天井から伸びる縄が揺れてきしむ音が鳴る。縄の先には一人の少女ががんじがらめにされて吊るされていた。彼女の目には目隠しがあてがわれている。
 縄は彼女の控えめな胸を無理やり強調しているかのように絡みつき、両腕両足も動かせない状態にその肢体を拘束している。

「ご主人様、もう、漏れそうです……勘弁してください」
「もうなの? まだ16時間とちょっとしか経ってないけど」

 ご主人様と呼ばれたもう一人の少女が、縛り上げられている少女の顎に手を当てて話しかける。
 彼女は自分の奴隷の少女に利尿を促す薬を飲ませ、おしっこを我慢するように命じた。奴隷少女はこれまで何度も中身を開放してしまいそうになった膀胱を抑え込んで耐え続けていたが、もうその我慢は限界が近い。あとすこしもしたら、もはや自分の意思では対処できないところまでいってしまいそうだった。

 漏らしたらお仕置きが待っているというわけではない。けれど、彼女には我慢しなければならない理由が一つある。

「これ、ちょっとここに押し込んでみようかしら」
「な、なんですか」
「監視塔」

 奴隷の主人は奴隷少女の足元に手を伸ばす。手の先にはミニチュアのように小さな、山村集落のようなものがあった。集落の中でも一際高くそびえ立つ監視塔を片手で引っこ抜く。ミニチュアの世界の住人が慌てふためくのが見えて、主人の少女は怪しく微笑んだ。
 主人は奴隷少女のパンツを脱がす。

「駄目です! そんなものを入れられたら……出てしまいます……」
「あら、私に命令する気なの?」
「いえ……」

 目隠しをされたその表情は読み取れない。しかし、強く歯を食いしばり、今にも膀胱が決壊しそうなのは目に見えていた。
 奴隷の足元に広がっている集落は、彼女の生まれ育った村を縮小したものなのだ。この小さなミニチュアの中に当然彼女の両親も友人もいるし、恩師や想い人もいる。だから命令に従う従わない以前に、おもらししてしまうわけにはいかなかった。

「それっ」
「ひぎっ……!」

 パンツが膝近くまで下がったところで、主人は奴隷の肛門にまだ人がいる監視塔を勢いよく突っ込む。一瞬ですべてが飲み込まれてしまった。思わず肛門括約筋を締めてしまう。この無意識な筋肉の動きによって、中にいた人間は息絶えた。
 奴隷少女は、自分の主人が監視塔のミニチュアを、性器の中にでも押し込むのかと思って身構えていた。しかし、まさかの肛門にものが入ってきて、ほんの少しだけ漏らしてしまう。そのほんの少しだけでも、縮小した村にとっては恐ろしく巨大な水滴の爆撃だった。

「ねえ、あなたの家って北西の丘にあるやつだっけ」
「はい……」
「今あなたが漏らしたおしっこで、あなたの家が吹き飛んだわよ。あとそのご近所さん。あはは、面白いわね。自分のおしっこで自分の家が吹き飛んじゃうなんて」

 奴隷少女は絶望に声を出すことができなかった。高い丘にある自分の家の上におしっこがこぼれてしまったのなら、そのおしっこはまるで川のようになってどんどん村の家々を押し流していくに違いない。それに近所には、自分の想い人の家もあったはずだ。
 腹部がちりちりと痛む。もうおしっこを我慢する理由がないのではないかと考えてしまう。ああ、今すぐにでもこのしこりを吐き出してしまいたい。
 と、そこまで考えて彼女は小さく首を振る。村には自分の知り合い以外にも、住んでいる人たちがいる。自分の知り合いがもう助からないからといって、自分が村を破壊してしまっていい理由にはならない。
 それに本当に自分の家を今漏らした雫が吹き飛ばしてしまったのか、目隠しされている奴隷の少女は確認していない。もしかしたら主人の嘘かもしれないと考えて、彼女は我慢を続けた。

「あら、まだ我慢できるのね。すごいわ。ご褒美をあげる」

 ご褒美。そう聞いて奴隷の少女は目隠しの下でこわばっていた表情を緩めてしまう。しかしすぐに引き締めた。一瞬でもよろこんでしまった自分が恨めしい。主人のご褒美なんて、ゲスを通り越したくだらないものに決まっている。

「今、私の手のひらの上には何人か人が乗っているのよ。私はあなたの知り合いとか興味ないから、誰が乗っているのかなんてわからないけれど、もしかしたらあなたの知り合いもいるのかもしれない」

 奴隷少女はその事実を知ることはできなかったが、確かに主人の手のひらには、大地ごとめくりあげられて連れ去られた村人たちが土にまみれて乗っていた。
 それを土ごと乱暴に奴隷少女のパンツの中に入れて、縁の部分をつまむ。自分のパンツの中に村人が入れられたことに、少女も気がついてしまう。

「パンツの中入れちゃった」
「や、やめてください」
「あなたの命令を聞く義理はないわよ」

 主人が少しずつパンツを持ち上げていく。中に閉じ込められた人々は、とてつもない大きさを誇る女性器と肛門が上から迫ってくるのをなすすべもなく見上げていた。先ほど監視塔が突っ込まれた肛門からは木くずがこぼれ落ち、股間には今にも滴ってきそうなおしっこの残りが付着している。悪臭に鼻がもげてしまいそうだった。
 パンツをつまむ主人の指が腰に触れるのを感じる、人々を内包するクロッチ部分が自分の股間のすぐそばまで近づいているのを間接的に理解する。

 そしてついに、中の人々は奴隷少女の股間に密着してしまった。
 彼女はピチッと小気味いい音を立ててパンツが自分の体にフィットするのを感じた。

「あ、ああ……」

 少女は自分の股間に触れた刺激に耐えきれず、今まで溜め込んでいた膀胱の中身をすべて放出してしまう。彼女は目隠しの下で悲しみに涙を流しながらも、開放感に酔いしれたように笑みを浮かべていた。
 パンツの生地越しに注がれるおしっこの雨。大小様々な大きさの雫となって、縮小された村に降り注ぐ。着弾したおしっこは山も平地も関係なく大地をめくり上げて吹き飛ばしながら、小さな人間たちと家々を押し流していった。

「どう? 気持ちよかったでしょ」
「気持ち……よかったです……」

 奴隷の少女が返答する。嘘ではなかった。我慢に我慢を重ねたおしっこが解き放たれる瞬間は、本当に気持ちよかったのだ。

「それはよかったわ」

 主人が言いながら奴隷少女を吊っている縄を切る。疲れ果てた少女はそのまま自分のおしっこで水浸しになった縮小された村の広がる床に倒れ込んで、しばらくそのままだった。