未来の巨大な素足その2 ~大きな彼女と僕と・外伝

作:いと小さき人


※登場人物
 沢田隆俊 17歳 170cm 60㎏               備考 未来のクラス
 加登和貴 32歳 178cm 60kg                備考 故人・国語高校教師
 長澤未来 23歳 180cm 56㎏ B85 W70 H90 S26.5  備考 高校教師
 平川明佳 17歳 159cm 45㎏ B74 W63 H70 S24.0  備考 未来のクラス 
 野上香澄 17歳 165cm 50㎏ B78 W66 H76 S25.0  備考 未来のクラス
 中野 仁 17歳 165cm 65㎏               備考 未来のクラス
 越谷太一 17歳 172cm 58㎏               備考 未来のクラス
                      
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一種のスローモーションの様相を呈していた。
隆俊の頭上に、とてつもなく巨大なヒトの素足が出現したかと思うと、それが自分目がけて落下してきたではないか。
隆俊の周囲は、急激に暗闇が増していく。
反り返った巨大な5本の長い指は、大蛇のようにウネウネと動いている。
隆俊「う、うわ・・・、助けてー!!」
隆俊のダッシュとその巨大な素足の着地はほぼ同時に近かった。

ズシイイン!!

隆俊の周囲に物凄い衝撃が加わり、隆俊は思わず目を瞑ってしまう。
そして、おそるおそる目を開けてみると、周囲は肌色の肉の壁で覆われていた。
どうやら、隆俊は未来の足の親指と人差し指の間にいるらしい。
隆俊は、未来に踏み潰されなかったことに安堵し、その場に座り込んでしまった。


一方、突然の出来事で床に釘付けになっている明佳を不思議そうに未来が見つめる。

未来「床に何かいるの?」

未来のその言葉に隆俊は敏感に反応する。
この状態で未来に見つかってしまったら、この巨大な肉の塊が簡単に隆俊を磨り潰してしまうだろう。
隆俊は土下座をしながら祈るような気持ちで、その場をやりすごそうとしていた。

明佳「え、いや・・・。それよりどんなデザートを用意したんですか?」

明佳の返答に、隆俊は未来の爪先の狭間で思わず起き上がってガッツポーズをする。
そして、巨大な足の指の間から、未来を見上げる。
明佳は、どうやら隆俊が縮小したことを認識してくれているようだ。
隆俊はゆっくりと立ち上がると、足の指の間から明佳に向かって大きく手を振り始める。
何とか明佳に気づいてもらおうと隆俊は大きく手を振り続けた。

未来「あ、マフィンと紅茶を用意したわよ。」
明佳「あ、ありがとうございます・・・。」
隆俊(くそっ!!何で気が付かないんだ!!)

焦る隆俊は、さらに大きく手を振り続ける。

未来「ねえ、隆俊くんはどこ?」
明佳「えっ?!」
隆俊(!!)

未来の突然の問いに、明佳も隆俊も言葉を失ってしまった。
確かに、デザートを要求していた隆俊がこの場からいなくなったのは状況的に考えても不自然だ。
隆俊は、慌ててその場にしゃがみ込んだ。

未来「まあ、いいわ。2人で食べましょうよ。」

未来がそう発言すると、隆俊を覆っていた肌色の壁は一気に上空へと持ち上がった。
そして、小さな隆俊のはるか前方でその肌色の肉の塊は落下し、床に衝撃を加えていた。
未来はテーブルの方向へ移動し始めたのだ。
どうやらマフィンや紅茶などをテーブルに配ろうとしているようだ。
この瞬間を明佳は見逃していなかった。
明佳は、未来が移動したことを見計らって、改めて床を凝視する。
すると、そこにはやはり先程見た通り、1cm程度の小さな物体が存在していたのだ。
明佳は、それが縮小した隆俊であることを直感的に感じ取った。
ある種の決断をした明佳は、俊敏かつ丁寧にその小さな物体を自身の掌に収める。

明佳「あ、あのっ、先生。用事があるので帰ってもいいですか?」
未来「えっ、急にどうしたのよ?」

顔を紅潮させながらも、明佳は迅速に右手だけで荷物を整理する。
もちろん、隆俊のノートなどもすべて明佳は自分のカバンへと納めていく。
隆俊はノートと筆入れしか持ってきていなかったため、収納はとても容易かった。
今回は、そのずぼらな点が非常に役立ったわけだが、今の明佳には理解できていなかった。
一方で、あまりの手際の良さに、未来はすっかり目を丸くしていた。

未来「デザートだけでも食べていかないの?」

未来のせっかくの善意を無視するのは忍びなかったが、明佳はとにかく一刻も早くこの場を立ち去りたかったのだ。
明佳は一生懸命に笑顔を作りながら、未来へと一礼する。

明佳「先生、今日はありがとうございました!!」

そして、明佳は自分のカバンを右手で持つと、足早に玄関へと向かった。

未来「もう・・・、せっかく用意したのに。」

未来の言葉が明佳に突き刺さるも、半ば強引に明佳はアパートを後にしたのだった。
外に出た明佳は、周囲に目もくれず、一目散に走りだしていた。
一方、部屋に戻った未来は、リビングのソファーにゆっくりと腰を掛けた。
テーブルに置いた淹れたての紅茶とマフィンが周囲に香りをばらまいていた。