サイズ変換機9
作:いと小さき人


上野華菜実(うわのかなみ) 18歳 163cm
上野健太(うわのけんた)  17歳 176cm
笹木(ささき)、長嶺(ながみね):華菜実のクラスメイト


華菜実「ただいまぁ。」
蒸し暑い夏のある日の午後、姉の華菜実の声が玄関先から高らかに響いてきた。
姉である華菜実は、健太より1つ年が上で、都内の私立高校に通っている。
華菜実は、友人らとジョギングをするために身軽な服装に履きなれたシューズで朝から出かけていたのだ。
華菜実「よいしょっと・・・。」
華菜実は玄関先で踝までの長さしかないアンクルソックスを脱ぎ、裸足の状態でリビングへやってきた。
健太「おっ、お帰り。姉ちゃん。」
華菜実「もう、流石に疲れちゃったわ。」
そう言うやいなや、華菜実は脱ぎたてのソックスを床に無造作に投げつける。
ソックスの周辺は一気に水蒸気が覆い、床を曇らせていた。
何の気なしに健太は、その周辺の床へ顔を近づけてみる。
そのソックスからは不快感を増す湿り気が確認でき、しかも猛烈な臭気が健太まで到達してきたのだ。
健太は慌てて右手でにおいを払うも、その臭気は鼻の奥深くにまで居残り、健太の顔を引きつらせていた。
華菜実「あはは、いい香りでしょう?」
健太「な、何言ってんだか・・・。」
口ごもる健太が華菜実の裸足に目を移すとフローリングの床には華菜実の足型が形成されていた。
健太「姉ちゃん、床が曇ってるよ・・・。」
華菜実「あら・・・、臭そうね~。」
戸惑った表情を浮かべる健太の問いに華菜実はあっけらかんと答える。
爽やかで純潔そうな華菜実の肉体とは裏腹に、臭いを伴う華菜実の裸足にギャップを感じていた健太は、思わず嘆声を漏らす。
そして、健太の困惑した表情をよそに華菜実は床に足型をつけながらリビングにあるソファへと腰掛けた。
健太「じゃあ、僕は出かけてくるよ。」
いささかの不快感を拭い去りたい気持ちもあり、健太は散歩をしたい衝動に駆られた。
健太が軽く身支度を整えたリビングを出ようとしたとき、華菜実も口を開く。
華菜実「私も横になるか・・・。」
ソファから降りた華菜実は、そのままリビングに大の字になって寝始めた。
寝ようとする姉の姿を見届けた健太が出かけようとした次の瞬間、玄関のドアが静かに開けられた。
笹木「あれ、健太くん、出かけるの?」
長嶺「ちょっと、うちらと面白いことしないかい?」
健太「えっ? 二人ともどうしたんですか?」
健太の家を訪問したのは、姉の華菜実の友人である笹木と長嶺であった。
長嶺の手には、やや小さめの箱状の機械が握り締められている。
笹木「華菜実は?」
健太「えっ、いまリビングで休んでいますよ?」
長嶺「それは好都合だ!」
ニヤニヤとほくそ笑む二人は、健太を連れてリビングへと入った。
案の定、スヤスヤと寝息を立てながら華菜実は寝入っている。
すると、長嶺が小声で健太に話しかける。
長嶺「僕らと一緒にこのサイズ変換器で小さくなって冒険しないかい?」
健太「えっ、サイズ変換器持ってるんですか?」
笹木「わわっ、静かに、静かに・・・。」
唐突な長嶺の提案に必然的に声が大きくなる健太ではあったが、すぐさまその提案に賛同の意を示した。
了承を得た長嶺は、たどたどしい手つきでサイズ変換器を操作する。
次に瞬間、長嶺の持つ機械から怪しい光が照射され、3人は10分の1サイズにまで縮小した。
健太「うわ・・・、本当に小さくなった・・・。」
笹木「なあ、華菜実のところに行ってみようや。」
健太は、笹木たちに促されるままに、横たわる大きな華菜実のもとへと向かう。
ちょうど横向きに眠っていた華菜実は、10倍サイズの体を惜しげもなく縮小した笹木たちに披露していた。
笹木や永峰は、華菜実の胸に釘付けになっていた。
長嶺「そ、想像以上にデカイな・・・。」
笹木「ああ、キャミソールからはみ出るぐらいだな・・・」
淫乱な会話を続ける二人に嫌気が差し、健太は華菜実の足の方向へと向かった。
華菜実の膝あたりを歩いていた健太は、鼻腔の奥に劈くようなにおいを感じた。
においの根源の方向には、華菜実の大きな裸足が鎮座していた。
健太「うあ・・・、姉ちゃんの脛あたりにいるのににおいがする・・・。」
これ以上先に行っても得るものは何もないと感じた健太は、再び二人のもとへと戻ろうとする。
しかし、笹木と長嶺は、華菜実のキャミソールの中へと入り込み、直に乳房の鑑賞を楽しもうと画策していた。
実の姉に対する恥辱に怒りこそ覚えたものの、何故か注意する気にもならず、健太はその2人の光景を静かに見守っていた。
しかし、そんな小さな2人に華菜実はついに無意識の制裁を加える。
華菜実の胸元を広げたりしたのが原因なのか、華菜実の鼻が一瞬びくっと震えたかと思うと、小さな2人に向かってクシャミを浴びせたのだ。
華菜実「ハックショーンッ!!」
やや大きめの口から発せられたくしゃみは小さな2人にものの見事に命中し、そのまま後方へと吹き飛ばされていた。
華菜実「う、うーん・・・。」
そして、華菜実の目がパチリと開かれたかと思うと、そのまま上体を起こし始めた。
華菜実が目覚めてしまったのだ。
この状況にさすがに健太も慌てて、急いでリビングを飛び出た。
笹木「や、やばいぞ!!」
長嶺「と、とりあえず華菜実の目に付かないサイズに縮まろう!!」
リビングから長嶺の声が聞こえた次の瞬間、健太のサイズはさらに縮小を始めた。
健太「えっ!? 嘘、さらに小さくなるのか・・・。」
機械を持たない健太は一抹の不安を覚えたものの、それほど事態を深刻には捉えてはいなかった。
やがて、健太の縮小も収まったため、健太はリビングの様子を窺いに戻ろうとする。
長嶺「うわあああ!」
ズシイイン!
長嶺の悲鳴とともに、周囲に重低音が響き渡る。
ただならぬ状況を感じ取った健太は、リビングに戻ることを断念し、玄関先へと向かう。
華菜実「小人ね? どこから入ってきたのかしら。」
華菜実「あと何人いるの? 答えなければ捻り潰すわよ。」
リビングの華菜実の声で、誰かが捕まったことが想像できる。
そして、次の瞬間、リビングから笹木が飛び出してくる。
健太「あっ! 笹木さん、どうしたんですか?」
笹木「長嶺が捕まってしまったんだ・・・。」
ズシイイン!!
ズシイイン!!
間髪入れず重低音が響き渡ったかと思うと、リビングから巨大な華菜実が出現した。
健太「ね、姉ちゃん・・・。」
健太は思わず言葉を失った。
そこに現れたのは、20分ほど前まで談笑していた華菜実に間違いはないのだが、そのサイズが圧倒的に異なっていたのだ。
笹木「健太くん、逃げるぞ!!」
笹木は、黙って見上げる健太に一声かけると、全速力で走り出した。
華菜実「あぁ、足元に2人いるわね。」
巨大な華菜実に発見された笹木と健太はいとも容易く、華菜実に摘まれ掌へと投げ出される。
華菜実「さて・・・。」
華菜実の大きな瞳がギョロッと小さな3人を睨みつける。
華菜実「このまま握りつぶしてもいいのよ?」
そう言うと、小さな3人の周囲を5本の太い指が中央部分に集まり始める。
当然、健太たちを始め、3人は悲鳴を上げる。
健太「サ、サイズ変換器はどこにあるんですか!?」
長嶺「華菜実に摘まれた時に床に落としてしまったんだ・・・。」
健太は、そのまま肌色の平面に跪いてしまった。
華菜実「あ、そうだ!!」
何かを閃いた華菜実はズンズンと歩き始め、そのまま屈んだ。
華菜実「弟が私の足が臭いって言ってたからさ、私の靴の中に入れてあげるよ。」
3人「え、ええっ!!?」
華菜実「私の靴から脱出できたら見逃してあげるわ。よいしょ!!」
3人「うわあああ!!!」
そのまま、小さな3人は華菜実の薄汚れたシューズの中へと落下していった。

笹木「ゴホッ、ガハッ!!」
長嶺「だ、大丈夫か、みんな・・・。しかし、臭いな・・・。」
健太「こ、これはヒドい・・・。」
落下の衝撃よりも、猛烈な腐敗臭が支配した使い古されたシューズの中に小さな3人は驚きを隠せずにいた。
華菜実「そこにいると危ないと思うよー。」
ふいにシューズの光が漏れている部分から華菜実の声が聞こえてくる。
長嶺「えっ、どういう・・・。」
様子を伺いに行った長嶺が血相を変えてつま先方向へと走り出す。
ズズウゥゥン!!
間一髪、長嶺は落下してきた華菜実の巨大なつま先に押し潰さずにすんだ。
そして、そのまま華菜実の巨大なつま先は、シューズ内へと侵入を始めたのだ。
当然、華菜実の巨大な素足が侵入してくることにより、シューズ内の光が奪われ始める。
かといって、つま先方向に行けば行くほど、あの激越な腐敗臭の濃度は濃くなっていく。
まさに環境も状況も八方塞がりになってしまっていた。
華菜実「女の子の足ぐらい押し返せばいいのよ? アハハ。」
今や大木の幹の如き太い華菜実の足指など押し返せるはずもないことなど理解できているであろう華菜実に健太は怒りを爆発させた。
健太「そんなこと言うなら押し返してやりましょう!!」
笹木「ああ、小馬鹿にするのもいい加減にしろよな!」
長嶺「華菜実のやつ、調子にのりやがって!」
小さな3人はお互いの顔を見合わせると、一斉に華菜実の親指を押し始める。
3人「うおおおおっ!!!」
3人とも歯を食いしばりながら、懸命に体重をかけるも今の3人ではびくともしない。
華菜実「指がかゆい。」
ズズズッ!!
そう言った華菜実は足の親指を曲げ、シューズの床に親指をこすりつける。
華菜実のちょっとした動作も小さな3人には地震のような衝撃になり、3人とも転倒してしまう。
そして、構わず華菜実のつま先は前進してくる。
慌てて這いつくばりながら逃げる3人は、自身の力の無さに情けなさまで感じ始めていた。
健太「ゴホゴホ、どうします・・・?」
笹木「こ、このままじゃ、踏み潰されてしまう・・・。ゲホッ!」
長嶺「せめて、サイズ変換器さえあれば・・・。」
思案に暮れる3人は、シューズ内の腐敗臭に意識が飛びそうになる。
眼前のつま先からも水蒸気とともに腐敗臭が放たれ始め、シューズ内の環境は地球上のどこにも存在しないほど劣悪なものとなっていた。
華菜実「そろそろ踏み潰してあげるわね。」
健太「え、うそ・・・。」
息も絶え絶えの健太は、床に倒れ込みながらも華菜実の死刑宣告に耳を疑った。
華菜実「よいしょっと。」
華菜実は、小さな3人が入っているシューズの先端を持ち上げる。
当然、3人とも果奈美の巨大な足の裏に沿って、滑り落ちていく。
やがて、3人はめいめい華菜実の足の裏から出ている汗にはりつく。
そして、華菜実は一気にシューズ内に自身の素足をパンパンに詰めきる。
その瞬間、健太の耳には華菜実の足の裏から響き渡る何かが潰れる音が聞こえてくる。
華菜実「ふう、これですっきりしたわね。」
満足そうな言葉を放った華菜実がシューズから足を引っ込ぬき、足の裏をひっくり返すと、そこには哀れにもペチャンコに踏み潰された彼らがいた。
華菜実「あっははは。哀れな奴らね、女の子の足で潰されて・・・、あれっ?」
目を凝らした華菜実は驚きの声を上げる。
なんと、華菜実の足の土踏まずの部分に、小人が1人だけ貼り付いていたのだ。
偶然、華菜実の土踏まずに貼り付いて、助かった小人がいたのだ。
健太「うっ、まぶしい・・・。」
華菜実「すご・・・、しぶとく生き残ってる。」
健太「た、助かったのか・・・?」
華菜実「運がいいわ。仕方ない、約束通り助けてあげる。」
そう言うと、華菜実は足裏に張り付いていた健太を床へと下ろし、約束通り命を救った。
健太「や、やった!!」
華菜実「さ、これでいいわね。このまま家から出れば見逃してあげるわ。」
健太「え・・・、でもこのサイズなのに・・・。」
華菜実「じゃあね。」
そう言うと、華菜実は玄関先の履物を揃え始めた。
命が助かった健太はこれ幸いにと、大急ぎでリビングへと走り出した。
健太「よし、あとは急いでサイズ変換器を探さないと・・・。」
ズシイイン!!
リビングへと走り出す健太の真後ろに華菜実の巨大な素足が振り下ろされる。
その衝撃で、健太は前方へと派手に転んでしまう。
華菜実「せっかく助かった命なのに・・・。さようなら・・・。」
転倒した健太に容赦なく華菜実の巨大な素足が迫る。
健太「うわあああ!!」
ズッシイイイン!!
華菜実「なんで部屋に戻ったのかしら。馬鹿な奴ね・・・。」
不思議そうな表情を浮かべた華菜実は、踏み潰した小人が自らの弟であることも知らず、呑気にリビングへと向かい再び昼寝を始めたのであった。


(終)