サイズ変換機8-2
作:いと小さき人


賢哉は周囲に気を配りながら、注意深く進んでいく。
しばらく進むと、賢哉はキッチンで椅子に腰かけようとしている佳澄を発見する。
賢哉「あっ、佳澄さんだ!」
満面の笑みの賢哉は巨大な佳澄のもとへと走り、食卓の下へと潜り込む。
そこには、スラリと上へと延びた左脚の上に大きな右脚が組まれ、その先端の右の素足がぶらりぶらりと揺れている圧巻の構図があった。
賢哉「うおお・・・、す、すごい迫力だ・・・。」
充分に鑑賞に浸った賢哉は、早速、スリッパに包まれている佳澄の左足へと向かおうとする。
しかし、そのとき、佳澄の組まれていた右脚は解かれ、一気に床へと降り立ったのであった。
床一面に巨大な素足が作り出す影が出現する。
そして、その床に作られた黒い領域に、勢いよく佳澄の素足が着地する。
ズシイイン!!
賢哉「うおおおっ!!」
壮絶な地響きに賢哉は、慌てて後方へと走り出す。
着地した佳澄の右の素足は、程なくして持ち上がりスリッパ上空へと移動する。
ズン!
佳澄の足がスリッパに乗っかると、スリッパの先端付近が反り返って裏面を賢哉に見せつける。
やがて、グイグイと佳澄の素足はスリッパの中へと入っていき、自身の10本の足の指に力を加え、その巨体を立ち上げた。
こうして、ズシズシと足音を響かせながら、キッチンを後にしたのであった。
賢哉「大迫力だ・・・。このサイズはすごいな。」
佳澄の何気ない動作を100分の1サイズで見ることによって壮大なスケールを体感でき、賢哉は興奮のるつぼに飲まれていた。

賢哉「いやあ、すごかったなあ・・・、佳澄さんの巨大な足・・・。」
自宅に戻った賢哉は、ベッドに横たわったまま先程の光景を思い出していた。
佳澄の巨大な素足が繰り出すミクロの世界にすっかり虜になってしまった賢哉は、サイズ変換器に手が伸びる。
佳澄の足で妄想していた賢哉は布団に顔をうずめて感情を抑えながら変換器を操作する。
サイズは、先程が100分の1であったので、今回は200分の1の設定で考えてみる。
グングンと小さくなる賢哉は、先程の巨大な佳澄の姿を想像して薄ら笑いを浮かべていた。
ピンポーン♪
賢哉「!?」
賢哉が大急ぎで廊下に出ると、なんと、玄関には巨大な佳澄の姿があったのだ。
賢哉からすればはるか遠方に佳澄がいるため、佳澄の全身は霞んで見えていた。
そんな最中、佳澄は微笑みを浮かべながら、サンダルを脱ぎ廊下に歩を進めようとする。
自らが妄想していたときによもや巨大な佳澄が現れるなど思いもしなかった賢哉は興奮で冷めやらない状態になっていた。
佳澄「ごめーん。時計忘れちゃって・・・。」
佳澄がそう言い放った次の瞬間、佳澄の巨大な右の素足が廊下に着地する。
ズシイイイン!!
賢哉「おわわわっ!」
遠方からダイレクトに重低音が響き、その振動が小さな賢哉に伝わる。
そんな賢哉に構うことなく、続いて佳澄の巨大な左の素足が廊下に降り立とうとする。
ズシイイイン!!
佳澄「取りに来たんだけど・・・。」
賢哉「うおおっ!」
たまらず賢哉は体勢を崩し、その場に転倒してしまう。
やがて、小さな賢哉の方向にある部屋を目指し、佳澄の蹂躙が始まったのだった。
ズシイイイン!!
佳澄「誰もいないのかしら・・・」
賢哉「ま、待って、佳澄さ・・・」
ズシイイイン!!
佳澄「ま、いっか。部屋に取りに行こっと♪」
賢哉「僕が床下にいる・・・」
ズシイイイン!!
巨大な佳澄は猛烈な勢いで接近してくる。
先程、佳澄の家のキッチンで見ていた佳澄の素足には、まだおとなしさがあった。
しかし、目の前のそれは、慈悲の欠片も見当たらない野蛮さを有していた。
爪先に力を込めて歩くため、指先が一時的に白く圧迫される。
歩行に伴って床から離れる巨大な足の裏は、その皮膚の部分が実によく床に吸い付いている。
さらに体温が高いのか、爪先は赤々と怪しく色づいているため、土踏まずの白さがやけに目立つ。
ズッシイイイン!!!
賢哉「ぐわっ!!」
まじまじと観察している賢哉を諌めるように佳澄の巨大な素足はいよいよ眼前に迫る。
賢哉は、巨大な佳澄とコンタクトを取ることをあきらめ、大急ぎで逃げ出したのであった。

佳澄「勝手に部屋に入ってもいいかな・・・。」
佳澄はおそるおそる賢哉の部屋を覗きこむも、人の気配は感じられない。
そのまま部屋のフローリングに遠慮なく自身の汗まみれの素足で踏みつけていく。
ベタッ、ベタッ、ベタッ・・・
佳澄の歩いたあとには、素足から放たれる湿気で形成される足型が浮かび上がる。
その足型には、もわっとした強烈な足のにおいも残されていた。
小さな賢哉にとって部屋は、温度や湿気と共にいつ佳澄に踏み潰されるかもしれぬという危険も合せ、まさに地獄のような環境と化していた。
賢哉「うぅ・・・、くさい、あつい、こわい・・・。」
先程まで佳澄に抱いていた淡い妄想など消え去り、賢哉は恐怖に苛まれながら泣いていた。
佳澄「あれー、ないなあ・・・。」
ズッシイイイン!!
賢哉「うわっ!!」
ふいに佳澄の右の素足から激しい一歩が繰り出され、賢哉は上空へと舞い上げられてしまう。
賢哉の眼前に、しゃがみ込む巨大な佳澄の全景が現れる。
右膝を立て、左脚は膝を床につき、黄色のキャミソールからは小ぶりの乳房を覗かせた佳澄の姿に賢哉は思わず興奮する。
その最中、賢哉は体勢を整えようと必死に宙をかく。
佳澄「床に落ちてるのかな・・・」
そう佳澄が言葉を発すると、佳澄の巨大な顔が小さな賢哉目がけて接近してきた。
賢哉の前方は巨大な佳澄の顔で覆い尽くされ始める。
佳澄「ん?」
佳澄の巨大な2つの瞳が小さな賢哉をギョロリと覗き込む。
佳澄「フゥッ!!」
賢哉「うわあ!!」
佳澄は小さな賢哉に息を吹きかけて吹き飛ばす。
賢哉はなす術もなく吹き飛ばされ、佳澄の太ももへと落下する。
ポチョッ!
賢哉「ううっ・・・。」
落下の衝撃が残る賢哉の周囲が突如として暗くなる。
賢哉が上方向に視線を向けると、そこには広大な佳澄の手のひらが存在していた。
そして、何の躊躇もなく小さな賢哉目がけてその手のひらは落下を始める。
賢哉「へっ・・・? うわあああっ!!」
5本の長い指を携えたその広大な手のひらは、グングンと賢哉に迫ってくる。
バチイイイン!!
賢哉の周囲を巨大な肌色の物体が覆ったかと思うと、賢哉は再び上空へと舞い上げられてしまう。
運よく、賢哉は佳澄の指と指の間に位置していたため、叩きつけられた勢いで上へと浮かび上がったのだ。
再び、賢哉の前方を巨大な佳澄の顔が覆う。
ピトッ。
賢哉「はぁ、はぁ・・・。あれっ、ここは?」


(続く)