「この裏切り者!」
そう罵ってくる小人。黙ってにらみつけるが、声を聞いて沢山集まってくる。
「お前だけなんでそんな綺麗なんだよ!」「殺してしまえ!」
殺気だった小人は俺の威嚇を突き破り殴りかかってくる。
せいぜい、胸元程度しかない貧弱な奴ら。
喧嘩自慢の俺に勝てるような奴らじゃない。でも数が多い。ワラワラと集まってくる。
殴り、投げ、蹴り飛ばして、洗面台の底に落としてやるが一行に終わる気配がない。
たまにササクレだろうか、木の棒やどこから持ってきたのか鋼材を担いでやってくる奴らまで居る。
流石にそれをぶつけられると体が痛む。少し血を流しながら、ワラワラ沸いて来る小人を相手にしていた。
周りからの罵声も大きくなってくる。
「やっちまえ!」「日頃の恨み!」等よくありそうな言葉をぶつけてくる小人達。
流石にキツイ、意識が遠のいて来る。先ほど鉄の棒で殴られた左腕が動かなく成っている。
ドォン!ドォォン!と小人の罵声を凌ぐ轟音がこちらにやってくる。

「なぁぁにやってんだね!」
上から体が竦むような爆音が降ってくると、目の前の群衆が白い塊に押しつぶされた。
ダァァァァン!少し爆風で飛びそうになる。周りの小人は塵尻に吹っ飛んでいた。
彼女が手の平で周りの小人を叩き潰しているのだ。あの優しく扱ってくれた指が地面に叩きつけられている。
ダァァァン!ダァァァン!と10回ぐらい続いただろうか。その天変地異は収まる。

「絶滅させてやるからね。覚えときな。」
そう言うと俺の身体が黄色くひかり、左腕の感覚が戻ってくる。

「大丈夫かぃ?すまないねぇ、こんな事に成ると思わなかったのさ。」
ごぉぉぉ!と体を下ろし、洗面台まで目線を下げた彼女、その目と眉が若干垂れ下がっている。
「お前の足を制した男だぜ!こんな奴らには負けないぜ!」かなり危なかったが虚勢を張って、ガハハハ!と笑って見せる。

「体中ズタボロだったのに、よく言うねぇ。」
その目と眉がいつもの綺麗な位置に戻っていた。
「でもまた汗掻いちまったや、何ラウンドしたんだ俺。」
そういうや否や、爪に掬われ再び蒼風呂を楽しむ俺であった。

再び洗面台に戻ってくる。
ズシィィン!とわざとらしく大きな音を立てて小さな椅子に座り込む蒼。
濡れた髪をさっと搔き上げる。それだけで、あの綺麗な髪に戻った。
サラサラとその綺麗な指を流れる髪。良い香りがこちらに吹いて来る。

「これは便利だねぇ。麗奈ちゃんはすごいねぇ。」
などと言いながら、化粧水だろうか肌に塗っていく。
軽くリップや、アイラインを整えた蒼は、また俺から時間の感覚を無くすのだった。

再び爪に載せられ最初の場所に帰ってくる。
途中の彼女が鳴らす轟音にも慣れてきた。
茶色の大平原に下ろされ最初に訓練していた場所に戻る。
相変らず素っ裸の彼女。そのままソファーに腰を下ろす。
轟音と良い香りに包まれる。

「どうだったかねぇ、小人様さ」
満面の笑みで聞いて来る蒼
「途中のイベントを含めて大満足だ、蒼様!」
素っ裸の身体で仁王立ちして腰に手を当て上空の女神に答えてやる。

「すまなかったねぇ、ちょっと教育が足りない様だねぇ。」
遠くを見つめる彼女、顔は見えない。
「気にしてないぜ!助けてくれたじゃねぇか。ちょっと好きになりそうだぜ。」
冗談で言い放つ。

「私もヒロ好きだねぇ。」
見えない顔で轟音を響かせた女神。そのまま黙り込んでしまう二人。
普段ブンブン言わせている白い組んだ足だけが空気を震わせ音を鳴らせていた。


状況を切り裂いたのは、蒼だった。手に出現させたプロテインバーを食べる。
「なに食ってるんだよ、俺にもくれよ。」
ビルの様な長細い四角いなにかに食らいつく輝く白い歯。
すこしボロボロと岩の様な塊が落ちていく。

「欲しいのかねぇ。ほれ。」
そう言うと、そのまま差し出されるビルの様な黒い塊。家より大きい歯型が見て取れた。
「そのままじゃ食えねぇよ、小さいのくれよ」
そう言うと、唇をぬぐう白い指。プルンと震える唇、その指をヌゥゥっと出してくる。

「これで良いかねぇ。」
その食べカスは岩の様な塊だった。
「ありがてぇ、腹減ってたんだよ!」
そういうとその岩の塊を両手で持ち上げる。

「それとこれ持ってきたんだねぇ。」
そういうと目の前に昨日買った服が綺麗に畳まれ、目の前に現れる。
「おぉ、ありがとう。感謝するぜ!」
その間に"小さな"プロテインバーを口にほおりこんだ蒼は笑顔でモグモグしてこちらに返事をしていた。
ズゥゥン!ズゥン!とサラサラした青い髪を靡かせ、他の部屋に行ってしまう蒼。

「また二人で遊ぼうねぇ。ヒロ」
そう言うとどこかへ行ってしまった。
彼女の香りが漂うこの空間で、"早起き三文の徳"とはよく考えた物だと、岩の様な塊と、新しい服を抱えて店に戻るのだった。


目が覚めた、小鳥のチュンチュン無くはしないが、スッキリしている事を思うと8時間は経っているようだ。
リビングのソファーで寝ていた広司。ダイニングの方に目をやる。
ヒロがまた何処から探してきたのか、朝飯をガツガツと食っていた。
「おう、起きたか。」
毎回ヒロの方が早い。何か黒い岩の様な塊にかぶりついていた。
「お前、それ何だよ。岩?」
「プロテインバーだぜ、お前も要るか広司?」
黒いタイトなシャツにパーカーを着て、少し緩めのトレーナーを履いてニヤニヤしながらこちらに言ってくるヒロ。
「おまえどんだけタンパク質取るんだよ。」顔よりデカイその塊をむさぼる獣を見て思わず言ってしまった。

浴室の方から女性陣の声がする。朝風呂かと思ってコーヒーを入れていると、綺麗に成った紗綾と女の子が入ってきた。
「おはようなのです。」
そう言ってこちらを見てくる女の子。髪を整えたのか竹の中から出てくるあの物語を思い出した。
「この子髪すごく綺麗なんですよ!」
そういう紗綾が女の子の髪を持ち上げる。
サラサラ流れる黒い髪を見てまた竹の物語を思い出した。
「ヒロさん、何食べてるんですか。」
その黒い塊に顔を埋めて食べているヒロに紗綾がやはり突っ込む。
「プロテインバーだぜ。食べるか?」髭にいくつも黒い塊を付けた獣は目元をしわくちゃにしながら答える。
「欲しいのです!朝ごはんです!」女の子はテトテトとヒロの方に寄っていく。
割って女の子にあげるヒロを見ながら、固まる俺と紗綾であった。

相変らずOLのような恰好をしてる紗綾と、どこかのギャングボスの様なヒロ、昨日来ていたカーディガンにミニスカートの女の子の出で立ちで店の外に出る。
左右に白と褐色の柱が鎮座していた。

「おはようございます。皆さん」
気に入ったのか赤のワンピースのままの麗奈。少し化粧をして益々綺麗に成っている。
ワンピースを割き出てくる褐色の脚は天井に照らされ輝いている。

「おはよぉ、よくねむれたかぃ?」
蒼は昨日買ったのか、白いチューブトップの布を胸に巻きつけ、ミニの黒いレザースカートをはいている。
その白い脚は網タイツに覆われていた。大きく縊れたウエストが丸見えだ。

皆で挨拶を済ませ、少し談笑していると、ドォン!ドォォォン!と音を響かせながら絵里奈が現れた。
金色のワンピースを着ている。
ズゥゥゥン!と低い音をたて座ると、ワンピースを割いて綺麗な輝く白い脚が出てきた。
女神が3人に増え、こちらを威圧するようにそびえる塔に囲まれる。

「おはよう。皆!今日も元気?」
すっきりした笑顔で問いかけてくる絵里奈。
皆で挨拶を済ませるのだった。
「今日も一番遅いんだな、落ち着いたのか?」

「昨日は、激しくて、店がまだちゃんとあって良かったわ。」
あの震える船を思い出す。今度から夜にトイレは行かないと決めた広司だった。

「それでね、昨日から入ったその子なんだけど。流石に名前をつけてあげようと思うの。」
此方に声をぶつけてくる絵里奈。皆が首を縦に振る。
その女の子は怯えているのかヒロの足に隠れてしまった。

「絵里奈さん、普通に喋ると彼女怯えちゃってますね。」

「そうねぇ・・・」
ゴォォォォ!ズン!ズゥゥン!ソファーから立ち上がり、テーブルに目線を合わす絵里奈。

「これで良いんじゃない?」
麗奈と蒼もそれに習う。大地が震える。
青い眼と紅色の目、紫の目にかこまれたこの空間。
蛇ににらまれるとはこの状況ではないだろうか。
俺でさえ恐怖を感じる。紗綾が「ヒィ!」と悲鳴を少し上げていた。
トコトコと出てくる女の子。
「名前、もらえるのです?」
そう言うと周りの目が一斉に優しく成った。
彼女の感覚は俺たちと違うようだ。
「俺一日考えた案があるんだけど。」
そう言うと一斉にあの目がこちらを向く。怖い。

「何、広司しょうもなかったら、踏みつぶすわよ。」
机の下から響く声が聞こえてくる。
「カグヤってのはどうかな、俺の惑星にある物語からとったんだ。」

「あの竹の物語だねぇ。いいじゃないのさ。」
紫の目が机を震わせる。
「あの物語か、いいんじゃねぇ?」
「素敵ですね、衛星のお話。」

「広司やぱりセンス良いのね。」
どうやらあの物語は宇宙中にあるようだ。

「あの、竹の話って何です?」
白い髪をサラサラと傾けながらこちらを見る紅色の目。
この宇宙船は宇宙外にあるようだ。
「カグヤ!わたしカグヤです!」
その目の前でピョンピョン跳ねるカグヤ。その景色にすべての目が優しい雰囲気になるのだった。

「よろしくね。カグヤちゃん。」
そう言う大地を震わせると空気を割きながら黒いネイルの白い綺麗な指が上空から目の前に落ちてくる。
ドォン!と着地した指は少し斜めになりネイルを見せつけている。
ドォォン!ドォォン!赤いネイルをした褐色の指と青いネイルの白い指が似たような場所に降ってくる。
3本の塔はこちらを威圧していた。
「はぁぁい!麗奈さん!絵里奈さん!蒼さん!」
テケテケ歩きながら、各指にタッチしていくカグヤ。
彼女は大物だと思った。


王国のホテルに戻ってきた一行。
周囲を切り裂きながらフロントへ進み金と鍵を渡す。
絵里奈と俺で行くと、白髪のフロントマンがすっと手紙を出していた。
「お手紙が届いております。」
"宮中晩餐会招集令"と書かれた手紙を渡された俺はその中身を見る。
すっと、ペーパーナイフを出してくる白髪のフロントマンは紳士だった。
絵里奈と一緒に中身を見る。
何やら一杯書いてあるが、要は今晩の晩餐会に来なさい。という内容だった。
あて先は3012号室殿と成っている。
「広司とヒロで行って来たらいいんじゃない?」
笑いながら話す絵里奈に。
「広司が行くなら、私も行きます。」と真顔で言う麗奈。
絵里奈が麗奈に説明していた。

事前受付に昼に来いという内容。
カグヤの服とヒロの靴を探しに紗綾と蒼はバザールでは無いショッピングモールへ出かける。
麗奈と絵里奈と俺で、王宮へ向かうのであった。
帝都の時のセダンを走らせ向かう。
ナビが案内する声が響く。
後ろではあまり乗り気では無い二人が会話をしていた。
「なんで呼び出しなんですかね。」
「調子に乗ってるよの、帝都が無く成って制覇した気になってるんじゃない?」
「小人の癖に生意気ですね。半分ぐらいやっちゃいましょうか。」
「そうねぇ半分ぐらいなら良いかもねぇ。でも半分で止められる?」
「そうですね。正直自信無いです。」
アハハ!と笑う二人、大きな胸が揺れている。
その金色と銀色のパンプスのヒールをガツガツ鳴らしながら話し合う二人は見える建物を見ながら
「全部小っちゃいわね」等と恐ろしい会話をしているのだった。

高速道路に乗り1時間は走っただろうか、後ろの会話がいかに怖がらせながら破壊するかという議論に変わったころ、
玉ねぎの乗った金色の建物が見えてきた。<<王宮直通/一般>>と書かれた出口を出る。
その先でトラックやらリムジンやらが門をくぐるので渋滞していた。
車が動かずイライラしていると、後ろの女性陣もイライラし始める。
「ねぇ、麗奈ちゃん。あの車列蹴とばしてきてよ。」
「いいですけど、広司さん巻き込んじゃいますよ?」
「あぁそうねぇ、広司逃げてね?」
実行しようとする彼女達。
「そうですね、麗奈様からは逃げられる気がしません。」
と答える。
帝都のホテルで聞いた「広司さんつぶすわけないじゃないですか」
という言葉を思い出す。体に響くあの足音が勝手に再現される。
「広司は巻き込まないよ。こうやってやれば・・・」
後ろで銀色のパンプスダンダン踏みつけながらシュミレーションする麗奈だった。

そうこうしている内に順番がやってくる。
後ろの女性陣は楽しく成ってきたのか。ワイワイ騒いでいた。
「何の用だ。」
短く守衛に言われる。
持ってきた令状を守衛に渡す。
中身を見もせずこちらに令状を投げてくる守衛。
「入れ。」ゲートが空き、中に車を進めるのだった。
後ろではあの衛兵をどうするかの議論が始まっていた。

中の建物は全て金色に輝いており、高さも4階建てをベースに塔が6階、その上に玉ねぎが乗っている風景が続く。
「趣味悪いわねぇ、一発で行けるかしら?」
「ちょっと力入れれば一発で行けそうですね!」
彼女達のパンプスが轟音と共にこの一帯を踏みつぶす絵が思い浮かぶ。
「ねぇ、広司はどっちが良い?」
金色と銀色のパンプスが運転席の横に投げ出される。
綺麗な白と褐色の肌に目を奪われそうに成る。
「おい、運転中だぞ。」
「こんな無駄に広いここが悪いのよ。ほんと今、踏みつぶしちゃおうかしら。」
白い脚に包まれた金色のパンプスがガンガン横っ腹に当たってくる。尖ったつま先が地味に痛い。
「私も飽きてきました。もう全部やっちゃいましょう。」
褐色の銀色のパンプスがダンダンアームレストを叩く。
「あそこみたいですよ、お嬢様」そういうと見えてきた<<舞踏場>>と書かれた建物へ向かう。

また<<一般>>と書かれた車寄せに向かう。
今度はスムーズに止められた。
車を出て、後ろのお嬢様方の扉を開ける。
助手席側から銀色のパンプスを纏わせた褐色の脚を出す麗奈。カツ!と地面を鳴らしそこに立つ。
運転席側から金色のパンプスを纏わせた白い脚を出す絵里奈。同じように地面を鳴らしてそこに立つ。
そのまま車を置いて、受付と書かれた所を目指す。
固まっている守衛2人。はっ!と成った彼はこちらに向かって怒鳴ってくる。
「お付きの者は車で待機していろ!」
スーツを着てきた俺はお付きの者のように見えるのであろう。
「うるさいわね、べつに誰も居ないじゃない。」
絵里香が高圧的に言う。背の高い彼女に見下ろされ、何も言えなく成る守衛。
そのまま俺の手ひ引っ張ってコツコツ進んでいく麗奈。
「ちょっと麗奈ちゃん、もうあんた覚えてなさいよ。」
そういうと小走りでこちらに来る絵里奈だった。
アクリル板の向こうへ、令状を渡す。
中に居る兵士は二人の胸元を見てだろうか、ニヤニヤしてそのまま何も進めない。
白い手がアクリル板を叩く。ダン!ぬっと腰を折って顔を出した絵里奈。
「早くしなさいよ。」冷たい声でそれだけ言うと不機嫌そうにヒールをコツコツし始めた。
⑥と書いた紙を渡され。「20:00に来い」と守衛に言われる。
紙を受け取り車に戻る。去り際に麗奈がアクリル板をバァァン!と響く音で叩いていた。
防弾であるはずのそのアクリルは向こうが見えない程ヒビが入っていた。
「アハハハ!麗奈ちゃんやり過ぎよ。」
「小人の癖にホント、ムカつく!」
コツコツ歩いて車に戻る。車の後ろに列が出来ていた。
"プーーーーッ"一番前の車がクラクションを鳴らしてくる。
"ギロリ"と紅色の目を麗奈が向けるとその車は黙る。
守衛が何か俺に言おうとしてくる。肩に手を掛けた白い手がそのまま守衛を吊り上げる。
「なによ?」青い眼が睨みつける。
濡れていくズボンを見た絵里奈はそのまま守衛を壁に投げつける。ドスン!
気を失った守衛を気にもかけずコツコツと車に入っていく絵里奈。俺は頭を抱えながら車に乗り込みそのまま走り去るのだった。
サイドミラーに移るその空間は時が止まっていた。
<<高速道路/バザール方面>>と書かれた出口では何も無く、そのまま1時間ほど車を走らせホテルに戻る。
道中"あれだけのために呼びつけるの?"とかなりご立腹の絵里奈さんはヒールを叩く癖を抑えられずに居た。

ホテルの車寄せに入る。
もう仕事をあきらめたのか、俺を見るなり腰を折って仕事を放棄するドアマン。
彼女達を降ろし、ホテルのロビーに入る。
4人は朝飯を食っていたカフェで談笑してた。
「おう、広司。帰ってきたか。」
そう言うと3人の女性陣もこちらを向く。
ニコニコとした顔でこちらを見ているカグヤを見るに楽しく買い物できたようだ。

4人の元へ歩いていく麗奈と絵里奈。
二人に抱き着くカグヤににこやかな雰囲気に成る。
ヒロがこちらへ歩いて来る。
「この町は痴漢が多いな。今日だけで20人ぐらいぶっ飛ばしちまった。」
頭をなでながら話すヒロ
「お前捕まるんじゃないのか。」
「俺じゃないんだよ、蒼だよ。」
その本人は脚を組んでドカッ座り、大きく75%と書かれた瓶をラッパ飲みしていた。
「蒼さんすごいです。触ってきた人を蹴り上げて、お店のガラスがバァァン!って」
嬉しそうに話す麗奈と絵里奈に話す、カグラ。
「さすが、蒼ねぇさんですね。」
「まぁねぇ、どこも一緒だねぇ。」
麗奈と蒼は肯定的の様だ。
少し頭を抱えながらジュースをストローで飲んでいる紗綾は常識人の様だ。
その紗綾が顔を上げて、絵里奈に向かって話す。
「絵里奈さん、今日晩餐会ですよね。服仕立ててきましたよ!」
そういうと、蒼が持っていた酒瓶を机の上に置いた。
その横に服が3着積み重なっている。
「ちょっと時間が無くて、3着しか無いんですけど・・・」
申し訳なさそうに話す紗綾に絵里香が話しかける。
「ありがとう!紗綾の作る服は全部良いからね。」
そう言うと目の前の服を広げる。
「ねぇ、私と麗奈と蒼で行こうと思うんだけど。」
「いいんじゃないか。」
こちらを向いて話しかけてくる絵里奈に返事をする。

ヒロからリムジンの鍵を受け取り、カグヤと紗綾とヒロは帰る。
帰り際、蒼の足を念入りに測る紗綾だった。
「なんだい?何かつくってくれるのかね?」
「はい、今日でイメージが沸いたので蒼さんの靴作りますね。」
「そうかぃ、そうかぃ、ありがとうねぇ。楽しみにしてるねぇ」
そう言うと追加の酒を注文する蒼だった。

彼らを船に飛ばす。
残った3人は部屋に戻り着替えて出てくるのだった。
カフェでコーヒーを飲みながら待っていると、後ろから歓声が聞こえてくる。
それぞれ金、銀、紫のキラキラなドレスを着た彼女達が出口までの道を作る。
それぞれの金、銀のパンプス。紫のサンダルが床を鳴らしながら歩いて来る。
胸元と背中ががっつり空いたそのドレスは、昨日絵里奈が着ていた物と同じデザインだった。
「行くわよ、付き人さん。」
「へぃへぃお嬢様方。」
そう言うと開いた道の先にあるリムジンに乗り込むのだった。

また同じ道のりを走るリムジン。案の定蒼は酒をラッパ飲みしている。
その網タイツが妖艶さを増して演出しているようだった。
「最近酔えないんだよねぇ。」
"グビグビ"シャンパンを煽りながら飲む蒼。
「貴方もうお酒に酔う事は無いわよ。」
「ぇ、そうなのかぃ?どおりで何飲んでも変わらないわけさ。」
そう言うと、シャンパンを空にして、絵里奈の話を聞く。
「毒も効かないし、お腹もすかないと思うわ。もちろん食べなくても大丈夫よ。」
「そうなのかい、そうなのかい、最近体の調子がずっといいもんだから、何か変わったと思ってた訳だけどさぁ。そんなに変わるのかい。」
「蒼ねぇさん。ごめんなさい、何も言ってなかった。」
少し暗い声の麗奈。
「今度は毒でも飲んでみるかねぇ。」
ケラケラ笑う蒼に絵里奈も麗奈も笑っていた。

後ろで女性3人が楽しそうに話している中。
ライトに照らされた<<王宮直通/一般>>の看板が見えてくる。
そこを降りると昼間よりも渋滞していた。

後ろで楽しい時間を過ごしていた彼女達も気付いたようで、前を見つめている。
「ねぇ麗奈ちゃん、やっぱり車列ふき飛ばしてきてよ。」
「そうですね!絵里奈さん!練習はばっちりです。」
後ろからドンドン!とパンプスが車を叩く音が聞こえてくる。
「そりゃぁ、たのしそうだねぇ。」
相変らず酒を飲みながら話す蒼の目が紫色に輝いている。
アハハ!と大声で笑う絵里奈に、麗奈が答えるようにドンドン!と叩きつける音が加わる。
ドォン!と大きい音がした。
「蒼、ちょっと強すぎよ~。」またアハハと大きい胸を揺らして笑う絵里奈。
「力加減が分からなくてねェ。」そういうと首筋をさする蒼。
この退屈な時間も楽しそうだと、少し安心する広司だった。

車列か進み、番がやってくる。
「何の用だ」
昼と一緒の質問をされる。
"⑥"と書かれた紙を守衛に渡すと、ゲートを開けずに引っ込んだ。
しばらくして前から戦車それを囲うように兵士がやってくる。
"何かあったのか"とそのまま待っていると、拡声器を持った兵士がこちらに何か言ってくる。
「3012号室諸君、君たちは以下の罪状で包囲されている・・・」
"俺たちか!”そう思った瞬間。
ドォォォン!という音と振動がする。ひび割れて盛り上がる道路に銀色の壁が降臨した。

「私たちが何なのよ。えぇぇぇ?」

その体の芯まで届く綺麗な声の方を見上げると、"紅色""青""紫"目が夜空に浮んでいた。


---------ここまでお付き合いいただいた皆様ありがとうございます。次から王都編です。主の少ないボキャブラリーでは良い蹂躙方法が浮かばないかもしれないので、掲示板でリクエストを頂くと喜んで靴底の染みに成ります。