「登録が無事済んでよかったね」
さっきの出来事を無事と呼んでもいいのかどうか多少の疑問が残る。
「誰にも言わないで下さい」
「うんっ任せて。これから楽しくなるね」
不安でいっぱいだったが彼女の笑顔にはそれを打ち消すものがある。
と、今までだったら思ったかもしれないが、もう騙されない。
「さて、ここがそうだよ」

着いた先はどこにでもありそうな一軒家だった。
「う、うわぁ」
思わず声が漏れる。普通の大きさの家なのだが自分にとっては違う。馬鹿でかい家だ。
「ドアの取っ手にはなんとか届くんだね」
ドアを開けさせられる。まず驚いたのが靴の量。
ブーツやらハイヒール、パンプス、スニーカーと並ぶ。この時点でかなり不安になる。

「あ、あのー…もしかして。女性がおおいんですか?」
「女性しかいないよ?はい。上がってー」
ショックを抑えきれない。肉食の中に草食が一匹。確実に死ぬ…
「あ、あのぅ。やっぱりこのギルドは合わないかも…」
「不安かもしれないけど大丈夫。皆いい人ばかりだから。私のドラマ応援してくれたりするし」

そんな話は納得する理由にならない。女は嫌だ。女は嫌なのだ。もちろん彼女は欲しい。
だが、お淑やかで自分の事を馬鹿にせず、甘えてくるような女の子がいい。
石田まりなは女優で確実に美女だが、今までの会話でSっ気がむんむんしてるので苦手だ。

「いや、幼少の頃から女性が苦手で…女性と一緒に生活するなんて無理だと思うんですよ」
彼女は腰を屈めてパンプスを脱ぎながらマサを見つめた。
「それも安心してっ。私たちがマサ君の女嫌い治してあげるから」
さぁさぁ。と背中を押され玄関すぐの扉を彼女が開け放つ。本当に強引な人だ。

と言っても、他に選択肢がないというのも事実である。
何はともあれ結局は自分次第だ。短期間で能力の扱いに長け、ここから脱出すればいいのだ。
これからしばらくは囚人にでもなったと考えておこう。

彼女に続いて扉に入るとリビングだった。ネットで見たことがある。
リビングダイニングキッチンというやつだ。
キッチンのカウンターの前に大きな机があり、7つの椅子が囲んでいる。
ここからだと机と椅子の足しか見えない。
更にその手前にはふっかふかのソファ。こちらもゆうに5人は座れそうだ。
そしてソファの向かいには壁際にテレビが。でかい。大迫力だ。これで映画を観たら最高だろう。
嫌なのに、このソファに深々と沈み映画を観る自分を想像するとワクワクしてくる。

「ここがキッチンね。朝昼はみんなそれぞれ仕事だったり学校だったりでバラバラだけど、
夕飯はだいたいみんなで一緒に食べるから」
この言葉から察するに学生がいるんだろう。年齢層が全く掴めない。
「じゃ、次行くよー。はいはいっ」
そう言って背中を丸めながらマサの背中を押した。幼児じゃあるまいし。

「とりあえず簡単に案内するね。二階建てで階段はここだけ」
キッチンを出てすぐに階段がある。一つ一つの段が大きい。腰限界まで足を上げないと登れないだろう。
「二階にはミオさんの部屋と私と、ゆきちゃんの部屋があるよ。あとはお手洗いと洗面所だね。
まぁ他にもあるんだけど、面倒くさいからおいおい説明するねっ」
はいこっちーと手を握られて引っ張られる。

「廊下のこの二つの部屋がそれぞれ、まさみんとキリちゃん、ゆかとなほが2人一部屋で使ってるの。
それでこっちが…」
階段に沿って廊下を進んで行く。
「こっちがお手洗いでこっちがお風呂ね。それでこの廊下を右に曲がって扉を開けると…
ほらっ。さっきのキッチンへ〜」
これで終わりだよ。とまるで言うかのように手を広げる。
だが、まだ肝心な事を聞いていない。

「僕の部屋はどこです?」
「階段の下の物置かー、屋根裏部屋か、はたまた地下か」
さっき2階建てとか言わなかったか?ツッコミたい部分は山ほどあったが我慢する。
とりあえず物置だろうと屋根裏部屋だろうと、1人の部屋があるとわかって安心する。

「えっとー、それじゃ案内も済んだ事だし、ミオさんのとこにいこう。ミオさん多分部屋にいるから」
石田まりなの後ろに着いて2階へ上がる。
スイスイと上っていくまりなの後をヘッコラヘッコラマサは上った。
2階へ着くと先ほどの説明以上に部屋があるように見える。
「一応ギルドだからさ。ミーティングルームとかも空いてる部屋とかもあるんだよね」
「空いてる部屋を1つもらえたりしないんですか?」
「あー…マスターに聞いてみたら?」
そう言ってドアを開けた先に女性がパソコンと格闘していた。

いストレートの長い髪を振り乱しながらパッと目を上げる。
「うわぁ。本当にちっさいねー」
第一声が身長の事だ。まぁ慣れてはいるが。
「ミオさんの言う通り連れてきましたよ。ギルド登録も完了してます。
ただ本当に良かったんですか?」
「あーいいのいいの。変身だけ見せれば納得するでしょ。まぁ、バレたらバレたでどうにでもなるし」
それより…そう言って立ち上がり自分の目の前に立つ。
石田まりなが肉付き良いのに比べ、ミオはスラッとしている。キツめのジーンズをスッと着こなしている。
「あんたコレ小学生とかにも負けてるんじゃないの?」
そう言いながらマジマジと見つめられる。

「あのー…」
気まずくなり質問をした。
「僕の能力って変身しかないと思うんですけど」
そう聞くと2人は顔を見合わせ、また見下ろされる。
「あんたの能力は変身だけじゃないのよ。他にも、うーん…なんていうか相手の意識を捻じ曲げたりとか…
まぁ、なんというか思った以上に強力なのよ」
「だから管理しなきゃならないんだよねっミオさん」
「そう。預言者のみっちゃんによるとアンタがサドだと世界が滅ぶらしいわ」
は?意味が分からない。急に話が見えなくなる。
「どういう…??」
質問をする間もなく、石田まりなに頬をガッと掴まれる。
「うぅー!!?」
「じゃあまりな、ゴム製の小人で。大きさは手のひらに握って顔が出る程度ね」
「はーいっ。ゴム製ですね」

2人は会話を進めてマサの顔を上に向かせた。
そして2人は口をすぼましてマサの開いた口目掛けて唾を垂らした。
「うぅっ!!」
その行為に驚いてまりなの手首を両腕で握り身体をよじる…もビクともしない。
そうこうするうちに2人の唾液が目の前に迫り口の中に入った。
変に温かみのあるネトっとした2人の唾液が液胞を携え自分の喉を通っていくのを感じた。
「おゴッ!!!」
まりなが手を離すと思わず尻もちをつく。そしてあの感覚。身体が縮んでいく感覚だ。
周りが大きくなってゆく。ものの数秒掛からず掌サイズになる。
「な、なんで能力使った覚えなんて…」
「覚えはなくても女性の体液を飲むとその女性が考えていたものになっちゃうのよ」
な、なんだそれ!
そしてトイレットペーパーにされた時の事を思い出した。あの時も勝手に能力が暴走したのだ。

「それもマサ君が彼女のおしっこ?を飲んだせいだね。
あの時店員さんトイレットペーパー足りなくて困ってたからそうなったんだね」
「え!?というかなんで僕が考えてることがわかるの!?」
「飲まされた女性とは話せるのよ。といってもその女性も能力者じゃないとアンタの能力に飲み込まれるけどね」
「飲み込まれるって…??」
「まぁそのうち分かるから。まずはアンタをMにしないとね。
これからMの気持ち良さを教えてあげるからね」

そう言ってミオは妖艶に微笑みながら右足をあげてマサの横に踏み下ろした。
「ひぇっ!」
「ひえっだって」
そう言って2人が顔を見合わせて笑う。
「ほらほらー踏み潰しちゃうよー」
そう言いながら地べたで逃げ惑うマサの上に足を動かしていく。
彼女たちの足が落とす影を避けながらマサは逃げ惑った。
「ぱぺっ」
まりなが容赦なくマサを踏み潰す。

「いたいー?くるしい?でもさっき私の唾をおちんちんにつけて逝っちゃってたよね?
私の唾が気持ち良かったの?」
「なにそんなことがあったの?」
「そうなんですよ。ペンに変身したんですけど、最後射精しちゃって。
でも出した後私の手のひらでプルプル震えてたよね?」
「そ、そんなことないいっ!」
「ふふ。強がっちゃって」
そんなことない。あれは無理矢理逝かされただけだ。
臭い匂いの唾液で口臭を浴びながら逝きたいなんて願っていない。
「…臭いって。女性に言ってはいけない言葉だよ?」
そうまりなが言うと一段と体重が乗る。

思っただけで通じてしまう。迂闊に変なことを考えられない。このまま踏みにじられるのだろうか。
「なーんてねっ。本当は恥ずかしがってるのは分かってるんだ」
「ぷはっ!はぁはぁはぁ」
彼女の靴下からやっと出られた。と思うのもつかの間彼女の手に握られる。
「本当は私の唾が沢山飲みたくて仕方がないんでしょ?」
目の前の彼女の顔は笑っていない。いや、正確には目が笑っていなかった。
「踏み潰してもゴムだから潰れないのね。うん。アンタの能力使えるわね」
ミオは顎に手を当てている。

「はぁ。ちっちゃくて可愛い。こんなにちっちゃいのに動いてて生きてるなんて。
踏み潰しても死なない。そんなこと言われたら…はぁ」
まりなの頬が紅潮していく。ミオの話は耳に入らないようだ。
「どうやって使うか。情報収集、忍び込み、なんでもあれね」
ミオは一人思考を深めていく。
「ぐえっ!」
急にまりなに握られる。彼女はキョロキョロとミオの部屋を見渡す。
すると彼女の飲みかけのお茶があった。グイっと口にお茶を放り込む。
そしてグジュグジュと口でお茶を揉みだした。
「いて!だ、だして!ここから出して!」
空になった透明のコップに放り込まれる。彼女は相変わらず口をグジュグジュと動かしている。
頭の中に彼女の声が響いた。
「わたしの、唾液入りのお茶あげるね。沢山口の中でぐちゅぐちゅにしたお茶…
はぁーぁ…飲みたいでしょ?」

い、いやだ。そんなもの絶対に飲みたくない。唾液にはバイ菌がたくさんいるのだ。
「わかってる照れ隠し。恥ずかしがり屋ね。かわいいね。本当にかわいい。
本当は唾が飲みたいんだよね、お茶が混じってごめんね」
彼女の口がコップの口に近付いた。
ダバババババ。
開いた口から液体が投入される。
「ろう?おいひい?」
液体にされるがままコップの内側に身体打ち付ける。
痛みで叫ぶとヌメッとしたお茶が口に入り込んできた。
あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛っ!!
「はあっ!へ、へんな声出さないでよ」
濁流が落ち着いて酸素を求める。水面に顔を出すとなんとか足がつく。
「ね?どんな味?嬉しい?女優の唾で興奮してるんでしょ?」
彼女の目が逝っちゃっている。ところどころがお茶がヌメヌメして気持ち悪いくらいだ。
「気持ち悪いの?そんなことないでしょ?ちゃんと飲めば分かるよ」

そう言って彼女はマサの頭上で舌を出した。
唾が彼女ピンクの舌を伝って落ちくる。
上手く避けられずマサの頭に落ちた。粘りついたその唾はマサの顔を覆う。
息ができない!慌てて顔の周りを両手で拭う。
息をして彼女の匂いに支配されていることに気付く。
「ビクンっ!!」
「あはっ!あははは!ビクついてるっ!そんなに嬉しいの!?ねぇ!」
うれしくねぇよ!

「大丈夫だよ。本当はこんな唾飲ませるなんて恥ずかしくてしたくないけど、
マサ君が望むなら素直になるまであげるよ」
彼女の舌からとめどなくよだれが垂れてくる。唾液のせいで水かさが増えていく。気づけば、なんとか足が着く程度まで水面が迫っていた。
彼女の唾液の気持ち悪さよりも恐怖が勝った時マサは叫んでいた。
「ま、まりなさんっ!ぼく泳げないんですっ!だからもうやめてください!!」
彼女はまるで聞こえなかったかのように唾を垂らし続ける。

「お願いですっ!もうやめてくださいっ、し、死んじゃいます!溺れちゃう!」
彼女はそれでもなお、頬を紅潮させながら醒めた目でマサを見下ろし、唾を供給し続けた。
「ご、ごめんなざいぃ。ごぼっ。がはっかぱっ。本当に臭いなんて女性にしつれいなこと」
バシャバシャとコップの中で暴れる。
「…美味しいです!まりなさんの唾液美味しいですっ!
本当は…がぱっ、飲みたくてたまらなかったですっ!!」
あぁもうダメだ。このまま溺れるのか。
「はぁっはぁっはあっ」
その瞬間硬い机の上に仰向けで荒い息をしていた。
「やっぱりね。かーわいい」
そういってまりなに唇を押し付けられる。