サイズ変換機6
作:いと小さき人


英康「ふう、はあ、苦しいけど気持ちいい・・・」
穂波「ねえ、もういいでしょ?」
英康「もう少しだけ・・・」
穂波(何、コイツ・・・。)

中規模の商社で経理を担当している24歳の坂下穂波(さかしたほなみ)は、憂鬱を感じていた。
里穂の恋人である藤堂英康(とうどうひでやす)は1つ上のサラリーマンである。
実は、英康はサイズ変換器を使って、10分の1サイズに縮んでいるのだ。
そして、穂波の25cmはあろう素足に今まさに踏みつけられているのだ。
穂波は163cmで、セミロングヘアーが似合う童顔の持ち主だ。
しかも、穂波の素足は指が長く、全体の形も整っていて、なおかつ足の裏が黄色っぽいのだ。
その穂波の魅力あふれる素足で体全体を撫でられたり、踏みつけたり、臭いを感じたりすることは、英康にとって至高のひと時なのだ
英康は、1週間前にサイズ変換器を購入してから毎日、縮小して穂波の足の裏を楽しんでいた。
しかし、穂波にしてみれば、小さな恋人に奉仕しているだけで、自身にはフラストレーションがたまりにたまっていた。
英康「はぁ、はぁ、はぁ・・・。もうOKだよ。」
英康は、穂波の足の裏から這い出てくると、肩で息をしながらそうつぶやいた。
穂波「ねえ、英康ー。早く元に戻ってよー。」
英康「少し休ませてくれ。」
そのまま、英康は横になったまま眠りについてしまった。
穂波「もう!また、眠っちゃうんだから!知らないっ!!!」
こうして、ドスドスと足音を響かせながら、穂波は帰っていった。

そんな毎日が続いていたある日、穂波はとうとう英康に怒りをぶつける。
穂波「いっつもいっつも、私ばかり奉仕してるじゃないの!!」
英康「い、いやいや。そう言うなよ・・・。」
穂波「あなたを踏み潰さないように気を配るの結構疲れるのよ!」
英康「まあ、確かに重いのは事実だよなぁ・・・。」
穂波「はあぁっ!? 何言ってんのよ!!!」
英康「ごめん、ごめん。じゃあ、明日からはこの器械使わないよ。」
穂波「・・・・・」
英康「その代わり、今日までは宜しく頼むよ~。」
そう言うと、英康はサイズ変換器を操作して、毎度の通り10分の1サイズに縮小した。
英康の行動にはさすがに穂波も呆れ返ってしまった。
穂波「・・・・・・で、何をすればいいの?」
英康「今日は穂波の素足を持ち上げてみたい。」
穂波「そんなの無理に決まってる。私、重いもん。」
英康「いや、まあ、その物凄い重さを体感したいし・・・。」
その瞬間、穂波の素足が勢いよく床に着地する。
ベッターン!!
不意の攻撃に英康は思わず転倒する。
穂波「即効で踏みつぶしてあげようか。」
英康「冗談だって!冗談に決まってるじゃないか。」
穂波「本当に殺意が芽生えそうだったんだけど。」
明らかに不機嫌そうな穂波に気にすることなく、英康はリビングに置かれている1辺が40cmの正方形の枠へと穂波を誘う。
高さが10cm程のその物体は、外枠が木枠で囲まれており、枠の中身には粘土が敷き詰められていた。
おそらく英康がショッピングセンターなどで調達して、自分で作った代物であろう。
穂波「これは?」
英康「この粘土に穂波の足型をつけてほしいんだけど、めいっぱい力強く。」
穂波「それだけでいいの?あなたは何をしてるの?」
英康「僕は、その足が降りてくる様子を間近で見学する。」
相も変わらず、馬鹿な発想を思いつくもんだと穂波は呆れていた。
英康「うーんと、僕がメールで合図を出すから、そうしたらまず右足を下ろして。」
穂波「メール?」
英康「うん。その後で左足を下ろしてほしいんだ。」
穂波「わかったわ。じゃあ、いくわよ。」
英康「ああ、ちょっと待ってよ! メールで合図するからさ!」
穂波「はいはい・・・。」
穂波は、英康の準備が整うまで別室へ移動した。
その時を待ち望んでいたように、英康は再びサイズ変換器を操作する。
さらに10分の1サイズに縮小したのだ。
これで、英康は、トータルして100分の1サイズまでに縮んだことになる。
そして、そそくさと木枠に作ってあった小さな梯子を上り、枠の上へと降り立ったのだ。
穂波「ねえー、まだー?」
ここまでで約10分弱は経過しただろうか。
待ちくたびれた穂波から、催促の返事が聞こえてきた。
英康は、枠に腰かけて急いで穂波へメールを打つ。
『準備OKです。早速、足型をつけてください。
 ゆっくりと、確実にね^^』
ズゥゥン!
ズゥゥン!
程なくして、下から突き上げるような地響きが聞こえてくる。
その地響きは着実に大きく激しくなっていった。
ズシィィン!
ズシィィン!
穂波の歩行によって繰り出される衝撃は、英康を興奮のるつぼに巻き込んでいた。
ズシイイン!
英康「うおおっ・・・、穂波、でっけーなあ。」
そして、とうとう英康のもとに100倍サイズの巨大な穂波が出現する。
穂波「あれ? 英康がいないけど・・・」
♪~
英康からメールが届く。
『僕のことは気にせず、そのままその大きな足で踏んづけて~』
穂波「はぁ・・・、めんどくさいな・・・。」
そのまま穂波は、リビングに置かれた木枠を目指した。
ドンッ!
しかし、あまり乗り気ではない穂波は、無造作に歩いた結果、木枠にぶつかってしまった。
穂波「あれっ、ぶつかっちゃったけど、まぁ、いっか。」
こうして穂波は、左の素足を持ち上げた。

その刹那、英康はパニックに陥っていた。
英康にとって誤算が2つあった。
1つは、穂波が木枠にぶつかるということ。
そのせいで、枠に腰かけていた英康は、敷き詰められている粘土の上に投げ出されてしまったのだ。
もう1つは、穂波が右足ではなく左足を持ち上げたということ。
英康は、右の素足の着地を間近で見たいがために、穂波の右足が着地する側とは反対の方向の木枠に座っていたのだ。
この2つの誤算の結果、英康に何が起こったのか。
そう、英康の上空は穂波の25cmはある巨大な素足で覆われてしまったのだ。
穂波の黄色い足の裏は薄暗さの中、確実にゆっくりと英康に近づいてきていた。
英康「ほ、穂波ー!! 待って!! 踏み潰される!!」
たかだか100分の1サイズの人間の叫びなど、穂波の耳に届くはずもない。
穂波は、愛する英康目がけて、自身の大きくて均整のとれた素足を差し出す。
英康にとって、なおも不幸なのは、地面が粘土だということだ。
足下がグニャッとして逃げ出しにくい環境になっている。
そんな中、必死に英康は穂波にメールを送る。
♪~
『待って!覆わないで!!』
穂波「え、これって、どういうこと?」
なおも、穂波の巨大な素足の落下は止まらない。
小さな英康の上空10mには穂波の足の裏が接近している。
さらに、英康は穂波に電話を試みるも、電波がない状態でつながらない。
もう一度、英康はメールを送信する。
♪~
『やって!!このままだと、つばされちゃう。』
穂波「??? つばされるってどういうこと?」
ここにきて、慌てふためく英康は、メールを打ち間違えてしまう。
英康「あああああ、もうだめだ!!」
穂波の足の裏の固い皮膚が英康の頭を押さえつける。
英康は、這いつくばりながらも必死で逃げる。
しかし、這いつくばる英康の背中も足の裏に押さえつけられる。
とうとう、英康は穂波の足の裏に押さえつけられてしまう。
しかも、足の裏からは汗の湿り気と腐敗臭漂う臭いが放たれており、英康の命は風前のともしびであった。
英康「くっ!! 仕方ない!!」
穂波「ん? 足の裏に何かあるわ・・・。」
違和感を覚えた穂波より先に、英康は圧迫から解放されるべくサイズ変換器でさらに10分の1サイズに縮小した。
そして、次の瞬間、英康を覆い尽くしていた足の裏が上空へと運ばれる。
英康「ああ、助かっ・・・」
しかし、そのとき、穂波の足の裏から出た一滴の汗が1000分の1という小さな英康を濡らす。
すると、その汗に吸い込まれるように英康は穂波の巨大な足の裏にはりついたまま上空へと運ばれてしまう。
やがて、その巨大な素足は何の躊躇もなく固いフローリングの床へ降ろされようとしていた。
英康「うわああああっ!!」
ズッシイイイン!!!
ピチッ!
穂波は1000分の1サイズしかない英康に自身の重量をまともにくらわしてしまった。
当然、何の抵抗もできずに英康は潰されてしまったのだが、さらに悲しいことに穂波は、英康を潰したことにすら気が付かなかった。
こうして、主のいなくなった部屋で穂波は、足型をきっちりとつけ、その後の指示をしばらく待っていたのだった。

(終)