§10 巨大な彩香と小さな大祐

大祐「そういえば、シートってどこにやったっけ?」
落ち着きを取り戻した大祐は、絵美にメールで質問する。
絵美からのメールには、白いシートを預かっている内容のメールが届く。
このとき、大祐は瞬時に自分が絵美の家に転送されたことに気が付いた。
操作パネルからの命令が本来のシート部分に届かずに、シート部分と空間をつなげてしまったのだろうか。
このことに気が付いた大祐は思わずニヤニヤとほくそ笑んだ。

翌日、絵美からシート部分を返してもらった大祐は、自身の考えを実証するべく早速操作パネルとカーペットを連結させる。
そして、シート部分を大祐の部屋の前の廊下に置いて、操作パネルを起動させた。
すると、廊下に置いてあったシート部分が消え、大祐の部屋にあったテーブルなどが小さく表示されたのである。
大祐「なるほど・・・、これで僕が足を踏み入れると転送されるわけか。」
大体の状況を飲み込めた大祐は、すぐさまカーペットに足を踏み入れた。
大祐が目を開けると、そこには大きな廊下が広がっていた。
興奮を抑えることができない大祐は、すぐさま彩香の部屋に向かった。
大祐「彩香姉ちゃーん、入るよー!」
大祐が部屋に入ると、彩香は床に仰向けになってうとうととしていた。
小走りで駆け寄った大祐は、圧倒的な彩香の大きさの違いに思わず息を呑みこんだ。
大祐は、彩香の短パンに手をかけ、彩香の大きな腹部に乗っかった。
大祐「姉ちゃんのおなかだ・・・。」
大祐は、彩香のおなかに盛大にダイブして、おなかをがっちりと抱きしめた。
彩香の温もりとともに彩香の鼓動が伝わってくる。
彩香のおなかの柔らかさは、さながらウォーターベッドの感触に似ていた。
大祐は妙な安心感に包まれていた。
2~3分してから、大祐は起き上がり、彩香のおなかの上を飛び跳ねてみたりした。
しかし、次の瞬間、静寂を破って不気味な音が鳴り響く。
ギュルルル~
彩香の腹部から不気味な重低音が聞こえたため、怖くなった大祐はそのまま彩香の胸や顔の方向へと向かった。
彩香の豊満なおっぱいを横目に移動を続け、彩香の大きな顔に到達した。
潤い豊かな唇は、一定の厚みと輝きがあり、大祐を充分に興奮させた。
彩香「ウ、ウウ~ン。」
彩香の眉間にしわが寄ったかと思うと、彩香の大きな口がパカッと開いた。
大祐「おっ、姉ちゃんの口の中を拝見しよう。」
大祐が、彩香の下唇に手をかけ、覗き込もうとした次の瞬間、予想外の出来事が起こる。

彩香「ガッ、ゲゲーップッ」
大祐を猛烈に熱く臭い気体が包み込む。
大祐に盛大にゲップを浴びせた彩香の口は再び閉じられた。
大祐は、余りの臭気に彩香の唇の上ということも忘れて倒れこみ、咳き込んだ。
大祐「ガハッ、ゴホッ! ゲホッ・・・!!」
よく見れば、彩香の大きな唇は、油まみれで光っていたにすぎなかった。
おそらく、彩香は直前に餃子を食べたのであろう。
口内で醸成されたニンニクのにおいが周囲に充満している。
大祐「おえぇ・・・、気持ち悪・・・。」
大祐はふらつきながらも彩香の油まみれの唇に倒れこんでいた体勢を整えようとした。
すると、次の瞬間、生暖かい物体が下からせり出してきた。
彩香「うーん・・・。」
大祐「うわああっ!!」
彩香の艶めかしい声と同時に巨大な舌が大祐の顔をベロッと舐めまわしたのだ。
大祐「うわっ・・・、姉貴の唾液だ・・・。気持ち悪い・・・。」
大祐が大きな舌の襲来に神経を尖らせていたとき、大祐は彩香の口が再び開いたことに気が付いていなかった。
舌が大きな口の中に戻ろうとするとき、小さな大祐も一緒に飲み込まれそうになったのだ。
大祐「や、やばいっ!!」
バクン!!
咄嗟に大祐は彩香の上唇に手をかけ彩香に飲み込まれるのを阻止したが、そのまま唇は閉じられ大祐の下半身は彩香の口の中に閉じ込められてしまった。
大祐は、必死に上唇を叩いたり、下半身をジタバタさせたりしたが、全く彩香に反応は見られない。
しかも、彩香の唾液と唇の油によって、徐々に大祐の体が飲み込まれつつあったのだ。
大祐の足はやがて固いものにぶつかる。
彩香の前歯だ。
瞬間的に大祐は足を引っ込める。
大祐「姉貴に噛み殺される・・・。」
大祐は必死に脱出を試みるが、彩香の唇は大祐の抵抗をすべて受け流してしまう。
ゆっくりゆっくりと大祐を巨大な口内へと誘うのだ。
口内は、先程の激臭が支配している環境である。
絶対に脱出したい大祐は、自分の爪で彩香の上唇の上あたりの皮膚を引っ掻くことにした。
彩香が起きてしまう可能性はあるが、飲み込まれるよりはましだ。
大祐は、ガリガリと構うことなく引っ掻いていった。
すると、案の定、彩香の口の中から舌が出てきて、その部分を舐めようとした。
その機会を逃すことなく、小さな大祐は命からがら彩香の巨大な唇から逃げ出すことに成功した。
男性からすれば夢のようなシチュエーションではあったが、油まみれの唇に唾液と酷い口臭を浴びせられる最悪な環境を体験した大祐は、女性への清潔感を喪失してしまった。
こうして、ふらふらになりながらも、何とか大祐は彩香の部屋を後にした。
よもや、彩香も大祐に無意識ながら攻撃をしたとは夢にも思っていないであろう。
彩香は、スヤスヤと可愛い寝息を立てながら、そのまま昼寝を続けていた。
大祐は、そのままミニチュアの操作盤の電源を落とし、シャワーを浴びてから自分の部屋のベッドに横になった。

ベタッベタッベタッ・・・
大祐の部屋に誰かが近付いてくる。
彩香「大祐~、ご飯食べないの?」
大祐「・・・・・・、いらない・・・。」
彩香「珍しいわね、どうしたのよ。」
大祐「気分が悪くて・・・。」
よもや、彩香の口臭やら唾液やらを体全体に浴びたなどとはとても言えない。
大祐は彩香から放たれた悪臭のおかげですっかり体調を崩し、ベッドに横になっていた。
彩香「そう。私もついさっき食事してきたから食欲がなくて…。」
大祐「餃子・・・でも食べたんでしょ?。」
彩香「えっ、もしかして臭ってる? 友達と味噌ラーメンと餃子を食べたんだけど・・・。」
大祐「・・・・・・。いや、何となくそう思っただけだから。」
彩香の言葉に思わず、大祐は深く頷いていた。
あれほどの強烈な口臭は、餃子だけではなく味噌ラーメンも手伝っていたのだ。
さすがに今は歯を磨いたらしく、そのような痕跡はないようだが。
彩香の何気ない発言には、大祐を納得させる理由が十分にあった。
彩香「まあ、いいわ。ミニチュアを借りていくわよ。」
大祐「ああ、持っていきなよ。」
こうして、再びミニチュアは彩香の手に渡ったのであった。

彩香「あれっ、操作パネルがついてないわ。」
自室に戻った彩香は操作パネルがないことに気付き、再び大祐の部屋へ向かった。
大祐の部屋の前には、無造作に操作パネルが置かれていたが、どうやら何かと連結しているようであった。
彩香「もう、めんどくさいからこのまま入力しちゃおう。」
彩香は、ミニチュアの組みたてを億劫がり、部屋の前にある操作パネルをそのまま使用した。
そのとき、大祐の部屋の内部が彩香の部屋に転送されたことなど、彩香は知る由もなかった。
彩香は、慣れた手つきで操作を終えると再び自室に戻り、ミニチュアを満喫しようと企んでいた。
しかし、彩香の部屋で待っているのは気分を悪くしたうえ、縮められた弟であった。

ベタッ、ベタッ、ベタッ…。
カチャッ、カチャカチャッ…。
横になっている大祐は、部屋の外から聞こえる音に気がついた。
普段なら気にならない音なのだが、具合の悪さも手伝って不快な音に聞こえるのだ。
大祐「うぅ~ん…。」
大祐は、タオルケットを頭からかぶり外の音が聞こえないようにし、再び眠りにつこうとした。
カチャカチャッ…。
………。
ズシィン!
ズシィィン!
横になっていた大祐は、下から突き上げるような地響きにタオルケットをはぎ取った。
部屋の構成は変わっていなかったのだが、壁や天井がやたら遠い位置にある。
大祐は瞬時に自身が置かれている状況を察知した。
大祐「こ、これはまずい・・・。」
困惑している大祐に巨大な人物が接近することを告げる足音が響いていた。
ズシイイン!!
ズシイイン!!
バターン!
そして、大祐の目の前にとうとう巨大な彩香が姿を現した。