ピンポーン!!

綾音「こんにちは!今日はなこちゃんと遊ぶ約束があってきたんですけど、今いますか?」

くうなが玄関のドアを開けるとそこにいたのは自分よりも身長もスタイルもおっぱいも全て凌駕したような美女だった。
なこには少し届かないがこれほどの人間がそう易々と存在してるなどありえるのだろうか・・・くうなは目の前の美女を前に色々と考えを巡らせていた。

くうな「どうぞいらっしゃい!たぶん部屋にいると思うから呼んでくるわね。リビングで待っててくれるかな?」

綾音「じゃあお邪魔しますね、くうなさん」

くうな「あれ?私の名前知ってるってことは何処かで会ったことあるのかな?でもこんなスタイル良い人を忘れることなんてないだろうし・・・」

綾音「あっ!この姿で会うのは初めてでしたね!私なこちゃんの親友の綾音です!この前色々あってなこちゃんに大人の身体にしてもらったんですよ~♪」

くうな「ええっ!?あなたあの綾音ちゃんなのっ!?」

元々なこと仲の良かった綾音は今までにも何度か家に遊びに来たものだ。
身長も小さく、なことほとんど変わらなかった為くうなとしては可愛い妹が2人に増えたような感覚で今まで接してきたのだ。
それがまさかなこと同様に小学1年生にして高校生の自分を大きく上回るような存在になってしまうとは・・・
くうなはも容姿やスタイルだけが全てではないと理解していても小さな子に追い抜かされた事に対するモヤモヤした気持ちをぬぐい切れずにいた。

綾音「ビックリさせてすみません。でもこの身体に成長させてもらってなこちゃんには本当に感謝してるんですよ!クラスメイトからはお姉ちゃんだとか、中にはママなんて呼んでくる子すらいて・・・そういう子の相手をしてると母性が溢れてくるみたいでキュンキュンしちゃうんですよ!!今までの小さな身体じゃなにもできなかったけど、大きくなるとこんなにも視点や感じ方が変わるんだなぁ・・・って!おかげで今はすごっく幸せな生活を送れてます♪」

くうな「そうなのね・・・綾音ちゃんってとってもいい子で安心したわ。これからもなこと仲良くしてあげてね!」
くうなは目の前の綾音からは本当に溢れんばかりの母性がひしひしと伝わってくるような気がした。こんないい子に対して自分は少しばかりとはいえ嫉妬のような感情を抱いてしまったことが恥ずかしくなってしまった。

綾音「はい、こちらこそ!じゃあリビングで待ってますね」

くうな「あ、長話してごめんね。今なこを呼んでくるから!」

そう言ってくうなはなこの部屋へと向い、何度かノックしたが返事がなく部屋からは何の物音もしない。確か今日は何処にも出かけていない筈なのに・・・と不審に思ったくうなはドアを開けて中に入ると案の定なこの姿は無かった。
どこに行ったものかと考えていると机の上に書置きのようなものがあるのに気が付いた。


《別次元の世界に遊びに行ってきます!すぐに戻るから心配しないでね!》

あっけらかんと書かれているがさらりと凄いことをやってのけているようだ。

くうな「まったく、友達を放っておいてどこまで遊びに行ってるのよ・・・・」

くうなは綾音の待つリビングへと足を運んだ。遊びに来てもらったのに肝心のなこがいないと告げるのは申し訳ない為自然とため息が漏れてしまう。

くうな「ごめんなさい。なこったら別の次元に遊びに行っちゃったみたいでいなかったのよ!さすがに別次元だと電話も通じないし、私は次元を超える程の力を持ってないから連れ戻すこともできないし・・・せっかく遊びに来てくれたのに悪かったわね」

綾音「まぁなこちゃんらしいといえばらしいですね!どのみち今日は普通に遊ぶことはできない感じになりそうですけど・・・・・ちょっとこのニュース見てください!大変なことになってるみたいですよ!」

《我々は夢でも見ているのでしょうか!?以前突如東京の上空に出現した謎の飛行物体と同じものが多数出現し・・・・情報によるとこれらは世界中各地に出現したとのことです。しかも通常兵器が効かない強力な兵士はそのままに人類の100倍近い大きさになっており、もはや手のつけようがありません。前と同じくあの女神様がやってくることを祈るしか・・・・いや、世界各地のこの現状ではもう・・・・・みなさん、一刻も早く身を隠せる場所に避難してください!》

ニュースでは現状の報告と非難を呼び掛けていたが、しばらくするとテレビ局自体も破壊されたのかTVには何も映らなくなってしまった。

くうな「噓でしょ!?前にあいつらはなこが退治したはずなのに・・・しかもそれが最初から巨大化した状態でしかも世界中にいるってどういうことなのよ!?」

綾音「でもこれこのままじゃマズイですよね?なこちゃん抜きでどうすればいいのか・・・」

くうな「仕方ない、私がやるわ!私だって巨大化できるんだからあのくらいの相手なら何とかなるわよ!!」

綾音「じゃあ私も一緒に連れて行ってください!私は身体や知識が大人以上だとは言ってもあくまで人間の範疇で、魔法も使えないし自力で巨大化することだってできません。でも私も今までなこちゃんと何度も巨大化したことがあるので慣れているつもりです。巨大化さえできれば・・・・くうなさんならそれができるんですよね?1人より2人で対処した方がより早く事件を解決できると思うんです!お願いします!!」

くうな「まぁ私も魔法は使えるからそれはできるわよ。ただいくら強力な魔法が使えるからって女神基準で言えば底辺レベルだからあんまり期待しないでね。それでも覚悟は良い?」

綾音「はいっ!お願いしますっ!!」

くうな「それじゃあ行くわよ!しっかりつかまっててね!!」

そしてくうなは綾音を連れて空間転移し巨大宇宙人に襲われている東京の街へと向かった。

くうな「酷い・・・これが東京?」

くうなも今までに何度か東京に来たことがあったが今は見る影もなく、あちこちのビルが倒壊し火の手が上がっていた。それがかなりの広範囲で発生しており、今現在もそれが進行している。原因はいう間でもなく巨大な戦闘員が容赦なく街を破壊して回っているからだ。

綾音「早く悪い奴らをやっつけましょう!さぁ早く巨大化をっ!!」

くうな「じゃあ1000倍でいくわよ、それっ!!」

むくむくと巨大化し始める2人。それを見つけた戦闘員は何ごとかと近づいてきた。
よく見ると自分たちの100分の1ほどの身長しかないこの惑星の現地住民が徐々に大きくなり始めたのだ。辺境惑星の巨大化技術など取るに足らないものだろうから放置してもいいと思ったが、もし自分と同じサイズになられては少々厄介な為、早めに踏みつぶしてしまおうと2人にさらに近づいてきた。
しかしそのころには既に2人は戦闘員の身長を超え始めていた。
戦闘員はまさか自分より大きくなるなどと思っていなかったのでビビって逃げようとしたが、加速度的に巨大化するくうなと綾音の足が追いかけるように迫ってきた。
もちろん2人は1歩も動いてないのでただの巨大化現象に過ぎないのだが・・・・

そして地響きを立てて巨大化していたその現象が収まると戦闘員は上を見上げ、そして絶望した。本来自分たちよりかなり小さい筈の現地住民が雲を突き抜ける程に巨大な姿になってこちらを見下ろしていたからだ。

綾音「ふぅ・・・やっぱり巨大化って気持ちがいいわぁ~♪あ、くうなお姉さん服まで用意してもらってありがとうございます!」

くうな「今回はかなりの数を相手にするだろうし少しでも動きやすい服装にしようと思ってね。綾音ちゃんの記憶にある《巨大化した時に動きやすい服装》がそれだったんだけどいいかな?」

今の綾音の格好は家に遊びに来ていた時の普段着ではなく、以前なこと一緒に巨大化した時のものになっていた。なこの女神の衣装の色違いなので布面積が非常に少ないが動きやすいといえば動きやすい格好かもしれない。
また、くうな自身も以前なこと巨大化した時と同じく赤のビキニ姿となっており綾音と並んでも違和感がないような状態になっていた。

綾音「じゃあさっさと終わらせちゃいましょう!!」

綾音は先ほどから足元をウロチョロしていた人形サイズの戦闘員に目を付けると、大きく足を振り下ろして容赦なく踏みつぶした。

ズドォォォォォォン!!!

100倍サイズの戦闘員も1000倍サイズの綾音の前では手も足も出ず、一瞬で踏みつぶされて物言わぬ存在になり果てていた。だが勢いよく振り下ろされた足の衝撃は戦闘員を踏みつぶすだけに留まらず半径数kmの建物を崩壊させ、特に500m以内に残されていた人間はあまりの衝撃に有無を言わさず即死していた。

「貴様、我らの仲間を踏みつぶしただけではなく守るべき同族まで殺しているではないか!!被害が気にならないのか!?」

綾音「敵なのに地球人の心配もしてくれるんですね?戦闘員さん優し~♪」

綾音は少し離れた無事な避難地区にいた人間を指先で数十人一気に摘まみ上げると手のひらにポロポロと落とした。

綾音「ねぇ戦闘員さん、私できるだけそっと『コレ』を摘まんだのに半分くらい死んじゃったんだよ?手のひらに乗せてみても1ミリくらいしかないし、アリよりもちっぽけだし・・・・ほら指先で軽くつついただけで簡単に潰れちゃうんだよ?これじゃあアリよりも弱いよね。こんな小さくて弱っちいのなんて同族とも思えないし、足元なんて気にする必要もないんですよ♪だから・・・」

ズドォォォォォォン!!!
ズガァァァァァン!!!
グシャァァァァァン!!!

綾音「戦闘員さんたちもどこへ逃げたって容赦なくぷちぷちと潰してあげますね♪足元の被害なんて気にしないからあっという間に追い付いちゃいますよ~♪」

通常であれば『守る戦い』というのは人質などを上手く活用すればいくらでも脅して行動を制限させることができるのでいくら巨大化したとはいえ対応の仕方など、どうとでもなると思っていた戦闘員であったが、目の前の綾音はそうではなくただ純粋に破壊を楽しんでいる悪魔にしか見えなかった。そんな相手には人質も脅しも無意味であり、そうなれば純粋に大きさと力の差がものをいうので勝ち目などある訳がない。それを悟った戦闘員たちは雲の子を散らしたようにあちこちに散らばって逃げ惑うのだった。

綾音「まてまて~!全員潰しちゃうからね~♪」

くうな「・・・・私とんでもない子を巨大化させちゃったんじゃないかしら・・・」

くうなは遠くで綾音がしていることを見守っていたが背に腹は代えられない。なこが戻ってきたら踏みつぶされた人間たちと街を元に戻してもらえるように頼めばどうにかなるのだと考えるようにして気持ちを切り替えてくうなも戦闘員たちを踏みつぶし始めた。

バシュン!バシュン!!

くうな「何よアレ!?宇宙船!?」

しばらく戦闘員たちを潰して回ると上空から1000倍サイズのくうなよりも巨大な宇宙船が飛来してきたのだ。相手は今までよりも大きく、そしてビームで攻撃してくるので非常に厄介だ。

くうな「そっちがその気なら私も本気でいくわよ!!!せいやぁっ!!」

くうなは力強く大地を蹴ると上空へ飛びあがり、踵落としを喰らわせ、宇宙船が落下し始めると即座に飛び降り、今度は地上から上空に向かって拳を突き出し宇宙船を見事に破壊した。

くうな「なこのせいで私の存在感薄いけど、こうみえて勉強も武道も全国レベルなんだからね♪まぁさすがに今回は宇宙船相手だし手足を硬質化させて対応したけど・・・」

くうなはその後も常人とは思えぬ技の数々で飛来する宇宙船を撃破していく

綾音「ちょ・・・ビームとか聞いてないですよ~!!」
一方綾音は先ほどまでの威勢はどこへやら、ビームによる砲撃をしてくる宇宙船から逃げ回っていた。

綾音「私大きくなってるけど中身は本当に普通の女の子だからビームとかまともに当たったら死んじゃいます~!!」

逃げ惑う綾音に対して好機とばかりに宇宙船の数はドンドン増えていく。10を超える宇宙船に追い回されて数百km以上走った綾音は疲労で徐々に逃げる速度が落ちていった。このままでは逃げきれなくなるのは時間の問題だった。

綾音「何か・・・何かないの!?」

あたりを見回しても視界に入ってくるのは小さな街や山ばかり、ちっぽけな人間の建物や土くれの塊である山など攻撃にも防御にも使えるわけがない。そもそも今の綾音の大きさで扱える道具など・・・

綾音「そうだ!お兄ちゃん召喚!!」

綾音は手のひらを広げるとちっぽけな兄が手のひらの上に現れた。兄の存在を自由に操れる能力を持っている今の綾音ならこの程度造作もない。

剛志「え!?何これどういう状況!?俺今呼び出されてもどうしようもなくない!?」

綾音「お兄ちゃんとハサミは使いようなのよ!!それ!シールドになりなさい!!」

綾音が念じると兄は綾音でも扱える大きさの盾へと変化した。兄の存在を自由に変えられるということはこういうことも可能にしてしまうらしい。

綾音「それじゃあ反撃ですよ!!」
綾音が再び兄の形状を変えるようにイメージすると巨大な剣になり、宇宙船めがけて振り下ろすと上空の宇宙船であっても剣先が伸びて切り落とすことができた。その後は言うまでもなく全ての宇宙船を切り刻んでガラクタの山へと変えてしまった。

くうな「綾音ちゃんいつの間にそんな武器を・・・それよりこれでだいたい片付いたみたいね」

綾音「まさかお兄ちゃんこんな風に役に立つ日がくるとは思いませんでしたよ」


ズドォォォォォォォォォォォォォォォン!!!

安堵した2人の前に現れたのは巨大な足だった。1000倍のくうなと綾音ですら見上げないといけない存在は今回の襲撃を任せられた司令官だった。

グラン「我こそは大宇宙帝国第三連合艦隊司令官グランである!まさかこのちっぽけな星に我の部下をここまで蹴散らすものがいるとは思いもしなかったぞ!だがここから先は我が直々に相手をしてやろう!!」

くうな「こんなに大きいなんて・・・綾音ちゃんとっておきの巨大化いくわよ!!」

くうなは綾音と共にさらなる巨大化を始め、一気に地球より大きな1億倍サイズとなった。身長1万7000kmのくうな、身長1万9000㎞の綾音。ここまで大きくなれば巨大な敵であろうと片づけるのはたやすい・・・が今のくうなの魔力ではここまでの巨大化を維持するだけの容量が足りないため、とっておきの手段として残していたのだ。

くうな「これ結構魔力消費がきついから3分くらいしか持たないわ!でもここまで巨大化すれば時間なんて・・・」

綾音「あ、それフラグですよ」
グラン「ふはははは!!そちらが巨大化するなら我も巨大化するまでよ!!」

くうなと綾音の前には2人より10倍も巨大な・・・地球の100倍以上巨大な姿になったグランの姿だった。まさか相手も奥の手を持っていたなんて思いもしなかったくうなは焦りを隠せなかった。

くうな「こうなったら一気に行くわよ!!」

くうなはグランの顔めがけて渾身の一撃を叩き込む。だがそれは軽く片手で防がれ・・・

綾音「こっちがガラ空きですよ!!」

綾音は隙のできた胴体・・・心臓めがけてビーム砲に変化させた兄で必殺の一撃を放ち・・・

グラン「ほう?この程度か・・・」

2人が何度攻撃を試みても軽く防がれてしまう。決定的な攻撃ができないまま時間が過ぎていき・・・

くうな「魔力がきれちゃう・・・こんなのって・・・」

奮闘むなしく3分が経過し巨大化を維持できなくなった2人は1000倍サイズへと逆戻りしてしまった。

グラン「それではこちらからいくとするかな。しかしこんなにも小さい星など侵略する価値も感じなくなってしまうなぁ。いっそのこと滅ぼしてしまおうか・・・」
上空を見上げると夜空の向こうで拳を構えるグランの姿があった。相対的にビー玉サイズの地球など一瞬で粉々にされてしまうことは避けられまい。全人類も、そしてくうな達もここまでかと思ったが、最後の瞬間はなかなか訪れなかった。

なこ「ねぇあなた何してるの?」

グラン「やかましい!今いいところなのだ!」

なこ「あなたもしかしてお姉ちゃんいじめたの?ひどいことしたの?」

グラン「さっきから誰だ・・・・」

グランが振り返るとそこにはグランよりさらに1万倍は巨大な見たこともないほど美しい女性がこちらを見下ろしていた。状況が呑み込めないグランであったが敵対する石をもって自分を見ているのだということだけは理解でき全身に冷や汗をかき呼吸が荒くなっていた。

なこ「そう・・・やっぱりお姉ちゃんいじめてたんだね?」

なこは怒りを込めた目でグランを見つめ指を近づけた。

グラン「や、やめ・・・・」

パァン!!

最期の言葉を残す間もなくなこの巨大な指から放たれたデコピンでグランは跡形もなく消し飛んでしまった。

なこ「こんなちっぽけなのにお姉ちゃんをいじめるなんて100億年早いのよ!それにしても私が出かけてる間にこんなのがやってくるなんてね。困ったなぁ・・・そうだ!!」





皇女「なに?グランとその艦隊が消えたじゃと?何者か知らぬが大宇宙帝国に歯向かって無事で済むと思わぬことじゃ・・・ワープゲートを用意せよ!!」

グランが消し飛んで間もなく、その情報は大宇宙帝国を統べる皇女の元へ届いた。彼女のいる母星より巨大な超弩級戦艦はすぐさま地球へ向けてワープを開始し全軍をもって地球を滅ぼしにやってきた・・・はずだった。

皇女「どこじゃここは?肌色の空間・・・こんな場所は宇宙空間にある訳がないのじゃが・・・」

超弩級戦艦艦長「上空より飛来する超超超巨大物体の接近を確認!なんて大きさだ・・・か、回避できませんっ!!皇女様脱出をっ!!!脱出後は巻き込まれないよう巨大化を・・・・」

ワープしたばかりで現在地がよくわからない状況のまま戦艦中に緊急アラートがけたたましく響き渡る。大宇宙帝国の母星は最低身長が1000m以上の超巨人型惑星であり、惑星の規模も太陽より遥かに巨大な大きさだ。さらにこの超弩級戦艦はその母星よりも巨大なサイズを誇る大宇宙帝国のシンボルともいえる艦なのだ。並大抵の攻撃では傷一つつかないし恒星の熱量でも軽傷で済む堅牢かつ最強無敵の存在・・・緊急アラートが鳴ったことなど一度もないしこれからも鳴るはずのないものだった。

皇女「くっ!ありえぬ・・・このようなことなど・・・・」

皇女は部下達に緊急脱出ポッドに詰め込まれ光速を超える速度で脱出を余儀なくされた。程よく艦から離れたところでその上空より飛来する超巨大な球体が目に入った。艦より何百倍も巨大な物体を前にワープ直後の艦が回避できる筈もなく・・・

ドゴォォォォォォォォォォン!!!

超弩級戦艦は一瞬で爆散してしまう姿を皇女は指をくわえて見ていることしかできなかった。いや、この後すぐに衝撃波がここまで届くだろう、その前に皇女は巨大化を開始した。

皇女「不意打ちとは卑怯な!この私が全力をもって排除してくれようぞ!!」

皇女はありったけの力を込めて巨大化を始めた。元々地球人の1000倍のサイズが最低身長である大宇宙帝国の母星。平均身長は3000倍、王族ともなれば5000倍、そして皇女はその歴史上最大クラスの身長190000m・・・実に19㎞。地球人の1万倍もの身長を誇る彼女であったが巨大化により惑星を超え、恒星をも超える巨大化をし最大サイズの100億倍に巨大化を果たすとその身長は190億kmというとんでもない大きさに到達した。地球人基準で考えると100兆倍という途方もないサイズだ。

なこ「あ!やっと見える大きさになったね!」

皇女の耳がちぎれるかというくらいに大きな声が上空より鳴り響いた。嫌な予感がして皇女が上を見上げるとそこには宇宙一美しいと自負する皇女よりも美しく、そして可愛らしい女神のような姿の女の子の顔がありこちらを見下ろしていた。

皇女「き、貴様地球人なのだろう!?地球という星はちっぽけで我々大宇宙帝国から見れば虫のように小さく、今の私の大きさであれば目視すらできぬほどの極小サイズであるはず・・・そんな微生物以下の地球人が何故私よりも巨大になっているのだ!?何者だ!?」

なこ「私は地球人で7歳の女の子だよ♪そして女神でもあるんだ~♪その気になれば巨大化もすごくできちゃうけど、今はちょっと違うかな?ほら後ろを見てごらん」
皇女が振り向くと肌色の谷間の隙間から外の様子が見えた。そこは宇宙空間が広がっているわけでもなく一般的な平民の室内といったところだろうか。だがそうなるこの状況では皇女自身が縮小されてしまったように見える。まさか気づかぬうちにトラップにかかったのだろうか。

なこ「小さくされたって思った?違うよ。あなたたちがワープしている間にあなた達以外の『宇宙全て』を100京倍に巨大化させただけだよ♪」

皇女「・・・・・?」

なこ「理解できないって顔してるね?でもさっき言ったでしょ、私女神なんだって!ちなみに今のあなたの大きさは『この大きさ』の私の1万分の1・・・微生物みたいな大きさだね♪ふふふ・・・宇宙一の皇女様が微生物サイズなんてちっぽけな存在になるなんて可哀そう~!でも私のお姉ちゃんをいじめたあなた達が悪いんだからね!!」

皇女「くそっ!私だけでなく私の部下や民まで滅ぼす必要はなかろう!あの艦にどれほどの民が乗っていたと思っているのだ!」

なこ「艦?私まだ何もしてないよ!あ・・・そういえばさっき少し暑かったから汗かいたような・・・でも本当に少しだけだよ?」

嘘をついているようには見えない。そこで皇女は目の前の女神が自分たちを小さくした以外はまだ何も手を下していないのだと理解した。そして先ほどの艦を襲ったものは汗の1雫・・・いや大きさを考えれば汗が蒸発した際の空気中を漂う気体状になった汗の粒でしかなかったのだろう。これほどまでに大きさに差が開いていればただそこに存在しているだけで大災害を引き起こしてしまうのだ。

皇女「皆の敵の為に一矢報いるだけでも・・・」

皇女はせめて巨大ななこの谷間に傷でもつけてやろうと思ったが、そこで自分の身体が先ほどより小さくなっているのに気が付いた。縮小されているわけではない。ただ単に自分で行った巨大化の効果時間が切れてしまっただけだ。だが今の皇女は相対的になこの1万分の1サイズ。それがさらに巨大化が解けることで100億分の1サイズになってしまうということになる。これでは一矢報いるどころか一生この女神の谷間をさ迷うことに・・・

なこ「あ~あ!見えなくなっちゃった!もっと文句でも行ってやろうと思っていたのにな~!まぁ微生物以下の存在にはもう興味ないや!」

その日宇宙を支配していた大宇宙帝国が忽然と姿を消したことに宇宙中の存在が歓喜した。だがどうしてそうなったのか知るものはどこにもおらず、謎だけが残ったという。

なこ「ねぇお姉ちゃん~!今日はみんな頑張ったし綾音ちゃんも呼んでパーティーでもしようよ~♪」

くうな「しょうがないわね~♪美味しいもの作ってあげるけどちゃんとなこも手伝うのよ?」

なこ「は~い♪パーティー楽しみだな~♪」

地球を救い、宇宙を支配から解放したことなどなこにとっては取るに足らない事でしかなかった。今も皇女が谷間をさ迷い続けていることなどもう既に頭になく、これから開くパーティーのことで頭がいっぱいになっていた。