§27.才色兼備な彩香のひらめき


(26話までのあらすじ)
舞佳が所有するサイズ変換器を借りた彩香は、大祐を縮小してミニチュアの街へと置く。
彩香は、小さな大祐をさらに縮めようとしたしたが、操作ミスにより自信を縮小させてしまう。
そこへ何も知らない舞佳が訪れ、サイズ変換器を回収、眼下のミニチュアの街を破壊し始める。
どうにか、彩香・大祐の姉弟は合流し、元に戻るべく思案を巡らせる。
そんな最中、舞佳の足下で自転車に乗った小人が不自然な動きを舞佳に見せたのであった。
※詳細は、第24話から第26話をご覧くださいね。


舞佳「おーい、小人クーン?」
ズシイイン!!
大祐の十数メートルその巨大な素足は着地する。
大祐「はぁっ、はぁっ、はぁっ・・・。」
舞佳「ああ、ごめんごめん。ところで、何をしていたのかな?」
大祐は起き上がると、肩で大きく息をしながら眼前の巨大な素足の動向を注視していた。
ひとまず大祐は体勢を立て直し、勢いよく自転車に跨って走り出した。
しかし、それを見越していたかのように舞佳の素足が垂直に持ち上がり、一気に地面へと振り下ろされる。
舞佳「ちょ、何で逃げるのよ!!」
ズッシイイイン!!
大祐「うわわっ?!」
再度、大祐は自転車ごと地面に倒れこむも、慌てて起き上がる。
しかし、大祐の前方は舞佳の巨大な素足で塞がれてしまう。
舞佳「何、コイツ・・・、超ウザいんですけど・・・。そんなに私に踏み潰されたいの?」
そう言うや否や、舞佳の素足が猛然と大祐に迫りくる。
大祐は自転車を乗り捨てて、ショッピングセンターの方向へ走り出した。
舞佳「止まれ。」
大祐は舞佳の忠告に耳を貸すことなく、ただただ走り続けた。
だが、次の瞬間、舞佳の巨大な素足はショッピングセンターの真上へと移動し、そのまま店舗を踏み抜いてしまった。
ズドオオオン!!!
ガラガラガラッ!!
大小さまざまなコンクリート片が小さな大祐へと降り注ぐ。
大祐の周囲は、崩落した建造物による埃ですっぽりと覆われてしまった。
舞佳「ふふっ。小人クンは右も左もわからないでしょ?」
舞佳の言葉が耳に入った大祐は、舞佳の方向を仰ぐ。
もうもうとした埃が立ち込める中、確かに舞佳の視線は大祐を捉えていたのだ。
大祐「くっ!! どっちに向かえばいいんだ・・・。」
大祐は上着で口元を隠し、崩落した建物から離れようと必死に舞佳の足下を彷徨っていた。
方向感覚が失われていた大祐は、ただただ建物から逃れようとしていたわけだが、これが舞佳の思うつぼであった。
すっかり油断しきっていた大祐の前方から埃を押しのけて、舞佳の巨大な素足が接近してきていたのだ。
大祐「うわあああっ!!!」
舞佳「よしっ。捕獲できたわね!!」
大祐は、舞佳の巨大な親指と人差し指の間に囚われてしまったのだ。
舞佳の強力な爪先の力に大祐は、力なくただうなだれていた。
大祐「ぐっ・・・。体が締め付けられる・・・。助けて・・・。」
舞佳の爪先は固く握りしめられ、大祐が逃げ果せるために行う様々な努力も全く無駄でしかなかった。
やがて、周囲の埃が晴れると、大祐の置かれていた状況が飲み込めてきた。
どうやら大祐は、舞佳の右の巨大な爪先に挟み込まれているようだ。
舞佳「さて、このまま握りつぶしてもいいかしら?」
その瞬間、途方もない圧力が大祐を襲う。
大祐「ぐああああっ!!!」
舞佳「それとも、地面に叩き潰せばいいかしら?」
続いて、大祐を爪先に残したまま、舞佳の素足が上空へと持ち上がる。
大祐「や、やめろー!!!」
舞佳「やっぱり、蹴飛ばしてあげようかしら?」
持ち上がった舞佳の素足は、そのまま前後へと大きく振られる。
大祐は、高速でミニチュアの街上空を短時間で移動させられた。
大祐「やめてくれ!!」
そのまま舞佳は踵を地面へとめり込ませる。
スドオオオン!!!
舞佳「さて、どうしてあげようかしらねえ?」
捕縛された大祐は、懸命に姉の名前を叫び続けていた。

彩香「くっ・・・。大祐、もう少し待ってて!今、到着できたから・・・。」
巨大な舞佳の発言は当然のことながら彩香にも届いていた。
そんな彩香が目指していた場所は、舞佳のアパートであった。
おもむろに舞佳の部屋の戸に手をかざすも当然のように鍵がかけられていた。
彩香「くっ!!こんな非常時に・・・!!」
若干の焦りを感じている彩香は、脇目も振らず大急ぎで舞佳の部屋のベランダへと向かった。
舞佳の部屋は2階のため、近隣の住宅から梯子を借りてきて、そのまま駆け上がった。
舞佳「私の爪先で握りつぶしてあげるわね。バイバイ、小人クン。」
どうやら大祐の生命は一刻の猶予もないらしい。
瞬時に悟った彩香は、ベランダにある植木鉢で窓ガラスをたたき割る。
そして、舞佳の部屋に侵入すると、目的の「モノ」を探し回った。
彩香「あっ!!あった!!!」
それは、舞佳のサイズ変換器であった。
以前、大祐はミニチュアの自宅の中にあったユーザーベルトを用いて現実世界へ戻ってこれたと、彩香は大祐本人から聞いていた。(この話は、第12話から第13話までを参照してください)
案の定、この部屋にあるサイズ変換器は「使用中」になっている。
彩香は、サイズ変換器のリセットボタンに手を掛ける。

舞佳「さ、潰しちゃおうっと。」
急激に舞佳の爪先の締め付けがきつくなる。
その舞佳の巨大な爪先の圧力で、大祐は激しく嘔吐する。
大祐「ゴホッ、ガハッ!!!ま、待って・・・。」
余りの苦しさに大祐は気を失ってしまう。
しかし、次の瞬間、舞佳の爪先に挟み込まれていた小人は一気に巨大化を始めていく。
舞佳「えっ!? ど、どういうこと!?」
舞佳の目の前には、気を失った大祐の姿があり、事態が飲み込めない。
彩香「ま、間に合った・・・。」
舞佳の後ろには、ほっと胸を撫でおろしている彩香がいた。

舞佳「あぁ・・・、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい・・・。」
大祐「いや、とにかく命は無事でしたから・・・。」
ミニチュアとサイズ変換器を使って元の姿へと復元した彩香と大祐は、くたくたになりながらも舞佳に状況を説明していた。
一方、舞佳は、大祐の命を奪う寸前であった事実を知り、激しく動揺していた。
彩香「ま、まあ、私たちも不注意だったんだし・・・。」
大祐「元はといえば、姉貴が勝手に僕を小さくしたから悪いんじゃん!!!」
彩香「あ、スミマセン・・・。」
さすがに彩香はこの日ばかりは平身低頭であった。

(続く)