サイズ変換器2
作:いと小さき人


俺の名は佐々木聡志(ささきさとし)という。
念願のサイズ変換器を手に入れ、約1.7cm程度に縮んでいる。
何が念願かというと、小さくなることで付き合っている彼女との圧倒的な差のもと、いろいろな遊びをしてみたかったのだ。
ちょうど俺には村田優輝(むらたゆうき)という顔のかわいい彼女がいる。
ぜひとも彼女の足の裏で俺は弄ばれてみたいのだ。
ピンポーン
興奮に包まれている俺をさらに高ぶらせるチャイムの音が響いた。
テーブルに隠れて様子を窺っていると、無造作に開かれたドアの辺りにヒトの素足が出現した。
ついに遊びに来た優輝が部屋の中へと入ってきたのだ。
優輝「あれ・・・? 鍵は開いてるのに誰もいない・・・。」
上空から愛おしい優輝の声が響いている。
それに合わせてベタッ、ベタッと優輝の素足が床を踏み鳴らす音も周囲に響いている。
おそらくは俺のがどこにいるか部屋の周辺を探しているのだろう。
そんな優輝を見ているうちに、とうとう興奮を抑えることができず、俺はテーブルから飛び出した。
すると、そこには俺の100倍はあろうかという巨大な優輝の姿があったのだ。
案の定、はるか上空にある優輝の眼は、本来いるであろう俺を探していた。
聡志「ゆーうーきー!」
俺は、足元から優輝に向かって呼びかけてみた。
優輝「えぇっ・・・!? 何・・・、コイツは?」
上空にある優輝の顔が一瞬にして曇る。
聡志「おーい!」
優輝「キャッ!近づいてきたわ!!」
そのまま優輝は別の部屋へと逃げようとしていた。
俺は、小走りで優輝に追いつこうと試みるも、みるみるうちに優輝との差が広がっていく。
聡志「お、おおーい!待ってよー!!」
とんだ誤算である。
あっという間に優輝は別の部屋へと移動してしまった。
聡志は、逃げ出すなどとは微塵にも思ってなく、トボトボと優輝の後を歩き続けた。
そのときであった。
あまり周囲を気にしていなかったので、聡志は周囲が薄暗くなっていることに気付いていなかった。
ハッと気付いて前を見上げると、俺の数m前に巨大なヒトの素足が踏み下ろされようとしていたのだ。
俺は、素足の着地の衝撃に後ろ方向に2~3回ほど転がってしまった。
巨大な素足の持ち主は優輝。
優輝の24mはあろうかという素足が眼前に鎮座している。
小さな俺に気が付いて戻ってきてくれたのであろうか。
余りにも早い帰還であった。
優輝「さっきの奴はどこにいったのかしら・・・?」
なんと、優輝の手には俺が縮小するときに使ったサイズ変換器があった。
しかも、優輝はカチャカチャと音を立てながらサイズ変換器を操作していたのだ。
聡志「あっ、勝手にいじっちゃあダメだよー!」
ここで、俺は異変に気がついた。
身体が軽くなる感覚に襲われたのだ。
今までと異なり、自分がその場に立っていないような感覚なのだ。
いったいどうしたことかと周囲を見回すと衝撃の事実が判明した。
なんと、先ほどの優輝の素足がさらに巨大感を増して俺の視界を遮っていたのだ。
目の前の土踏まずなどは、闇が深く奥まで見ることができなかった。
慌てて巨大な優輝が手にしている変換機を目にする。
おそらく優輝がサイズ変換器をいじったがためにサイズがさらに小さくなったのだろう。
俺は改めて十数mもの前方にある優輝の超巨大な素足に目を移す。
このままでは、優輝の素足に踏み潰されて俺は殺されるかもしれない。
俺は、急いでテーブルの下を目指して、全力疾走した。
全速力で走ることはいつ以来だろうか。
とにかくテーブル目指して走り続けた。
優輝「あぁ、いたいた。」
そんな哀れなる俺に、優輝は慈悲を与えてはくれない。
俺が充分に走ったところで優輝の巨大な素足が持ち上がる。
優輝「この大きさなら踏んづけられるわね。」
その言葉と共に俺の後方に優輝の巨大な素足が落下する。
ズシィィン!
聡志「うわあっ!!」
俺が全力疾走した距離の大半を優輝はたった1歩で追いついてしまった。
このままでは、優輝の2歩目によって俺は踏み潰されてしまう。
優輝「じゃあ、いくわよー。」
そう思って上空を仰いだところ、優輝のあまりにも大きな足の裏が上空を占拠している光景を目の当たりにした。
聡志「ゆ、優輝ーーー!」
まさに後悔先に立たず。
優輝は、足元に小さく縮んだ聡志がいることなど知る由もない。
容赦なく、愛する聡志に素足を踏み出そうとしていた。
聡志の周囲は、完全に優輝の足の裏に覆われ光が遮られつつあった。
ズッシイイイン!!!
優輝「よーしっ・・・!やっつけてやったわ!!」
優輝が24cmの素足を持ち上げると、床にはペチャンコになった聡志が跡形もなく潰されていた。
ちょうど、優輝の足の裏のど真ん中に位置していた。
優輝「それにしてもこいつは何の虫だったのかしら?」
優輝は、そのままペチャンコになった聡志を雑巾でふき取って処分した。

(終)