みんなにはこの恐怖が分かるだろうか?
人に人として認識されないこの恐怖が…

何故かいつも目覚めると過去の記憶が無くなっている。
過去といってもむかーし昔のことなどではなく、昨日以前の記憶がないのだ。
そして今日も同じく全く記憶がない。

周りを見渡し記憶の欠片を拾おうとするも、辺りは真っ暗で視界から得られる情報は無かった。
ただ分かるのはフワフワのベッドに横たわっていたこと。
そして、柔軟剤の良い香りがすること。この二つだけだった。

「…ん!?」
もうひとつ。手首足首が紐のようなもので繋がれている。
「な、なんだこれ」
軽い恐怖を覚える。とりあえず灯りを点けなければ。

フワフワのベッドに足をとられながら、立ち上がろうとしたその時。
ヒロは大きな振動に尻餅をついた。まるで地震のような揺れ。そして同時に上空から光が射す。

「うわぁぁっ!!」
ヒロは驚きの声をあげた。
見上げるとそこには巨大な顔があったのだ。

「あっつぅ…クーラーつけっぱにしとくんだった」
欠伸を噛み締めながら目を擦っている。
ヒロは抜かした腰をそのままに彼女を見上げていた。

寝癖のついた茶色い髪、高めの鼻、長いまつげ、潤った唇。
化粧無しでも美人だと分かる。だが、そんなことにヒロは気付かなかった。何故こんなにも巨大なのか。
ヒロの頭はそれで一杯であった。

ただただ疑問に思いながら彼女を見上げていると目があった。
「ぁ、あぁぁ」
ガチガチと歯を鳴らし言葉にならない声を出す。
まるで値踏みでもするかのような目で自分を見下ろし、大きな手をこちらに向けてきた。

「ぐぇっ」
彼女の手に握られ、肺から押し出された空気と一緒に変な声が漏れる。
彼女はそのまま自分を右手に持ちながら他の布を追加してゆく。
目の前が布で覆われまた視界が遮られると彼女は動き出した。

部屋のドアを開け、階段を降りる音、廊下を歩き更に扉を開ける。
そして目の前から布が取り除かれる。

「…制服?」
ハンガーにセーラー服がかけられた。どうやら自分を覆っていたものは制服だったようだ。
白と紺の一般的なセーラー服だ。高校生だろうか。
握られている手から彼女を見上げる。短パンにTシャツ。露出が多い。

胸の二つの大きな膨らみを見て慌てて地面に目をやる。
おそらく彼女はノーブラであった。
引き伸ばされたTシャツの膨らみのてっぺんにぷくっと明らかな突起がある。

申し訳なく思い地面を見ていると、何故か地面が迫ってきた。そしてこの浮遊感。
「ぎゃぁぁぁっ…ぷぺっ」
数秘感絶叫した後に地面に叩きつけられる。彼女が自分を離したのだろう。

そして自分のすぐ後にピンク色の布が。プラジャーが隣に落ちてきた。
何故自分はブラジャーと共にピンク色の洗濯籠のようなものに放り込まれたのか。
その答えは自分の両手両足に結ばれている紐を見てわかった。

左手と左足が一本の紐で結ばれており、大きな輪っかが出来ている。右手、右足も同じようなっており
二つの輪っかが自分の横に出来ていた。
「も、もしかして…ぱんつ…なのか?」

彼女はそんな自分の問いかけにも答えずに短パンとTシャツを脱いでいく。
洗濯籠からその光景を他人事のように見続ける。
短パンを脱ぐと更に小さい布が彼女の大きなお尻を覆っていた。

薄く、寝汗でピッタリと貼り付けられたその布は情けなく、力無いように見えた。
腰とパンツの指の間に親指を入れ一気にひざ下まで下ろすと、あとは無造作に床に落ちていく。
彼女はパンツ、短パン、Tシャツを洗濯機にポイっと投げいれると磨りガラスのようになっている
浴室のドアを開け消えていった。

後に残ったものはシャワーの音と、ピンクの洗濯籠で震える小さなパンティだけだった。

しばらくするとドアが開き、彼女の母親らしき人が顔を覗かせる。
「はぁ。全くあの子は脱ぎっぱなしにして」
そういうと自分とブラジャーをひっ掴み洗濯機に放り込んだ。

「洗濯もの回さないと。それにしても暑いわね。私も浴びてからでいいかしら」
洗濯機を覗き込んでいた母親の顔が消える。
「な、なんとかなったのか…パンツにならずに済んだのか」
だがこのままだと水責めだ。なんとか洗濯機から這い出さなければ。

周りを見回す。そして目に入った例のアレ。
彼女がさっきまで履いていたピンクのパンツ。何故かそちらに足が向く。

よくよくパンツを見て絶句した。
一晩履き続けられたそのパンツはヨレヨレでシワシワだった。
彼女の無造作な寝返りや小さな動きが大きな圧力になってこんなになってしまったのだ。
一晩中もの言わず彼女のお尻を覆い続けていたのだろう。

無理矢理パンツという女の汚い部分をカムフラージュする役を与えられさぞ辛かったろう。
「それに…」

うっ。この匂い。強烈な酸っぱい匂いが鼻をついた。
彼女の汗を吸い続けた結果こんなになってしまうのか。
この熱帯夜の中クーラーも点けず寝汗を吸わせ続けるなんて正気の沙汰ではない。

ところどころできた汗染みはまだマシだった。
臭気で目から涙が出る。クロッチの部分。酷すぎる。
黄色く変色し、何かカスみたいなものがこびり付いている。

「もう寿命だっ!早く捨ててやれよっ!楽にしてやれよっ」
こんなにもパンツに感情移入するとは思わなかった。
ただただポロポロと涙を流しパンツを見つめるしかなかった。

ピシャっと浴室が開く音がする。いつの間にかシャワー音は消えていた。
茶髪を濡らした女が洗濯機を覗き込んでいた。
「もうっ、おかーさーんっ!洗濯籠にいれたのは今日履いていくやつ!もうっ」
文句を言いながら自分を洗濯機から取り出した。
取り出された最中ずっと裸体の女をにらみ続ける。憎しみが強い。

いや、正しくは強かった。
彼女が自分の左右の輪っかを両手で開き、床下ギリギリまで下げる。
「は、はかれる…」

そう思った瞬間一気に恐怖が増した。このアングルがそうさせているのかもしれない。
彼女は前かがみになり右足をぐあっと上げて勢いよく自分の輪っかの中に足を通した。
「ぎゃぁぁぁっ」
足裏が見えると怖すぎて叫んでしまった。
「あ、あぁぁ…」
同じように左足も自分の体すれすれを通って行く。

それからは一瞬だった。
彼女が両手に構えた紐をグイッと腰まで上げると、両手足が紐に引っ張られて
股間まで一直線に持ち上げられる。
「ぐにゅっ…ぐいっ」

まさしくこんな音と感触だ。彼女の股間に張り付いた後更に紐が少し引っ張られる。
フサフサでカールした毛が顔を覆い不快だ。そしてこの圧迫感。
手足は大の字に伸び切りピクリとも動かせない。

辛い。が、もっとつらいのは呼吸。ヒラヒラの肉が顔にまとわりついて息ができない。
なんとか息をしようと顔をもぞもぞさせていると腰がビクっと跳ねた。
「んっ…ちょっと。あんまり動かないでよ顔がクリの位置にあるんだがら気を付けてよね」

ぶるんと揺れた大きなケツ肉に下半身を砕かれそうになりながら
ヒロは名前も知らない女子高生を呪った。