擬人蚊    作:いと小さき人


※登場人物
 伊藤 大祐 19歳 175cm 62kg                備考 予備校生
 伊藤 彩香 20歳 160cm 48㎏ B80 W65 H81 S24.0  備考 大祐の姉
                      
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§1 新たなる試み

インターネットで「ミニチュアの街」を購入した大祐は、巨大な彩香と様々な体験をしたことによって通常の快感を得ることが難しくなっていた。
そんなある日、大祐は再び素晴らしい商品と巡り合うことができたのだった。
それは「擬人蚊」という物体変換装置であった。
要は、人間を「蚊」に置換するものであり、巷で流行している「サイズ変換機」で縮小した体に羽だけが生えたようなものなのだ。
大祐は、0が結構続く決して安くはないこの商品を迷うことなく購入した。
(もちろん、これで僕の貯金はほとんどなくなってしまったのだが・・・)

2週間もすると、メール便でその商品は届いた。
思いのほかその商品は小さく、クレジットカードと同様の大きさ、薄さであった。
ミニチュアの街で経験した手痛い失敗のことを考え、今回は説明書を熟読することにした。
読み進めていくうちに次のことが判明した。

1.この「擬人蚊」は効果が10分程度続き、途中で元に戻ることはできないこと。
2.サイズは5~6mm程度に縮むこと。
3.本物の蚊と同様に、付属の採血器を使用することで吸血できること。
4.叩き潰される等大きなダメージを受けても、1回だけは復活できること。
5.復活後に新たなダメージを受けると、死亡すること。

基本的な点は問題ないのだが、5番目の説明にやや不安な点がある。
途中で元に戻ることはできないのだから、万が一踏み潰されるなどした場合にそのまま巨大な足の裏に貼り付いてしまったら一巻の終わりである。
仮に復活したとしても、すぐさま踏み潰されそのまま息を引き取ってしまうことになる。
一抹の不安を覚えつつも、大祐は彩香に購入したことを内緒にして早速この「擬人蚊」を試すことにした。
ミニチュアの街と同様で、指紋や瞳の登録など精密に個人のデータを入力していく。
どうやら、特定の人物1人しかこの「擬人蚊」は作動しないようになっているようだ。
大祐は丹念に一つ一つのデータを打ち込んでいった。
すべての登録が無事に終了すると、液晶画面部分に「認証」という文字が現れた。
早速、大祐はこの装置のスタートキーを押下した。
すると、途端にミニチュアの街の起動と同様に意識が徐々に遠のいていく。
(う・・・、体の力が抜けていく・・・)
遠のく意識を懸命に保ちつつ、大祐は四つん這いになりながらも目を見開いていた。
1~2分くらいは経ったであろうか。
ようやく、大祐の体に温かさが戻り、気分も幾分かは優れるようになってきた。
そのとき、大祐は背中に違和感を感じたのであった。
大祐が背中に手をやると、大きな羽が合わせて4枚背中から生えていた。
大祐「うお、本当に羽が生えてる。」
次に大祐は、背中に集中して羽をはばたかせようと試みる。
思いのほか、脳からの指令は羽にダイレクトに伝達され、空中をホバリングするような形で飛ぶことができた。
そのまま5分ほど、小さな体で飛行の練習をしてみた。
左の羽だけはばたかせれば右に曲がったりなど、様々なことを体感的に学ぶことができた。
大祐「よし・・・。どうやら飛行は大丈夫そうだ。では・・・」
大祐はゆっくりと大きく息を吐き出すと、そのまま彩香の部屋を目指した。

彩香「♪~」
程なく自室の椅子で足を組んで座っている巨大な彩香に遭遇した。
蚊サイズの大祐からすれば、250~300倍もの大きさを誇っている。
当然ながら彩香は、自らの足下に大祐が潜んでいるなど知る由もない。
鼻歌交じりに、彩香は雑誌を読み耽っていた。
大祐は、改めて彩香の巨大な素足に視線を移す。
彩香が自室にいるときは必ずといっていいほど素足になるのだが、小さな大祐に微塵も遠慮することなく両方の足の裏を披露している。
彩香は椅子に座って両脚を伸ばし、すねの部分から先を交差させている。
結果、左右が入れ替わった状態で彩香の足の裏が露わになっているのだ。
普段であれば、24cmしかない彩香の足の裏は、今の大祐にとって高層ビルほどの巨大さを有している。
そんな彩香の巨大な足の裏にいてもたってもいられなくなった大祐は高速で、足の裏への接近を試みた。
大祐「うわ・・・、何、この巨大さは・・・。」
接近した大祐の目の前には、赤々とした表面が周囲を覆っている広大な壁が存在していた。
踵が床についているためか、足の裏の中腹付近には深いしわが刻みこまれており、凹凸を見ているうちに目の前の壁は生きている人間の一部分なんだなと再確認できた。
やがて、大祐は意を決したかのように足の爪先部分へと浮上していった。
大祐「うっ、くさっ・・・」
上昇した大祐を待ち構えていたのは、彩香の強烈な足のにおいであった。
先程まで外出していたのは大祐も知っていた。
おそらくは、暑い日差しの中で小一時間ほどあの汚いズックを履いていたのだろう。
ズックに巣食う細菌たちが、彩香の足の裏の皮膚を格好の食事としていただき、その副産物がにおいとして残ったのであろう。
もわっとした空気に腐敗臭が漂っており、明らかにその場にいる人たちを不快な気持ちへと誘わせる臭気であった。
大祐は、彩香の親指と人差し指の間へと自らの体を移動させる。
この2つの指の間はまだ若干の隙間が空いていたため、他の指の股よりはにおいがきつくはなかった。
そこで、人差し指の付け根付近に腰かけ、大祐は羽を休めることにした。
大祐が隣を見上げると、そこには圧倒的な存在感を放つ彩香の巨大な足の親指が君臨していた。
どっしりとした肉付き、太さなど、その存在感だけで大祐に興奮を与えていた。
やがて、見ているだけでは飽き足りなくなった大祐は、彩香の指の付け根から飛び立つと、彩香の足の親指の裏に接近する。
大祐がその指の裏をまじまじと見つめていると、刻み込まれた指紋から目が離せなくなっていた。
その指紋を辿っていくと、やや人差し指寄りに指紋の中央部分があることがわかった。
今の大祐のサイズよりはやや小さな円形の形状をしたものが指紋の中央に存在していた。
この部分目がけて大祐は付属の吸血セットを勢いよく刺した。
そして、付属の機械をキュルキュルと回転させると、彩香の暖かでやや赤黒い血液を採取することに成功した。
小さな大祐の悪企みに巨大な彩香が全く気付いていないことに、大祐は激しく興奮していた。

(続く)