サイズ変換機11-1
作:いと小さき人


伊東郁乃(いとういくの)   23歳 160cm
川島明久(かわしまあきひさ)  26歳 175cm


これは、とある会社のフロアでの話である。
蒸し暑さが際立つ7月某日、川島明久(かわしまあきひさ)は、4~6月期の収支決算報告書を作成するため、残業をしていた。
川島「うぅ~ん、疲れたぁ・・・。」
右手を高々と上げ、左手で目を擦り、川島は精一杯体を伸ばした。
細かな字の連続は、必然的に前傾姿勢を誘発し、川島の背中の筋肉に乳酸を生じさせていた。
疲労が蓄積した川島はパソコンから目を逸らし、後ろを振り替える。
川島の背後では、同じく女性が仕事に没頭していた。
時折、手を肩にあてたり、首を回したりしているため、彼女も疲労が溜まっているのだろう。
川島「あっ…。」
川島が視線を足に移す。
そこには、パンプスから解放された足がブラブラと揺れていたのだ。
温度が高いのか赤々と怪しく光っていたその足は、爪先をギュッと握ったり、指の間を開いたりするなど落ち着かない様子を見せていた。
小ぶりな彼女の素足の動向に川島の心は掴まれ、すっかり釘付けになっていた。
川島(えっと、彼女の名前は、確か伊東郁乃≪いとういくの≫だったよな…。)
伊東「ふうっ、これで一段落!」
そのとき、伊東が不意に川島の方向を振り返った。
伊東の足を凝視していた川島は慌てて姿勢を立て直すも、伊東の表情はみるみる不機嫌なものに変わっていった。
伊東「川島先輩?」
川島「あ、はい・・・。」
伊東「どうして、私の足元を見ていたんですか?」
川島「いや、そういうわけではないんだけど・・・。」
厳しい顔つきの伊東に圧倒されたのか、川島はしどろもどろになりながら受け答えをする。
そんな川島を見てか、伊東は突然自分の足の裏を川島に見せつける。
そして、先程と同じく爪先を器用にくねくねと妖しく動かし始めたのだ。
伊東の足裏を見ていた川島は、自身の顔が紅潮していくのを感じていた。
伊東「ふーん・・・。」
伊東の何気ない言葉が突き刺さる。
その後、パンプスを履いた伊東は、トイレに向かうべくそのフロアを後にした。

川島「いやぁ・・・、絶対変な奴だと思われたよなぁ・・・。」
半ば諦めにも似た気持ちで、川島は大きく息を吐きだした。
よもや、伊東が自身の足の裏を見せつけ、足の指を動かすなど夢にも思わなかったからだ。
川島は、その光景を思い出し、息遣いを荒くしていた。
やがて、冷静さを徐々に取り戻してきた川島は、再びパソコンの仕事に没頭したのであった。
コツ、コツ、コツ・・・。
作業を続ける川島の背後から足音が響く。
おそらくは、トイレに行った伊東の足音であろう。
然して気にも留めず、川島は決算書の仕上げに取り掛かった。
伊東「先輩、こっちを向いてください。」
伊東の声に川島は何の疑念も抱かず振り返った。
その瞬間、妖しい光が川島を照らし、川島の意識は遠のいた。

伊東「・・・、先輩。起きてください。」
川島「う、うぅ~ん。」
伊東の声に川島は目を覚ましたものの、視点も定まらずフラフラとふらついていた。
しかし、川島の目の前にある光景が、すかさず川島の意識を正気に保たせた。
目の前に巨大な足の裏が2つ君臨していたのだ。
サイズにして、20メートル以上はあるのだろうか。
川島は、巨大なサイズの足が出現したことよりも、目の前に足の裏が惜しげもなく存在していることに驚きを隠せずにいた。
川島は大きく深呼吸をすると、改めて全景を見渡した。
整然に揃った巨大な爪先は5本の指がピタリと密着し、土踏まずは美しいカーブを描いており、踵付近には多少の角質が見え隠れしていた。
おそらくは伊東のものであろうパンストに包まれた足裏は、自然と川島の気分を高揚させた。
その最中、川島は、伊東の足の人差し指と中指の裏側から付け根部分までが作り出す小さな空間から目が離せずにいた。
川島(あ、あの空間に入れたらな・・・)
川島は、露わになった巨大な足の裏にすっかり釘付けになっていた。
伊東「先輩? 私の足、そんなに気になるんですか?」
川島「え、う、あ・・・。」
伊東の唐突な問いかけに川島は口ごもる。
伊東「先輩・・・?」
川島「は、はい?」
伊東「踏み殺しましょうか?」
川島「んな?!」
その瞬間、左の素足の裏を見ていた川島の横を勢いよく右の素足が着地する。
ズシーン!!
そして、着地した右の素足は爪先でグリグリと踏み躙り始めた。
一連の動作に川島は腰を抜かしてしまい、その場に座り込んでしまった。
伊東「冗談ですよ。女性の足が好きなんですか、先輩?」
伊東の行動と言葉の乖離に川島はごくりと息を呑みこむ。
そして、静かに自分の考えを伊東に説明した。

(続く)