--------------------------------------------------
■ デカイド2・ルーシーのセカイ
--------------------------------------------------
ここまでのデカイド!
魔法少女アリス・ナルタキの罠を脱してランプの魔神娘を退けたデカイドことツバサ・カドーヤ!(嘘!)
ゼウスとの連携で冥界の王ハーデスを封印した彼を監視する未知の仮面ファイター!(さらに嘘!)
新たな背景の世界は海!そして太陽と……人魚?(これも嘘!)
「ここが、次の世界…………なのか?」(全てが嘘!)
(全てを破壊し全てを…………繋がるかなぁ?)

砂浜に立つツバサの前を子供たちが笑いながら波打ち際目指して走っていく。
ツバサ(以下ツ)「ここが新たな世界ってヤツか。けど、なんで海水浴場なんだ?」
水平線を眺めながらぼやくツバサ、海パンに腕章、双眼鏡、救命胴衣の監視員姿。
ツ「俺がここの監視員ってことなのか?ここで起きる水難事故を防ぐのが、この世界での役割ってか?」
うんざりした様子でポリポリ頭を掻きながら、海に背を向ける。陸の方は砂浜の向こうにキャンプ場があり、四角や丸いテントがあちこちに張られている。
ツ「ん?また団体客か。どこかの学校の臨海学校らしいな。ガキどもの相手なんぞしたくも……」
少々予想外の生徒の姿にツバサは言葉を途中で呑み込む。
ツ「なんか最近、やたらとデカい小娘に縁があるな」

担任教師ロッテンマイヤー女史(以下ロ)「さあ、皆さん。着きましたよー。ここがホワイティスト・ビーチでぇーす」
子供たちが一斉に馬車の窓から顔を出して歓声を上げる。数十台が連なった馬車の隊列、一台一台の横腹に『聖ブラッキン学園ご一同様』と書かれている。
ロ「ではー、今日から三日間ここで恒例の臨海学校が始まります。皆さん、はしゃぎすぎないように」
と注意されたとたんにワァーっと大歓声。先生の言うことを全然聞いてくれない。
「海、うみだよ!」
「海なんか僕らの学校からも見えるじゃん」
「バッカだなー、港の中は遊泳禁止だろ?ここ、泳げるんだよ」
「俺なんか、ばっちし肌焼いちゃうもんね」
「あたし日焼けヤダー!」
ロ「ああ、もう!皆さん、静かに、静かにしてください!静かに!」
「静かに?」「静か?」「静か……」「しッずかな!」「静かな湖畔の森の影から!」
エンドレスな歌声にからかわれるロッテンマイヤー女史が爆発寸前に、全てを沈黙させる大音響が水平線まで響き渡る。
ズ……ウゥゥゥン!
いきなり大地震のように揺れる砂浜。
「じ、地震か?」「津波がくるんじゃないか!」「いや違う、あれだ、あれを見ろ」
浜辺で遊んでいた家族連れが驚いて振り返り、見上げた姿勢のまま固まる。
いちゃついていたアベック、老人、アイスクリーム屋台店主も驚いてポカンと口を開けたまま。
臨海学校にやってきた馬車行列の背後から一人だけ馬車に乗らずに歩いてくる女の子の姿。
腰まである黒髪を潮風になびかせ、黒い瞳を輝かせて海を見ている。
他の子供同様に胸元に学校名『聖ブラッキン学園』のネーム入りTシャツとスパッツ、麦藁帽子の平凡な姿。
しかし天に届き雲をつかめるとも思える身の丈は百メートルを越す。
一跨ぎで三列縦隊の馬車の列を容易く超えて、その陰はキャンプ場のテント数十組を日陰にする。
呆然と見上げる海水浴客の視線に気づくとちょっとはにかんで手を振る。
そして水平線を見上げてひとこと。
ルーシー(以下ル)「海かぁ……生まれて初めてきたけど、とってもキレイね。風も太陽も気持ちいいわぁ」
足元の、やたらとキンピカ装飾の馬車から抗議の声。声の源は金髪たてロールの小柄なお嬢様。
ウェルシー(ウェ)「ちょっと!そんなトコで立ち止まらないでよ。バカでっかいのがつったってると通行妨害じゃないの!」
ル「あら、ごめんあそばせ。あんまり小さな発育不全のペタ胸なので存在自体に気づきませんでしたわ」
ウェ「……ふっ、でかい以外に能無しなんで、乗れる馬車もない哀れな小娘には我が最高級自家用馬車は目の毒すぎて見えなかったのですね。お可哀想に」
ル「ウフフフ、そんな誤解ですわ(この成金悪趣味態度デカ小娘めがァッ)」
ウェ「オホホホ、そうですわね(赤貧チョイ胸あり小娘の分際で楯突きやがってェッ)」
上品な笑顔で微笑む女子二名、真夏の快晴の砂浜でルーシーたちの上空だけ暗雲が立ち込め、稲妻が走る。
近くにいた馬車が危険を感じて慌てて距離をとる。
ル「ちょっといいかしら、ウェルシーちゃん」
ルーシーの手の中で魔力の炎が燃え上がる。
ウェ「パーカー、戦闘準備を」
パーカー「かしこまりました、お嬢様」
御者を務める執事パーカーが手綱を引くと馬車の屋根から砲塔がせり出してくる。
その時、少年の声。
カイ(以下カ)「二人とも!ケンカはやめてよ」
一人だけ拳法着(学校名入り)姿の少年、馬車ではなく犬の背に乗ってやってきた。
この犬も並みの大きさではない、馬や牛よりも一回り大きく、しかも口からは人語が飛び出した。
魔犬ガルム(以下ガ)「ご主人様の仰せだ。ガキ女ども、静かにしてな」
ル「アンタに命令されるいわれは……あ、うん。ゴメン、カイ君。もう騒がないから」
ウェ「そ、そうね。私としたことがつい。夏の太陽のせいね」
一応引き下がる少女たちに胸を撫で下ろすカイ。
カ「あ、あのさ、ガルム」
ガ「何用でしょうか?ご主人様」
カ「僕のことご主人様、って呼ぶのはちょっと、恥ずかしいし」
ガ「では、カイ様。これでよろしいでしょうか?」
カ「うん、まあ……その方がましかな」
しかしその背後では依然、火花を散らすルーシーとウェルシー。
ウェ(ふふふ、カイ。あなたに免じて今は引き下がっておくわ。でも覚悟しておきなさい、この浜辺から帰る時、私とカイは幼馴染の一線を越えているんだからね!)
ル(確かに今は騒ぎを起す気はないわよ。だってカイと私は夏の海でオトナへの階段を一気に駆け上がるの。カイ君、童貞のままお家に帰れると思わないことね!)
突然ガチガチと身震いするカイ。
ガ「どうなさいました?カイ様」
カ「せ、背筋にすごい悪寒が!」

ツ「やれやれ、発育過剰のデカ小娘に態度超デカ小娘にデカいワンちゃんか?最近のガキは面倒なのばかりだ」
?「気にすることはないわ。どうせあなたの旅はここで終わるんだから」
ツバサの背後で押し殺した少女の声、背中合わせに水玉スカートの金髪の少女が立っていた。
ツ「また、お前か?アリス・ナルタキ」
アリス「これで最後よ、この海がお前の墓場になるわ」
ツ「いい加減にしてくれよ、ガキ娘の相手はもう……」
振り返った時にはアリスの姿はなかった。代わりに赤フン姿の老人がいた。
学園長「おや、あなたが今年のインストラクターさんですかな?今年もうちの学校の生徒がご厄介になりますが、ひとつよろしく」
ツ「ああ、こっちこそよろしく頼むぜ」

ロ「これ、慌ててはいけません!まず準備体操を……ああ?待ちなさいあなたたち!」
上着を脱いで水着姿になったお子様軍団が海に向かって全力疾走、おいかけるロッテンマイヤー。
カ「ウェルシー、君も急いで。もう集合してるよ。ルーシーさんも早く」
ウェ「お待たせ、カイ」
少し遅れて出てきたウェルシーを見て驚くカイ。
水着というより豪華絢爛な黄金細工に銀細工、ダイヤモンド、ルビー、エメラルドで全身覆われている。太陽光が反射してまぶしすぎて直視できない。
ウェ「ホホホ、王室ご用達服飾店に特注で作らせましたの。少し地味なのが欠点ですけど、私が身につける以上はこれくらいでないと」
カ「欠点は…………ソレ着て海に入ったら海底まで沈むことだと思うよ」
ル「ウフフフ、中身に自信のない人は飾り立てるしかないのが欠点に決まっているじゃない。その点、私は!」
上着とスパッツを脱ぎ捨てるルーシー。その下から出てきた水着姿にカイ、真っ赤になって絶句。
一応ビキニだが、ほんの少し盛り上がった胸には乳首だけ覆う極小ブラ、ギリギリ割れ目のみ隠せる布と紐だけで構成されたパンツ。
ガ「カ、カイ様!気を確かに?」
風俗嬢でもためらうキワドイ系ビキニに純情少年カイ、鼻を押さえた手の下から流血は忠犬ガルムを慌てさせるほど!
ル「私の実家、ビンボーだから。布地が少ししか買えなかったの……」
ほんのり顔を赤らめるルーシー、カイに流し目を送る。
目のやり場に困ってオロオロするカイをはさんで、猛烈な殺気がぶつかりあう。
ウェ(おのれ赤貧娘が!貧乏を口実にお色気戦術とは卑怯な)
ル(ふ、悔しかったら貴様も少しは色気を見せるがよいわ。その貧弱胸で見せられるならね)
その時、ツバサ登場。鼻血の止まらないカイに素早く応急手当。
ツ「大丈夫か、少年。ここは俺に任せろ」
カ「は、はい、インストラクターのおじさん」
ツ「おにいさんだ、よく覚えとけ。そこの……かさばるのと、こうるさいのの二人!」
ル「かさばるのって誰のことよ!」
ウェ「こうるさい、って失礼な!何様のつもり?」
ツ「黙れ、この浜辺ではインストラクターの俺が法律だ。俺に従ってもらう」
恐れることなく立ちはだかるツバサに気おされて引き下がる二人。
ツ「いいか、ここの浜辺の平和を乱すことは許さん。普通の、いや『まともな』水着を着てもらおう」
ウェ「残念ですけどそんな安物はミニットマン家には用意がございませんの」
ル「私だってこのナイスバディにぴったしサイズのやつ売ってなかったもん」
ツ「安心しろ、俺にぬかりはない。変身!」
—カメン・ファイト、D、D、D、デカイド!—
ベルト装着、カードをセットし光に包まれたツバサは、兜にカードを突き刺した異形の鎧の姿に。
ツ「新しいカードを試してやる。手始めに、これだ……」
持っていたブックバインダーから新たなカードを一枚取り出しバックルにセット。



—ファイナル・フォーム・ファイト!ス・ス・ス・スクール水着ィッ!—
ベルトから噴き出す赤いエネルギー流。
過剰露出ビキニと過剰装飾水着がエネルギー流に弾き飛ばされ、正統派スクール水着が少女の体に装着される!が……
ル「きゃぁッ?」ウェ「ヒィェッ!!」
ツ「あ、悪ぃ。二人のサイズが逆だった」
ルーシーの水着は装着と同時に破裂して一部描写禁止箇所まで大公開。
一方、巨大スク水着から這い出たウェルシーももちろん全裸。
カイは鼻の穴の栓を吹っ飛ばす鼻血大噴出で、平和な砂浜騒然。

少し離れた岬の上で双眼鏡片手に監視していたアリス。
ア「おのれ、デカイド。この海水浴場も貴様に破壊されてしまった!」

場所不明の暗闇の中でパシャ、と水音。姿は見えない。
謎の女の声?「いる、近くにきておられる。長の年月お待ちしておりました。我が主となられるお方…………」

沖合いの貨物船上。片目眼帯の海賊風の女が仮面をつけた怪しげな一団を率いている。
仮面男「浜辺が何やら騒がしゅうございますが、マリンバロン様」
マリンバロン「関係ない。我らの目的はあくまで秘宝・ララの腕輪のみ」
覆面「それに関しましては、あの男が、デナイドが動いているとの情報が」
マ「奴か……構わん、邪魔するなら消せ」

夕暮れ、砂浜では夕飯の支度やバーベキューを楽しむキャンプ客の姿がチラホラ。
生徒たちも慣れない手つきで夕飯の用意をしている。
ルーシーやウェルシーと視線があうとカイはちょっと赤くなってうつむく。
ウェ「どうしたの?カイ、顔が赤いわよ」
カ「別に、なんでも」
ウェ(昼間は変態監視員のせいで恥ずかしい目に遭ったけど。おかげでカイは私を意識してるわ。チャンス到来ね)
カ「ちょ、ちょっとウェルシー?それ塩入れすぎだよ?砂糖も徳用一袋は多すぎ……」
ウェ「カイ、あなたは何も心配しなくていいのよ、すぐ私の手料理を味わわせてあげるからね」
カ「す、スパイス十キログラム!鍋から山盛りであふれて」
ウェ「ホホホ、貧乏人には十グラムも使えませんのよ、この最高級輸入スパイスは」
火にかけられた鍋は異臭と黒煙、しかも時折青く発光している、料理かどうかも疑わしい。
カ「で、でも、はっ?ルーシーさん!そ、それは一体何を料理して……」
ル「エッヘヘヘ、獲れたて新鮮シーフードよ。サイコーのブイヤベース楽しみにしてね」
海の家より巨大な鍋の中から吸盤つきの巨大な触手が逃亡を試みてはルーシーに押し込まれ、鍋の底からは不気味な咆哮が聞こえてくる。
いかなる海の怪物が閉じ込められているか想像もできない。
ウェ「あら、ルーシーさん。安上がりな食材ばかりで経済的ですわね……」
ル「ウェルシーちゃんこそ、ご自分でお料理できるなんて驚きましたわ?」
穏やかな笑顔で会釈する二人の間の空気が闘気でグニャリと歪む。
カイ、おびえつつウェルシーの肩を叩く。
カ「あ、あのさ、ウェルシー」
ウェ「あら、カイ?もうちょっと待ってて。今……」
カ「君のお鍋、なんか様子が変なんだけど」
鍋が怪光を発し激しく振動している。
ガ「危ない!カイ様、伏せてください!」
駆けつけたガルムがカイとウェルシーを口にくわえて緊急退避。
一瞬光が消え、直後、猛烈な光と押し寄せる熱気。
光が消えた後には直径十メートル以上の大穴と立ち上る水蒸気だけが残った。
ル「アハハハ!攻撃用兵器を調理できるとは、さすがお嬢様!」
ウェ「ぬ、ぬ、ぬ、何よ!ちょっと失敗しただけよ」
カ「ルーシーちゃん、君のお鍋も?」
ルーシーの巨大鍋が身震いし、鍋底を突き破って巨大な蟹足が!
鍋蓋をこじ開けて蛸の足と蟹のハサミが伸びて生徒たちを襲う。
咄嗟にガルムが火を吐いてシーフード怪獣を牽制、拳を固めたルーシーが跳躍する。
ル「ジャッ!」
ドォン!
ルーシーの巨大な拳の下でシーフード怪獣爆発!黒煙と炎を背景にルーシーがゆっくりと立ち上がる。
ル「もう、心配ねェ……」
ガ「心配だらけだ、このアホ娘ども!」
ガルムのツッコミを聞こえないふりして調理に戻ろうとする少女たち。
ル「フッ、前菜は引き分けのようね」
ウェ「勝負はメインでつけましょう」
ウェルシーの肩にガルムが手、というか前足を置いて引き止める。
ウェ「な、なによ?……まさか『アンタじゃ無理だ、俺が代わる』とかいうんじゃないでしょね?」
ガ「アンタじゃ無理だ、俺が代わる」
どこからかフライパンと包丁を取り出すガルム、そして一時間経過。
シーフードカレーを食べている一同。
カ「とっても美味しいよ、このシーフードカレー!ガルムって料理もできるんだね、驚いたよ」
ガ「いえ、ほんの我流でして。お見せするのもお恥ずかしいかぎりでございます」
ルーシーとウェルシーが横で打ちひしがれている。
ル「ま、負けた?地上最大の美少女と呼ばれた私が」
ウェ「犬ごときに、料理勝負でッ!」
皿を片付けながら横を通り過ぎるガルム、カイから見えないように嘲笑いながらコソッとひとこと。
ガ「……負け犬だな」
逆上しかけるルーシーとウェルシー、しかしカイが見ている前では何もできない。

その姿をテントの影から見守るツバサ、ちょっと楽しそうだ。
ツ「ホント、最近のガキは色気づくのが早いな。お前も、そう思うだろ?」
?「そうだな。愛娘の成長は特に早く思えてしまうよ」
背後の暗闇で砂を踏みしめる足音、渋い男の声が闇の中から響く。
長身の男のシルエットだけが逆光の中に現れる。
ツ「あの金髪成金小娘がお前の娘だったとはな。結婚して引退したと聞いていたが、復帰したわけか。怪盗、いや仮面ファイター・デナイド?」
男が姿を見せる、白いスーツにネクタイ、ニッと笑った口の中は総金歯!ダンディなおじさん、登場。
ジェ「久しぶりだね、ツバサ。それとこの姿の時は実業家ジェニー・カセグレン・ミニットマンと呼んでもらいたい」
ツ「一体何を狙っているんだ?」
ジェ「なぁに大したものじゃない、娘にプレゼントをと思ってね。腕輪探しさ」
ツ「腕輪?ララの腕輪ことか!」
ジェ「さて、どうかな?」
デナイドは答えず、ただ笑っているだけだった。

学園長「では、みなさん。これより恒例『肝試し』の組み分けを行います。いっておきますが、これは遊びではありません。恐怖心を克服して強い精神を養うための授業の一環なのです。では組み分けをくじ引きで行います」
上級生の手からくじを持つ生徒たち。その中にはカイとウェルシー、人間サイズに縮んだルーシーもいる。
少し不安そうにくじを引くカイ。
カ「誰が僕とペアになるのかな(僕ってくじ運悪いからなあ)」
ウェ「さあ?私も誰になるのか楽しみだわ(フッ、こんなこともあろうかと!くじ係に賄賂としてクラブ活動費十年分を渡してあるのよ)」
ル「私もだわ、できれば知ってる人のほうが(こんなこともあろうかと!くじ番号に魔法で細工をしといたのよ、どの番号をひいてもカイ君のが私と同じになるように)」
カイがくじをひき番号を読む。
カ「ええっと、三十七番だって?誰かな、三十七番」
ウェ「な?三十七番ですって!(→十一番)」
ル「バカな!(→二十二番)」
学園長「なお、くじ作成中に魔法による不正が発見されました。実行犯はあのとおり処罰しております」
指差した先には木から吊るされている上級生。
学園長「本人は『頼まれてすりかえようとしただけ。魔法は知らない』とシラを切っておりますが、後ほどドロを吐かせて関係者一同にお仕置きしますので、身に覚えのある者は首をよく洗って待つように」
ウェルシーとルーシーの顔色が悪くなるがカイは気づかない。
ウェ「こうなったら」
ル「バレる前に」
ウェ&ル「短期決戦あるのみ!」
女子生徒のひとり「あ、あたし三十七番だわ。カイ君とペアなんてうれし……」
ル「我になりかわり、この地に立つべし!」
ルーシー素早く呪文を唱える。くじ札が入れ替わる。
女子生徒「あ、あれ二十二番?」
ル「あ、私三十七番だわ?よかったぁ、カイ君とペアだわ!」
ルーシーに抱きつかれてカイ、驚き、焦り、ちょっと絶望。
それを見たウェルシー足早に去り道具係の前に立つ。
道具係「あ、ウェルシーさん?何か御用ですか」
ウェ「アナタ、おどかし役兼任なんですって?代わってくれないかしら」
道具係「そんな勝手を許すわけには……か、代わってください!好きなだけ、存分に!」
幽霊でも逃げ出しそうな激恐迫力オーラの前に道具係、あっさり敗北。

暗くなった海岸でロッテンマイヤー女史がペアになった生徒を前に説明を始める。
ロ「では、コースの説明をします。あの岬の下に洞窟の入り口があります。そこから入って一番奥にある、海の女神様をおまつりした祠まで行きます。祠の前に置いてあるお札を一枚とって戻ってきたら合格です。さあ、始めてください」
楽しそうに次々と入っていく生徒たち。
「ギャーッ!」「た、タスケテ……」
全員が蒼白で逃げ帰ってくる、散々な結果に!
学園長「ほほう、今年のおどかし役は気合が入っておりますなあ」
洞窟の奥にうごめく影、お化けの仮装をしたウェルシーだ。
髪の毛を振り乱し鬼気迫るメイクもさることながら異様なオーラまで纏っている。
ウェ「どいつもこいつも顔見せただけで脅かす前に逃げるなんて根性ナシばっかだわ。通過できるのは私のカイだけね、きっと」
本人は可愛く笑っているつもりだが、お化けメイクのせいで凄惨な悪鬼の嘲笑になっている。
ウェ「まずはカイと組になってる赤貧バカデカ小娘をたっぷり脅かして小便チビる醜態を晒させ、カイと分断。そして道に迷ったフリをした私をカイが助けて……フッ、フフフ、フハハハ!ハハハハハッ!」
ウェルシー、ついに『悪の高笑い』を体得。

カ「ウェルシーどこいっちゃったんだろ?さっきから姿が見えないけど?」
ル「きっと組み分けが離れちゃったのよ、心配ないわ。それより……次、私たちの番よ」
カイの腕に抱きつくルーシー、柔らかな胸の感触にカイはたじろぐ。
カ「あ、あんまり、くっつかれると、ぼく、困る」
ル「だってぇ、恐いんだもーん」
赤面しているカイを引っ張って洞窟の中へ。

ランプの灯りを頼りに進むカイ、途中のおどかし役をクリアして祠の前に。
洞窟の奥は広い空間になっていて祠のまわりは渦巻く海水に囲まれている。
ウェ(……楽しい思い出はここまでよ)
ル(いるわね、祠の影に。けれど)
ウェ(邪魔者を始末し!)
ル(最終ラウンドに進むのは)
ル・ウェ(私だけよッ!)
渦巻く殺気を感じて震えるカイ、気力を振り絞って足を進める。
カ「ほ、ほら、あれがお札みたいだね、じゃ一枚とって帰ろ……」
その時、祠の影から飛び出す影!嫉妬の狂気でマジバケモノ化してるウェルシーにカイも驚愕!
待ち構えていたルーシーもビビって攻撃魔法を忘れるほどの迫力!
ウェ「ククク、ルゥシィィィッ!海の藻屑と消えるが……」
ドォン!巨大な水柱が渦潮から吹き上げ、ウェルシーを弾き飛ばす。
ウェ「エ?ギャァァァッ……」
どこかに飛ばされていくウェルシー。
カ「ウェルシー!うわっ?」
水柱から巨大な手が出現してカイを摘み上げる。
ル「カイ君!クッ、縮小モード解除!」
洞窟内に一気に膨れ上がるルーシーの体、頭が天井につっかえ、左右の岩壁を両手で押し広げる。
地震の様に揺れる岬、岸壁に亀裂が走り崩れていく。
巨大化のパワーで岬を割って頭を出したルーシー、右手を振り上げる。
ル「逃がさないわよ、私の獲物、じゃなくてカイ君!」
勢いよく右手を海面に叩きつけて何かをつかみとる、余波で高潮発生。
突然の大波に砂浜でいちゃついてたカップル数組、ずぶ濡れに。
ル「ぬぅ?変わり身の術!」
ルーシーの手の中にいたのは目を回しているウェルシーだけ。
ル「ガァッ!」
激昂し雄叫びあげるルーシー、踏みしめた岬が崩壊し大気の震えが水平線の彼方まで伝わっていく。

停泊していた貨物船上。
覆面「マリンバロン様、異常に高い生体反応ありました!」
マ「よし、追いかけるぞ。見失うなよ」
積荷の影からマリンバロンたちの様子をうかがうツバサたち。
ジェ「鉄十字騎士団め。やっと動いてくれたな」
ツ「ララの腕輪がやつらの手に落ちると話が面倒になる。俺たちも急ぐか」

カ「ここは……どこ?床の上、にしちゃ柔らかくて暖かいけど」
目覚めたカイは床に寝かされていた。
天井は数百メートルの高さ、闘技場のように広々とした空間には正体不明の機械や壊れた水槽が点在。
機械も大半は壊れているが中心にある王城並みの巨塔は明滅する光に覆われている。
そして女の声。
?「お目覚めですか、ご主人様」
カ「誰だ!」
跳ね起きるカイ、しかし女の姿は見えない。
カ「どこだ、どこにいるんだ?」
?「はい、ここに控えております」
カ「姿をあらわせ!」
?「ええっと、さっきからご主人様のおそばにおりますが」
カ「隠れているのか?それとも透明人間?」
?「いえ、ですから。ご主人様の足の下でございますってば」
カ「え?わわっ!」
床に大きな女の顔、驚く暇もなく揺れる足元が持ち上がり傾いていく。
斜面を転がり落ちそうになったカイを大きな手が受け止める。
見上げると天井につっかえるほど巨大な頭の青い髪の少女がニコッと微笑む。
?「大丈夫ですか、ご主人様」
カ「き、君も、ルーシーちゃんと同じ巨大……」
下を見下ろし愕然とするカイ。
カ「巨大……巨大人魚!」
青い髪の巨大少女の下半身はお魚さんだった。しかも!
カ「な、なぜ……メイドさんなんだ?」
巨大メイド服着用巨大人魚、登場!
?「もちろん、それはマー・メイドですから。これが人魚の正装に決まってます!」
カ「ハハハ、そうなの?(こ、この人魚さん……すごいバカかもしれない)ところで、あなたの名前は?」
?「フフフ、私の名前を知りたいですか?私の名は…………わかりません!」
大威張りで宣言する巨大人魚に手の平の上でずっこけるカイ。
?「そういえば自分の名前って考えたこともなかったです。ご主人様、ご存知ありませんか?私の名前」
カ「知りません!ってか、なんで僕をご主人様って呼ぶんですか?」
?「知りません!っていうよりご主人様としてちゃんと登録されてましたし!」
カ「いつから?」
?「分かりません、ここカレンダーとかないですから」
カ「やっぱりバカなんだろうか、この大きな人魚のおねーさん」
つい口に出てしまうカイに巨大人魚娘、笑って答える。
?「もちろん、そのとおりでございます!私を『バカ』と一目で見抜かれるとは、さすがご主人様」
巨大人魚娘は絶対自信無敵スマイルで堂々と『自分バカ』宣言し、カイは力尽きる。

胸に抱かれたまま島を一回りするカイ。
巨大人魚は尾ひれで器用にピョンピョン跳ねて歩いている。
島には古い遺跡の町が残っているが人間はいない
カ「ねえ、人魚さん。君の名前、もしかしてキキっていうんじゃない」
?「え、どうしてでございますか?」
カ「だって人魚さんのしてる腕輪に古い言葉でキキって彫ってあるよ」
?「あら、ほんとですね。気がつきませんでした。そういえば昔、研究員の方々も私のことをキキと呼んでいたような気が」
カ「じゃあキキって呼ぶ……研究員?ここで何を研究していたの?」
キキ(以下キ)「難しかったので忘れちゃいました」
カ「…………あ、そう。聞くんじゃなかったよ。あれ、ぼく古代語がどうして読めたんだろう?」
キ「むむ、ご主人様!邪悪な気配が近づいております!」

船の舳先、双眼鏡で何かを探しているマリンバロン。
マ「やはりアリスとかいう小娘の情報どおりか、人間の目では何も見えぬ。が、確かにここで間違いない。このまま進め」
不意に船の姿が揺らめき、海上から消える。
マ「結界の中に入ったぞ、用心しろ」

少し離れた海上で平泳ぎのルーシーと犬掻きのガルム。
ガルムの頭の上にふんぞり返って立つウェルシー。
ウェ「バカ犬!こっちにカイがいるのね?」
ガ「泳げねぇお前を連れてきてやった俺にバカ犬たぁなんだ!ま、いい。カイ様は確かにあの島におられる」
目を凝らすウェルシー、暗い海には島影は見えない。
ウェ「島なんてどこにもないじゃない」
ガ「目の前にドデーンとデカイ島があるだろうが。ド近眼か、お前は」
ル「あらあら、悪いのは性格だけかと思ったら目も悪いのかしら?」
ウェ「なんですって!じゃあ、その島とやらにさっさと連れて行きなさい!」
ガ「てめえら、ちったぁ静かにしやがれ!」
ガルムに怒鳴られてそっぽをむいて黙るふたり。
ル「確かに、島全体になんか結界っぽいのがかけられてるわね。探知妨害の類らしいけど」
ガ「だったらなんで俺やお前は見えるんだ?」
ル「さあ?でも、急がなきゃ、カイ君が心配だし」
ウェ「ふん(カイを助けてムフフフな展開に持ち込むつもりだったんでしょーけど!そうはさせない、っていうか!このピンチこそ最大のチャンス。今夜で幼馴染は卒業させてもらうわ)」
ル「ふん!(邪魔っけな成金娘がくっついてくるなんて!まあ、カイ君を助ける前に始末すればいいか!ピンチのカイ君助けてハートをゲット。今夜で子供時代は卒業させてもらうもん♪)」

キ「大変です、ご主人様。ドス黒い欲望にまみれた禍々しい巨大な邪念がふたつ、こちらに近づいてきます!」
カ「な、なんなの?そいつら!」
キ「わかりません、でもご安心を!わたくしのマーメイド・ボディはご主人様を子々孫々の代までお守りするよう、安全設計になっておりますです!」
カ「そ、それは安心だね(冷や汗)」
キ「ところでご主人様、子々孫々まで守るためにお聞きしますけど。ご主人様の子孫の方々はどちらに?」
カ「あの…………僕、子供がいる年齢に見えますか?」
キ「もしかして、まだ、お子さん、いらっしゃない?」
カ「いるワケないでしょ!」
キ「そ、そんな!『ご主人様だけでなく、その子々孫々に至るまでお守りせよ』と厳命されているのに?ああ、このままでは創造主様の命令を実行できないわ」
カ「(ここまでバカな人魚さんだとは)あのですね、とりあえずは僕だけでも守っていればいいんじゃ…………」
キ「というわけで、ご主人様。この場で急いで子孫つくってください。できるだけお手伝いしますから」
カ「できません!ってか、子供ってどうやってつくるかも知らないです!」
キ「フッ、ならばわたくしにお任せを…………脳内図書館、検索!キーワード、子孫、製造方法」
カ「なんなんですか、その無茶苦茶でヤバそうなキーワードは!」
キ「キーワード追加、無茶苦茶、ヤバい…………ヒット!わかりましたよ、子孫製造法が!」
キキ、胸の谷間からカイを摘み出し、いきなり着ていた服を脱がせ始める。
カ「ななな?何をするんです!」
キ「第一段階、『ひん剥く』です。そして第二段階で『挿入』!第三段階は…………」
カ「ううっ、言葉の意味わかんないけど僕、今超ヤバい状態?」
キキ、メイド服のスカートの裾をつまんで持ち上げる。
ノーパン、だけど下半身が魚なので倫理規定には反してない!
鱗の一部に縦線がいきなり入り、左右に広がった。
縦になった唇のように開いた入り口は粘膜の穴が奥へ続いている。
キ「さあ、ご主人様の出番です!」
カ「ぼ、僕に、いったい何を」
キ「ご主人様にはわたしの奥へ入っていただきます!そこでタップリ中へ出してください!」
カ「出すって何?」
キ「恥ずかしくって口ではいえないモノです!」
カ「やめてくれー!」
抵抗むなしくキキの下半身に開いた入り口に押付けられるカイ。
ネトネトした滑りやすい液体を浴びて自由に動けない。
?「ガルムミサイル、発射!」
キ「誰ですか!大事な仕事を邪魔するの……?!」
ガ「ウギャァァァッ!」
海面と平行に飛んできたガルム、キキの顔面直撃!
爆発みたいな衝突音がしてキキは転倒、ガルム気絶して海中へ落下。
キキの手から落下するカイを大きな手の平が受け止める。
海面を盛り上げ流れ落ちる海水の下から、怪獣のように姿をあらわすルーシー。
ル「どこの馬の骨、いや魚のホネか知らないけど。私のエモノに手を出すなら容赦しないわよ」
カ「…………(エモノって僕のことなんだろうか)」
ウェ「か、カイ、だい、じょお……ぶ?」
カ「ウェルシー、君こそ?一体どうしたんだ?」
ボロボロのウェルシーがルーシーの指にしがみついている。
ウェ「あのバカ犬の背中に乗ってここまできたの。そしたらこのバカデカ女がいきなりバカ犬をブン投げたのよ。死ぬかと思ったわ」
ル「ごめーん、咄嗟にカイ君が危ないって思って(チッ、しぶといわね、成金小娘)」
倒れていたキキが頭を痛そうに押さえながら立ち上がる。
大人の体のキキの方がルーシーより頭二つ分大きい。
キ「もー、いきなり乱暴なお客様ですねー」
巨大メイド人魚VS巨大スクール水着少女のにらみ合い。
その時、新たな水柱。
カ「な、何か、他にもまだ?」
マ「動くな、この島は我らが完全に制圧した。逆らえば皆殺しだ!」
水中から大型船浮上、船首に立つマリンバロン。
ルーシーとキキの足元を包囲し、魔法仕掛けの大型弓を構える覆面男たち。
キ「まさか、こんな?島の結界を破ってこんなに沢山の侵入者が?ああ、どうしよう…………お茶をお出ししようにも、ティーカップの数が足りないわ」
カ「困るのそこですか!」
マ「お茶などどうでもいい。我らが求めるのは『ララの腕輪』のみ。さっさと差し出せば命だけは助けてやる」
キ「ララの腕輪…………この島にそんなのあったかしら?」
マ「とぼけても無駄だ、この島を人目から隠す広域結界を支えるエネルギー源だろう」
キ「ああ、あれ!そういえばそんな名前の腕輪でしたわ、忘れてた。このところお茶を沸かすのにしか使ってなかったから」
ル「島ひとつ隠せる広域結界張の動力源でお茶沸かしてたぁ?何考えてんの、このボケ人魚」
呆れる一同の中でいち早く行動するマリンバロン。
マ「アホの相手はしておれん!腕輪の反応は島の中心の建物から出ている、回収するぞ」
駆け出したマリンバロンたち。
キ「そうはさせません、アレがないとお茶が沸かせなくなりますから!」
ピョンピョン跳ねて先回りしたキキのスカートの下から、イカの足みたいな触手が何本も躍り出てマリンバロンを襲う。
マ「うぬッ?ならば、鉄甲船28号変形だッ」
捕まえられたマリンバロンが懐から金属製の箱を取り出す。
箱にはアンテナかレバーみたいなのが二本ついている。
乗ってきた貨物船の外装が外れて鋼の船体が出現、さらに変形して少女型巨大ロボに。
マ「薙ぎ払え、鉄娘28号!」
カ「危ない、ルーシーちゃん、伏せて!」
ル「うん!」
カイを庇う形で伏せるルーシー、もちろんウェルシーは落っことしたように見せかけてわざと放り出す。
ズドン!巨大ロボ少女の口から砲撃、キキに命中して大爆発。
ウェ「キャーッ」
飛ばされていくウェルシー、ポチャンと海へ落下。
爆風の後にカイが見上げると、胴体に大穴の開いたキキが笑っている。
キ「あちゃー、やられちゃった。私ってホント、ドジッ娘ですね」
キキの姿が崩れバラバラになり、体の破片は全て魚に変化して海へ帰っていく。
後には腕輪だけが残る。
カ「キキさん、死んじゃっ…………」
キ「あははは、油断してました。水中戦なら自信あったんですけど」
カ「腕輪が喋った?」
キ「自分でもすっかり忘れてたんですけど、腕輪の方が本体だったりして。テヘッ」
ふにゃふにゃと脱力していくカイ、海草に巻きつかれながら這い上がってきたウェルシーも話についていけないので目を白黒。
「危ない、カイ君!」
襲いかかる巨大少女ロボを阻止するルーシー、鋼鉄製の敵との重量差に苦戦する。
ウェ「さ、ここはルーシーに任せてあいつらを追いましょ」
カ「え、でもルーシーさんひとりじゃ」
ル「あっ?ウェルシー、あんた抜け駆けする気ね!」
キ「私も同行しまーす」
カイの手を引いて走り去るウェルシー、転がってついていくキキの腕輪、一人だけ足止め食って歯噛みするルーシー。

マ「こいつがララの腕輪か。まさに超エネルギーの塊だ」
研究所の廃墟で強烈な光で輝く腕輪を手にするマリンバロン。
追いかけてきたカイとウェルシー。
カ「その腕輪をどうする気ですか、おばさん?」
マ「(怒)誰がオバサン、あ、いや。これをどうしようと貴様のようなガキには関係が…………」
ウェ「だいたいわかったわ、それを高値で売りはらって借金の返済に充てようっていうんでしょ!」
カ「……ウェルシー、相手は悪の組織かなんかだよ、借金の返済なんて」
マ「き、貴様どうして知っている!トレジャーハントの失敗続きで我が組織の財政が火の車だ、という極秘事項を!」
カ「ホントにそうだったんですか?」
マ「まあいい、我が組織の機密を知る者を黙って返すわけには…………そういえば貴様のような子供がなぜここに?」
キ「はい、カイ様は私のご主人様だからです!つまりこの島のオーナー様なのです」
キキの腕輪が手下の覆面男を何人か跳ね飛ばしながら転がってやってきた。
マ「この島の?この島は確か伝説の十戦士のための研究施設。ではカイとやら、貴様は十戦士の子孫なのだな?」
カ「え?確かに僕の家は代々拳法家だけど、リン家は伝説の十人の戦士と関係ないって…………」
マ「リン家だと?そうか、リン家の出身か。なるほど、自分が何者なのかも、まだ伝えられてはいないわけか」
「?どういう意味ですか」
「知りたければ後で教えてやる、いい手土産ができた。捕らえよ、キキの腕輪も回収しろ」
覆面男がカイを取り囲むが、いきなりバタバタと倒れていく。
二人の男が覆面男たちをあっという間に片付けてしまった。
マ「だ、誰だ!」
ツ「通りすがりの…………仮面ファイターだ。覚えておけ!変身」
—カメン・ファイト・D・D・D・デカイド!—
ウェルシーとカイ、もうひとりの紳士を見てびっくり。
ウェ「パパ…………?なんで、こんなトコに…………」
カ「ジェニーおじさん?ウェルシーのお父さんがなぜ?」
ジェ「パパ?なんのことかな?私は…………変身」
カードをボウガンにセット、頭上に撃つ。
—カメン・ファイト・D・D・D・デナイド!—
降り注ぐ青い光の中で青い異形の甲冑戦士に変身。
カ「ウェルシーのお父さん、コスプレ趣味あったの?」
ウェ「あんなのパパじゃない…………きっと何かの間違いよ」
半泣き顔で首を横に振るウェルシー、カイが目を背けたくなるくらい悲惨な顔だ。
マ「おのれ!こい、鉄娘28号!」
ジェ「下がっていてくれたまえ、少年少女。危ないからね」
研究所の壁が崩れ、倒れこんでくるルーシーの巨体。
鉄娘28号の追い討ちをバリアで防ぐのが精一杯。
ウェ「なによ、負けてんじゃないの?この役立たず、ウドの超大木!」
ル「っるっさいわね!昼間なら、太陽の光さえあればこんなヤツ!」
間断ない砲撃の前にルーシーバリア崩壊寸前!
ツ「仕方ないな、少し手伝ってやるか」
ツバサ、カードを取り出しセット。
—ファイナル・アタック・ファイト、スクール水着ィッ!—
ル「エッ?キャッ?」
突如、ルーシーの足元の地面が割れる。そこから噴き出す海水がルーシーを天高く持ち上げた。
鉄娘28号の砲撃も吹き上げる水圧の壁に阻まれる。
ル「なに?なに!ナニナニナニ?キャーッ!」
頂点に達した噴水は鉄娘28号に向かって流れ落ちる、ルーシーを乗せて。
ルーシーのお尻が鉄娘28号の顔面直撃。
超重量級の直撃で鉄娘28号の首がもげ、胴体が潰れて爆発する!
これが、これがッ!ファイナル・アタック・ファイト『ウォータースライド・ヒップアタック』だ!
その衝撃力は百億トンに相当する!
ル「あいたたた、お尻が、って!だ、誰が百億トンよ!そんなに太ってないわよ!」
ウェ「あら、体重以外に取り得がないっていうのはホントじゃなくて?オーホッホッホッ」
手駒を全て失って焦るマリンバロン。
マ「ヌゥッ…………」
ジェ「これで形勢逆転のようですね、マドモアゼル?」
デナイドにボウガンを突きつけられ苦渋のマリンバロン。
背後に銀色のオーロラがあらわれる、オーロラの中から姿を見せる少女。
ツ「やはりお前が裏で糸を引いていたか、アリス・ナルタキ」
ア「デカイド、この海がお前の墓場になる。そういっておいたわね」
マ「あ、アリス!ではあなたが腕輪の所在を我々に教えたのは?」
ア「そうよ、デカイドを始末させるためだったけど。実力が足りなかったみたいね」
マ「クッ、よくも我々を利用してくれたな!」
ア「いいえ、利用するのはこれからよ」
銀のオーロラの中から水晶のようなものを取り出すアリス。
それをいきなりマリンバロンの股間に突き刺す。
マ「うっ!ウォ?ウォォォッ、み、みみみ、みなぎるゥッ!!」
ツ「あれは確か、ギガイア・メモリ!わけのわからんモノの記憶が封じられているとかいうヤツか」
—ジャイアント・スネイクゥッ!—
ア「行きなさい。ジャイアントスネーク・ドーパント」
アリスはオーロラの向こうに姿をくらませる。
巨大化していくマリンバロン、しかも下半身は巨大蛇に変化。
その大きさはルーシーを上回り、胴体で島の外縁に二重三重に巻きつく。
右手でキキの、左手でララの腕輪をつかみ哄笑するマリンバロン。
マ「あとは…………カイ君をモノにしちゃえばセカイはアタシのパラダイスゥゥゥ!」
ついにショタ欲望を剥き出しにしたマリンバロンがカイに襲いかかる。
ル「そんなコトは!」
ウェ「させないわよ!」
立ち塞がるルーシーとウェルシー、だけど尻尾の一撃で一蹴。
カイの頭上を巨大おっぱい(やや垂れぎみ)が占領。
マ「さーあー、カイくぅぅぅん。おねえさんと一緒にくるのよォォォ」
カ「イヤです!絶対イヤです!」
マ「うふふふ、強情なところにおねーさん、そそられちゃうわぁ」
変態怪獣に成り下がったマリンバロンの毒牙がカイに迫る。
ル「うう、太陽光さえあれば、こんなヤツ」
ウェ「私にも力があれば、カイを盗られずにすむのに」
その時、ツバサとデナイドの手にしたカードに腕輪の絵があらわれた。
ツ「力が欲しいか?」
ジェ「ならば、くれてやる!」
—アタック・ファイト、キキの腕輪!—
—アタック・ファイト、ララの腕輪!—
光の矢がマリンバロンの持つ腕輪を跳ね飛ばす、キキの腕輪はウェルシーの腕に、ララの腕輪はルーシーの腕に装着される。
ウェ「オオーッ!」ル「きったぁッッッ!」

ル「いくわよ、未成年お断り!アダルトタッチでおねーさんになーれ!」
—ファイナル・カメン・ファイト、ルーシー・アダルト!—
ルーシー、白熱光の中で背丈が伸びオトナの体へ。
胸が膨張してプルンと揺れ、一回りでかくなったヒップラインがスクール水着を引き裂く。
全裸の肉体から噴き出すエネルギーがマリンバロンの尻尾を弾き返す。
る「ウッフーン(LOVE)」

カ「こ、こんな、スゴ…………あ、違うんだ!ウェルシー、そんな意味じゃ」
鼻血出血のカイ言い訳しようとしてウェルシーの異変に気づく。
目を赤く光らせたウェルシーが天に向かって手を広げている。

ウェ「ウオォーッ!アー、マー、ゾネース!」
アマゾネス、アマゾネス…………こだまする少女の雄叫び。
—ファイナル・カメン・ファイト、ウェルシー・アマゾネス!—
ウェルシーの幼児体型一変、お色気体型へ(ただし胸小さめ)。
しかもそのまま水着を引き裂いて全裸巨大化。
ウェ「ワォ———ン!」
四つんばいになり金髪の縦ロールをたてがみのように振り乱し雄叫びを上げる。
まさしく野獣!
カ「なんなんだーっ?この状況は」

ちょっと離れたところから見物しているツバサたち。
ツ「キキの腕輪、着用者に状況に対応した巨大化戦闘能力を付加するマジックアイテムだったな。巨大怪獣には野生児ってわけか」
ジェ「フフフ、クローニクル様の愛娘、ルーシーちゃんと張り合うにはこれくらい必要だろう。それに人工太陽・ララの腕輪はルーシーちゃんのモノになった。不公平はなかろう」
ツ「でもいいのか、お前の娘、ハダカだぞ」
ジェ「仕方ない、アマゾネスは『強くてハダカで強いヤツ』な変身だからな」
ツ「おまけに野生化しちゃってるし」

マ「キサマら!邪魔をするなら容赦……」
ル「ぬん!」
バキッ!アッパーカット一発で顎を砕かれたマリンバロンがのけぞる。
ウェ「だい・せつ・だァーン!」
ウェルシーの鋭い爪が蛇身を切り裂く、あっというまに寸断されるマリンバロンの胴体。
ジェ「戦力では上回ったが、このままでは勝てんな」
マリンバロンの傷口が高速で復元されて元通りの体に。
ツ「メモリ復旧機能か。やはりメモリブレイクするしかないな。少年、手伝ってくれ」
ツバサの手にした空白カードに筋骨隆々の拳法家の絵があらわれる。
カ「え、でも、僕がどうやって?」
ツ「ちょっとくすぐったいぞ」
キョトンとしているカイの背中に手を差し込むツバサ。
ツ「偉大なる拳祖リー・カイオウより伝えられし拳士の血脈よ、ここに甦れ」
—ファイナル・フォーム・ファイト、リー・カイオウ!—
硬直したカイの体から半透明な人影が飛び出し地を駆けてルーシーの元へ向かう。
ジェ「では、こちらは少年の未来の可能性に賭けよう。リン・カイオウ、偉大なるカイオウの名を告ぐべき者よ」
—ファイナル・フォーム・ファイト、リン・カイオウ!—
ボウガンのカードがカイを打ち抜く、若々しい拳法家の幻がカイから抜け出してウェルシーの元へ。

カイから抜け出た拳法家の幻が岩場を疾走する。
幻の中でカイの意識が目覚める。
カ(あれ?僕、走ってる?)
カ「ぬ、なんとか間に合いそうじゃな」
カ(あれ、僕の声だ?でも僕なにもしゃべってないのに)
前方を見上げるとルーシーが戦う姿が見える。
廃墟の古代建築を踏み潰しながら巨大な蛇女と殴り合っている。
カ「ふむ、ルーシーとやら、なかなかやりおる。さすがはあの二人の娘というところか?」
カ(何いってるんだろう、僕?)
カ「しかしこのままでは勝てぬ。よかろう、半分だけ手助けしてくれよう」
拳法家の幻がルーシーの真下、両足の間にきて見上げる。
海水に濡れた黒い縮れ毛と左右の秘唇がこすれあう様がはっきり見える。
カ(わ、わわわ?見ちゃダメだよ!)
カ「うむ、よく育っておる。しからば失礼いたすぞ、娘」
拳法家の幻がジャンプ、わずかに開いた粘膜の隙間に飛び込む。
ル「キャッ?な、私の中に何か入って…………」
薄暗い肉の縦穴の中、奥へ這い進む。
カ(ここルーシーちゃんのお腹の中なの?あ、あんなところに入り口があったなんて知らなかった)
ぬるりとした感触、粘液にまみれていく手足、初体験の感覚に戸惑うカイ。
カ「ふむ、まだまだ固いのう?少しリラックスさせねば」
カ(え、何をする気なの?)
カ「このあたりかの?ドリャ!」
気を込めた拳を波打つ粘膜のくぼみに放つ。
オーラが波紋状に広がり膣内部を激震させる。
ル「はにゃ!な、な、な…………」
思わずうずくまりお腹を押さえるルーシー。
痛みはないが下腹部が荒海になったような感覚に翻弄される。
ル「こ、この気配はカイ君?私の中にカイ君が!あ……」
ルーシーの意志とは関係なく膣は激しく反応、割れ目から愛液が染み出してくる。
ル「あ、カイ君。そんな暴れないで、初めてなんだから、私、そんなに激しく、あぅ」
ついに座り込み戦闘不能になるルーシー、チャンスと見て襲いかかるマリンバロン。
—ヒィートォォォッ!—
ルーシーの右手が勝手に動いてマリンバロンの攻撃を受け止め、猛烈な熱気を放ってマリンバロンを退ける。
カ(ウワワッ?何?どうなっちゃてるの!)
カ「では、このまま奥まで運んでいただくとするかの」
激しく動く膣壁と逆流する愛液に運ばれカイ、更に深みへ。

若い拳法家の幻が岩の上を跳躍する。
カ(え、ここは?僕は確かルーシーちゃんのお腹の中にいるのに、同時に別の光景が見えてるぞ)
カ「頑張っているね、ウェルシー」
カ(あ、あれ?やっぱり僕の声だ)
正面にウェルシーの後姿、マリンバロンの巨大な尻尾相手に苦戦中。
叩きつけられた尻尾を抱きかかえるように受け止め、噛みつく。
背後からは、うっすらと金毛の生えた盛り上がりとピッチリ閉じられた亀裂が見える。
若き拳法家、亀裂に向かって跳ぶ。
ウェ「ガウッ!?!?」
突入を受けたウェルシー、思わず敵を放してのけぞる。
カ「安心してウェルシー、僕がついてる。半分だけ手伝うよ」
ウェ「ガ、ガウ?グァ…………か、カイ?はぁぅ」
カ(ウェルシーのお腹にもこんな入り口が?女の子にはみんな、お腹への入り口があるのかな?でも何に使う入り口なんだろう?男の子にはこんなのないのに)
カ「さてとこちらも少しほぐしてあげないと。真空旋風脚!」
蹴り技の巻き起こす風圧が閉じられた肉の隙間を大きくこじ開けていく。
強烈な圧力を受けた膣壁が薄い桃色から血管を充血させた紅に染まっていく。
ウェ「キャァン!カイ、すごい!カイ、ごーいん!カイ、きもちいーよ!」
素直に悦ぶウェルシー、敵そっちのけで自慰行為スタート。
マ「おのれ、舐めるな!」
すきだらけのウェルシーを唸りを上げて襲う尻尾。
ウェ「オバサン、じゃまー!」
—サイクロォンッ!—
ウェルシーの右手が一振りされると竜巻が巻き起こり尻尾を寄せ付けない。
カ「さあ、一緒にいくよ、ウェルシー」
カ(い、いくって?どこへ—ッ!)
肉壁に向かって蹴りを打ち込みトンネル拡張しながら、足元を流れる愛液の小川を飛沫を上げて駆け上る。
ウェ「ガウウウッ、カイ、さいこォォォーッ!」

右半身に炎のオーラを纏ったルーシー、同じく右半身に風を纏った巨大ウェルシー。
ヒート・ルーシー!
サイクロン・ウェルシー!

カ(ここ、どこ?)
少しだけ広い空間、滑らかな粘膜の床、壁、天井。
ルーシーのそこは穏やかにしかし力強く。
ウェルシーのそこは激しく強く、脈動して。
カ「やっとたどり着いたのう」カ「ここがウェルシーの子宮か」
カ(しきゅう?なんだろう?)
少年はまだ子宮というこの場所の呼び名をまだ知らない。

ツ「なあ、これってお前の娘のロスト・バージンじゃないのか?」
ジェ「ん?しかし送り込んだのは精神だけでカイ君の実体はここにあるしな。今回は疑似体験というのが関の山だな」
ツ「後はメモリブレイクだけか」
二人してカードをセット。
—ファイナル・アタック・ファイト、カイオウ・烈火憤激脚!—
—ファイナル・アタック・ファイト、カイオウ・飛燕空列脚!—

ル「ルィーズ・ママ直伝!昇天アッパー!」
顎をぶち砕かれたマリンバロンの巨体が天高く打ち上げられる。
ウェ「ガウッ!飛翔旋風陣!」
自ら巻き起こした竜巻に乗って上空へ昇るウェルシー。
マリンバロンより上空で反転し、後頭部への蹴りを決める。
マ「グッ!復元機能が、うまく、作動しな…………」
蹴りをめり込ませたまま流星の速度、錐揉み状態で地上へ落下。
待ち構えるルーシーの右足にエネルギーが満たされ炎の足となる。
ル「ハァァァッ!」
ルーシーの体が大きく旋回、放たれた後ろ回し蹴りがマリンバロンの顔面を直撃!
ウェ「カイ、だいすき!」
ル「カイ君、LOVE!」
二人の足に挟み潰されたマリンバロンの顔面へ気合が流れ込む、マリンバロンの蛇体にビシッと亀裂。
ドォン!大爆発が起こり島を爆風が吹き荒れる。
マ「な、何がどうなってるの?」
爆煙の中からよたりながら出てくるマリンバロン。
股間から抜け落ちたギガイア・メモリが砕け散る。

ガ「カイ様!しっかり、しっかりしてください!」
カ「あ、ガルム?一体、何があったの」
ガ「それがさっぱりわかりません。でも」
カ「でも?」
ガ「カイ様があぶねぇってことは確かです」
見上げると、イッチャってる目で迫ってくるアダルト・ルーシーと巨大ウェルシー。
ル「ウフフフ、カイくぅん。邪魔者は片付けたわ」
ウェ「グルルル……つづきしよーね、カァイィくぅんッ」
ル「朝まで寝かさないからぁ」
ウェ「種ぇ、よこせぇぇぇ」
カイ、蒼白。ガルムが震えながら立ちはだかる。
ガ「カイ様の貞操、命に代えてもお守りします」

離れた岩陰で。
ツ「興奮状態が解けなかったらしいな。このままじゃ少年の身がもたないぞ」
ジェ「こんなこともあろうかと、このカードを用意しておいた」
カードには青いフードをかぶった魔道士の姿。
—カメン・ファイト、セ、セ、セ、セッキョウ!—
ツ「せっきょう?そんな仮面ファイターいたか?」
ジェ「シッ!静かに我々まで巻き込まれるぞ」

カイ、天を仰ぐ。青い光の玉が飛来して上空で静止する。
カ「エルマー様!」
光の中には一人の青年の姿、大魔道士・エルマー登場。
エ「嫌な予感がしたので様子を見にきたのですが。その力、封印します」
エルマーが投げた2枚のカードがキキの腕輪とララの腕輪に突き刺さり、皮膜状に変化して包み込む。
ル「あ?」ウェ「ガウゥッ?」
ルーシーの体は元通りの体型に、ウェルシーも元の大きさに。
カ「エルマー様、ありがとうございます!助かりま…………」
カイ、絶句!エルマーのにこやか笑顔の背後に怒りのオーラ!
エ「カイ君、何をしていたのか聞かせてもらいましょうか?」
カ「そ、それは」
エ「人のいない小島で裸の女の子に囲まれて?」
カ「それは、不可抗力っていうか」
エ「…………そこへ座りなさい。ルーシーさんも、ウェルシーさんも。ガルム、君もですよ」
有無を言わせぬ大魔道士の迫力、今から何があるかはわかっている。
そして逃げられないことも。
そして伝説の説教が今夜も始まる。
エ「…………わかっているはずでしょう、臨海学校というのは遊びではないのです。それを勝手な行動で大勢に迷惑をかけて。そもそも、普段から…………」
マ「なんで、私まで…………」
エ「貴方もです!いい大人が子供の前であんなだらしない格好を…………」
ついでにマリンバロンと鉄十字騎士団の手下も説教を食らっていた。
エルマーの説教自己ベストは記録は連続三十日間、朝が来ても説教が終わる保障はない。
改心したくらいでは逃げ切れるものではなかった。

ツ「恐ろしいのを召喚したな。俺も説教には自信があったが、あれほどとは」
ジェ「とにかく二つの腕輪はふさわしい持ち主の手に渡った。ご協力感謝するよ」
帰ろうとする二人の前に銀色のオーロラがあらわれる。
ヒョコッとプンプン顔を突き出す、かーなーり怒っているアリス・ナルタキ。
ア「おのれ、デカイド。またしても生き残るとは!」
ツ「やれやれ、お前か。もういい加減にしてくれ」
ア「ふ、ふん!ホンキなら貴様ぶっ潰すくらいワケないんだからね!今日は手加減してやったんだからね!この次は絶対、ぜぇーったい!葬ってあげるからね!」
オーロラの中に消えるアリス・ナルタキ。
ジェ「あそこまで憎まれ口叩かれるとは。お前、あの娘に何したんだ?」
ツ「まあ、ちょっと、な」
ジェ「ほう、お前はアリスにとって世界一迷惑なヤツなわけだ。ハハハ」
ツ「ほっといてくれ」
去りゆく男たちの背後に偉大な魔道士の説教の声は更に高く。
その声も波音に静かに消されていくのであった。