サイズ変換機4
作:いと小さき人


宏「これがサイズ変換機かあ。」
24歳のフリーターである高木宏は、念願のサイズ変換機を手に入れて喜びに満ち溢れていた。
この機械を手に入れるために、この2~3年はずっと貯金をしていたのだ。
宏「ようし、さっそく試してみるか。」
アパートの前に出た宏は、愛車である原チャリに向かって変換機を照射した。
宏の原チャリはみるみるうちに縮小を始め、あっという間に100分の1サイズほどになった。
宏「うおー、すげえな、この機械は。本物だ・・・。」
興奮に包まれた宏は小さくなった原チャリをポケットに収め、バイト先のコンビニへと赴いた。

由香理「いらっしゃいませー。・・・って、宏じゃない。」
コンビニのレジにいたのは、20歳のバイト仲間である笹木由香理であった。
由香理は、休みの日にもかかわらずバイト先に来た宏に疑問の目を向けていた。
宏「あ、ああ・・・。ただ寄っただけだよ。」
由香理「何しにきたの? 相変わらず暇なのね。」
幾分か不機嫌そうな表情で由香理は宏に言葉を返した。
その間に宏はコンビニ内をざっと見渡す。
店内には、飲み物のコーナーに若い女性が1人、雑誌のコーナーに女子高生が2人いるようだ。
宏「コーヒー買ってから帰るよ。」
由香理「はい、120円になります。」
即座に営業スマイルを見せる由佳理に、宏はやれやれといった表情を浮かべる。
宏「じゃあ、また。」
由香理「はーい。また明日ね。」
コンビニの様子を充分に窺った宏は、そそくさとコンビニの裏手から控室に入る。
そして、縮小した原チャリを地面に置くと、自らに変換機を照射した。
宏「おー、縮まるー。」
こうして、100分の1サイズに縮まった宏は、愛車である原チャリに跨り店内へと向かった。

由香理「ありがとうございましたー。」
若い女性「どうもー。」
ふいに上空から大きな声が響く。
どうやら先程飲み物のコーナーにいた若い女性が会計を済ませたようだ。
宏は再び原チャリに跨り、若い女性のもとへと向かう。
若い女性のヒールの高いサンダルが目前に見える。
宏は絶妙な運転さばきで、素早く若い女性の前へと出る。
買い物を済ませた若い女性は、小さな宏に気付くことなく出口へと向かう。
その様子を床から見ていた宏は、若い女性のスカートの内部に見える白色の下着に高揚していた。
ズゥゥン!
宏「うおっ!!」
そんな宏を諌めるかのように若い女性はその大きな素足を包んだサンダルを振り下ろす。
そして、そのまま若い女性はコンビニを後にした。
宏「いやー、眼福、眼福。」
しっかりと目の保養ができた宏は、再び原チャリに跨り女子高生の元へと向かうことにした。
しかし、しばらく原チャリを走らせていたとき、宏の眼前に突如として、巨大なサンダルが振り下ろされた。
ズシイイン!
宏「うわわっ!!」
急ブレーキをかけることで何とか衝突を回避した宏は、急いで周囲を確認した。
若い女性の後を追っていた宏は、コンビニの出入り口付近に到達していた。
その出入り口から5~6人の若い女性の集団が来客していたのだ。
由香理「いらっしゃいませー。」
由香理のその言葉を合図に、小さな宏に向かって強烈な攻撃が開始された。
ズシイイン!!
ズシイイン!!
ズシイイン!!
宏「うわあああ!!」
宏目がけて巨大なサンダルやら運動靴やらパンプスやらが一斉に落下してくる。
小さな宏は、巨大な若い女性たちの足元で右往左往していた。
何とか12個の巨大な足から逃げ出せた宏は、後方を振り返り安全を確認しようとした。
そんな宏の周囲はひときわ暗くなる。
ズシイイン!!
宏「ええぇっ!?」
なんと目の前に巨大なローファーが振り下ろされたのだ。
完全に不意を突かれた宏は、そのローファーに激しく衝突する。
スガーン!!
宏「うわあああ!!」
ポチョ!
ただ、投げ出された宏が女子高生の黒いソックスに着地できたことは幸運であった。
女子高生A「あれー。何かぶつかったわ。」
女子高生B「ん?ミニカーみたいよ。」
女子高生A「何だ、そうなの?」
その瞬間、宏の目の前にはもう一つの巨大なローファーが出現し、愛車である原チャリに覆いかぶさろうとしていた。
宏「え?ええ?ちょ、ちょっと!!」
ガキャ!メキャ!
実に無機質な音を立てながら、巨大な女子高生のローファーは原チャリを破壊してしまった。
宏「くっ!!」
思わず、痛恨の声を上げる宏。
その原チャリとて、何か月もバイトして購入した代物だったからだ。
女子高生A「さあ、帰りましょう。」
女子高生B「ええ。」
宏「うわあ!」
巨大な女子高生は宏が張り付いていない方の足から一歩を踏み出した。
その瞬間、宏は前方へと転がっていき、ローファーの中へと侵入する形となった。
小さな宏を受け止めたのは、巨大な女子高生の黒いソックスに包まれた爪先であった。
その爪先からは、猛烈な異臭と湿気が放たれていた。
宏「うおええっ! こんなヒドイにおいがするなんて・・・」
さらに爪先部分は女子高生の素足から放たれる汗で湿っていた。
劣悪な環境を憂いている宏に女子高生からの強烈な一歩が放たれる。
ズシイイン!!
宏「うわっ!!」
宏が転がり込んだ方のローファーが大地を踏みしめる。
その衝撃で、宏は爪先からローファーの中敷きへと転落する。
やがて、再びローファーが上昇する。
女子高生は、歩行のために小さな宏がいるローファーを持ち上げる。
当然、巨大な爪先が持ち上がるため、小さな宏は強制的に足の指の付け根へと転がされる。
巨大なソックスに張り付く形となった宏は、懸命に巨大な女子高生の足の裏を叩く。
このままでは、確実に女子高生に踏み潰されてしまう。
宏「ま、待って!!!僕はここにいるんだって!!」
小さな宏は、懸命にソックスを叩くも、ソックスの布地に阻まれ女子高生は気が付かない。
ズシイイン!!
小さな叫びも空しく、女子高生の全体重をまともに受け止めた宏は踏み潰されてしまった。
女子高生A「・・・?」
その女子高生は何かを潰した感触を得たもののさして気にも留めずコンビニを後にした。
由香理「ありがとうございましたー。」
店内には、さわやかな由佳理の声が響き渡っていた。


(終)