独立行政法人国立矮化病センター
第2章「優良さん」
第2項「優良さんの朝食」

「奥様、お帰りなさいませ。」
「奥様、お帰りなさいませ。」
「真さんの様子は?何処?」
「はい、旦那様はPKO(国際連合平和維持活動)をなさっておられます。お隣の森山家の若様とご一緒でございます。」

先刻の新人、メイドロイド106号が素早く答えました。森山強くんと、私の夫の真さんととっても仲が良いのです。強くんは姉上の江名さんに似てとっても美青年ですから、ひょっとして肉体関係もあるかもしれません。実を言うと、私も時々、(江名さんの許可を得た上で)強くんを抱いています。強くんは「男性」としては余りソッチの方は強くないので、私が逸物を突出させ、後ろの穴を犯しています。ですからそちらの方も十分開発されているのです。

「あ、そう。私も行くわ。階級章を寄こしなさい。」

私は再度、家を出てエレベーターホールに出ました。そして、エレベーターでビーチ用エントランスに向かい、海に飛び込みました。東京湾は湾口が仕切られ、湾岸に林立するマンションの自家発電原子炉の温排水で冬でも水温は28℃近く有ります。ほぼ同緯度の東京府外房区の九十九里海岸は冬から春に掛けて流氷で覆われるのでトンでもない違いです。私は時速100kmで、ユックリと珊瑚礁と熱帯魚の楽園を泳ぎ、6分弱sで「世界島」に上陸しました。世界島は、東京湾に浮かぶ直径10kmの人工島で、「新アメリカ合衆国」「新フランス共和国」「新ドイツ連邦共和国」「新デンマーク王国」等、99の独立国が有り、合計60億を超える人が住んでいます。私が上陸した辺りは、「新大ブリテン王国」の首都、新倫敦市(しんロンドン)です。

「相変わらず、人がウジャウジャいるわね。」

メインストリートを歩く私の両側には10階建てのビルが並んでいます。10階とは言っても、この街の市民の身長は10cmですから、ビルの屋上が私の股間位です。10階より高いビルの建築は禁じられているので、見通しは悪くありません。なお、このビルの材料は防水ダンボールです。雨には強いのですが、火には弱く火事になると大変です。日本人の矮化病患者は、私達、健常者が聖水や聖液を与えて治療に務めたので、ごく軽症、身長100cmまでしか縮まりませんでしたが、外国人は治療の手が回らなかったので身長10cmまで縮んでしまいました。幸い、ここまで縮んでしまうと、軽症の日本人患者と違って直射日光に当たっても大丈夫になるのですが・・・これほど小さいと自然の環境では生きていけないので、日本国国際連合平和維持協力隊(PKO)が保護し、この人工島に移住させ、独立国として内政自治を認めているのです。幅2m程のメインストリートの中央の幅1mは黄色く塗られており、ここが私達の通路です。道の両側には金髪碧眼で身長10cmの小人達がギッシリいて、私の身体を眺めています。私達、健常者は、日本人の矮化病患者にはジロジロ眺める無礼を許していませんが、外国人に礼儀を説いても無意味なので、ここでは私達の素晴らしい身体を見物する自由を与えています。

「鉄条網があるわ。ここから新ドイツ連邦共和国領ね。」

世界島にある独立国は、お互いに仲が悪く、寸土を争って紛争が絶えません。とは言っても、各国が持つ軍備・・・各国は自衛権があるので、自衛隊を保有し防衛力を整備しています・・・は、銃器や爆発物等は禁止され、槍や弓、刀だけなのでお互いに全滅する程の事は無いようです。但し鉄条網で国境・・・軍事境界線・・・は厳重に固められていますが、身長40倍の私達には関係ありません。そして、5kmゆっくり歩き、島の中央部、高さ120m、三層構造の望楼に到着しました。100m地点に尉官用フロア、110m地点が佐官用フロア、120m地点が将官用フロアです。私がエレベーターで将官用フロアに降り立った時、真さんは、四つん這いになった士長のホストロイドに腰掛け、逸物を一士のメイドロイドに咥えさせ、矢を三曹のメイドロイドから受け取る所でした。 横には強くんが立っています。本来、ここは将官専用で尉官である強君は立ち入り禁止ですが、強くんは、将官副官の資格を持っているので入れるのです。なお、この島にいるメイドロイドやホストロイドは個人の物ではなく国有(防衛省所管)ですが、聖水、聖液を販売した収益は、排泄者本人に還元されます。

「真さん、頑張って!」
「あれ、優良さん、戻っていたのかい? 恥ずかしいなあ。」

ここからですと、世界島全体が見渡せます。ほぼ全域がギッシリとダンボールの10階建てビルに覆われているのですが、例外が2つだけあります。「コロシアム」と「国際連合本部ビル」です。「コロシアム」では、ほぼ毎日、戦争が行われています。今日はデイゲームで「アメリカ合衆国VSアメリカ連合国」、ナイターでは「ドイツ連邦共和国VSロシア連邦共和国」の戦争が予定されています。「国際連合本部ビル」では、日本を含む100カ国の代表が集い、ほぼ毎日、国際問題が討議されています。日本の国連大使は、特級健常者の小学校2年生が輪番で務める慣習です。ちなみに、今の国連大使は、ウチの向いの水原家の樹里ちゃんです。私も小学校2年生の時に国連大使を務めましたが、世界の命運に関わる重任なので、なかなか緊張します。それはそうと、真さんが弓を引き絞りました。次の瞬間、矢は飛び出し、身長10cmの小人のビルの直上を超音速で飛んで行きました。そして見事に5km先の時速30kmで動く的、ヒグマの実物大縫い包みに命中しました。

「御見事ですわ! 真さん!」
「優良さんには敵わないよ。」

この島の外周にはロープウェーのような設備が取り巻いています。そして、ロープウェーのゴンドラの代わりに、ヒグマさんの実物大、体長250cmの縫い包みが時速30kmで回っているのです。私達、健常者は、全員、自衛隊員で国際連合平和維持協力隊の隊員です。二級健常者は、小学校入学と同時に三尉(少尉)になり、中学校・高等女学校入学と同時に二尉(中尉)に昇進し、卒業と同時に予備役一尉(大尉)になります。一級健常者は、小学校入学と同時に三佐(少佐)になり、中学校・高等女学校入学と同時に二佐(中佐)に昇進し、卒業と同時に予備役一佐(大佐)になります。特級健常者は、小学校入学と同時に三将(少将)になり、中学校・高等女学校入学と同時に二将(中将)に昇進し、卒業と同時に予備役一将(大将)になります。これだけでは、隊員が不足するので、メイドロイドやホストロイドを士(兵隊)や曹(下士官)にして不足を補っています。 日本国と諸外国は、安全保障条約を結んでいて、諸外国が侵略された時に、日本が助ける約束なのです。しかし、諸外国同士の紛争には、両方共同盟国なので日本は介入しませんので、もっぱら国際平和維持協力隊が仮想敵とする侵略者は、餌を求めて海を泳ぎ渡ってくるクマさんなのです。なお、それぞれの国には自衛力があるので、鳥さん位は撃退できるようです。

「次は強くんの番ね。頑張ってね。」
「予備役元帥閣下に見られるとは緊張するよ。」

私達、特級健常者は、通常、一将(大将)で予備役入りですが、オリンピックで金メダリストになると、特別に元帥に昇進できるのです。

「強くん、頑張れ!」
「強くん、頑張って!」

森山強くんが矢を射ました。しかし、的に当らず後ろの海に落ちて行きます。

「強くん、残念!」
「強くん、惜しいわ!」

結局、真さんと強くんは、それぞれ10回射て、真さんは10回全部的中、強君は2回的中でした。

「やっぱり僕は駄目だなあ。姉ちゃんはいつも10回全部的中なのに・・・。」

強くんの姉上の江名さんは、とっても運動神経が良いのです。私より2歳年下ですが、私が金メダルを取ったとき、江名さんが銀メダルだったのです。その次のオリンピック、私は引退していましたが、江名さんは金メダルをとったので江名さんも元帥です。

「強くん、君は筋が良いし、何と言ってもあの姉上の実の弟なのだから、練習を重ねれば上達するよ。」
「そうよ、私も教えてあげるわ。」

強くんの目から涙が吹き出ます。真さんは「筋が良い」とか言っていますが、正直言って強くんはあまり運動神経は良くないし、体力も無いと思います。

「姉ちゃんや皆さんは、特級健常者様だけれど・・・僕は二級健常者だよ・・・。」
「強くん、二級健常者でも昇級試験に合格して一級、特級と昇進する例はあるよ。何と言っても君は、あの姉上の実の弟で顔もソックリなのだから。」
「姉ちゃんと僕は、母親が違うよ。僕は父さんが外の女に産ませた子だよ・・・。」

その後、強くんは泣きながら事情を話して呉れました。明日、紐育(国際連盟信託委任統治領北米総督府所在地)に赴任中だった姉上、江名さんの婚約者、相葉孝則さん(あいば・たかのり、証券会社員、28歳)が帰国し、森山家に滞在するのだそうです。そして、この機会に江名さんは弟との性的関係を断とうとしているのだそうです。

「僕のチンチンでは、姉ちゃんは満足して呉れないんだ。この前、僕は水原家の杏樹ちゃんに押し倒されて犯されたけれど・・・フニャチンで満足できないって言われた・・・6歳の子も満足させられないのに・・・27歳の姉ちゃんを満足させられる・・・訳も無い。僕は無職で・・・相場の奴は特級健常者で・・・・エリート証券マン・・・・姉ちゃんの・・・会社は・・・・上場して。」

江名さんの経営する会社は、最近、東京証券取引所に上場して非常な高値を付けていますが、この上場の業務は相場さんが取り仕切っているのだそうです。私も子供時代、小学校低学年の頃、中学校(12歳入学、17歳卒業)や高等専門学校(17歳入学、20歳卒業)に出かけて行ってボーイハントをしましたが、2級健常者相手では全然、満足できませんでした。江名さんの強くんへの愛は、もっぱら弟としての肉親愛であって、恋人としてではないでしょう。とりあえず、私達は、強くんを励ます以外、出来る事は無いようです。なお、最近の民法改正で姉弟、兄妹、父娘、母息子の結婚は解禁されましたが、等級が異なる者同士の結婚は禁止されています。なお、全ての性交は法的には和姦(自由恋愛)と見做され、強姦罪という罪は民法から削除されています。

「それはそうと、お腹が空いたね。朝御飯にしよう。」
「そうね、そうしましょう。」
「僕も泣いたらお腹が空いたよ。」
「丁度、朝御飯がボートに乗ってやって来たよ。」

無人操縦のボートで身長1mの矮化病患者が、巴里(パリ)市付近にやって来ました。連中は空腹らしく、自分の十分の一の身長のフランス人を貪り食っています。

「さあ、もうちょっとフランス人を食べさせてから、今度は連中を私達が戴きましょう。」

20人程のフランス人が喰われた様です。これで、何時も生意気なフランス人も、国連平和維持協力隊の大事さ有り難さを十分弁えるでしょう。

「さあ、行きましょう!」

私達は時速200km以上で走って90秒後、三人の矮化病患者を捕らえました。そして、外国島の浜で楽しく談笑し朝食です。士(兵)のメイドロイドやホストロイドを椅子にし、股間の逸物は曹(下士官)のメイドロイドやホストロイドに咥えさせます。

「ふ~ん、優良さん、凄いね。登山、一位か!? ところで、3位の一条さんは、いつ入籍するのかな?」

一条果穂さんは、堤るいさんの父上の堤久夫さん(つつみ・ひさお、会社員、45歳)と同棲しています。元々、堤家と一条家はお隣さんだったのです。奥様に離婚され独身になった堤久夫さんと果穂さんは、仲良くなり同棲を始めたのですが・・・堤久夫さんのお嬢さんの、るいさんが結婚に大反対・・・結局、るいさんは空き家になった一条家に住んでいるのです。

「るいちゃんは、「もし、パパがあの淫乱女(果穂さんの事)と結婚したら親子の縁を切って、ママの所へ行く!」とまで、宣言しているのだろう?」
「昨日までは、るいちゃんは、果穂さんとは全く口を利かなかったの。でも今朝の朝、ちょっとは軟化してね、「おはよう」くらいは言ってくれたって果穂さんは言っていたわ。」
「じゃあ、もう少しだね。ところで、何で、るいちゃんは軟化したのかな。」
「それ、僕は知っています。昨日遅く、マンションの庭を散歩していたら、凄く嬉しそうな顔をして、るいちゃんが帰ってきたんで・・・僕、隠れようとして・・・以前、るいちゃんに強姦されてフニャチンと罵られたから・・・でも、るいちゃんに捕まってしまって、話し相手にされちゃったんです。るいちゃん、恋人が出来たんだそうです。将来、結婚する決意だって。だから、パパが何処の馬の骨と結婚しても構わない、淫乱女でも構わないそうです。」
「それは、何処の誰だろう?」
「誰かは分かりませんが、何処の人かは教えて呉れました。るいちゃんが通っている学校の先生です。金メダリストでとっても勇敢で逞しい方だそうです。」
「それは嘘よ。ありえないわ。るいちゃんの学校の校長先生は、私の高等女学校の後輩、勿論、女よ。女同士で性交も恋愛も出来るけれど、結婚だけは不可能よ! それに彼女はオリンピックメダリストだけれど、銅メダルしか取っていないわ。」
「どういう事でしょう?」
「まさかと・・・思うが・・・まさか・・・。優良さん、強くん、ひょっとして相手は矮化病患者ではないか? 確か、あの学校の代用教員に、金メダリストがいる・・・渡辺恵介とか云う・・・。」

思い出しました。唾を舐めながら、人間時代のメイドロイド106号は、兄は金メダリストで、私の爪の垢を煎じて飲んだ事を誇りにしている、とか、言っていました。

「幾らなんでも、矮化病患者を恋人にする・・事は無理だ。あ、ひょっとしてホストロイドに移植して愛玩するという意味では?」
「真さん、それも無理よ。その恵介の妹が今日、メイドロイドになったわ。年齢制限ギリギリだったのよ。その兄は移植不可能よ。」

どういう事でしょうか? 父上恋しさのあまり、るいちゃんは発狂してしまったのでしょうか? 健常者が矮化病患者に恋をするなんて聞いたことがありません。