見知った女の子が二人並んでこちらを見つめている。
一人はいつもと変わらぬ無表情をしているが、もう一人はなぜかどや顔だった。
彼女達は僕の武装神姫。
武装神姫というのは自立稼動する15cm程度の女性型フィギュアの事で、高度なAIによって人間と変わらない日常会話が出来る凄い玩具だ。
神姫同士を戦わせる武装神姫バトルを楽しむのが普通なんだけど、その人間っぽさから玩具というよりも友達や家族として扱う人も結構いる。
僕も多少はバトルもするけど、基本的には後者よりだ。
そんな僕は彼女達の前で胡坐で座り込んでいた。
二人の視線が僕のことを『見下ろして』くる。
いつもと違う居心地の悪さにぽりぽりと頬を掻くと、当然のように頬と指が擦れる感触がした。
その感覚に僕は思わずほっとする。
何に?
この体―――この武装神姫になった体にも感覚がちゃんとあったことに。


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朝起きたら僕は武装神姫になっていた。
肩や腰には武装パーツを取り付けるためのネジ穴が開いているし、肘や手首などの関節には継ぎ目が出来ている。
シリコン素材でコーティングされた肌を押してみると骨や筋肉ではない何かが中にあった。
基本素体は男性タイプのもので、袴のようなアーマーに刀の武装を付けている。
僕の姿を見た神姫が「まるで侍じゃな」と言っていたけど、コンセプトがあったとしたらたぶんそれなんだと思う。
でも神姫シリーズにはこんなタイプのアーマーや武装は無かったはず・・・というか素体は女性タイプしかないはず。
まあ僕の体が変化しているもの(?)なんだから既存のものに合わせる必要なんて無いんだけど・・・。
フィギュアの体になってしまった僕の代わりなのかなんなのか、元々神姫だった彼女達は人間になって僕の目の前に座っていた。
ネジ穴や関節の継ぎ目は消え、アーマーと同じデザインの服を着ている。
もう神姫ではなくコスプレをした普通の女の子にしか見えない。
「さて、主(あるじ)殿。なにやら面白い状況になったのう」
どや顔をしたほうの神姫が僕を見下しながら話しかけてきた。
彼女は忍者型神姫のミズキ。
おかっぱ頭の揉み上げと後ろ髪を伸ばした淡い赤色の髪を持ち、フェイスペイントをしているため一見巫女か何か神懸り的な何かのようにみえる。
でも口調や性格は江戸時代の姫君のようにプライド高くて基本的に偉そうな態度を取ってくるけども、根は優しいので相手をけなす事は絶対に言わない優しい娘だ。
「これではまるでわらわが主になったようじゃな」
ミズキが悪そうな顔でクククと笑いを漏らす。
うん。根は良い娘じゃないんだよ。本当。
とりあえず笑って返したけど、主従逆転については本当にそうだよなぁと思う。
「私の主(あるじ)は主しかいません。たとえミズキが主のマスターになったとしても私はいつまでも主の神姫です」
もう一人の無表情な神姫のほうがミズキの言葉を否定した。
彼女はミズキと同じ忍者型神姫のフブキ。
ミズキと同じような髪型だけどこっちは淡い青色で、フェイスペイントもない。
型通り忍者のような控えめで落ち着いた性格をしていて、何よりもマスターが大切というマスター至上主義を掲げている。
「ありがとうフブキ。嬉しいよ」
僕は彼女の気持ちに素直な喜びの気持ちを表した。
それを見たミズキがなにやらぐぬぬと唸っているがそれは無視して僕達は会話を続ける。
「それで、どうしましょうか主」
「そうだね・・・。とりあえずご飯にしよっか」


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「―――という事件が各地で報告されており―――」
朝と言う事で朝食を摂りながらTVのニュースを見ていると、マスターと神姫が入れ替わる事件が取り上げられていた。
画面には戦闘服姿で歩道を歩く4人の神姫とその肩に乗っているマスターと思わしき1人の男性の映像が写されている。
各地で僕達と同じようにマスターがフィギュア化していて、神姫が人間化しているらしい。
「一体なんなのじゃろうな」
ミズキがもぐもぐと朝食を咀嚼しながら呟いた。
彼女が食べているのは本来僕が食べるはずだった納豆ご飯だ。
神姫にはヂェリーという専用の食べ物があるのだけど、今は人間化しているので必然的に食べ物は人間用のものになる。
代わりにフィギュア化している僕がヂェリーを頂いている。
昨日までは僕がヂェリーを口にする事になるなんて夢にも思わなかった。
しかも僕だけじゃなく他の人も同時多発的に神姫化しているなんて・・・。
ニュースではコメンテーターが某国の陰謀だとかプラズマが原因だとか適当なことを言っている。
同じテーブルで食事を摂る神姫達を眺めながら僕なりに原因を考えてみたけど、これだと言うものは何も思い浮かばなかった。
・・・にしてもこのKamameshi味と言うのはあんまり美味しくないな。これじゃIkameshi味にも期待は持たないほうがいいかな・・・。
僕がヂェリーの味にしかめっ面をしているとそれに気付いたフブキがおずおずと自分の茶碗を差し出してきた。
「ありがたいけど気持ちだけ貰っておくよ。このボディじゃそれは消化できないしね」
僕は皮膚の下にごつごつした機械の感触があるお腹を撫でながら答えた。
残念そうに茶碗が引っ込められる。
その茶碗の代わりにミズキが話しかけてきた。
「のう主殿。この納豆も美味だが折角人間になったのじゃ。わらわは街に出てもっと色々なものを食べてみたい」
ついでに神姫ショップで旨いヂェリーを仕入れるのも良かろうと小さく付け足したあと味噌汁をずずーっとすすり始める。
街か・・・。確かに出てみたい気持ちはしてた。
ネットやニュースで色んな事例は見聞き出来るけど実際に自分の目で見て回りたい。
うん、そうしよう。
そうと決まればということで僕達は朝食を済ませた後さっそく街に出ることにした。


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「しっかしダメダメじゃったのう主殿は」
「そんなことはありません。主は頑張ってました」
夕方、街を見て回った僕らはショッピングモールのフードコートで休憩をとっていた。
そこで僕はミズキに家事スキルの無さをつつかれて楽しまれている。
神姫の高性能さは簡単な家事なら任せても問題ないレベルな為、いつも手伝って貰っている。
そしてそれはフィギュア化した僕でも家事が出来るという事も意味している。
なのでいつも通り皿洗いをしようとしたのだけど、この体で家事をこなすのには結構コツが必要だったようでお皿1枚とコップ1個が尊い犠牲になっていた。
同じく慣れない体のはずの神姫達はちゃんと掃除と洗濯をこなしていたというのに情けない。
とまあ僕の失敗談はここまでにするものとして、今日一日街を見て回った成果なんだけど・・・。
まず1つ目に街を出歩く神姫の多さ。
他の主従に会えるのは数えられる程度かなと思っていたけど、首を回してみるだけであちらこちらにコスプレ少女―――神姫達の姿が見かけられる。
僕らと同じ青年とペアの神姫、親子連れのお父さんの代わりに子供の世話をしている神姫。
普通の服を着た神姫と巫女アーマーに換装した女性マスターや、マスターと一緒になって働く神姫なんてのもいた。
これでもまだ一部で、西のショッピングモールと東の商店街をつなぐ駅の改札前広場には1つのタイプだけでも両手を使わないと数え切れない程の神姫達がいた。
入れ替わりが起きてまだ初日だし、みんな様子見で家に引っ込んでいるかなと思っていたけども、
朝からTVで街を歩く神姫の姿が流されているからか結構外に出てくる人が多いみたいだった。
2つ目に神姫ショップ。
ここではあまり大した情報は手に出来なかった。
フィギュア化したマスターが集まってああでもないこうでもないと原因追求している輪に加わってみたけども、結局納得のいく結論には至らなかった。
ちなみに、ヂェリーはKamameshi味だけ残ってた。
そして3つ目にフブキ達の手に握られたクレープ。
色々なものが食べたいと言ったのはミズキだったけれど、フブキも美味しそうに食べてくれている。
いつも無表情な分、モノを食べて美味しそうな表情をするフブキは新鮮だった。
ミズキのほうも美味しそうにはしているものの、なにか微妙な表情だ。
「具合でも悪いの?」
「ううむ。なにやらこの辺が妙な感じなのじゃ」
下腹部に手を当てて何かモジモジしている。
ミズキの前では一緒に買ったオレンジジュースのコップが空になっていて、残った氷がカラリと音を立てていた。
もしかしたらお腹を壊したのかもと思ったけど、それである事に思い至った。
「あー、ミズキ。トイレってどうしてる?今日はもう行った?」
「・・・神姫は厠にいく必要なぞ無いぞ?」
いや今は人間だしとツッコミをいれつつフブキの方はどうかとちらりと見ると、こちらは平気な顔をしてた。
「私は家を出る前に行っておきました」
さり気なく済ませていたらしい。さすが忍者。自分のコンディションを常に最良に保つ心掛けは忘れない。
一方その心掛けが無かったミズキがやり方がわからないから僕について来て欲しいと言っていたが、さすがに女子トイレには入れないので心を鬼にして突き放した。
渋々といった感じでトイレにいくミズキを見送ると、暫くしてひょわぁぁぁぁと情けない叫び声が上がってくる。
助けにいったフブキ曰く、ウォシュレットが何かも知らずにボタンを押したのだとか。
同じ忍者なのにえらい違いだなと思った。
そしてよく考えたら付いていくのは僕じゃなくてフブキでも良かったんだなとも思った。


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それでどうしてこうなった。
僕は頭を抱えていた。
と言ってもうつむいているわけではなく顔はしっかり上を向いている。
そして見開いた目にはミズキの濡れた裸体がばっちりと映り込んでいる。
時を遡ること数分前。
ショッピングモールから帰宅し、そろそろいい時間だということでお風呂ということになったのだけど、またミズキがやり方がわからないと言い出した。
風呂のやり方ってなんだよという反論も許されず、僕はアーマーを剥がれて風呂に連れ込まれてしまった。
そのときのミズキはまた悪そうな顔をしていた。
きっとショッピングモールのトイレで恥を掻いた腹いせでもするつもりなんだろう。
そういう訳で、いま僕達は一緒に風呂に入っていた。
湯船には同じように連れ込まれたフブキが既に浸かっている。
どこで覚えたのか、タオルを頭に乗せてご満悦といった雰囲気。
ミズキはというと僕を床の上に放置し、風呂椅子に座って髪を洗っていた。
後ろから見上げる形になっている僕の目の前で、流れ落ちた泡が艶かしい背中を伝ってお尻のほうへと流れてくる。
大半はそのまま椅子へと流れていくが、極一部、お尻の谷間へと消えていくものもあった。
あの谷間の先には女の子のアレがあって・・・今椅子の下に行けば椅子の穴から・・・ごくり。
自分の神姫だというのに僕はいけない想像をしていた。
こうなる前はあくまでフィギュアだった彼女達。
その時は決して抱かなかった妄想で僕の頭の中が一杯になっている。
「主殿」
いつのまにかミズキが髪を洗い終えて僕のほうへ振り向いていた。
「主殿もそんなところにおらんでこっちへ来て体でも洗ったらどうじゃ?」
ミズキが僕を掴んで彼女の正面へと引き寄せた。
彼女の大きなおっぱいが遮るもの無しに僕の前に曝け出される。
以前胸パーツを大きなものに換装していたものがそのまま反映されているらしく、彼女のおっぱいは結構なふくらみを誇っていた。
「おやおや、主殿は何を見ているのかのう?」
ミズキがニヤニヤしている。
腹いせが本格的に始まったようだ。
だけどまだ若い僕にはそれを直視する以外の選択肢なんて無かった。
「ところで主殿よ。風呂では服を着るのはマナー違反じゃった筈じゃが?」
ミズキが僕の腰周りについて指摘してくる。
僕の腰には局部を隠すようにインナー風のペインティングが施されているが、これは武装神姫の仕様なのでアーマーのように脱着出来るものではない。
それを知っていながらミズキは指摘してきている。
「どれ、わらわが脱がせてやろう」
ボディソープを塗った親指で僕の股間を擦り始めた。
耐水仕様のボディペイントはその程度では落ちないけれど、防御力はたかがペイント程度。
にゅるりにゅるりと股間が擦られる感触がダイレクトに伝わってくる。
ちょっと、いや、かなり気持ちがいい。
何かが股間にこみ上げてくる感覚がする。
竿と玉は無いはずだけどこれはもしかしたらミズキの指で粗相をしてしまうかもしれない。
と思ったところでミズキの指が動きを止めた。
「なかなか取れんので諦めた」
残念そうな僕の顔を見てミズキはご機嫌だ。
「良い感じでヌルヌルになったことじゃし、わらわを洗ってくれんかの主殿」
ミズキはそういってボディソープまみれになった僕で自身のおっぱいを洗い始めた。
抵抗のしようも無く柔らかなお肉に包み込まれ、すべすべの肌の上を滑らされる。
上下に、左右に、円を描くように、ミズキの手が僕ごとおっぱいを優しく揉み洗いしていく。
少ししてボディソープのおかげでヌルヌルだったおっぱいの中央に抵抗が生まれていた。
乳首の先端だ。
いつの間にか乳首の先端が飛び出してきていて、僅かな引っ掛かりを作っている。
ミズキもそれに気付いたのか僕をそこへ集中的に擦りつけた。
顔を往復ビンタされるように乳首が何度も何度も擦り付けられる。
右のおっぱいが終わったら次は左のおっぱい。そして再び右のおっぱいへとエンドレス。
痛くはないけど頭を小刻みにシェイクされるのでちょっと酔いそうだった。
暫くして満足したのか、乳首から離された。
「ふぅ、堪能した。わらわは満足じゃ」
「そりゃどーも。・・・うぇっぷ」
揺さぶられまくってくらくらする頭で適当に返事を返す。
「次は主殿の番じゃな」
「ん?ああ、いいよ。自分で出来るから。というかもう十分過ぎる感じなんだけど」
僕の体は既にミズキの指とおっぱいで十分に泡まみれだ。
「遠慮するでない」
そういってミズキは再び僕をおっぱいへ押し付けた。
今度はおっぱいに挟み込まれる位置に持っていかれる。
そこでミズキは僕を放して、おっぱいだけで僕を包み込んだ。
ミズキの両手がおっぱいを寄せると、僕はその中にすっぽりと収まってしまった。
「どうじゃ主殿。気持ちよかろう」
ミズキがぐにぐにとおっぱいを揉みしだくと、おっぱいのお肉に四方八方から僕に襲い掛かってくる。
顔も体も全部まとめて揉み洗いされ、もういいよと声を上げたくても開けた口をおっぱいで塞がれてしまって声が出せない。
僕はミズキの気が済むまでむぎゅむぎゅと揉まれ続ける以外に何もすることが出来なかった。
「おっと、これは難しいの」
時折、ミズキがおっぱいの間から僕を滑り落としそうになって慌てている。
なので自然と揉み方が上へ上へと揉み上げる形になる。
少しずつ少しずつ上へと移動していき、僕の頭がミズキのおっぱいから外に出た瞬間、僕はしゅぽんとそこから飛び出した。
ぬめりが強すぎたのだろう。握った石鹸が手から飛び出すように、僕はおっぱいの間から上へと飛び出していた。
少しの空中遊泳の最中、驚いた様子のミズキの顔が見えた。
そしてそのまま湯船へと落下する。
フィギュアの体は水に浮かないので湯船の底へと沈むだけだ。
ゴボゴボとお湯の中を沈んでいく自分の体。
別に生身の体ではないので沈んでも死ぬことはないのだけれど、やっぱり沈むと言うこと事態にちょっとした恐怖を覚える。
その恐怖の中で僕が見たのは三途の川でも他界したご先祖でもなくもっと現実的なもの。
フブキのおまんこだった。
僕が沈んだ先は湯船で体育座りをしているフブキのちょうど正面だった。
人間になっているフブキの股間にはフィギュアのような関節はなく、代わりに毛の生えていない綺麗な縦筋があった。
お湯越しではあるけれど、ほとんど透明のカーテンのようなもので視界を遮るものではない。
女の子のおまんこを生ので見るのは生まれて始めてだった。
沈む恐怖と異性の秘部を見れた歓喜とでどうしたらいいのかちょっとパニックになりかけたところで巨大な手に掴まれて引っ張り上げられた。
お湯の底に遠ざかるおまんこの代わりにその持ち主の顔が正面に現れる。
「大丈夫ですか?主」
心配そうに声をかけてくれる。
それに対して僕は安堵と未練が混ざった複雑な表情で大丈夫だよと答えた。