「まーさーくんっ、あーそびーましょっ」
ドアの向こうから石田の声が聞こえてくる。昨日はあのまま自分の家に帰してくれた。
どうやらミオさんが徐々に慣らしていこうとしてくれているらしい。
だが、いずれにしても彼女は家にきた。今日はどんなことをさせられるのか。
身構えて鍵をカチリと開けると、こちらが開ける間もなく彼女がドアを開けた。
2、3歩下がると彼女は一歩でその差を埋め、腰を折って前屈みになる。
石田の影がマサに落ちる。そしてそのまま話し出した。

「おはようっ。今日は痛いことはないから安心してねっ。さっ、あーんして」
上を見上げると石田は返答を待たず、既に唾液を垂らしていた。
「ちょ、ちょっとまっ…ぶっ」
彼女の口から糸を引いた唾液が顔に降り注ぐ。顔の表面をコーティングする。
手で拭き取ろうとするも、彼女が垂らして続けるため、全く意味がない。
石田の唾と格闘している間に、能力が発動したのがわかった。
「うん。マサ君相変わらず凄いね。これはまた完璧だよ」
彼女がしゃがみ込みながら小さくなったマサに話しかける。どうやらスネ辺りまで縮んだらしい。
「それじゃ行くよ!善は急げ!」
そう言うと彼女はマサを鞄にしまった。

「いらっしゃいませー」
女性の声が聞こえる。他にもいろいろな声が聞こえてくるが、それが全て女性のものだと分かり絶望した。
「あ、あのー。最近少し大きくなりまして。サイズ測りたいんですけど」
石田はわざとらしく恥ずかしがって言った。
「あっ、もしかして石田まりなっ!?」
店員が驚く声を石田は制する。
「恥ずかしいので…」
「も、申し訳ございません。それではこちらをお持ちになって」
店員がそう言うと石田は何かを受け取り歩く。
コツコツというヒールの音と、鞄の揺れ具合から少し小走りなのがうかがえる。
布のポーチやら、財布やらに潰されないようにマサは身を丸くして身体を守っていると、鞄が開き目の前が明るくなった。

石田の大きな手がマサを探す。そして捉えると外に引っ張り出した。かなり雑だ。
「石田さん…ココはどこですか?」
非常に狭い部屋だった。畳半分の大きさで立つのがやっとのようだ。
到底寝転ぶことなんてできない。
「ここはねー試着室だよ!」
石田はマサを床に置くと更に何かを求めて鞄の中をまさぐった。
「な、なんで更衣室なんですか?」
マサが恐る恐る聞くと素敵な笑顔が返ってくる。
「もうすぐ分かるからねっ」
そう言って鞄から4本の糸を取り出す。

「じゃあそれぞれ手首と足首にくくるねっ。コラッ、暴れないの」
まるで子供をあやすように石田は言う。
だが、自分の未来がなんとなく分かったマサはそれでも尚暴れた。
「い、いやだ!絶対苦しいに決まってるっ!縛られる系で良かった試しなんてないっ」
そう抗議すると、石田は腰に手を当ててマサを見下ろした。
「でも結ばないと始まらないよ。もうっ、じっとしてってば!」
そう言うと彼女の右足が上がった。ぐっと持ち上げられる。
そしてそのままマサは彼女の足裏しか見えなくなった。
「や、やめでっ!」
へぶっ。という情けない音を出して彼女の足裏に大の字で潰される。

「はーい。そのままおとなしくねー。すぐ結ぶから」
石田がマサを足で固定しながらしゃがみひもを結ぼうとする。
まるで靴を結ぶかのように。自分が潰されても死なないからと言って無茶苦茶だ。
「うぎぎぎぎっ」
一際重く体重がのしかかる。足の裏から出る手足に紐が結ばれてゆく。
「はい、できたっ」
そう言って足裏から解放されるとピンク色のレースが付いた紐が手首と足首から伸びていた。

マサが何を言う前に石田は左手足から伸びる糸を掴む。
そして代わりに、彼女が店員に渡されたであろう、ブラジャーを鞄にしまった。
「すいませーん。終わりました」
彼女がカーテン越しに声をかけるとすぐに声が返ってきた。
「はーい開けてもよろしいですか?」
どうぞ、と返す。
「少し小さかったですか?後ろの紐で調整できるのですが…」
そう言って店員の手にマサが渡る。
「いえ、ちょうど良かったです」
「でしたらサイズはFですね」
「そうですか。変わってませんでした。他の見てきてもいいですか?」
「えぇ。もちろんです。また決まりましたらお声掛けください」
そう言って石田は靴を履き、店員に握られたままヒラヒラしているマサを置いて他の場所に行ってしまった。

「ちょっとちょっと!石田まりなが来てるよっ」
店員がマサを腰に打ち付けながら他の店員に話しかける。
「うそー!?どこどこ?あっ、ほんとだー。実物はもっとかわいいね。いいなぁ」
「ねー、しかもFカップだよ。神は何故こんなにも不公平なのか」
2人はひとしきり笑い合う。
「あっ、そうだ。これ試着用だから拭いてまた掛けといてもらえる?」
「はーい。分かりました」
次の店員にマサは渡された。

そしてレジ裏の机に置かれる。置かれた瞬間に立って走る。
「へぶっ」
マサは顔からずっこけた。見ると足の紐が彼女の手に握られている。
「こーら。暴れないの。今から拭くから」
そう言ってラックから白い布を取り出してマサを強引に仰向けにし寝かせる。
そして口を開く間もなく、白い布がゴシゴシとマサを潰し始めた。
「おっけー」
彼女はマサを持ちレジから出る。
周りを見るとお花畑か?と、思う程に鮮やかな色のブラが並んでいた。
そしてそれを手に取ったり物色する、女、女、女。
こんな恐ろしい場所に手足を縛られ、小さくされている状況に震えが止まらない。
店員はマネキンにマサを縛る。背中にマネキンの硬い胸が当たる。
「はい、じゃ頑張ってね」
そして店員は立ち去った。