今なら大丈夫。
そう思って出口へと小走りで急ぐ。
何事もなく、ウィーンと自動ドアが開き、同時に小学生の女の子が入ってきた。

悲しいかな自分よりも身長が高い。
目を伏せ、脇を通り過ぎようとすると髪の毛に痛みが走る。
「えっ!?いたっ!なんで!?」

状況を確認すると女の子が自分の髪を鷲掴みにしていた。
全くもって訳が分からないこの状況を受け入れようとするも混乱するばかりだ。
女の子に引きずられながらコンビニの店内へと逆戻りする。

「てんいんさーん」
女の子が自分を引っ張り回しながら店員を呼ぶ。
「お、お前あの女の手先かっ!?」
自分で言っていて意味が分からない。パニックっている。

「ど、どうしたのお嬢ちゃん。私今探し物しててね、買い物決まったら」
さっきの店員が走ってきた。
その店員に女の子が続いて口を開く。
そしてその言葉に自分の耳を疑う。
こ、こんなことがあって良いはずがない!こんなの酷すぎる!こんな運命過酷すぎる!

「トイレットペーパーが転がってたよ」
そういって自分を店員の前に突き出した。
「あっ!ちびマサあんた逃げ…」
そこまで言って店員の目が一瞬とろーんとする。
「こんなところにあったのか!おねーさん怒られるところだったよ。ありがとうね」

女の子が手を離す。
べしゃっと地面に落ちたと思ったら続いてまたTシャツを掴まれた。
何事も無かったように店員はマサをあの密室空間へと引きずっていく。

「お、お前!こんな冗談やめろよ!小学生の女の子まで巻き込んで無茶苦茶だぞ!」
そう怒鳴ると店員は立ち止まり、自分を見下ろした。
「あれ?トイレットペーパーって話すっけ…?」
また目が一瞬とろける。
「そりゃ話すよねっ!トイレットペーパーだって。今日のは良く話すなぁ」
またマサをちかこは引きずった。
乱暴に女子トイレに放り込まれる。

「はぁ。あのちびマサ逃しちゃったなぁ。でも、しょうがない。
お給料には変えられない。こんなに汚されちゃったし。乾かすの面倒くさいなぁ」
「こっちは面倒くさいとかじゃないんだぞ!痛かったしすげー怖かったんだっ!
だ、だからもうやめてくれよ!」

ちかこは自分を見下ろして不思議そうな表情を浮かべる。
「へ?なんでトイレットペーパーがちびマサみたいなこと言うの?おもしろっ」
そう言って高らかに笑う。
「ふざけるのはもうやめろよ!やめてよ!…やめてください」
最後は懇願になる。

「分かったから。さっさとジーンズの濡れた部分拭いてよ」
はい。とちかこはマサに股間を突き出した。
「な、なに言ってんだよ?ほ、本当にもうやめて下さい。
もう…お願いだからやめて下さいっ!」
仁王立ちするちかこに土下座してお願いする。

「ちょ、ちょっとやめてよ!
トイレットペーパーにお願いされてもそれがあんたの存在意義じゃん。全く」
そう言って土下座しているマサのTシャツの背中を掴み無理矢理股間の前に立たせる。

「ごめん、私これから勤務に戻らなきゃだから早めに拭いてね」
にこっと微笑まれる。
「ね、ねぇ…」
おずおずと話しかける。
「こんなに謝ってるのになんでこんなことするの?
お願いだからもう許してよ。お前って呼んだことも謝るから」
上目遣いで店員を見つめる。

また怒らせてしまったかもしれない。だが意外にも店員は呆れた表情をしていた。
「あー。このペーパー不良品かも…こういう場合ってどうするんだっけ?」
じぃーっと自分を見つめて考え込む。もしかして今なら逃げれたり?
そっとドアのノブに手をかけるとギュッと手を掴まれた。
「はぁ。完全に不良品だ。逃げるなんて。
やばいな、また店長に怒られる。どうしよう」
数秒考え込みパッと閃いた顔をする。

またマサを店内引きずり回し、目当てのものを棚から掴んでトイレに戻る。
紐だ。縛られるのか。
「あとはどうやって言うこと聞かすかだなぁ…とりあえず脱いでねー」

そう言って店員はマサのTシャツを両手で握り左右に引き裂いた。
「トイレットペーパーはちぎらないとねっ」
恐ろしい事を言い出す。
そしてここまででなんとなく分かっていることがある。
多分本当にこの店員には自分はトイレットペーパーに写っているんだろう。

「これでよしっと。それじゃ次は床に仰向けになってね」
いくら自分がトイレットペーパーになっていると認めても、流石に抵抗せざるを得ない。
おしっこやうんこをする場所で寝そべるなんてお断りだ。

「いや、いやだ!こんなところで寝そべるなんて絶対…」
肩を掴まれ押し倒される。
「そうか。無理矢理言うこと聞かせればいいんだ」
納得したようにうんうんとマサを見下ろしながら頷いている。

「はい、じゃあ拭いてねー」
店員が背中を向ける。
普段もわかってはいたが寝そべると更に顕著に分かる。巨大だ。
すらっと伸びる足、小さいのに大きなお尻、細身なのに広い背中。
本当に自分が小さいんだと再確認する。

背中を向けたちかこは自分を跨いだ。この瞬間自分の運命を知る。
位置を確かめる様に、すり足で何度か後ろに下がる。
マサと自分のお尻の位置を調整し、何度か下を確認した後、んっしょ。
と言ってお尻を落とした。

ズン!っと店員のお尻が迫る。
初めは優しそうに見えた店員だったが、それはとうの昔。
今は自分に危害を加える敵だ。その敵が自分の顔に腰を下ろす。

お尻が、特にジーンズの濡れた濃い部分が自分に迫る。
薄い紺色だと思っていたジーンズは
本当は濃い紺の糸と白の糸を交互に編むことによって薄く見えている事に気付く。

走馬灯のように目の前で起きることがゆっくりになった。
ジーンズを身につけた店員の尻が1番初めに鼻と接した。
そしてその鼻を潰し、目と接する。
ここからは目を閉じる。暗闇の中口が覆われる感覚があった。
顎にも重圧がかかる。鼻も目も口も顎も全てが潰される。
ぺしゃんこになっている。限界値を超えている。

それなのにまだ体重はのしかかってきた。
潰されて、潰されて、もう無理だ!と思っても潰される。
顔は店員のお尻に固定され、微動だにしない。
動く時は彼女が尻を動かす時だけ。
「よしっ!じゃあ拭いてね。早めにお願いね。
さっきも言ったけど、今私1人しかいないからお客さん待たせちゃうので」

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
思わず顔の痛みで叫ぶも全て彼女のお尻に吸収される。
「そうそう。頑張ってる?大丈夫??しっかりジーンズに染み込んだの吸ってね。
ある程度吸ってくれたら後はドライヤーで乾かすからね」
マサは暗闇の圧迫空間の中遠いところから彼女の声を聞いたような気がした。
(いたい…いたい!いたいいたい!痛い痛い!!)

長らく彼女の座り続けられた気がした。
実際にはたいした時間ではなかったろう。
それでも彼女の気分次第でいつ終わるか分からないこの痛みに耐えるのは途方も無い気力が必要だった。
「どれくらい拭けたかな?」

彼女が尻を少し浮かしてマサの安否ではなくジーンズの乾き具合を確かめる。
「あれ…全然拭けてない。擦り付けないとダメなのかも…」
そう言ってマサの腹に手を置いてまた腰を落とそうとして、声を上げた。
「ま、待って下さい!!」

目の前すれすれで腰が止まる。
「ん?どうしたの?」
ジーンズの硬い生地で顔の上をこんなでっかい尻でスクロールされたら顔が擦り切れる。
「押し付けられると、ごほっこほ」
手がお腹を押していて咳き込む。
「上手く吸えないので、すれすれのところで止めて下さい!」

自分から吸うことを認めてしまう。
だが今の痛みに比べればいくらかマシのように思う。
「あっ、そうだね。ごめんね気付かなくて。じゃあどれくらいの位置がいいか教えて?」

「い、今の位置がちょうどです」
彼女の股から見下ろす顔が見えた。
にっこり可愛く微笑んでお願いねと言っている。
自分にいじわるをしているわけではない。本当にトイレットペーパーと認識されているんだ。
マサは一筋の涙を流しながら彼女の股に口を近付けた。