「ここは…どこだ…」
気がつくと今までに見たことのない光景が広がっていた。
一瞬、大きな駅にあるようなガラス張りの待合室に倒れていたのかと思ったが
どうやらここは、ガラス製のビンの中のようである。

「どうなってんだ?おーい!」

ゴン!ゴン!ゴン!

ガラスは思った以上に頑丈にできているようである。

その時一人の女の子が近くを通りかかった。


「さって〜今日の晩御飯は何にしよっかなぁ〜♪
こっちの棚わっと…う〜ん。ちょっと高めだねぇ」


ドン、ドン、ドン!

「ん?あっ!人だ!おーい!ここだー助けてくれー!!」

ゴン!ゴン!ゴン!

「ん〜?」
あらっ?この子元気だなぁ〜でもちょっと値段高いかなぁ〜

「って、おい!まてこの娘でかすぎないか…?」
気付いた時には自分が全力で叩いていたガラスの壁の前で大きな瞳がこちらを
覗き込んでいた。

「ひぃ…!な、なんなんだ?!」

「あれ?急に静かになっちゃったな」
うーん。どうしよっかなぁー活きは良さそうだなぁ…でもちょっと高いしなぁ

しかし

ぐるるるる〜〜〜
彼女の胃がその小人を求めるようにと主人に告げた。

よっし、お腹すいたしこの子にしよ。

ひょいっと、彼女は小人の入ったガラス瓶を自分の持っていたカゴの中に入れる。

「うわっ!!」
ガラスの壁の前の瞳が引っ込んだかと思うと突然巨大な肌色が近づいてきた。

ぐらっ!
揺れたと思った瞬間には、俺はすでにすごい勢いで地面に押しつけられていた。

ドカっ!
そして、そのままどこかにビンごと着地した瞬間、
俺は再び意識を失った。


「さって〜今日の夕飯も決まったし。レジいこっと」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ガタン!!
「うわ!」
激しい揺れに目を覚ますと、どうやらさっきと別の場所に移動したらしい。
ただし、ガラス瓶の中という状況は変わっていない。


ふふふ〜ん♪
今日は活きの良さそうな小人さんも買ったし〜ごはんが楽しみ〜
早く他の料理も作ろうっと


「あれはさっきの女の子だな…?おーい!!!」
ガン!ガン!ガン!ガン!
俺は必死に彼女に気付かれるように壁を叩いた。


あら?あの小人さん目を覚ましたのかな?
ふふっ。また暴れてるっ♪
はいはい。慌てなくても、もうすぐ食べてあげるからねぇ〜。


ゴン!ゴン!
「おかしい…あの娘気付いてるはずなのに、なぜこちらに来ない…?
それに落ち着いて周りをみると、巨大な台所のようなところに俺の入った瓶が
置かれている。
「まさか…」


できたっ。あとは小人さんを盛り付けないと。
よいっしょっと。


「ん?やっとこっち来たか!おーぃ!っ!」
叫んだのも一瞬。女の子は俺の入った瓶を逆さにするやその手で俺を捕まえた。
「おいこら!何すんだ!!」


「あら〜ほんとこの子活きがいいのね?」
逃げられないように紐で括っておこうかしら?


おい、コイツ今‘活きがいい‘って言わなかったか?
「うぐっ!」
考えた瞬間、俺を捕まえた彼女の手が急に強くなった。
「くそっ!」

彼女にしてみれば少し力を込めて小人を握っただけであったが
スケールの違う彼にとっては今までに経験したことのないような締め付けであった。


「これでいいかな?」
小人を紐でぐるぐる巻きにした彼女は、小人を作った料理の中に放り込んだ。


べちゃ!!

「痛っつー!」
紐でぐるぐる巻きにされた俺は、どうやら彼女の今夜の晩飯と思しき物体の中に
放り込まれた。

顔に付いたよく解らない物を必死に肩で拭って見上げるとすでにキッチンから
テーブルと思しき場所へと移動していた。

「よいっしょっと」
女の子が俺の目の前に座っていた。

ぐるぐるぐ〜〜〜〜〜う!
その時、彼女の胃がもう待ちきれないと言わんばかりに鳴りだした。
もっとも、小人にとっては死刑執行開始の合図にしか聞こえはしないのであるが。



さって、いただいちゃおうかしら〜♪

「いただきま〜す♪」

彼女は今日の自分の晩御飯に向かってそう告げた。


「オイ…まてよ。いただきます♪じゃねー!!」
黙ってこの娘の巨大な腹にこのまま納められてたまるか!