独立行政法人国立矮化病センター
第2章「優良さん」
第1項「優良さんの起床」

平成123年(旧西暦2111年)12月15日(火)早朝、私、小野田優良(おのだ・ゆら、主婦、29歳)は、東京府湾岸区豊洲にあるマンション「女神マンション豊洲」の自宅で目を覚ましました。 まだ眠いのに、五月蝿い歌声で起こされてしまったのです。

「目覚まし時計の分際で五月蝿いわよ!」

私は、頭にきました。目を瞑ったまま目覚まし時計に、放射線+熱風の吐息を吹きかけます。

「ああ、静かになった。もう一回、寝よう。」

私の股間の膣に淡い快感を覚えます。夜を徹して、ホストロイド3号がピストン運動で奉仕してくれていたのでしょう。

「あれ、なんか呻き声がする?」

変です。かすかに「苦しい」とか「助けて」とか声がします。幾らなんでも壊れた目覚まし時計は呻かないでしょう。私は目を開けました。

「拙いわ! そういえば、昨日、真さん(おのだ・まこと、会社員、29歳)が少年合唱団を買って呉れたんだったわ! どうしましょう!」

身長10cm、丁度、私の身長4mの40分の一の小人が数百人、血塗れになって倒れています。全身が火傷し、嘔吐している者もいるようです。昨日、夫の真さんが、寝坊な私の為に買ってくれた新オーストリア共和国の去勢された少年(カストラート)100人で構成された少年合唱団です。私は目覚まし時計を壊す癖があるので、「これなら壊して寝坊する心配が無いね!」と、買って呉れたのです。日本人の矮化病患者は、私達、健常者が聖水や聖液を与えて治療に務めたので、ごく軽症、身長100cmまでしか縮まりませんでしたが、外国人は治療の手が回らなかったので身長10cmまで縮んでしまいました。

「メイドロイド101号(2曹)、これ拙いわね!」
「はい、奥様。 同じ形式の合唱団、既に高島屋外商部に注文済でございます。旦那様(真さん)が起床なさる前に配達されるでしょう。奥様が旦那様に叱責される心配はございません。」
「違うわ!この小人達のことよ!」
「それも御心配ございません。全員、30グレイ以上の放射線を浴びておりますので、確実に死亡します。奥様の秘密が漏れる心配はござい・・・。」
「メイドロイド101、そんな事を言っているのじゃないわ! 治療しないと!」
「奥様、お言葉を返すようですが、7グレイ以下でございましたら、聖水や聖液を与える等、治療すれば何パーセントかは助かります。しかしながら、30グレイではたとえ奥様が全治全能の神であろうと治癒は無理と言うものでございます。奥様、小学校1年生の理科の実験で実習なさったと思いますが、いかがでございましょう?」

小学校に入学して直ぐ、理科の授業で、身長100cmの矮化病患者に放射線を浴びせてどうなるかの実験がありました。 実験の対象は同年輩の可愛らしい男の子でした。私は余りに可哀想で、途中で授業をエスケープし、最後まで見ていません。

「なんで、お前がそんな事を知っているの?」
「はい、奥様。私の幼馴染、初恋の人は、6歳で親が破産し、商品取引所で競売され、健常者様の小学校の実験動物に売られました。その小学校は奥様の御出身校・・・。」

私は頭にきました。このメイドロイド101号、表情も変えずに言う事が酷すぎです。

「分かりました。では、この子達に慈悲を与えます。」

私は再度、熱風と放射線を浴びせました。一瞬で骨まで灰にし即死させました。苦しみは一瞬以下であったと思います。

「この子達の名前を小野田神社に祀りなさい。そして、小野田寺に慰霊碑を建て灰を収めなさい。」
「奥様、有難うございます。」

メイドロイド101号の目から涙が流れます。機械の目のくせに器用な物です。

「何時?」
「はい、奥様。5時13分でございます。」

メイドロイド101号(2曹)が素早く返事をしました。横を見ると、夫の真さん(おのだ・まこと、会社員、29歳)の寝顔が見えました。まだ夜明けには時間があり暗いのですが、私は夜目が利くので赤外線に頼らずとも、真さんの身長4m、体重1トンの巨体が見えます。真さんの下半身の方では、メイドロイド005号(士長)が腰を上下に動かしています。こちらも、夜を徹しての御奉仕でしょう。

「起きる。奉仕を止めよ。」

この騒ぎの中でも、股間で腰を動かしていたホストロイド003号(士長)がベットを降りて平伏したようです。真さんは、昼間の御仕事と、夜の「お勤め」でお疲れなので、私は真さんを起こさないように静かに起き上がり(今まで散々、騒いでいますが)ベットの横に立ち周囲を見渡しました。この「女神マンション豊洲」は、直径1km、最高所高さ300mの巨大なドームです。中央部の直径300mのエレベーターホール等共用部分の外側を8分割した占有面積8万9339平米が我が家です。なお、敷地内にプールはありませんが、マンションの目の前が東京湾で、マンションの敷地内にプライベートビーチがあるので泳ぐ場所に不自由しません。

「何ミリリットルか?」
「はい、奥様。私の体内に下賜して下さった聖愛液は約329ミリリットルでございます。」

身長320cmと私の身長の8割の美少年、ホストロイド003号が、平伏したまま素早く返事をしました。私達、健常者の女性の愛液は「聖愛液」とも称され、矮化病患者の治療に用いられます。私が噴出させた愛液の量は、我が家の家計に直結していので、専業主婦としては常に気に留めておかねばなりません。人間の殿方の逸物は、精液を射精しますが、ホストロイドの逸物は、逆に奉仕する女主人(私)の愛液を吸引し体内に保管するのです。そして、身長4mで私にソックリな医療用アンドロイドの体内に移され、身長1mしかない矮化病患者に経口投与されます。

「咥えよ。」
「はい、奥様。」

私は股間の逸物を突出させました。尿意を覚えたのです。言うまでもないことですが、私達、健常者女性は、雌雄両性具有です。私はホストロイド003号の口に小水を注ぎ込みました。

「何ミリリットルか?」
「はい、奥様。私の体内に下賜して下さった聖水は約2132ミリリットルでございます。」

ホストロイド003号が、私の逸物から口を離し、平伏したまま素早く返事をしました。私達、健常者の女性の小水は「聖水」とも称され、矮化病患者に必須の高貴薬で高く売れるのです。私が排泄した小水の量は、我が家の家計に直結していので、専業主婦としては常に気に留めておかねばなりません。ホストロイドが飲んだ小水は体内に保管され、1000倍に希釈されて瓶詰めされてラベルが付けられて特級聖水「おのだ・ゆら」として売られるのです。

「風呂に入る。」
「はい、奥様。良い湯加減でございます。」

メイドロイド101号が素早く答えました。ベットサイドの5m×2mのバスは源泉掛け流しです。天然温泉ではありませんが、マンションの電気を賄う3基の沸騰水型原子炉(出力は110万KWです。)の二次冷却水が源泉なので、適度の放射線があり健康にも良いのです。私は、風呂にユックリ入りました。

「ああ、気持ちよい!」

バスの横に身長10cmの小人が百人並びました。背にアクアラングを背負い、手にはモップの様な棒を持っています。新オーストラリア共和国出身の垢すり小人です。これも真さんのプレゼントです。彼らが、バスに飛び込みました。そして潜水し私の身体の担当部署に取り付きます。その時、私の股間の逸物からオシッコが噴出します。先程の出し残しですが、源泉掛け流しなので身体が汚れる心配はありません。そして、風呂の排水は地下の矮化病患者の居住区に流れ、矮化病患者の上水になります。矮化病患者は「生水」を飲むと病気が悪化するので、私達、健常者の垢、汗、小水、精液、愛液、大便の滓、等々が混入した「浄水」しか飲めないのです。特に私達の「爪の垢」を煎じた飲料は「頭が良くなる」と好評です。

「あ、回転している!」

私の逸物を担当している小人が逸物から噴出するジェット噴流に巻き込まれクルクル回っています。滑稽です。そして、やっと暫くして小人に股間を掃除させて綺麗にし、逸物を引っ込めると風呂から揚がりました。

「拭き取りなさい。」
「はい、奥様。」
「はい、奥様。」

身長4mの私の身体を、身長320cmのメイドロイド101号とホストロイド003号がバスタオルで拭き取って呉れました。私達、健常者はバスタオルでもハンカチでも見に触れた物は全て使い捨てにしますので、このバスタオルは、メイドロイド101号とホストロイド003号の役得になります。彼らはバスタオルを細かく切って矮化病患者、特に男性に高価に売るようです。「優良様のお肌が触れた布」ということで格好のオナペットになるのだそうです。私は早足で居間に向いました。

「皆さん、おはよう。」
「奥様、おはようございます。」
「奥様、おはようございます。」

私の前に身長320cmのメイドロイドとホストロイドが合わせて40体ほど平伏していました。彼らのリーダー、メイドロイド101号が顔を上げ口を開きました。

「奥様、新人がおります。お声とお情けを賜りますようお願い申し上げます。」

見ると、桶に階級章も番号札も付けていないメイドロイドが平伏しています。

「顔を上げよ。」

上げた顔を見ると、小奇麗な子です。メイドロイド101号に匹敵するかもしれません。何処かで見た顔でもあります。メイドロイドやホストロイドの身体は脳を除き量産品の規格品ですが、顔だけは人間だった頃の顔を忠実に写しているのです。

「直答を許す。お前、結構、綺麗ね。え~と、何処でお前と会ったか?」
「一昨日、奥様と一条様が試合をなさった際に副審を務めさせて戴き、御褒美を頂戴致しました。」

思い出しました。渡辺恵という子です。その審判振りが余りに適切で的確であったので唾を吐いて飲ませてやりました。又、メイドロイドになる気はないか聞いてみました。矮化病患者といえども(名目上は)人権がありますので、脳髄を勝手に摘出しメイドロイドの身体に移植する事は出来ません。一応、本人の承諾がいるのです。

「ああ、そうね。渡辺恵、お前は今日からメイドロイド106号です。え~と、メイドロイド101号はどう思う?」

メイドロイド101号は聡明で勤勉ですが、ちょっと保守的です。新人を一足飛びに100番台の下士官になどしたら、「前例に無い」などとツベコベ文句を言うかもしれません。主人に口答えするメイドロイドには自決を命じるのが筋ですが、メイドロイド101号も惜しい人材です。

「はい、奥様。この者、106号でございますが、」

驚きました。いっぺんに下士官にする事を認めています。

「・・・まだ社会経験も浅く人格識見とも不十分でございます。しかしながら、根が聡明かつ勤勉、何よりも誠実でございますので、或いは将来、ひとかどの者になると愚考致します。少なくとも、この私、愚かな101号よりは知恵があり、奥様のお役に立つものと確信致します。」

驚きました。このメイドロイド101号は、トンでもない自信家で誰でも彼でも馬鹿扱いします。それが、ここまで褒めるとは驚きです。

「そう、メイドロイド106号、お前を二曹に任じます。それから常に直答を許します。」

通常、メイドロイドやホストロイドは、こちらから問わない限り、私達に声を掛ける無礼を許していません。その例外は、今までメイドロイド101号にのみ与えていたのです。

「ありがとうございます。」

皆、顔を伏せていますが動揺しています。メイドロイド106号の声も震えています。何か拙い事を言ったか・・・いえ、言いました。 これはメイドロイドに解雇はないので、メイドロイド101号への自決命令と勘違いされかねません。 頭が良いのに意外な程の慌て者が馬鹿な事を・・・。

「メイドロイド101号、自決は許しません。」
「ありがとうございません。奥様。もとより私、メイドロイド101号の罪は山より重く、名誉の自決をお許し戴けるとは考えておりません。電源供給を差し止めての餓死なり、嬲り殺しだの、何なりと御命じ下さい。いかなる罪でも御恨み致しません。

やっぱり勘違いしています。確かにこいつは、何百回私に逆らったか数しれませんので法に照らせば何百回破壊刑になっても良いくらいですが・・・。

「では、メイドロイド101号に罰を与えます。メイドロイド101号には1曹への昇進を命じます。そして、メイドロイド106号をよく教育しなさい。」
「有り難き幸せ。今後も一心不乱にご奉公致します。」
「では、106号の洗礼を行います。」

私は逸物を突出させ、放尿しました。桶に座ったメイドロイド106号がびしょ濡れになりました。これで、我が家に仕える従者は、身長320cmのメイドロイド、ホストロイドが各20体、歩行できない身長4mの医療用アンドロイド20体(うち、私にソックリな女性タイプが10体、真さんにソックリな男性タイプが10体)の合計60体になりました。他に矮化病患者の下男、下婢が数百人、或いは1000人以上、マンション管理会社の系列の人材派遣会社から派遣されてきているようですが、連中は「お目見え以下」ですから、詳細は知りません。私達、健常者は特別な例外を除き、賤しい矮化病患者風情と口を利く機会はありません。又、連中は私達の前では平伏して顔を上げてはいけないので、顔も見る機会がありません。

「では、出かけます。」
「奥様、行ってらっしゃいませ。」
「奥様、行ってらっしゃいませ。」

私は家を出てエレベータホールに向いました。

「優良さん、おはようございます。」
「江名さん、おはようございます。」

隣に最近引っ越してきた森山江名さん(もりやま・えな、女性実業家、27歳)です。江名さんは独身で、弟さんの強くん(もりやま・つよし、無職、23歳)とお二人で暮らしています。とっても仲の良い姉弟です。

「このマンション、立地といい建物といい素晴らしいですわね。私は不動産屋さんの広告で、このマンションを衝動買いしましたわ。」
「そうですわね。私も夫にこのマンションを買うようオネダリしましたわ。」

私達はエレベーターで地下300mのエントランスフロアに向いました。このマンションは、標高350m程の人工の山の上に立っているので、ここでもまだ標高50mはあります。5時45分、エントランスホール横の自転車置き場で自転車に飛び乗り、飛び出します。自転車のナビによると、今の気温は氷点下4℃、積雪は30cm程です。現代の関東地方は、「震災前」の北海道より寒いと云われていますが、湾岸区は例外です。東京湾の湾口が堰で閉鎖され、湾岸に立ち並ぶマンションの自家用原子炉の二次冷却水が大量に流れ込むので温水になり、それに暖められてここ湾岸区豊洲は、埼玉区大宮より20℃以上、暖かくなっています。満点に星が輝き晴天の様です。自転車駐車場は、トンネルと高架道路で、首都高速自転車道に繋がっているので、直ぐ時速200km以上に達します。そして、10分弱で東京府山の手区を出て、5時55分、中央自転車高速道路に乗り時速300km以上に達しました。東京府多摩区八王寺で気温は氷点下25℃までさがりました。道路の路肩には多数の掃除人夫が、平伏しています。私達が通る寸前まで路面を雑巾がけしていたのでしょう。ちなみに、路面はロードヒーティングされているので凍結や積雪はありません。

「あ、引いちゃった!」

神奈川区の相模湖の辺りで、自転車は矮化病患者を一人轢いてしまいました。50m程、吹き飛んでいるので多分、即死でしょう。自転車のナビが表示するところによると、高速道路会社に派遣されている掃除夫のようです。走りながらですが、自転車のナビに高速道路会社からの音声が入ります。

「お客様、弊社の掃除夫がお客様の自転車を汚しましたこと、誠に申し訳ございません。お詫びと致しまして、お客様のETCカードに些少でございますがポイントを付けさせて戴きます。」
「今の人、死んだの? 何かお詫びでも?」
「お客様、とんでもございません。当社の規則では掃除夫はお客様の通行を妨げる事は厳禁しております。死んだのは本人の自己責任でございます。但し、労災は適用されますので、遺族には国から過分な労災弔慰金が支給されますお客様にはお心に止められませぬようお願い申し上げます。」
「では、私の自賠責(自転車賠償責任保険)は、使わないの?」

私達、健常者は、国が運営する自賠責(自転車及び歩行者賠償責任保険)に強制加入しています。私達が矮化病患者を轢き殺す等の事故を起こした場合、この保険から被害者又はその遺族に補償金が払われるのです。それで交通事故を起こしても自己負担は無いのですが、無闇に事故を何度も起こすと、保険の更新時に保険料が上がってしまう恐れがあるのです。

「勿論でございます。お詫びをせねばならないのは、当方でございます。お客様の自転車が少し汚れている様でございます。追加でポイントを差しあげますので平に御容赦ください。」

そして朝6時15分、二人で標高2300mの富士山吉田口5合目駐車場に着きました。5合目の気温は、氷点下38℃程です。私達、健常者にとっては快適な気温ですが、駐車場の整理係・・・身長100cmの矮化病患者・・・は防寒着で着膨れしています。

「この血の汚れ、綺麗にしておきなさい。」
「はい、お嬢様、承知致しました。」

私は、駐車場の整理係りに命じました。チップの前払いに地面の氷に唾を吐いてやると、嬉しそうに舐めます。私達、健常者の唾は「聖唾」とも称され、矮化病患者の大好物なのです。冷蔵や瓶詰めすれば保存の利く聖聖水と異なり、聖唾は賞味期限が極めて短いので売り物にはせず、矮化病患者のチップに使います。

「ええと、江名さん、今日の集合場所は、独立行政法人国立矮化病センター富士山吉田口5合目出張所第26号公衆便所ですわね。」
「確か、そうでしたわ。ほら、あれでしょう。」

私達は集合場所の26号公衆便所に入りました。

「優良さん、江名さん、お早うございます!」
「庄子さん、清美さん、樹里ちゃん、杏寿ちゃん、也美さん、果保さん、類さん、桃さん、お早うございます!」

吉田口五合目の26号公衆トイレには、既に「豊洲登山倶楽部」の仲間が集まっていました。四つんばいになったメイドロイドの背中に座って、逸物を勃起させ、公衆トイレ付きのホストロイド、独立行政法人国立矮化病センター所有・・・・にフェラチオをさせています。椎名庄子さん(しいな・しょうこ、小説家、26歳)、水原清美さん(みずはら・きよみ、主婦、30歳)、水原樹里ちゃん(みずはら・じゅり、小学校2年生、7歳)、水原杏樹(みずはら・あんじゅ、小学校1年生、6歳)、緒方也美さん(おがた・なるみ、某社長愛人、26歳)、一条果穂(いちじょう・かほ、ピアノ教師、28歳)、堤類(つつみ・るい、高等女学校5年生、16歳)、久保田桃さん(くぼた・ もも、主婦、18歳)の8人です。樹里ちゃんと杏樹ちゃんは、「部員候補者」で、まだ部員ではありませんので、私と江名さんを合わせて「豊洲登山倶楽部」の部員は全8人です。なお、全員、「女神マンション豊洲」の住人で、特級健常者です。

「では、スタート1分前ね。皆さん、射精しましょう、では皆も一気に!」

8人は、ホストロイドの口に射精したようです。私達、健常者の女性の精液(愛液と同成分)は「聖愛液」とも称され、矮化病患者の治療に用いられます。 通常、公衆便所で射精するとその代金が貰えるのですが、国立公園内では営利事業は制限されているので無償ボランティアです。収益金は、公衆便所の管理者である独立行政法人国立矮化病センターから環境省国立公園管理局に納入され富士山の美化や整備や管理・・・・例えば先刻の駐車場整理係りの給与等に使われます。

「6時20分10秒前よ、10・9・8・7・6・5・4・3・2・1・スタート!」

最年長かつ二人の子持ちの貫禄で、部長の清美さんがスタートの合図をしました。10人同時に走り出しました。標高がグングン上がり気温があっという間に氷点下になります。途中からは雪と氷の世界になります。そして、6時23分50秒丁度、私は標高3776mの剣が峰に到着しました。所要時間3分50秒、自己ベストタイムで一位です。

「わあ、優良さん、今日も凄いわね。部長の権威形無しだわ。」

10秒後、6時24分、2位の清美さんが到着です。そして、他の部員が続々と到着します。6時24分40秒、9位で樹里ちゃんが到着、6時24分50秒、最後の杏樹ちゃんが到着です。

「樹里ちゃん、杏樹ちゃん、両方とも5分以内、入部試験合格よ!」

部長の清美さん(二人の母親です。)が渋い顔で黙っているので、私が口火を切りました。倶楽部の会則に、入部資格が「女神マンション豊洲の居住者の成人女性でかつ富士山登頂5分以内」と明記されていて、二人ともそれを満たしているのだから当然です。

「しょうがないわね、あ~、でも娘が二人も仲間だなんて!婆あになった気分だわ!」
「わ~い! 万歳!」
「わ~い! 万歳!」
「樹里ちゃん、杏樹ちゃん! おめでとう」
「おめでとう!」
「おめでとう!」
「おめでとう!」

これで部員が10名になりました。そして、6時34分、御来光の時間です。私達は、全員、逸物を突出させて御来光を拝みました。 そして御来光に向けて一斉に小便を放出しました。私達、健常者のオシッコは「聖水」とも称される医薬品で矮化病患者に必須なので高く売れるのですが、富士山頂は、神社でもありますので賽銭の代わりです。

「あ~、スッキリした!」

「聖水」も需要量より沢山供給すると市場で価格が高値安定するので、こうして供給調整をするという意味もあります。もし、家でこんな事をしたらメイド達は争って舐めたり闇で売ったりするでしょう。私達は、出す物を出してスッキリすると、山を降り始めました。

「わ! クマさん! 大丈夫!」

下山途中、事故がありました。6合目辺りで杏樹ちゃんが体長2.5m、体重300kg程の雄のヒグマと衝突したのです。杏樹ちゃんは急ブレーキを掛けたのですが避けきらず、ヒグマを蹴飛ばしてしまいました。体重3倍以上の杏樹ちゃんに蹴飛ばされたヒグマは20m以上飛んで岩にぶつかりました。勿論、即死でしょう。

「クマさん、ゴメンなさい。杏樹が不注意だったの。ゴメンなさい。」

優しい子です。昔は本州には羆は生息していなかった筈ですが、平成23年大震災以降に始まった「パンデミック」の大混乱の間に動物園から逃げ出して繁殖したようです。結局、杏樹ちゃんは負ぶい紐で担いでクマさんの死体をマンションに持ち帰って御墓に葬る事になりました。結局、10分遅れて6時50分、水原家の3人を除く7人は、五合目駐車場に到着しました。

「お嬢様、自転車の汚れはこのように綺麗になっております。」

血糊が見事に綺麗になっております。

「よし、キスを許す。」
「お嬢様、有り難うございます。」

私達、健常者の女性が、矮化病患者の男に「キスを許す」と言ったら、足の指へのキスを指します。私達は自転車に乗り、途中、10分ほど河口湖畔のホテルに立ち寄って「レディースブレックファースト」を戴き、7時30分、マンションに到着し、それぞれの自室に戻りました。