魔女っ子がコビトの街入りフラスコでアナルオナニー


 いかにも魔女のモノでございといった大窯がぐつぐつと音を立てている。にもかかわらず、魔法薬のニオイが漂うその部屋は暗くて冷たかった。
 ドアノブが回る音がした。黒ローブを羽織った少女がドアを押し開いて部屋に入ってくる。この部屋の主である魔女だった。
 少女は大窯には目もくれず、ロウソクの明かりを頼りにフラスコや試験管の並ぶ棚に歩み寄る。木でできた足場を持ち寄り、その上に乗って棚の高いところにある三角フラスコをガラス越しにのぞき込んだ。

「おお、できてるできてる」

 胸を踊らせる彼女が見つめる先にあったのは、三角フラスコの中に閉じ込められた小さな都市だった。魔法の実験で知的生命の住む街を培養し、育てていたものだ。
 あまりにも矮小なそれは、あどけない魔女の手のひらに収まるような範囲に、1cmもないビル群を上へ上へと伸ばしている。

 縮尺率は1万分の1。1kmが10cmになる世界がこのフラスコの中には存在している。160cm程度の人間なんて0.16mmというダニと同じくらいの大きさになってしまって、魔女の目をもってしても視認することは不可能だった。
 彼らに自分のことはどのように見えるのだろう。突如白い肌の壁に覆われる住人たちの恐怖を想像しながら、舌なめずりをして手を伸ばした。
 三角フラスコをつかみ棚から取り出す。

「あっ……!」

 隣に並んでいた試験管が数個落下し、粉々に砕け散ってしまった。気持ちが高ぶって引きずり出してしまったのが良くなかった。

「あー、もう最悪だよぉ……。こっちはもっと小さく数億人の人間を培養してたからあとのお楽しみにとっておいたのに……」

 細長い試験管という物体は、宇宙に漂うスペースコロニーを彷彿とさせる。だから彼女は擬似的に重力を発生させてコロニー化し惑星規模の人類を繁殖させていた。

 足場を降りて床を確認する。残っていたのはガラス片に混じったただのゴミだった。試験管の形はほとんど残されていない。
 一旦三角フラスコをテーブルに退避。イライラが募った少女が舌打ちしながら人間の街で購入した掃除機を手にし、試験管の残骸をその中にあった街と人間たちごと吸引していく。

 現在進行形でゴウゴウと音を響かせる掃除機に吸い込まれていく廃墟見て、まだ生きている人間がいるのかもしれない、ふとそんなことを思う。
 彼女は想像力を働かせる。今の今まで自分たちが暮らしてきた街がたった一人の少女の不注意によって突然破壊され、掃除機などという文明の利器に蹂躙される。
 悪魔と契約を交わすことで魔女となった彼女とて、元は普通の人間で、ただの非力な女の子だ。もし自分がそんな理不尽極まりない仕打ちを受けようものなら、気が狂ってしまうに違いない。

 そしてそんな気が狂ってしまうような理不尽を今、自分がこの手で引き起こしている。そう思うと染み渡るように興奮が満ちていって、少女はゾクゾクが止まらない。
 小さな人間たちを哀れむと同時に、言いしれぬ嗜虐心が心を満たしていく。少女は自分の表情がたちの悪い笑みに歪んでいることに気が付かなかった。

 やがて床はさっぱりきれいになった。すべては掃除機の中だ。ソレがまだ生きていようがいまいが関係のないことだった。
 ため息が出る。三角フラスコの中身よりこっちのほうが創り出すのが大変だったのだ。
 もったいないことをしてしまった。しかし自分の不注意でしかないのだから、怒りをぶつける先がない。イライラからまたもや舌打ちをしてしまう。

「まぁいいや。壊れたもんはしょうがない。こっちでオナニーしよ」

 当たり前のように品のない単語をつぶやき、今しがた手にした三角フラスコを持って大窯の部屋をあとにする。
 本来なら三角フラスコの中の都市は顕微鏡で経過観察するだけにとどめるつもりだった。しかし今、彼女は虫のいどころが悪いのだ。

 ――めっちゃくちゃ屈辱的な目に合わせて、ストレス発散させてもらうんだからっ!

 相変わらず部屋に落ちているのは暗闇と静寂。しかし、そこは見た目年齢相応の可愛らしさのあふれる部屋模様になっている。
 一際目立つのが、彼女の手作りのぬいぐるみ。裁縫が得意な彼女が作るぬいぐるみ類は、とてもよく形が整っていた。

 コトリ、と三角フラスコを床に置く音。それに続くように衣ずれの音がする。
 ローブ、上着、下着と構わず脱いでいって、一糸まとわぬ姿になった。何もためらうことはない。ここは自分の部屋。彼女のためのプライベート空間だ。

「ああ、ごめん。そういえばあなたたちもいたね」

 フラスコの中に目をやる。完全に中に人間が暮らしていることを失念していた。

「女の子のプライベートな空間に何千人もの男たちを同時に招待してあげたんだから、感謝してよね。おばさんも混じってるかもしれないけどさ」

 返事はない。実際はあったのかもしれないが、少女の耳に届かなければそれはないも同然だ。

 さて。小さくそうつぶやいて、床に置いたままの三角フラスコの上に仁王立ち。フラスコの中からは、少女が女性である証が公然と天を埋め尽くしているのが見えた。それは粘液をヨダレのように垂らし、まだかまだかと彼女を急かしてくるようだった。
 しかし、今日はこっちの気分ではなかった。

「その命、私が造ってあげたんだから、どんなコトに使ったって構わないよね」

 冷えた空気に、少女の肛門がぴくりと動いた。
 素っ裸の少女がフラスコの口に向かって腰を下ろしていく。空気を圧縮して迫る排泄口に、フラスコの底面に敷き詰められた縮小都市に生きる人々は狂気の悲鳴をあげて逃げ惑っていた。
 しかし、ここはフラスコの内側の世界なのだ。この街から逃げ出すすべなど存在しない。

 三角フラスコの口が肛門に触れる。次の瞬間にはフラスコの口は中へと飲み込まれ、肛門内括約筋によって閉じられ、完全に密閉された。
 もはやフラスコ内の世界に新鮮な空気が供給されることはなくなった。これから入れ替わりに縮小都市に入ってくる空気は、すべてが彼女の大腸に溜め込まれていたものとなる。
 自分が広大な一つの街の空気を支配している。そう思うと気持ちが高ぶった。

「ん……っ! 冷たくてイイ……!」

 気持ちが良かった。ガラス製のモノを体内に挿入するのはひんやりして程よい刺激になる。
 しかし、これは所詮前菜でしかない。メインディッシュはこの先にある。

「ああ……小さな人間たちに私のお尻を見られて……内側から見られてる……興奮がやまないよぉ……っ!!」

 縮小都市の入ったフラスコを肛門に挿入したまま、尻を天井に突き上げる。フラスコが大きく傾いて、ビル群が重力で大腸の中へとこぼれ落ちていく。
 そんなみじめな目にあっている小さな存在を後ろの穴で感じつつ、さらけ出した性器に指を押し当てて、ぐちゅぐちゅと中をかき混ぜる。

「入ってくる……っ! うんちする方の穴から私のお腹の中にいっぱいヒトが入ってくるの感じる……わかるよぉ!」

 フラスコの中に暮らしていた人類は散々な目に合わされていた。自分たちが当たり前のように、そこにあるものだと信じてきたフラスコの口が少女の排泄口などというあり得ないものにふさがれ、挙げ句の果てにその中へと飲み込まれていく。
 しかも魔力によって環境が整備されていたフラスコの中とは違い、その新天地はいたって普通の女の子の大腸の中でしかない。

「みんな……私のお腹の中で死滅させてあげるんだから……っ!」

 女の子の大腸の中なんてところは、当然ながら知的生命が暮らすための環境ではない。彼らのようなコビトの人類が生活していられるのは時間の問題である。

「はぁ……もうおしまい? あはは……みんな私のお尻の穴から私の中に入っちゃったんだぁ……」

 後ろの穴で感じていた些細な感覚が一切なくなった。フラスコの底面に敷き詰められていた都市群とそこに暮らしていた人々の営みが、すべて少女の体内に消えてしまった。
 フラスコを肛門から引き抜きリラックスして横になる。自分の中で精一杯生きる生命を感じながら、彼女は深い眠りへと落ちていった。