先日の巨大少女の襲撃によって新都心部と工業区、そして住宅地に甚大な被害を出した八百境市。
桜庭邸も例外ではなく、12年ローンの残っていた2階建ては、近所の家ごと土地だけ残して足跡となってしまっている。
そのため現在は自治体から支給された仮設住宅に居住している訳だが、そんな場所にプライベートという言葉は存在しない。
まず、男女の区切り自体カーテン一枚という非常に頼り無いものでしかない。
そのヒラヒラした頼り無い防壁を見ながら姫乃は溜息を吐く。
「ハァ」
「どうしたのよヒメ?さっきから落ち着かないわね」
読んでいた雑誌から顔を上げ、雪香が怪訝そうに姫乃を見る。
「何でも無いです」
頬を若干赤らめながら、プイとそっぽを向く。
「少し外に行ってきます」
「?」
慌てて立ち上がって逃げるように出ていく姫乃を雪香は不思議そうに見送った。


「むぅぅぅ」
遅々として復旧の進まない八百境市新都心部。
その中で奇跡的に倒壊していない傾いたビルの屋上。
そこで姫乃は正座しながら唸っていた。
その前にはティッシュの箱が鎮座している。
まるで箱と見合いしているようで滑稽だ。
人がいない場所……ということでここまで来たのだが、何かが違う。
何か違うのだ。
唸りながらモジモジと太股を擦り合わせると、粘質な水音が小さく響く。
「ぅむぅ」
全く醒めない火照りに溜息を吐きつつ、黒ストと下着の上から性器を撫でる。
ジットリとした湿り気が指先に伝わり、その感触に辟易する。
「何でこんな時に限ってこう……」
体がすっかり発情してしまっているのを感じ、熱っぽく息を吐く。
「全く、度し難い」
要するに、欲求不満になったが一人になれないので発散することが出来ず悶々としているという訳だ。
ぶっちゃければ、「おなにーしたい」である。
かなり我慢したため、ただするだけでは満足出来そうにない気がする。
少し考えてから、姫乃はその場から消えた。


その星に決めたのは、何となくだ。
雰囲気とでも言うべきものに引きずられた感もあるが、今の姫乃のとってはあまり気になることではない。
その星のサイズは女座りしている姫乃から見て、大き目のバランスボールといったところ。
尻や足に押し潰され、地面が大きく沈み込んでいく。
当然、そこにあったモノは人工物も自然の地形も関係無く圧縮される。
その星の住人達は何が起こったかも分からぬまま太股や尻、チェック柄のスカートに押し潰され、地面と同化する。
辛うじて潰されなかったかのように見えた姫乃の後方の都市も、一拍遅れて落着した長大な髪に襲われる。
金色に輝く巨大な髪が地面を滑り、山を、森を、都市を蹂躙していく。
数十の都市が薙ぎ払われ、更地と化していく。
「んぁ…ん」
そんな地上を意に介さず、悩ましく吐息を吐いて女陰を地面に押し付ける姫乃。
右手はブレザーの上から胸を掴み、ゆっくりと揉みほぐしていく。
「ふぁ」
それと同時に腰も前後させ、陰核と女陰を地面に擦り付ける。
下半身が擦った為、地殻やプレートが捲れ上がってマグマが沸き上がり、地下都市とそこに居た人々の阿鼻叫喚がそこに混ぜ込まれていく。
「ん」
その悲鳴や恐怖を感じ、さらに体が火照っていくのを感じながら、姫乃は腰の動きを速めていく。
あっと言う間に大陸の表面が削り取られ、そこから生物が消滅する。
トロリと膣分泌液やバルトリン腺液がこぼれ、動くものが皆無な広大な土地が粘液に覆われていく。
それからそう時間もかからずに姫乃は絶頂に達した。
「んくぅ……!んん!」
声を堪えて背筋をピンと伸ばした後、ゆっくりとうつ伏せになる。
豊満な胸から地面に衝突し、小さいながらも地殻津波を引き起こすが、さらに巨大な体が着地したため、それも圧縮される。
その衝撃で発生した振動は惑星規模で暴れ回り、表面をヒビだらけにした。
姫乃の出現した半球から生物がほぼ駆逐され、反対側も地震や津波で甚大な被害を受ける。
「はぁ」
姫乃は満足げに息を吐き、まどろみに身を任せた。


「ふぅ」
姫乃は一息ついて、ゆっくりと立ち上がる。
それだけで地面がさらに沈下し、惑星に致命的なダメージを与える。
「んー、やり過ぎましたか」
星を見れば、半面はほぼ完全にマントルが露出しており、残った部分も多数発生した亀裂からマグマが噴き出している。
どう見ても生物が生存出来る環境ではなくなってしまった。
服の前に付いた埃(地殻の破片)を払い落しながら、姫乃は苦笑する。
「このまま生殺しの方が残酷ですかね?」
仕方ない、とさらに巨大化し、親指と人差し指で星を摘む。
その際周囲に浮かんでいた宇宙ステーションや宇宙船舶が巻き込まれて押し潰されたが、姫乃は気付かなかった。
「ありがとうございました、気持ちよかったですよ」
笑顔を浮かべ、指先で星を磨り潰して処分する。
「さて、帰りますか」
背伸びをしてからそう呟き、姫乃はそこから一瞬で消え去った。




突如として軍事国家の本星が消滅したことにより、各植民地、占領下、戦争中の惑星国家は一挙に反撃に転じた。
積年の恨みは、混乱中の占領軍や派遣軍を蹂躙していく。
たった数ヶ月で軍事国家の残余は壊滅し、熾烈な残党狩りへと移っていった。
そこまで来て、誰もが疑問に思った。
いったいなぜ軍事国家の本星は消滅したのか?
本星とその周辺の施設、艦船は一つ残らず跡形も無く消滅しており、それを観測していたであろう星系内の他の基地も戦争の中で破壊し尽くされてしまい、その疑問に答えられるモノは皆無であった。
それからしばらくして、撃沈された艦から回収されたデータに巨大な少女が軍事国家本星を破壊している映像があったという噂が流れたが、現在も真相は明らかになっていない。