第3章.「苦悩」

それから3箇月半が瞬く間に過ぎ、照和5年(皇紀2589年)4月15日夕刻、私はオットウ、オッカア、そしてシンサクと一緒に晩御飯を食べていました。本来、シンサクは、慰安夫ですから、土間で食べるべきなのですが、オットウとオッカアは優しいのです。

「助役様の、ぼっちゃん、第一期の検閲で優秀だと言う事で、伍長勤務上等兵に昇進されたという事だ。大したモンダのう。」
「本当ですねえ。これで村の出身で伍長勤務上等兵以上に昇進したのは、4人目ですわね。」
「そうだな。ナンブ様のお嬢様は、小学校2年生で既に第一甲種合格が確実だろう。これが5人目だろうな。」
「そして、ウチのサクラが6人目ですわ。あ、サクラ、お代わりね。」

オッカアが、御櫃から丼に大盛りの御飯をよそって呉れました。丼飯3杯目です。

「サクラ、身長は何cmになった?」
「うん、オットウ。今日学校で測ったら164cmだよ。」
「一箇月1cm以上伸びているな。」
「サクラ、お代わりね。」

オッカアが、御櫃から丼に大盛りの御飯をよそって呉れました。丼飯4杯目です。

「サクラ、どんどん食べろ。お前がナンブ様のお嬢様のお友達だから、ウチも良い田を割り当てられた。 ああ、シンサク君、君も沢山食べて良いのだぞ。」
「そうよ、シンサク君、もっと食べなさい。」

シンサクの目から涙が零れ落ちました。

「申し訳ありません。僕は・・・・。卑しい慰安夫・・・・」

シンサクは去勢されているので御飯を沢山食べても身長はもう伸びません。無駄なようですが、オットウとオッカアはシンサクにも御飯を沢山食べさせようとするのです。その時、ナンブ家よりお迎えの人力車がやって来て、人力車夫がサト先生の手紙をオットウに手渡しました。

「サト先生様が、ナンブ家で優秀な子の補習をして下さるそうだ。サクラ、ナンブ家に行きなさい。」
「うん、オットウ。」
「サト先生もご熱心ね。有り難いことだわ。」

私とシンサクは人力車に乗り込みました。サクコは、私とレズごっこがしたい時には、サト先生とグルになって私を呼び寄せるのです。ナンブ家に着いて、女中の出迎えでシンサクと一緒に玄関に上がります。 普通、小作人は勿論、差配人などでも裏口からしか入れて貰えないので、大変な厚遇だったりします。

「わあ、サクラ! 来てくれたのね!」
「サクコ、こんばんは!」

サクコが廊下を走って来て私に飛びつきました。幾ら、レズ相手に餓えていてもガッツキ過ぎだと思うのです。

「あれ、廊下に小人が一杯いるのね。放し飼いにしているの?」

綺麗な埃一つ落ちていない磨き上げられた廊下に身長2ミリ以下の小人が一杯います。

「そうよ。最近、父上が町で買ってきたのよ。1万匹程の御掃除小人を放し飼いにしているの。」

沢山小人がいるので踏み潰さないよう爪先立ちして慎重に歩かなければなりません。

「サクラ、何、おっかなびっくり歩いているの? これ、愛玩用じゃないんだから、踏み潰して良いのよ。」

サクラが、小人の群れ50匹程を踏み潰しました。

「小人の体液が床に付着すると床に艶が出るの。」
「へえ、生きている時は御掃除して、潰れても艶を出す、一石二鳥ね。」

長い廊下を、小人を踏み潰しつつ歩いて、渡り廊下を渡りサクコの部屋に突きました。「サクコの部屋」と言っても母屋から独立した建物で、そこだけでも立派な御屋敷です。私とサクコは、サクコ専用の洋風応接間に入りました。いつもは舶来のベット(自由惑星同盟のシモンズというブランドだそうです。)のある寝室に案内されるのに、いつもと違います。私とサクコは向き合ってソファーに座りました。 シンサクが私の股間に入り咥え、サクコの股間では女の慰安夫が咥えます。そして、サクコと私は「戦争ゲーム」を始めました。

「私ね! 昨日、サトナカ・タクヤ様に一日中、抱かれたのよ!初めて抱かれたのよ!」

「戦争ゲーム盤」を眺めながら、サクコが戦争ゲームと関係ない事を話し始めました。サトナカとは、助役さんの苗字です。ユウキ・タクヤ先輩は入営と同時に上等兵になり、嫡出児と認められ、助役さんの戸籍に入ったのです。昨日は、新兵さんが始めて単独で外出できる日曜日とかで、サクコはユウキ・タクヤ先輩に会う為に町に出かけたのだそうです。

「ちょっと待ってね。この卑怯な兵隊、磨り潰してやるわ。突撃よ!」

私は味方の小人兵を人差し指で三匹程潰してやりました。「戦争ゲーム盤」は、縦横1m、小人にとっては、縦横1km」の巨大な空間です。ここに、紅白500匹ずつの小人を放して戦わすのです。私の兵隊は白組で、全員、白い鉢巻をしています。私が卑怯者3匹を潰すと残りの者は慌てて突撃します。

「あれ、サクコ、去年の暮れに先輩に処女は捧げているでしょう?」

話しながら、私の股間の逸物を咥えているシンサクの手を握ってやりました。戦争の方は最初に脅しつけておけば、小人に任せておいても、問題ないでしょう。シンサクを「お仕置き」するのは、シンサクのしゃぶり方が下手だからです。 シンサクは電撃首輪を装着していますが、電撃スイッチを押すとオットウとオッカアが悲しそうな顔をするので、電撃スイッチは封印しています。 その代わりシンサクをお仕置きする時は、手を軽く握ってやる事にしています。私が軽く握るだけでシンサクは脂汗を流して痛がります。 但し声を出したら徹底的にお仕置きして躾たので声は出しません。

「あの時は、サトナカ・タクヤ様は身長160cm足らずだったのよ。私の方が抱いたようなもの。でも、昨日は身長218cm、見上げるように大きく逞しくなって・・・もう直ぐ身長240cmになるのよ・・・私ね、一日中、サトナカ・タクヤ様に可愛がって貰ったの!」

サクコは、サトナカ・タクヤ様の逞しい腕に抱かれるとどれほど濡れるか、サトナカ・タクヤ様の逸物がいかに素晴らしいか、等々を延々と話しました。兵営の近くのホテルの部屋で外出時間丸々抱き合っていたのだそうです。親友の幸福は祝福すべきですが・・・面白くありません。サクコは惚気話の相手に私を呼んだようです。

「で、サクコは、兵役を終えて14歳になったら、サトナカ家に嫁に行くのね?」

サクコの表情が暗くなりました。私はと言うと、再度、シンサクの手を摘んでやりました。今日のシンサクの咥え方は下手でどうしようもありません。

「そうだね、タクヤ様は一人っ子だしね。助役様は正妻をお持ちでないから、妾腹でもタクヤ様は、サトナカ家の唯一の跡取りよ。」

サトナカ家も地主で富裕ですが、財産の規模ではナンブ家とは比較になりません。が、サクコの表情の暗さは、そんな事が理由ではないでしょう。その時、サクコの股間で咥えていた慰安夫が、立ち上がりました。身長100cmの胴長短足ですが、結構、美人です。そして、棚の上の長さ20cm程の船の模型を取り上げると、踏み台を使って金魚の水槽に降ろしました。

「あの船、小人が沢山乗っているのよ。」
「愛玩用? ああ、そうか! 忠義な小人に船遊びの御褒美ね。」
「ちがうわ。金魚の餌用の小人よ。」
「え? 船に乗っていれば安全でしょう?」
「小人もそう思っているわ。でも、そのうち分かるわ。」

船を降ろした慰安夫が、サクコの股間に戻りました。

「この子、ユウコって云うのよ。 父上付きの慰安夫だけれど、母上に取り上げられて私に仕えているのよ。なかなか可愛いいでしょう。」

私は、コックリと頷きました。確かに美人だと思います。小学校卒業後の徴兵検査で身長100cm以上120cm未満ですと「現役不適」と言う事で丙種合格となります。入営後は二等兵にして貰えず、二等慰安夫にされてしまうのです。 上等兵か伍長勤務上等兵になると、軍から専属の慰安夫が与えられます。通常、男性には女の慰安夫が、女性には男の慰安夫が与えられるのが普通です。専属慰安夫は、上等慰安夫の階級が与えられます。専属慰安夫になれなかった者は、一等兵用の共用慰安夫になり一等慰安夫の階級になります。

「この子、妾腹だけれど、地主の令嬢だったの・・・。」

慰安夫になると戸籍から外され、親族との接触も禁止されます。軍の命令で仕える主人が決められるのです。私は、サクコの表情が暗い理由が分かりました。私に仕えているシンサクも、貧乏人の出には見えません。なんとなく上品なのです。

「ケンイチちゃん、具合どうかな?」
「明日は学校に行くと言っていたわ。でもね・・・身長伸びないわ。 入学した時に102cmだったのだけれど・・・1年3箇月たって103cmよ。これでは・・・。」

徴兵検査まで後、4年と8箇月です。このままでは、身長120cmに達しそうにありません。

「サクコの家はお金持ちだし・・・ヤミで聖液を買えば・・・。」

士族様が排泄なさる精液は、聖液と称される高貴薬です。病気になった際に高いお金を出せれば、軍の病院で処方して貰えます。 この高貴薬を健康な子供が服用すると背が伸びるのですが、違法です。

「戦況は不利ね・・・今日も紅軍・・駄目かな・・・。」

サクコの紅軍は完全に私の白軍に負けています。これはサクコが悪いのです。私は卑怯な味方の兵隊はドンドン押し潰しますが、サクコは、そうしないのです。小人の兵隊に舐められているのでしょう。

「それはもうやっている。父上はケンイチ兄上を溺愛なさっているからな。母上だって、内心は兎も角、表面は協力的なんだよ。でもね、兄上には多分、薬は効かない・・・。 兄上は、精液が1グラムも出ない・・・それも週に一回もないんだ・・・サクラはどう?」
「うん、一日20回は、シンサクに飲ませていると思うよ。一回当たり10グラムは出ているから一日牛乳瓶一本分ね。」
「そうなんだ。兄上は男性として健康じゃない。背が伸びるのは絶望的だ・・・。話は変わるけれど、金魚の水槽、見てご覧なさい。」

見ると、船が沈みかかっています。

「この船、「麩」で出来ているのよ。水に漬けると溶けるの。で、小人は金魚の餌になるのよ。」

金魚は体長3cm~6cm位でしょう。小人の10数倍~30数倍です。抵抗しようもないでしょう。

「話は戻るけれど・・・兄上が首輪を付けられて、沢山の女の逸物を咥えさせられるなんて・・・余りに気の毒で・・・。で、サクコにお願いがあるのだけれど・・・・。」
「サクコ、そのお願いは聞けないわ。」

そう言いながら、私はシンサクに腹を立てていました。舌の使い方が下手で気持ちよくありません。 私はごく軽く、シンサクの頭を私の股間に押し付けました。ゴク軽く、とは言っても非力なシンサクは身動きできないでしょう。

「いえ、聞いて貰うわ。サクラは、父上と母上の養女になってナンブ家を継いで。誰を夫にしようとサクラの勝手よ。 但しサクラは、ケンイチ兄上を専属慰安夫に・・・・。」
「サクコ、そんなの無理よ。親友の兄上に咥えさせるなんて! ぎゃ、シンサク、汚い!」

シンサクが、咽て私の股間に嘔吐しています。汚物が私の股間を汚しているのです。私は激怒しました。私は、シンサクの首を握ると持ち上げ、立ち上がりました。その拍子に「戦争盤」の載っているテーブルが引っくり返りました。

「シンサク、お前、何・・・。」

私は、驚愕しました。首を握られ口と肛門から汚物を垂れ流して気絶している人はシンサクではありません。ケンイチちゃんです!

「わ! ケンイチちゃん! ゴメンナサイ!」

私の絶叫を聞いてナンブ家の女中達が部屋に駆け込んで来、ケンイチちゃんを介抱しています。余りの事に私は気絶してしまいました。

気が付くと私は、サクコの巨大な舶来のベット(自由惑星同盟のシモンズというブランドだそうです。)に寝ていました。身体から高級な舶来の石鹸の匂いがします。寝ている間に身体を洗って呉れたようです。

「サクラ、ご免なさい。私とケンイチ兄上が、シンサクに頼み込んで入れ替わって貰ったのよ。 全部、私が悪い。」
「サクコ、私は親友の兄上を虐待して・・・首を握って窒息させて・・・。」
「大丈夫、兄上は軽傷だよ。もう気が付いている。起きてサクラに謝りたいと言っていたけれど・・・私が代わりに謝りに来た。ゴメン、サクラ、私が主犯なんだ。」

サクコは、床に土下座しています。サクコの土下座を見るのは二回目です。見事にサクコに「既成事実」を作られてしまいました。 その時、村の消防団倉庫の方から半鐘の音が聞こえてきました。火事でしょうか? 更に、在郷軍人会事務所のサイレンまで鳴り響いています。

「大変だ~!」
「大変だ~!」

山火事が村に迫った時でも此れほどの大騒ぎではありません。

「サクコ、大変な事のようよ。土下座どころの騒ぎでは無いようよ!」

「大変だ~! サトナカ様のぼっちゃまが・・・!」

外の叫び声を聞くと、サクコは飛び立ちました。そして庭に飛び出し一目散に駆け出します。目的地は・・・。助役さんの屋敷に違いありません。私もサクコを追います。

「あの、サトナカ・タクヤ様に何があったのですか?」
「あ、サクコさん! 気を確かに持つのよ!」
「先生! 何があったのですか!」

助役さんの屋敷から飛び出してきたサト先生にサクコが詰問します。

「サクコさん、サトナカ・タクヤ君は・・・・心臓麻痺で・・・。」

次の日の夕刻、サクコと私は、サトナカ家で行われた通夜に参列していました。サトナカ・タクヤ先輩は、身長160cmから身長200cm、更に身長240cmへの急成長に心臓が耐え切れず死んでしまったのです。

「私が悪い・・・私がタクヤ様を相撲大会・・・三位にしたばかりに・・・・もし、タダの第二甲種合格なら、タクヤ先輩は死ななかった・・・・私がタクヤ様を・・・殺した・・・。」

横でサクコが泣きながら呟いています。正直言って慰めようがありません。私も共犯です。その隣でサト先生も泣いています。その時、通夜の弔問客がどよめきました。

「士族様が!?」
「・・・・士族様が二人も・・・・!?」
「この村の葬儀に士族様が・・・・!?」

横でサト先生が立ち上がりました。どよめきの方にサト先生が走ります。私も続きます。サトナカ家の屋敷の門にある受付に、身長400センチメートルもある士族様がやって来たのです。一人は真田美津子校長先生です。もう一人は、男の士族様で、軍曹の階級章を付けています。 軍曹と言えば、真田美津子校長先生と同じ階級です。凄く偉い軍人様ですが、何故か顔が腫れ上がっています。 屋敷から助役様が駆けてきました。タクヤ先輩の父上です。

「サトナカ・タクヤ君の父上、申し訳ない。この度の御子息の不幸の責任は、私にある。 私が御子息を上等兵心得にしなければ・・・御子息は・・・死ななかったと思う。」

真田美津子校長先生が、助役様に深々と頭を下げました。 

「あの・・あの・・・真田班長殿が平民に頭を下げている・・・。」

サト先生が私の横で呟きました。

「それから、この馬鹿、御子息殿の上官の内務班長だが、こいつがしっかり注意していれば・・・・ご子息は助かったかもしれない・・・。」

真田美津子校長先生が、腰の軍刀の鞘で隣の軍曹殿の顔を殴りました。顔から鼻血が噴出します。

「う・・・あれは班長殿の婚約者の武田軍曹殿・・・。婚約者を血塗れに・・・。」

サト先生が私の横で呟きました。

「サトナカ・タクヤ伍長勤務上等兵の父上、自分はサトナカ・タクヤ伍長勤務上等兵の上官で内務班長の武田徹也軍曹であります。この度の・・・・。」

武田徹也軍曹も助役様に深々と頭を下げました。 顔面から血を出したままです。サト先生の呟きを解釈すると、この軍曹は婚約者の様です。ですが・・・怖い婚約者もいたものです。

「真田校長先生様、武田班長様、頭をお上げください。ウチの息子が死んだのはお二人の責任ではございません。全て、この愚かな父の責任でございます・・・・。」

助役様が地面に座り込んで話し始めました。その内容は・・・。

「・・・・校長先生様、申し訳ございません! 先生様のおっしゃるとおり私奴は、軍から村に支給される聖水を横領し、それでヤミで聖液を購入し、息子に・・・タクヤに与えていたのです。 本来、あの子はとても甲種合格するような体質ではなかったのです。精々、第一乙種合格が息子には合っていたのです。 それを父の私が無理やり・・・。全てこの愚かな父の責任です・・・。最初、息子はそのようにズルをして、甲種合格を目指すのを嫌がっていました。ところが、あるときを境に自分から進んで聖液を飲むようになった・・・。」

気がつくと横で、サクコが立っていました。

「わ・・・タクヤ様・・・タクヤ様が死んだのは私のせい・・・おろかなサクコが、聖液を飲むのを・・・。」

サクコは口から泡を吹いて倒れました。