一話 神様、その出だしはアウトです……
「というわけで…… お前さん達は死んでしまった」
アウトだろ、この出だし……
目の前に居るオッサンの言葉に、オレはスマホを持った主人公の小説を思い出しながら目の前のオッサンをジト目で見た。
オレの横に居るネット友達のケースケも、ヤバい物を見る目でオッサンを見ている。
「ちょっとした手違いで、神雷を下界に落としてしまった、ホントーに申し訳ない」
ヤバい、権利とか著作権的にヤバい。
これで「まさか落ちた先に人が――」とか言い出したら、確実にアウトだ。
「まさか、落ちた先にノースコ〇アの核兵器の発射ボタンがあったとは……」
限りなくアウトに近いセーフか!? だったらいいなー!!
てか、その説明だと『神の手違いでノース〇リアから発射された核兵器で死んでしまったオレは――』的な冒頭を異世界でやらないといけなくなるよね……?
そんなどうでも良い事を考えていたら、横に居たケースケは呟く。
「……はぁ」
アーウト!! それはアウトだよケースケ!!
横に居るケースケを見るが、なんだかうれしそうだ。確かケースケは異世界スマホの原作が大好きだったな……
世間からはボロックソに叩かれてたアニメ版を、めっちゃ興奮しながら楽しそうに見てたっけ。
そんなオレらにオッサンは嬉しそうに頷いた。
「おお、良きかな良きかな。ワシも異世界スマホが大好きでなー! 仲間に出会えてうれしいぞ!」
オッサンの言葉にケースケは興奮した様に言う。
「あれこそ『なろう』の代表作ですよ! 何がオバロだ!」
「そうじゃ! お主は話が合うのー!」
神のオッサンとケースケは手を取り合い互いにサムズアップした。
友情が芽生えている所申し訳ないが、取り合えずこの神に聞かなきゃいけない事がある。
「あの…… それで、オレらはどうなるのですか?」
「おお、そうじゃった!」
オレの質問にオッサンはそう言って咳払いをした。
このまま天国か、地獄か、はたまた輪廻転生か、あるいは異世界転生か……
横に居るケースケも緊張した様子でオッサンを見ている。
「お主達には、なろうの神様チートの様に最強転生してもらいたい!」
「おおっ!」
オッサンの発言に食いつくケースケ。
てか、なろうの神様チートって…… 今時珍しい物になってるよね?
「わしゃあ神様やってるが、神様業がなんも楽しくないんじゃよ…… すまぬが、異世界行ってチート転生の旅してくれんか? ワシの為に」
「喜んで!」
めっちゃ自己中心的な事を言う神様に、ケースケは速攻で承諾する。
まあ、オレも異世界チートで転生できるなら、めっちゃ嬉しいけどさ。
「オレもOKなんですけど、具体的にどんなチートくれるのですか?」
「それはの……」
おれの質問に神のオッサンは答える。
「お主らの思う漠然とした最強の異世界転生の形を言ってくれ。例えば『最強の勇者になって輝く聖剣を携えて敵をバッタバッタ』とか。そしたら、ワシがそれに合う種族とスキルを選んでやろう。」
神様がそう言うと、ケースケは素早く右手を上げた。もう決まったのかよ。
はえーよ。と思ったが、そういやケースケは昔からどんな異世界転生したいかを言ってたな。
確か、内容は……
「最強の魔法を乱発して俺TUEEEEしたいです!」
「魔法特化のチート! それは良いな! ワシも奮発してビックリ仰天のヤツを選んでやろう!」
そうそう、ケースケの理想の異世界転生は最強魔法を乱発して魔王の様な感じだったな。
「所で、お主はどんなかね?」
神のオッサンがオレに聞いてくる。
オレは、そうだなー……
「最強種族で遠距離チートかな」
「ほう?」
オレの返答にオッサンは興味深そうに続きを聞いてくる。
「最強の種族なのに遠距離から攻撃するって、チート要素×古典的チート戦術じゃん?最強に最強が合わさり無敵になる」
オッサンは「なるほど……」と言いながら頷いた。
やっぱり、遠距離チートは外せないと思うんだよね。一方的に距離を取って攻撃できるってアドバンテージはデカい。
「よし!では転生させるぞ? 種族とスキル、外見が出来次第に同一の場所に転生させる!」
オレらの理想を聞いた神のオッサンは、両手を広げる。オッサンの両手に集まった眩い光に、オレたちは眩しさから目を閉じた。