某日 異相空間格納庫
姫乃が作り出した常識外の空間。
そこはまさに……車両基地となっていた!!
ズラリと並ぶ線路や装甲車両を整備可能な各種設備、油田や製油所、部品/弾薬等の生産工場まで完備している。
その一角で、姫乃と大湊野親子が何やら騒いでいた。


普段と全く変わらない白衣の重三。
何故か黒い戦車兵っぽい服に身を包んだ賢樹。
そして、なぜか12歳程度の姿に幼くなってツーテールを靡かせ黒い高級士官服っぽい服装にやはり黒いコートを羽織って仁王立ちする姫乃。
三人はやたら角々した列車の前に集まっている。
「とうとう……ですね」
「あぁ」
「うむ」
三人が顔を見合わせ頷き合う。
「かんせーです!」
「うぉっしゃぁぁ!」
「ブラァボゥ!ハラショォォォ!」
姫乃に続き賢樹と重三も歓声を上げる。
と思えば今度は三人揃って万歳を叫びまくる。
傍から見れば完全に頭のおかしい人たちである。
「ところで姫乃君、なぜそんなに幼いのかね?前から気になっていたのだが」
「アレ!?何も言わないから親父は知ってるものと思ってたんだが」
「いや、いつの間にかちっちゃくなってるなぁ……と」
大湊野親子の言い合いの後ろから不敵な笑い声が響く。
「フフフ……ハーハッハッハ!この姿でもツインテールが似合わないとほざきますか!?」
ブアッ!と髪を払いながら哄笑する姫乃。
「あ、以前のアレか」
「う~ん、ちょっと罪悪感」
重三と賢樹が囁き交わす間にも高らかに声を上げる。
「桜庭姫乃省エネモード!巨大化を含むかなりの能力制限を受ける上元に戻るのに時間も労力も多大にかかりますがツインテールが絶対的に似合う美幼女になる形態です!参りましたか愚昧共が!」
「うん、この間はすまなかった」
「言い過ぎたな、悪かったよ」
二人が素直に謝ると得意げにフフンと鼻を鳴らす。
「分かればいいのですよ、分かれば。あ、二人とも先に外に出ていていいですよ?」
「ん?いいのか?」
賢樹が聞いてくると、ウンと頷く。
「この姿って元に戻るのに10カ月くらいかかるんですよ」
「じゅっ…!?」
賢樹が絶句する。
何と言うか、姫乃もツーテールが似合っていないと言われて以外と傷付いていたらしい。
「どうせ外では2時間程度……か」
「そう言うことです」
重三の言葉に姫乃が頷く。
「それじゃお言葉に甘えて……」
重三が踵を返そうとしたその時、クラシカルな警報が鳴り響く。
「巨人!」
慌てて振り返った重三が叫ぶと、姫乃が列車に飛び乗って叫ぶ。
「<扶桑号>発進用意!賢樹さん機関始動!」
「俺かよ!」
そう言いながらも扉を開けて列車に乗り込む賢樹。
すぐにエンジン音が響き渡り、排煙が噴き出す。
「初陣だ!勝利で飾って来い!」
「当然です!<扶桑号>、前進!」
姫乃の命令を受け、対巨大生物/巨人用強襲型重装甲列車<扶桑号>が轟音を響かせながら走って行く。



しかし、この数時間後巨人を倒した<扶桑号>と乗員二人は忽然と姿を消すことになる。
物語はそこから始まる。