傾注!気をつけ!
戦車新兵諸君、これより第七七鉄道大隊長ヒメノ・U・フィッシャー少佐による対クリーグ戦における心得を講義して頂く!各員静聴するように!
では大隊長、お願いします。


はい、楽にして、着席してくださって結構ですよ。
初めまして皆さん、只今ご紹介預かったフィッシャー少佐です。
本来なら装甲列車乗りの私なんかより機甲師団の誰かを連れてくるのが適任なのですが、戦時中ということもあり人手不足なので私で我慢してください。
では、対クリーグ戦における基本知識の講義を開始します。
コホン!
まず、クリーグは言うまでもなく巨人です。
ヒト型をしていると言うことは、どこに当てたって徹甲弾が食い込むと言う事と同義です。
そして、現在我が軍の使用する76mm、88mm、そしてその長砲身の各戦車砲でクリーグの纏う装甲を抜けない砲はありません。
つまり、当てれば勝つ!
このことは念頭に置いておいてください。
では、基本的な戦闘方法に移ります。
まず我が方が敵を発見します。
え?あ、はいではベッカー候補生。
…………はい、その通りです、実際の戦闘においては敵味方の発見は順番が決まっていません。
ですが、クリーグに関してはほぼ確実に我が方が先に発見します。
最初に言ったようにクリーグは巨人です。
あのうすのろ木偶のぼうは常に地面に垂直につっ立っているのです。
なにせ、下手な稜線だとその向こうから見えますから。
鎧等の装備の関係で匍匐することも出来ず、穴に潜ったりするとクリーグの数少ない利点である機動力が完全に殺されてしまいます。
動けないクリーグは擱座した戦車より役に立たないのです。
しかも彼らは「神兵」……騎士の延長線上の存在なのです。
どれだけ身を屈めようとトーチカよりも巨大な体を、偽装する気すらないのです。
あのギンギラピカピカの鎧で、です。
10m以上の巨大な物陰があって乱戦でもしていない限り彼らを見逃すことは有り得ない。
ですので、そういうのは戦車か対戦車砲と戦う場合にとっといてください。
では戦闘開始です。
戦闘距離は戦車と同じか少し遠めに。
約1200~500ですね。
それ以上接近されると頭上からの砲撃にさらされてしまいます。
いくらクリーグが装備している射撃杖が貫通力の低い魔導弾とは言え、上面装甲では耐え切れません。
近距離となれば尚更です。
ですので、絶対に接近されないように。
目標は鎖骨くらいから股間少し上くらいの間、中心線を狙うようにしてください。
それから、狙うなら前か後ろから。
側面は戦車と違い縦に細長いので狙いづらく、相手が動いていればまず命中させられません。
さて、実際には言う程簡単ではありません。
8mとか10mある巨体が全力疾走してくるのは恐怖以外の何者でも……。
はい、エレルト候補生。
…………はい、何か理由がない限りクリーグは戦車を発見すると突進してきます。
簡単な話で、接近しないと戦車を倒せないからです。
クリーグにとって1秒接近が遅れれば1秒分死ぬ可能性が高まる訳です。
つまり、突撃してこないクリーグは撤退中か、罠をしかけているか、そんなところでしょう。
それでですね、あの巨体が走ってくるのはやはり凄まじい威圧感があります。
ですが、走っている間は敵も攻撃が出来ません。
強行したところで命中しませんし、当たったって効きません。
ですから、その威圧に負けず落ち着いて狙うのを心掛けてください。
それと、足元への榴弾攻撃も有効です。
人間で言えば炸裂弾を足元に撃ち込まれるのと同じですから。
転ぶか動きを止めたのならもうこちらのものです。
ゆっくりと相手の弱点を狙って必中を期してください。
それから、最近は両肩に半身を覆える程度の広さの魔導合金の盾を装備するクリーグが増えてきました。
これは魔術に対して強力な防御力を発揮する防具ですが、我々の使用する砲弾に対してはシュルツェン程度の意味しかありません。
…………はい、カリウス候補生の言う通りです。
成形炸薬弾を使用する場合はこれによって阻まれる場合がありますので、盾装備のクリーグに使用する砲弾は通常の徹甲弾か素直に榴弾を選ぶことをオススメします。
……おっと、もうこんな時間ですか。
拙い講義ではありましたが最後までお聞き頂きありがとうございました。
もし質問があれば個人的に来てくださっても結構ですので。
それでは、失礼します。


起立!大隊長に敬礼!