§31.本日の生贄はいたぶり尽くされて


彩香「さーて、今日は暇だし、ミニチュアの街でも使って遊ぼうかな?」
大学の夏季休業は2か月程度あるため、やるべき課題さえこなせば比較的時間が取れる。
小雨がしとしとと降り続く涼しげな日の午後、彩香には特段するべきこともなかった。
そこで、彩香はミニチュアの街を使って、暇つぶしをすることにしたのだった。
彩香「まずは。20分の1サイズにしてみようっと。」
手慣れた操作でミニチュアを起動させると、眼下には20分の1サイズの整然とした街並みが出現した。
このサイズでは、普通の人間は7~8cm程度であり、小人たちの表情も実によく読み取ることができた。
彩香「んん・・・、自分の大学でも見てみようかなぁ・・・。」
然して考えることもせず、彩香は操作盤を動かし、自分が通っている大学を出現させた。
彩香の通う大学は、5階建ての校舎があるため、20分の1サイズとはいえ中央部分には1m程度の建造物が現れた。
校舎の近辺では、多くの学生たちがキャンパス内を忙しなく動いているのを確認できた。
彩香(あれっ・・・? あそこを歩いてるの、賢太朗じゃないかしら?)
彩香は、図書館方向を一人で歩いている男子学生の姿に目が留まった。
不運にも彩香に見つかってしまったこの学生は、彩香と同じ学年の小林賢太朗だ。
身長180cm近くのヒョロッとした体格で、何かと気が付くいわゆるいい奴なのだが、彩香にいろいろとちょっかいを出すこともあった。
彩香「ふふっ、今日は賢太朗と遊んでやるか・・・。」
ニヤニヤとほほ笑む彩香は、賢太朗の近くへとゆっくりと移動した。

賢太朗(今日は、レポートを終わらせないとなー。)
一日のスケジュールを思い浮かべつつ、賢太朗はゆっくりと図書館を目指していた。
彩香「あ、賢太朗じゃない!」
そんな賢太朗の目の前に突然彩香が出現する。
しかも、彩香は何故か裸足だ。
賢太朗「ん、んんっ? 彩香、靴は?」
若干困惑気味の賢太朗は、当然の質問を彩香に浴びせる。
彩香「まあまあ、いいから。ちょっとだけこっちに来てよ。」
賢太朗「えっ、これから図書館に行くんだけど・・・。」
彩香「そんなに時間取らせないからさー。ちょっとだけ!お・ね・が・い。」
賢太朗「いや、そんな下手な誘惑されても・・・。」
彩香「え、何?」
その瞬間、彩香の体はグングンと巨大化を始める。
彩香の巨体が繰り出す影は、いとも簡単に賢太朗を覆い尽くしてしまう。
周囲の人たち「キャー!!!」
周囲の人たち「うわああ、巨人だー!!」
キャンパス内は、悲鳴をあげて逃げ惑う学生たちでいっぱいになった。
そんな中、賢太朗は想像もつかない事態に身動き一つとれずにいた。
賢太朗「あ、彩香・・・、いったいどういう・・・。」
ひとしきり巨大化の終わった彩香は、足元で立ち尽くしている賢太朗のすぐ横に巨大な素足をかざすと、一気にその素足を振り下ろす。
ズッズウウン!!
賢太朗「ぐわあああ!!」
普段の20倍も大きな素足が着地したせいで賢太朗はバランスを崩し、後ろに倒れてしまう。
その倒れた賢太朗を彩香は右手で拾うと、ミニチュアの街のシートから脱出した。
要は、彩香はサイズ変換器を使って20分の1のサイズに縮んで、ミニチュア内部の賢太朗に話しかけたわけだ。
そして、彩香の怒りと同時に元のサイズに戻ったのである。
彩香にしてみれば、グングンと巨大化していくと同時に周囲の人や建造物が相対的に縮んでいくように感じられ、自分だけが特別な存在になったような感覚を覚えていた。

彩香「ふふっ、賢太朗? 下手な誘惑ってど・う・い・う・こ・と?」
巨大な彩香の右手に鷲掴みにされている賢太朗は生きた心地がしなかった。
当然ながら恐怖感に支配され、一言も発することができない状態になっていた。
彩香「そっかー、何も言えないのね。じゃあ、お仕置きをします。」
賢太朗「ええっ・・・、なんで・・・。」
彩香が右手の束縛を緩めると、賢太朗は急速に自由落下をはじめ床に衝突する。
賢太朗「ううっ、イタタタ。」
うつ伏せの状態で倒れこんでいる賢太朗の姿を黙視した彩香は、ニッコリとほほ笑みながら巨大な素足で押さえつける。
賢太朗「ぐ、ぐわあああ!!」
彩香「ふふっ、私の足はどう? 24cmしかないから軽いもんでしょう?」
彩香は、賢太朗を巨大な素足で軽く押さえつけ、彼の自由を束縛した。
足の裏からは、賢太朗が必死にもがいているのが伝わり、彩香に優越感を与えていた。
彩香「女の子の足すら持ち上げられないの? 惨めなもんねえ。」
賢太朗「う、うつ伏せの状態で持ち上げられるわけないだろ!!」
賢太朗の指摘に、彩香は思わず頷いてしまう。
彩香「あ、それはそうよね。じゃあ、足を浮かすから仰向けになりなよ。」
賢太朗は、ここぞとばかりに匍匐前進し、彩香の巨大な足の支配下から逃げ出そうと試みる。
彩香「ん? 逃げ出す気なの?」
ズーン!
賢太朗が前進したのもつかの間、再び賢太朗は彩香の素足に押さえつけられる。
彩香「賢太朗が逃げようとしたので、私はもう少し巨大化することにします。」
彩香は、傍にあったミニチュアの操作盤を動かし、40分の1にサイズを変更する。
賢太朗の身長は3~4cm程度に縮んだことになる。
彩香の24cmの素足からすれば、たかだか6分の1程度しかない。
彩香「私、足に全然力入れてないんだよ? 何してるの?」
賢太朗「く、苦しい・・・。」
彩香「男のくせに惨めな奴ね。仕方ないなー、足をどけてやるか。」
彩香は、自分の足をある程度の高さまで持ち上げ、賢太朗の圧迫を解放してやった。
賢太朗「はぁ、はぁ、はぁ・・・。」
賢太朗はふらふらになりつつも上体を起こし、その場に座り込んで呼吸を整えた。
彩香「あ。やっぱ、踏み潰そうっと。」
賢太朗「え。」
彩香の言葉に、賢太朗は慌てて上方向を仰ぎ見る。
猛烈な勢いで赤々とした巨大な足の裏が落下を始めていた。
賢太朗「う、うわあああっ!!!」
賢太朗は、両手で頭を抱え込み、全身を小さくコンパクトにまとめた。
彩香「うっそー。あっははは、賢太朗、まるで虫みたいよ。あはははは。」
彩香は賢太朗を踏み潰す直前でその足の動作を止めていた。
余りの迫力に賢太朗は力なく床に倒れこんだ。
しかし、賢太朗にはちょっとの気の緩みも許されなかった。
今度は、彩香の巨大な爪先が賢太朗を摘み上げたのだ。
賢太朗「え、ええっ? 何をする気?」
4cm程度の賢太朗は、ものの見事に彩香の親指と人差し指の間に挟み込まれていた。
彩香「ちょっと、爪先に力を入れてみようかしら?」
次の瞬間、賢太朗は脇腹を猛烈な勢いで押さえつけられる。
賢太朗「グボォッ!!」
余りの衝撃に賢太朗は、勢いよく胃の内容物を吐き出してしまう。
彩香「やだ、ちょっと挟み込んだだけよ? 弱い奴ね。男なの、それでも?」
賢太朗「助けて。もうやめて・・・。」
普段の頼りがいのある姿からは想像もつかない弱弱しい表情に、彩香はゾクゾクとした興奮を感じ取っていた。
彩香は、ミニチュアを操作して、サイズを100分の1へと変更した。
爪先で挟み込んでいた賢太朗は、さらに縮小したため、足指の間から滑り落ちていった。
彩香「もう、賢太朗を掴むこともできないのかぁ・・・。」
落下した賢太朗は、彩香の足裏を見上げると、絶望感に苛まれていた。
最初は自分を包み込む程度の足でしかなかったものが、今や自分の10倍以上ものサイズで君臨しているのだ。
賢太朗は必然的に、上空の足裏から逃げ出すべく走りだした。
彩香「あら? まだ逃げ出せる元気があるの?」
次の瞬間、賢太朗の背後に宙に浮いていた巨大な素足が着地する。
ズシイイン!!!
賢太朗「うわわっ!!」
下から突き上げるような衝撃が襲ったものの、何とか賢太朗は耐え抜き巨大な彩香から離れるべく走り続けた。
彩香「ふっ、私の巨大な素足から逃げ出せるとでも思ってるの。」
彩香は、走り続ける賢太朗の真横に自身の素足を振り下ろした。
ズシイイン!!!
その瞬間、足の着地の衝撃で、足元の賢太朗はコロコロと転がっていた。
彩香「足の衝撃にすら耐えられないの? 惨めねえ。ほらっ、早く走らないと踏んづけるよ!!」
彩香は間髪を入れず次々と足を振り下ろしていった。
しかも、必ず賢太朗の真横や背後を狙って振り下ろしていった。
体勢を整えながら走る賢太朗にとって、肉体的にも精神的にも追いつめられていくのは想像に難くなかった。
賢太朗「うう・・・。もう、ダメだ・・・。」
とうとう賢太朗は、すべての限界を感じ、床に倒れてしまった。
傍から見ても、息をするのもやっとといった状態で、もはや動くこともままならないようであった。
彩香「ん? 動かなくなったわね。踏み潰されたいの?」
彩香の問いかけに対しても、とうとう返答が見られなくなる。
彩香「終わりかー、まあ、いい暇つぶしにはなったわ。賢太朗、ありがとね!」
次の瞬間、彩香は思いきり力を込めて賢太朗に足を振り下ろした。
ズシャアアアン!!!

気分も高揚し、頬が薄ら紅色に染まった彩香は、ミニチュアの街の電源を落とすと一連の動作を振り返った。
彩香「んふっ、大祐以外の奴をいたぶるのも面白いわね。」
そう言いながら、彩香は自身の足の裏をパンパンと払い、自分の部屋へと戻っていったのであった。


(続く)