恐怖の時間…それは…
お弁当の温めを待つ間の時間だ。
相変わらず自分を見つめてくる店員さん。
その視線から逃げるようにきょろきょろ見渡す自分。

それは数十秒なのに長く長く感じた。
何か話さなければというプレッシャーに負けて、口を開きかけると先に彼女の方が言葉を発した。
「それにしても大変なことになりましたね。ニュース見ました。
でもマサさんにとっては良いことなんですかね?」
彼女の言葉に対して、マサの頭にハテナマークが次々と浮かぶ。

「あはは…」
何故名前を知っているのか、なんのニュースが大変なのか、
自分にとって良いこととはなんなのか、聞きたいことは山ほどあったが、流石コミュ障。
愛想笑いで済ましてしまった。
そしてまた地獄の時間。

もう疲れた。もう無理。
その瞬間に弁当の温めが終わりそれと同時に地獄の時間も終わった。

や、やっと帰れる。
差し出された弁当を持って店を後にしようとするとまた彼女が声をかけてきた。
「すいません。お客様のマサさんにこんなことお願いするのもどうかと思ったのですが、
ちょっとだけ手伝ってほしいことがあるんです。
数分なのでお願いできないですか?」

おっとりとしたたれ目が困ったように見つめてくる。
親切には親切で返さなければ。
「あっ、わかりまひた」
「ありがとうございます!ちょっとついてきてもらえます?」
レジから出てきた女性の後を小走りで追う。
彼女はドリンクが羅列されている後ろへと向かった。

だが、ドリンクの棚を通り過ぎ、トイレへと向かい、トイレのドアを開けた。
後ろからは彼女のお尻と背中で見えなかったが、音で分かった。
手伝ってほしいことはきっと男子トイレの何かを取るとかそういったものだろう。

流石に従業員でも男性のトイレに入るのは気がひけるんだ。
特に彼女はそういうのが苦手そうだった。
「すいません、マサさんあそこの奥にあるもの見えます?」
彼女が扉を支えながら何かを指差す。
「えっーと、どれですか?」
彼女と扉の間の隙間からトイレを覗き込む。

「あちらの壁の近くのものなのですが」
そう言って指差す。
だが、よく見えない。
汚い男子トイレにはあまり入りたくなかったが、差した壁の近くまで行く。
何秒か凝視するも何も見えない。
「あの店員さん、どれのこと…」

後ろを振り向いてあることに気付く。
向かいの扉のマークに逆三角形の青色のロゴがある。
「あれ?ここって女性のトイレ?」
思ったことが口をついて出た。
それを受けて彼女は優しく微笑む。

「違いますよ」
そして微笑みながら一歩、更に一歩とトイレに入ってくる。
彼女が一歩入る度に二歩後ろに引く。
「て、店員さん?」
壁に背中が当たる。それでも彼女は距離を縮めてくる。

「女性はトイレなんて言いません。お手洗いです」
彼女は表情を崩さぬまま後ろ手でドアの鍵を閉めた。

ちかこは自分の半分くらいのお客を女子トイレに閉じ込めた。
そして彼を壁際まで追い詰める。
マサというこのちいさい子の質問を全て微笑みながら無視して、自分とこの子の立場を分からせた。

端から見れば高校生が幼稚園児をいじめているように見えるだろう。
だが、この子は成年している。
更に言えば最近の法律で定められたことをしようとしているだけで、むしろしなければならない。
もっと言ってしまえば、16歳以上の女性はこの子を見かけたら犯さなければならないのだ。

人類の危機に瀕している今、する方が良いとかではない。

「私、結構学校でも告白されるんですよ。
身長も普通の男性から見れば平均的な身長だし、スタイルも良いし、性格もおっとりしてるんです」
「え、え?」
未だに状況が飲み込めないのか変な声を出している。
なんか可愛いかもと少し思っている自分がいる。まるで小動物のようだ。

「でも私彼氏がいるんです。2個上の大学生で、結婚を視野に入れてお付き合いしてるんです」
更に一歩近付く。服越しだがおへそにこの子の息が当たる。
「ねぇ?こっち見て?」
顎に手をかけ上に向けると眉毛をハの字にして震えていた。
よく見ると弁当を持っている手が小刻みに震えていた。

「ご、ごめんなさい」
怖がらせてしまった。そう思うと可哀想な気持ちが大きくなった。
「こ、怖がらせるつもりはなかったんです!
ただ法律も出来たことですし、ぜひお願いしたいなって」
良心がちくちくと痛んだ。この体格差だ。男、女は関係ない。
完全に私が勝ってしまう。
こんな騙すような方法ではなく、きちんとお願いすればよかった。

ちかこは後悔した。
「あ、あの、自分の子供や孫がたったの30歳までしか生きられないなんて嫌なんです!
だ、だから種付けをお願いしたいの…」
ちかこの頼み事はマサに最後まで聞いてもらえなかった。
なぜならマサが騒ぎ始めたからだ。

「た、たすけっ!!たすけてっ!お、犯されるっ!ヤられちゃうっ!!誰か!!」
小さいくせに大きな声を出される。
まるで自分が犯罪者のように助けを求める男を見て軽いパニックになる。

「ち、ちがいますっ!いえ、犯しますけど、犯罪じゃないしっ!
あんまり大きな声出されると恥ずかしいです!ちょっと静かにしてください!」
それでもマサは声を張り上げた。

「たすけてぇーー!!だれかぁ!!たすけ…」
最後のたすけては頬の痛みで声がから振った。
バチーンと強烈な上から下へ振り下ろすような平手打ちが目の前から飛んできたからだ。

「静かにしてって言ってるでしょ!?法律で決まったの!だから正しいことなのっ!
うるさいから静かにして!」
男の頬を叩いたあと胸ぐらを掴み、顔を近づけてちかこは静かに怒鳴った。

「ご、ごめんなさい…」
叩いた側の目から涙を流して謝られる。
「な、なんでも言うこと聞くから…痛いことしないで…」
その瞬間ぞくりとしたものが背筋を走った。
私の性癖は特殊ではない。至ってノーマルだ。
彼氏にも普通に抱かれ、それに応える形で迎え入れ、愛に包まれて何度か絶頂に達したこともある。

だが、今力ずくで男を黙らせた。
頬を思いっきり叩く事で痛みを与え、恐怖を与え、屈服させた。
なんでもするとまで言わせた。
それもたった一発のビンタで。

その征服感とこれから法的に守られている状態でこの子を犯すという非日常が私を興奮させている。
と、理解してしまった。

股がジュンと濡れたのが分かった。
既に股から垂れ始めている。
ブラで守られている乳首にまで電撃が走るような気持ち良さがある。

こんなに感じているのは初めてだ。
何もしていないのに。身体が軽く跳ねる。やばっ。逝きそうかも…

掴んでいた胸ぐらを離す。
「い、痛いのは嫌なの?」
頬を両手で抑えている子に問う。
「は、はい」
「じゃあ私の言うことなんでも聞くよね?」
「は、はい」
「ん?聞こえないよ?」
「き、聞きます。なんでも聞きます」
その言葉で身体に走っていた電気が強くなる。

「じゃ、じゃあ。上向いて私の顔を見てごらん」
はぁはぁと自分の息が上がっていることも気付かず、夢中で命令する。
「ほっぺ痛かったね。治療してあげるね」
ちかこは怯えているマサの顔に唾を垂らした。