最近、サイルが一緒にいてくれないというかなんというかイリスと一緒にいる
サイルはイリスのこと好きなのかな。
やっぱり同じくらいの体の大きさの方が好きなのかな。
・・・私、何考えてるんだろ。
私はサイルのこと好きなのかな。

私「うわあ、きれい。」
男の子「気に入った?」
私「うん。この花なんていうの?」
男の子「夢見草だよ。」
私「夢見草。」
男の子「ねえ。」
私「なに?」
男の子「二人とも大人になったらさ。」
私「うん。」
男の子「けっこん、ていうのかな、しよう。」
私「うん、しよう。けっこん。」
男の子「それじゃ約束にキス、しよう。」
私「うん。」
私は花畑の中、花の香りに包まれながらその男の子とキスをした。
・・・・・・・・・・
ミント「フィア起きて。」
私「ん、ふあああ。」
朝、いつもどおり私はお母さんに起こされた。
ミント「おはよう。」
私「おはよう。」
ミント「フィア、今日の昼、居ないから自分で作って食べてね。」
私「うん、わかった。」
ミント「ごめんね。」
私「仕事なんだからしょうがないよ。」
ミント「それじゃ、私は朝食作るから。」
私「うん、」
お母さんは朝食を作りにリビングの方へ行った。
私は靴を履き、普段着に着がえる。暑かったのから涼しくなり今は長袖の服を1枚、たまに2枚着ている。着がえ終え、手鏡と櫛を持って自分の寝癖を整え始めた。
私(あの夢、懐かしいな。もう十年も前のことだ。あれから、あの人は何をやってるんだろ。もう名前も覚えてないけど、向こうは私の事覚えてくれてるかな。それとも?まさかね、全然雰囲気違うもんね。ん、よし。こんなもんでしょ。)
私は寝癖を整えリビングへ行った。
リビングといっても台所とイスがあってテーブルが置いてあるだけなんだけど、まあ贅沢するわけにはいかないけどね。
テーブルの上には部屋の大きさにしては不自然な人がいる。
私「おはよう、お父さん。」
ルイス「おはよう。」
ミント「フィア、パンを運んで。」
私「はい。」
パンはお母さんが毎日作っている。いや、パンだけじゃない、私が食べてるものは全部お母さんが作っている。たまに手伝いをすることもあるけど、お母さんは毎日続けてる。お母さんはすごいな、ってときどき思う。
私(手伝いとかするようになったのは半年前、サイルが来てからだっけか。サイルのおかげで色々と変わってたんだ。でも、それでサイルは辞めたいなんて言い出したんだよね。その時、私『一緒にいてくれれば楽しい。』って言ったんだ。あの人といた時も楽しかった。あの時と同じで私はやっぱり)
ミント「フィア、どうしたの?ボーっとして。」
私「え、あ、なんでもないよ。」
私はずっと立ち止まったままで考え事をしていたようでお母さんはもうイスに座っていた。
ルイス「大丈夫か?」
私「うん、大丈夫。」
私はとりあえずイスに座って、朝食を食べることにした。
・・・・・・・・・・
昼まえ、今日も変わらないいつもどおりに時間が過ぎていった。少し違うのはいつもより早く習い事が終わったことと昼御飯を自分で作ることとそれに、
私「ねえ、今日の昼ごはん一緒に食べない?」
サイル「ええ、いいですよ。それじゃ、イリスさんに言ってきますね。」
私はイリスという言葉に少しむっとなる。
私「言わなくていい。」
サイル「え、でも。わっ。」
私はサイルを鷲摑みにするとそのままリビングの机の上に持っていった。
サイル「姫様いきなり何するんですか?」
私「こうしないと絶対来ないだろ。・・・ねえ。」
サイル「はい?」
私「大きいのと小さいのどっちがいい。」
サイル「???。何ですか。いきなり。」
私「いいから、答えて。」
サイル「ちょうどの大きさがいいです。」
私「なんで?」
サイル「なるべく大きい方がいいけど、扱うの大変そうですし、なんか欲ばった罰が当たりそうじゃないですか。」
私「そう。」
サイル「姫様、今日はどうしたんですか?」
私「別にいいだろ、そんなこと。あ、そうだ、前にチャーハンの話したよね、作り方教えて。」
サイル「そんな話しましたっけ?」
私「したよ。半年ぐらい前に。」
サイル「えっと・・・・・、そうでしたね。思い出しました。」
私「それでどうやって作るんだ?」
サイル「えっと、まず材料に、あっ。」
私「どうしたの?」
サイル「お米ってありますか?」
私「ない、」
サイル「じゃあ、作れないです。」
私「じゃあ、どうしようか?」
サイル「姫様の作れる料理を作ればいいじゃないですか。」
私「うん、サイルはそれでいい?」
サイル「別にいいですよ。」
私「えっと、それじゃあハンバーグにするね。」
サイル「はい。」
私は台所へ行き、料理を始める。
・・・・・・・・・・
私「できたよ。」
机の上には皿に入ったハンバーグとパンとサラダがある。
サイル「あの、なんで丸ごと入ってるんですか?」
私「しょうがないだろ。そんな細かいこと出来ないし。」
サイル「まあ、そうでしょうけど。」
私「じゃあ、どうすればいいって言うの?」
サイル「自分の分は自分で作るっていうのは。」
私「駄目。」
サイル「なんでですか?」
私「私は一緒に食べたいの。作ってる間に冷めちゃう。それに・・・、」
サイル「それに?」
私「私の料理を・・・その、食べてほしい。」
サイル「姫様・・・。」
私「・・・。」
サイル「あの、冷めちゃいますから食べましょう。」
私「それって。」
サイルはハンバーグが入った皿の上に登り、ハンバーグの方へ向かう。
サイル「えっと、フォークとかないですか?」
私「あ、え、ない。ごめん、手で食べて。」
サイル「はい。それじゃいただきます。」
私「あ、分けるよ。」
私はハンバーグのはしっこを少し切った。
私「このぐらいでいい。」
サイル「はい。」
私「パンも。」
パンの柔らかい白いところをちぎりサイルのところに置く。
サイル「ありがとうございます。」
私「サラダはどうしよう。」
サイル「あ、じゃあレタスを一玉ください。」
私「うん。」
サイルはレタスをもらい必要な分だけむしりとった。
その後、サイルはハンバーグに口にした。
私「どう?」
サイル「おいしいです。」
私「本当に?」
サイル「本当ですよ。」
私「よかった。」
・・・・・・・・・・
私はサイルと楽しい食事が出来てうれしかった。
今は、屋敷の隣にある川で洗い物をしている。
イリス「フィア様。」
私「あ、イリス。どうしたの?」
イリス「サイルさん知りませんか?」
私「サイルは・・・知らないけど。」
イリス「・・・本当ですか?」
私「本当だよ。」
イリス「・・・本当に?」
私「本、当。」
イリス「・・・。」
私「・・・。」
イリス「何で、嘘つくんですか?」
私「だって、だって・・・。」
イリス「・・・もう嘘つかないでくださいよ。」
私「・・・うん。」
イリス「それじゃ、ここで失礼します。」
私「え、連れて行かないの?」
イリス「いえ、何処にいるか、確認したかっただけです。」
私「だって。」
イリス「???。」
私「なんか最近、一緒に、いる。」
イリス「ああ、それはですね。」
私「うん。」
イリス「一緒に運動してるだけですよ。」
私「運動?」
イリス「はい。『何かあった時、自分の身を守れるようにしとかないといけない。』って言ってました。」
私「そんなことしなくてもいいのに。」
イリス「前に一晩いなくなった時の事だと思います。」
私(・・・あの時、私泣いてたんだっけ。泣かさせないようにって思ったんだ。)
私「でも、何で言ってくれなかったのさ。」
イリス「『姫様がやめろって言うでしょう。』だそうです。」
私「そうか、ありがとうイリス。」
イリス「どういたしまして。」
私は洗い物を持って自分の屋敷に向かう。サイルのいるあの屋敷に。
第三章〜完〜