§6 理解ある姉が繰り出す大胆さと凄惨さ

大祐「姉貴っ、ミニチュアの説明書を返してよ!」
帰宅早々、大祐は彩香の部屋に行き、こう口を開いた。
間接的に確認を試みようとする大祐を見越して、彩香は悠然と拒否する。
彩香「ああ、ごめん。まだ読んでる最中なのよ。もう少し待って。」
大祐「ミニチュアを購入してから変な体験が続くから確認したいんだけど。」
彩香「へぇ~、どんな体験なの?」
大祐「意識が遠のくというか、夢を見ているというか。」
彩香「断片的に覚えてもないの?」
大祐「ボーッとしてるのに覚えてるわけないじゃん。」
彩香「じゃあ、気のせいよ。」
彩香は、適当に大祐をあしらい、勝ち誇った表情を浮かべた。
(大祐が私に言葉で勝てるわけないじゃん。)
すっかり余裕の彩香に大祐はそれすら予想していたかのように笑みを浮かべる。

大祐「あれ?生クリームが飛び散ってるね?」
彩香「へっ・・・!?」
思いがけない大祐の言葉に彩香も驚愕の声を上げる。
その様子を黙って大祐は見ている。
彩香「そうかしら・・・?ケーキなんて飛び散ってるようには見えないけど。」
大祐「いや、だってここに足形がついてるよ。」
彩香「え・・・?」
一瞬、彩香の表情は固まった。
きれいに床を拭き取ったはずが見落としがあったのか。
彩香から少し焦りの色が感じられる。
彩香「しばらく前の汚れじゃないの?あんたの目の錯覚で右足の形に見えるだけよ。」
ゆっくりと聞いていた大祐は、彩香にニヤニヤと笑いかける。
大祐「なるほどね・・・。さすがの姉貴も油断したか。」
彩香「はぁっ?何言ってんのよ。」
大祐「ミニチュアを使って僕にいたずらしたんでしょ?」
彩香「してません。」
と彩香は言ったものの、大祐の圧倒的に余裕な表情に不安を感じていた。
彩香と大祐は次の一手を牽制しあうようにしばらくお互いを見つめあっていた。
先に口を開いたのは大祐だった。
大祐「で、どうして足形が右の足だと思ったのさ?」
彩香「・・・・・・。なんとなくよ・・・。」
大祐「ふぅん、パッと見る限り右足とは分からないのにね。」
彩香は自らの発言に後悔していた。
大祐への後ろめたさからか不用意な発言が多かったのである。
彩香「とにかく、自分の部屋に戻りなさい。」
大祐「踏み潰したのはケーキだったの?」
彩香「えっ? 何を言って・・・」
大祐「だって生クリームとしか言ってないのになんでケーキと知ってるんだろうと思って。」
彩香「たまたまよ。生クリームを使ったものなんて限られるじゃない。」
余裕を見せる大祐に対してだんだん彩香は苛立ちを隠せなくなってきた。
そんな表情の変化を大祐は見逃さない。
しかし、あまり彩香を追い詰めると逆ギレすることも心得ている。
ここが潮時であることを大祐は実感し始めていた。
大祐「あのさあ、僕さー、生クリームやポテトチップスごと踏み潰されかけたんだけど。」
彩香「えっ!? 嘘でしょ?」
大祐「目の前まで姉貴の大きな足の裏が接近して、僕は殺されかけたんだよ。」
彩香「うっ・・・。」
明らかに彩香が動揺している。
彩香の目にうっすらと涙がたまっていた。
大祐「あっ、姉貴・・・。」
と次の瞬間、大祐の意識が遠くなっていく。
(あれ・・・、どうしたんだ・・・。)

大祐「・・・・・・。」
大祐は、自分の部屋のベッドで目を覚ました。
(あれ、何があったんだっけ・・・?)
大祐が思案に暮れていると、天井がないことに気がついた。
大祐はここがミニチュアの街であることを確認しつつ、上空にいるであろう彩香に向かって叫ぶ。
大祐「姉貴!もういいだろ。お互い隠しあいはなしにしよう。」
程なくして、上空に彩香の顔が出現する。
彩香「ごめんなさい・・・」
思いもかけない優しい表情をする彩香に大祐は照れを隠せなかった。

ムギュッ!
寝そべる大祐に向かって彩香の大きな素足が覆いかぶさる。
徐々に彩香の体重が掛けられ、彩香の重さを体感する。
と同時に、彩香の足指の間からモワッとした臭いを感じる。
巨大な彩香を体全体で感じていることに大祐のイチモツは少しずつ固くなっていく。
大祐は彩香の大きな素足をギュッと抱き締めた。
それを知ってか、彩香の爪先は大祐の頭部を少しずつ締め付けていった。
彩香「はぁ・・・、こんな汚いことして平気なの?」
ふいに彩香が口を開く。
彩香にしてみれば、自身の足裏など綺麗なものではないと考えているようだ。
大祐「いや、普段隠されているモノが露になって、しかも自分に襲いかかるだなんてスゴいじゃん。」
彩香「マニアックな奴ね・・・。」
そう言いながらも自身の素足で弟に快楽を与えていることに優越感を感じていた。

ひとしきり彩香の素足との触れ合いを楽しんだ大祐は、彩香に改めてお願いした。
大祐「姉貴・・・。お願いがあるんだけど。」
彩香「なーに? 少しくらいは聞いてあげないとね。」
大祐「姉貴の大きな素足でミニチュアの街をメチャメチャに破壊してほしいんだけど・・・。」
彩香「へっ?別にいいけど、どのくらいのサイズで?」
大祐「100分の1サイズだと、姉貴は160mで、足のサイズが24mだよね。」
彩香「そりゃ、そうだけど・・・。」
大祐「よし! 200分の1サイズで、街の人達と一緒に姉貴の巨大な足から逃げることにしよう!」
彩香「え・・・。だとすれば、あんたのサイズは1cmもないんじゃないの・・・?」
大祐「そうだよ。姉貴の足のサイズは48mにもなるんだよ。」
彩香「バカ!危ないじゃない。もしあんたを踏んづけたら即死よ。」
大祐「へへっ、だってこれがあるから万が一の時は大丈夫さ。」
そう言って、大祐は腕に巻き付けたユーザーベルトを彩香に自慢げに見せた。
彩香「・・・・・・。ほんっっとに、仕様のない弟ねっ。」
大祐「よろしく頼みます、お姉さま!」

大祐は自らのベルトを操作して、まず、ミニチュアのサイズを20分の1にした。
彩香の眼下には、細々とした町並みが映る。
程なくしてミニチュアの中にある自宅を発見した彩香は屋根をベリベリとはぎ取り街中に投げ捨てた。
ガシャーン!!
突如として街中に轟音が響き、大祐の上空が切り開かれた。
大祐「姉貴ー、じゃあ、200分の1にするからね」
彩香「ホントにやるのね?」
大祐「もちろんだよ。」
彩香「じゃあ、私は家から少し離れた市民体育館からスタートして、南小学校の方へ踏み潰していくからね。」
大祐「うん、わかった。じゃあ、、いくよっ!」
大祐は、ユーザーベルトを腕から外し、横のボタンを小刻みに押下した。
それとともに、上空の彩香の顔が上空へと遠ざかりつつ、徐々に大きくなってくる。
やがて、大祐のはるか上空では彩香の巨大な瞳が小さな大祐を見下ろしている情景が映し出された。
今までの大祐のサイズは小さくても2cm程度であったため、以前彩香に危うくミニチュア内で踏み潰されかけたときも何とか逃げ切れていた。
今や彩香のサイズは今までで一番巨大であり、その圧倒的な重量感に大祐は身震いした。
大祐「あ、姉貴ー! どうだい?」
大祐が彩香に対して恐怖を抱いているなど微塵にも感じていない彩香は、小さな大祐の姿を確認するだけでも精一杯であった。
何しろ1cmもない状態であるため、表情を窺い見るのも難しいのだ。
彩香は大祐の問いかけに答えることなく、ミニチュアの全景に目をやった。
しばらくミニチュアを眺めていた彩香は、ついに立ち上がりミニチュアに自身の素足をゆっくりと向けた。
大祐「あれ? 姉貴の顔が見えなくなったぞ?」
心配そうに上空を見上げる大祐のもとが暗くなる。
ズズズウウン!
地面から突き上げる衝撃に大祐は急いで、窓際に駆け寄る。
街中はもうもうと砂埃を巻き上がり、人々の悲鳴や怒号が駆け巡っていた。
肌色の大きな物体は予定通り、市民体育館に君臨しているようだ。
大祐もこうしてはいられないと急いで逃げる準備を始め、100m程離れたところにある南小学校の屋上に駆け上がった。
彩香の巨大な爪先付近には多くの住宅が建ち並んでおり、周囲では蜘蛛の子を散らすように人々が走っていた。
大祐は、その遥か上を仰ぎ見る。
実に300m以上もの大きさの巨大な彩香が立ち尽くしている。
おそらく、彩香は大祐が避難できる時間を稼いでいるのだろう。
巨大な素足を下ろしてから、すぐには行動しなかったのだ。
それから1~2分後、ついに彩香の巨大な素足が行動を始めたのだった。