※ご注意(本編は◆〜〜から始まります)
 本作品は本来小説や活字などと無縁の生活を送っている私が
 このUploderに集う精鋭作家様方から発せられるオーラを
 電波的なモノでキャッチした脳内文章を思いつくまま気の向くままに綴っただけの
 本当に即興モノなのであまり期待をしないことをオススメします。

 続きものとかは考えていないのでたぶん一話完結モノ。


 ちなみに今回はほとんど
 巨大な娘っことのカラミとかはなありません、またかなりほのぼの。
 しかも当方 尻フェチ ゆえに結構お尻が出てくるので嫌いな方はご注意。
 (丸出しとか半出し的なイミじゃなく。)


◆妖精の尻もち

1.

とある朝、そろそろ太陽も南の空にのぼりきるかという頃
街外れの草原の中の、まだところどころに水溜りの残る雨上がりの街道を
1台の質素な箱馬車が街に向けてゆっくりと走っていた。


馬車の手綱をとるキャスケット帽が印象的な青年は
その細い目を気持ちだけ見開き、泥や砂ぼこりで少し汚れた袖口で太陽の光を遮りつつ
真っ白な雲の切れ端がところどころに残る青空を見上げていた。

「今日はいい天気でよかったなぁ・・・。」

彼、空を見上げている青年はポツリとつぶやいた。


「いいわけないでしょ……。
 昨日まで降り続いていた雨のせいで道はぬかるんでるし
 今朝の地震のせいでそこらじゅうでガケ崩れだって起きているじゃない。」

すこし不機嫌な空気を帯びた声が後から聞こえてきた。


空を見上げていた彼は視線をいったん水平線に戻すと
ノロノロと進みつつある馬車の進路をひととおり確認した後
馬車の中の、先ほどの声の主へ顔を向け直した。


そこには女性…というには少しばかり幼い顔立ちの少女が
馬車の窓枠に頬杖をついてふて腐れた表情を浮かべていた。

「おや、お嬢様?発ってからまだ半時も経っていないのに…」

「"もう"半時よ!こんな狭くて薄暗い箱の中に閉じ込められて
 ぐっちゃぐっちゃとドロのはねる音ばっかり……
 えんえんと聞かされる身にもなってみなさいよ!」

お嬢様と呼ばれた少女は
元々赤みがかったほおを更に赤く染めながら風船のように膨らませつつ
髪の色と同じどことなく物憂げなライトブラウンの瞳で青年の帽子を恨めしそうに眺めている。


一呼吸置いた後、青年は正面の街道の先に向き直り
延々と続く舗装はおろか砂利すらしかれていない獣道にも近い泥道を眺め
小さなため息の後、なにか提案するようにこう切り出した。

「…うーん、この悪路ではこれ以上急ぐわけにもいかないし
 とりあえず暇潰しにお話などはいかがです?
 なに、峠を越えて石畳の街道にでるまでの辛抱ですよ。」

「お話……?ふーん、いいわ、聞いてあげる。
 どうせ、こんなノロノロ運転じゃあなたも暇でしょうからね。」

ちょっと皮肉っぽい口調でお嬢様は答える
…が青年はかまわず話を始める。

「これは、街道を旅する人たちの間で有名な話でしてね……」

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2.

「"道"というのはどういう風に出来るのか考えたことはありますか…?」


「もう…そんなの知らないわよ、立て札かなにか立てて
 それか目立つ山とか木とかを目印に歩けば自然と道ができてるんじゃない?」
やる気が無いのでいきなりの質問に投げやりな返事をしてみるお嬢様


「そうそう、占星術などのように星や太陽で方角などを計算することも出来るけれども
 地図も無かった昔は山や木や川や、先に通った人の置いた目印などを頼りに
 人づてに聞いた方法で旅をする人が多かった、らしいですね。」

「多かった"らしい"ってずいぶんと無責任ね……」
少々ご機嫌ナナメなため少しトゲのある返事を返してみるお嬢様


「そんな大昔のことは実際にだれも見たことが無いから仕方ありませんよ。
 そんなこんなで見通しのいい昼間なら、目印を辿って旅をすれば
 多少の危険はあったけれども、何とか目的地にたどり着くことは出来たんだ、けれども。」

「けれども?」
語尾になんとなく食いついてみるお嬢様


「当時、この地方にはイタズラ好きの妖精がいたらしくて
 その目印になるものを動かしたりして旅人が困る様子を見ていたらしいのですよ。」

「なによ……、そのどこかで聞いたようなお話は
 看板を書き換えたりする妖精の話なら聞いた事があるわよ?」
気がつくとわりと話に乗ってきているお嬢様


「でもですね…、この地方に伝わる妖精はたちが悪いことに
 山を動かしたり、木を引っこ抜いたりと随分と派手に暴れていたという話ですよ。」

「山を……フ…?何言ってるの?それってどれだけ怪力な妖精なのよ。」
突拍子も無いバカ話にうっかり噴き出しそうになるお嬢様


「ええ、怪力なのはもとより巨人に近い大きさって話でして……
 何気なく座っていたら気づかないうちにお尻で川をせき止めてしまって
 この辺りの川の流れが変わってしまったとかなんとかいうお話もあるみたいですね。」

「やだーぁ、なにそれー。」
不意をつくようなしょうも無い話で、もう爆笑一歩手前のお嬢様


「そんなこんなで旅人どころか近くに住む人たちに迷惑がかかるからと
 どこぞの国から派遣された勇者達に退治されることになったそうで……。」

「え?ということはそれで退治されて終わりなの?」
急に尻、ではなくシリアスな話になったのでちょっと真面目に戻るお嬢様


「いいえ、体が大きくて攻撃が全然効かない上に逃げ足も速かったようで
 挑んだ人達は散々彷徨わされた挙句に皆逃げ帰って行ったんだそうです。」

「へぇ、ってことはまだその妖精ってのはどこかに潜んでいて旅人を迷わせるから
 旅をするときは気をつけろってオチかしら?」
いつの間にか話にのめりこんでいて、オチ当てに勤しんでみるお嬢様


「いえですね……、それから旅人たちはもう諦めて船や別のルートで
 その妖精のいる辺りを徹底的に迂回するようになってしまいましてね……
 数年その状況が続いた結果、からかう旅人がいなくなった妖精がいきなり人里の近くに現れて
 自分から謝って、旅人達に今までどおりの道を通ってもらう代わりに
 自分はイタズラをやめて旅人の安全を守るという約束をしたんだそうで。」

「なんて寂しがりやな妖精なのよ……
 私だったら退治されかけた仕返しに街の1つや2つは踏み潰してるわ……」
ちょっと読めない展開に困惑しつつ話に夢中になってきたお嬢様


「それで、今は旅人の安全を守る妖精……ではなくて
 守り神みたいな存在として語られているんですよ。」

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3.

そうこうしている間に馬車は草原の泥道を抜け
左右を山に囲まれた峠道に差し掛かってきていた。


馬車の車輪が小石に乗り上げるたびに揺れる車内で
お嬢様はさっきの話の最中に浮んだ疑問をふと思い出した。

「でも、そんなに大きいのになんで語られるだけで実際に見たという人がいないのかしら?
 山ひとつ動かせるくらいの大きさならどこか遠くを見ていれば
 そのうち山の向こうからひょっこり出てきてもおかしくないのに……。」


「大きいと言っても妖精ですからね、イタズラする時などの身の隠し方は心得ているんでしょう。
 妖精そのものは心の綺麗な人にしか見えないとかいう噂もありますし……。
 でもその代わり、その妖精の仕業だと言われている現象なら見たりすることも出来ますよ。
 たとえばこんな風に……」

と、青年が話している最中に突如!


ドッゴォォッン!!!


…と近くで落石でも起こったような大質量のものが落下する音が辺りに轟き
地響きと共に馬車は大きく揺れ、中で座っていたお嬢様はお尻を1フィートほど突き上げられてしまった。

「これですよ、これ。」

青年はうろたえる馬を慣れた手つきでなだめながら
少し嬉しそうにこう言った。

「何よ…何が起こったのよ……」

ついさっき木製の板に薄手皮一枚をかぶせただけの
簡素でやや硬い椅子にしこたま打ち付けた腰をさすりながら
お嬢様は馬車の左右に配置した窓から外を必死で覗いていた


「落石や土砂崩れが起こったわけでもなく、旅人の近くで突然の轟音がする。
 しかも周りに何か獣がいるわけでもなく、馬が驚く程度で実際に何か被害が出るわけでもない。
 …これがこの地方でだけ起こる『妖精の尻もち』ですよ。」

「し、尻もちぃ……?」

「寂しがりやな妖精がコッソリ旅人についていったはいいけれど
 もともとうっかり屋な妖精が足を滑らせて転んでしまい
 ついた尻もちがこの轟音の原因という……」

目を輝かせ子供のようにはしゃぐ青年と
腰をさすりながら少し青ざめるお嬢様


「あぁ…はいはい……
 わかったから……もう行って……。」


それから馬車の点検を終え お嬢様の腰の痛みがおさまり
次に走り出した頃には太陽はもう半分くらい西の空に傾いていた。

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4.

石畳の街道を軽快に駆け抜けた馬車は
空の色が夕日に変わる前に無事、目的地の街にたどり着いた。

「お嬢様、着きましたよ。」

青年は馬車を街の入口に止め、車内に呼びかけた。

「大丈夫、寝てなんかいないわ。
 それにしてもやたらと時間かけられるわ、痛い思いをするわで散々だったわ……。」

「何を言っているんですか?まだ船旅が残っているでしょう?」

「はいはい、お父様の滞在先はここから連絡船に乗った先でしたわね…。」

旅に疲れた体を起こしお嬢様は馬車から降りた
腰を気遣って歩く姿を見ると少しふけたように見えるがそこは置いておこう。

「次のお付きの方がお見えしてますので私はこれで…
 私はしばらくここに滞在しておりますので、帰りの際はまたお申し付けください。」

青年は帽子を脱ぎ、お嬢様と付きの2人に礼をした。


「お嬢様……、お時間がありませんのでお急ぎください。」

次の付き人に急かされつつお嬢様は青年に無言で一礼をした後、船着場へと歩き始めた。







その数10秒後、少しばかり歩いてからの事

お嬢様はなんとなく背後に誰かが立っているような気がして振り向いた。
そこにはさっきまで乗ってきた馬車と馬と……


何も無いはずの東の空き地の、その上空に向かって礼をしている青年がいた。
まるでそこに誰かがいるかのように