リリス式バレンタイン

『ハッピーバレンタイン♪』

突如として地球よりも遥かに巨大な、立派な玉座に座っている女の子が空の彼方に観測できた。

彼女は間違いなくこの地球の支配者、リリス様だった。しかし、初めてこの星を征服に来たときと大きさは全然違っていた。彼女が座っている玉座ですら地球よりも大きかった。

『バレンタインスペシャルっていうことで今日は1億倍サイズで〜す♪』

1億倍だと!?ってことは…リリス様からしたらこの地球全体がたった12cmの球にしか見えないのか… こうなると彼女は完全に女神の領域に達している。地球が生きるか滅ぼされるかは彼女の気まぐれ次第で決まってしまう…

『バレンタインといえば女の子がチョコをあげる行事らしいわね。今日は宇宙一可愛いこのリリス様からとっておきのプレゼントをしてあげるわっ!感謝なさい虫ケラども!』

人々は絶望した。彼女が降臨していいことが起きたためしなんてひとつもないじゃないか。

『ほらみて♪巨大チョコ♡』

地球の人類は全てを察した。リリス様はあの触れただけで日本が沈没してしまいそうな意味のわからないほど巨大なチョコレートを地球に落として壊滅させるつもりなんだ。

『じゃああたしからの愛を受け取ってね♡』

やはりそうだ。あんなに巨大なチョコレートから逃げるなんて我々人類には不可能だ。いや、魔族でも逃げられるのなんてリリス様以外にいるとは思えない。我々のご主人様はちょっとした気まぐれでたくさんの命を奪い、弄ぶのだ。

『な〜んてね!冗談よ。こんなに巨大なチョコなんてあげても食べきれないでしょ?』

人類はそこじゃないだろっ!と内心思いつつもリリス様がチョコを落とす気がないことを知り、安堵した。

「リリス様お察し頂きありがとうございます!!」

人類はみんな空の遥か彼方にいる命を助けてくれた超絶巨大魔王リリス様にひれ伏しながら、感謝をした。

『こっちの方だった!てへっ☆』

リリス様はチョコをしまい体制を変えると、ニーハイブーツを脱ぎ、漆黒の蒸れたオーバーニーソックスに纏われた両脚が露わになった。

『この麗しきあたしの1億倍のニーソの足裏をプレゼント♡ありがたく思いなさいよね?』

人々は再び絶望に叩き落とされた。
リリス様の足裏が地球に触れられた瞬間何もかも踏み潰され地球全体を大地震が襲い山も街も都市も関係なく下敷きになり何億人もの人が犠牲になってしまう。これならチョコレートのほうが遥かにましだ。ていうか足裏ってもはやバレンタインなんて関係なくいつものドSなリリス様じゃないか!なんて冷静に考えられる人は一人もいなかった。

『じゃあいくよぉ〜♡しっかり受け止めてね?』

リリス様の足裏が地球に接触し、数十の国や、数百万の建物や山、自然、そして数億人もの人々は一瞬で踏み潰された。足裏が接触した衝撃で大地震や大津波が起き、二次災害でさらに数億から数十億人が犠牲になった。島国は全て津波に飲み込まれ、日本は沈没した。そして更にニーソの足裏から発せられる匂いが地球の全体を包み込み、生き残った人々や生物を苦しめた。 我々人類はリリス様のほんのちょっとした気まぐれで足裏を擦り付けられただけで、人類史に残る大災害を被ることとなった。こんな理不尽なことがあっていいのだろうか。我々の存在は微生物にも満たないのだろうか。

『地球の変態虫ケラども、あたしのおみ足に触れられて嬉しかったでしょ?ま、まあ数十億匹くらい殺しちゃった気がしなくもないけどお前たちが弱すぎるのが悪いんだからね?謝りなさい。』

あまりの理不尽さに生き残ったわずかな人類はもう何もかも忘れ、リリス様にひれ伏し精一杯自分たちの弱さを謝った。大気全体が蒸れたニーソの匂いに汚染され、生き残ってる人の命や体力を奪ったが、それすらもどうでもよかった。我々は絶対的支配者である超絶巨大魔王リリス様の奴隷であり、虫ケラであるため逆らうことは許されないのだ。人々は完全にほんの少し前までこの星の支配者であったことを忘れ、プライドを捨て、リリス様に完全に服従していた。

『まあいいわ許してあげる♪あたしの寛大さに感謝することね。あたしが次地球に降臨したときまでにあたしへの感謝とお返しとしてイケメンな男の子たっくさん用意しといてよね?じゃあねっ♡』

リリスは荒廃した地球を去った。完全にリリスのおもちゃと化した地球人たちはリリスの命令を叶えられるのだろうか…?